読み切りSS(※遊戯王作品)   作:ウェットル

11 / 12
 これ思いついた時はともかく、数年たってからさ。

 「風邪になってよかった」と思う作品として完成した、とは思わなかったぞ。


たったひとつの、

 べつに複雑な話ではない。

 彼は至極単純な、もっとも最適な答えを導き出しただけだ。

 ある世界から迷い込んだ人間たちにとっての、とっても冴えた、冷めきった答えを。

 

「ボクが破壊した。」

 

 ただ一言。

 その程度の言葉でしか、表現できないほど。

 彼は迷い続けた。彼は選び続けた。彼は諦め続けた、彼は諦めなかった。

 自分の命のため。できれば、死んでほしくない子供たちのため。

 死んでも構わない人間が巻き込まれても、死んでほしくない人間が巻き込まれても、確実に死ななければならない相手を殺すために。

 殺人にデュエルの力が必要ならば、デュエルの力を帯びた武器を使えばいい。

 殺すべき誰かを殺すために、それが実現しうるカードの力を利用すればいい。

 ただ、それだけのために。

 

「融合次元のアカデミアは、ボクが・・・・・・爆破した。」

 

 少年は少年期を費やし。二度目の人生だからと腹を括り。

 彼らが望んだ通りの『戦士』として、為すべきことを成し遂げた。

 

「ちょうどいい、『莫大なエネルギー』の貯蔵庫があったからね。

 そこを軽く爆破して、制御不能にさせた。あとはガスホルダーが爆発事故を起こすのと同じ要領だと思ってくれていい。アカデミアはもう、存在しない。」

 

「・・・・・・は?」

 

 デュエルを介さず、デュエルの異能を使用して、物語の結末をつける。

 それだけであれば、彼らの物語にも何度か繰り返されるはずの未来だった。

 だが、そうはならない。そうはなれなかった。

 外套を纏った少年のようには、コートを纏う少年、”黒咲隼”も、また。

 

「どういう意味だ、説明しろ!」

 

「説明したとおりだ。ボクが、アカデミアを破壊した。

 車のガソリンタンクに向かって、遠隔から火種を放り込んだのと同じだ。

 あれはもう、誰も助からないよ。彼らは今頃、アカデミアとは別の軍部で『昇進』が認められている頃のはずだ。」

 

「そんなことを、聞きたいのではない」

 

 少年に掴みかかる黒咲。

 ああ、少年とて、彼の言わんとする望みは理解できる。

 理解できるが、そこまで、でしかなかった。そこまでにするしかなかった。

 憐れむべき事情があるわけでも、共感から許しを請える事情があるわけでもない。

 

「瑠璃は・・・・・・瑠璃はどうなった? 俺の妹を、どうしたと言った!?」

 

「ああ、噂の彼女か。

 殺したよ。事故に巻き込まれていれば。」

 

「ふざけるなぁ!」

 

 肉が、鈍器でも当たったかような音を響かせる。

 静まり返ったリアル・ソリッド・ビジョンの世界。

 デュエルの観客が大勢でなかっただけ、彼らにとっては幸いか。

 奇しくも彼の暴挙によって、彼らが戦う場所、その世界において、誰も異世界からの脅威などという未知に脅かされることも、思い悩むこともないのだから。

 

「だったら、カードにされた、ハートランドの皆は!?」

 

()()が彼らの求めていた、『燃料』だったからな。

 アカデミアを自爆させた際に、1枚も残さず燃え尽きたはずだ。」

 

「・・・・・・そんな・・・・・・ことが、」

 

 膝を折る黒咲は、握った拳を地面に叩きつける。

 脳裏に浮かぶ思い出も、笑顔も、すべてが灰になった。

 

「認められるわけがない!

 そんな方法で、こんな形で、アカデミアが滅びただと・・・・・・!?」

 

 吐き出されるべき、突き出されるべき憎悪の拳も。

 今となっては、風に吹かれて舞いそうなほどに、拳の内に隙間風を吹かせている。

 

 この瞬間、彼らの世界に、デュエルが答えを導き出すことはなくなった。

 ある男はつぶやいた。ならば彼女も死んだのかと。

 ある少年はつぶやいた。もう、あそこに戻らなくていいんだと。

 ある道化師は天を仰いだ。どうして、今さらになって、こんな形で。

 こちらの世界では、いまだ、誰もカードへと封印されていない。誰も犠牲にならず、しかし、誰もが犠牲になってしまっている真実のうえで。

 

 もう、踏み込まなくていいはずなのに。

 榊遊矢と呼ばれた少年は、外套が伸ばす影に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 口を、開いた。

 

 

 

 

 

 何も知らないからこそ。

 それを知る誰かでは、決して届かぬ居場所から。

 

 ぬくもりが届くこともある。

 




 前々から構想にあったものを、病み上がりで書く気になれました。

 続きを書くかは、明日からの自分に投げます。
 いろいろと「いそがしい」ので、長期間の計画立てた執筆は現状厳しくなっています。また会えたら幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。