正直そこまでやってくださったなら、読み切り作品(主にお蔵入りネタ)がたくさん見たいのか、読み切りの続編が見たいのか、あるいは読み切り自体を書き直せやオラァンなのかを教えてくださると! 有り難いなーと思います!!
「だあっ、もうっ、めんどくせぇ!」
重い音がする。
それは、高速道路を走るトラックの響かせる音よりも重く、重く。
巨象の行進をも思わせる足踏みで、臓腑をも震わせる太鼓のような鼓動で。
確かに近づいてくるのだ、いたずらで子供がアリを追う様に似た無邪気さで。
大きな影の、赤く光る目の、ちっぽけな
「たかが4000ぽっちの性能で調子づきやがって!
こっちは何回頑張っても2600なんだぞ、やってられっかぁ!?」
震える。恐ろしいと、背を追う怪物が恐ろしいと体が震える。
奮える。所詮はいつものことなのさ、そう呟く魂が冷ややかに燃えがる。
こんなものなど味わいたくないと、心の臓から悲鳴を上げる。
こんなものなど大したことないと、口角が上がり数字を数える。
そうして、この身体と魂は共に訴えかけるのだ。
デュエリストとは、このようにあるものだったのか、と。
「ええと、《古代の機械混沌巨人》が封じるのは、フィールド上のモンスター効果!
手札や墓地のモンスター効果までもは無効にできねぇ、だったら・・・・・・!」
方や歓喜に震えて微笑み、方や恐怖に呑まれて頬を痙攣させる。
ヒトはそれを狂気と呼ぶのかもしれないが、狂えるだけの頼りの綱というものさえあれば、狂気というものは案外にも正気を維持し続けながら扱えるものだ。
手綱のひとつは、地面に座り込んで自らを見上げる、死ぬには勿体無い体格をしたオベリスク・フォースの金髪少女。人間としてはともかく、野郎としての報酬には十分だ。
惚けるように口を開いているところも、また色気が強くて心に毒だが有り難い。
もうひとつは、この自分を乗せて、震える羽根で空を飛ぶ甲虫。
蒼く輝き、紫電と共に虚空を焼き続ける鎧兜の昆虫は、鈍重なる猟犬が如き駄巨兵など気にもとめずに、時折歌でも歌うかのように羽根の震わせ方を変えていた。
《
ランク7、光属性、昆虫族のモンスター・エクシーズ。
アニメ遊戯王ARC-V放送時期に印刷された、当時の遊戯王OCG環境において「最大の産廃にして、最弱のエクシーズ召喚テーマのカテゴリー」の切り札級モンスター。
効果は単純、「
こいつが、今のボクの相棒というわけだ。
全く頼りにならねぇ。自分の腕前を信じるしかねぇ。
「おっしゃあ、
迎え撃つぞ、ライノセバス!」
「待ってました」と意気込むように、複眼を輝かせたライノセバスは旋回する。
その鋭利なる剣を、大いなる影へと切っ先を変えて、
「――――
白装束の輝きを宿す。
「手札から、《オネスト》の効果を発動!
テメェのモンスター、どんな火力だろうが! 知ったこっちゃねぇなぁ!」
狼狽する声がデュエルディスクから聴こえるが、それさえもどうだっていい。
「ライノセバス、《
すべては、綺麗な
迷う暇などあるものか、助ける理由など「色気に負けた」なんてもんでもいい。
何はともあれ。信じられないものを見たと言わんがばかりの、あるいは、この世の終わりだと言わんがばかりの絶叫を対戦相手たちがあげている。
減衰する音が、デュエルディスクから鳴り響く。
勝利だ。相手のライフポイントがゼロになった音だ。
ボクは、眼前に広がる絡繰り仕掛けの犬人形たち、それらの残骸を見下ろしながら確信した。これだけ高く飛べれば、自分の戦果というものも実感が湧く。散り散りになって逃げ続ける遠くの人影が、どこかから現れた鷹やドラゴンに狩られていく姿もよく見える。
「・・・・・・で、そこの脱走兵さん、機嫌はどう?」
ライノセバスの着地が終わってから、ボクは相棒の外骨格から滑り降りる。
顔を引き締めた彼女は、一言二言ほど礼を口にすると、「できれば匿ってほしい」とも続けた。迷惑になってしまうのは承知の上で、どうしても逃げるわけにはいかないのだとも。
仮面越しには伺えないものの、唇の引き加減からして本気の目をしているのだろう。
それにしても、本当になんでここに来たんだろうか。
自分の身に起こった出来事を頼りに、何度も答えを出そうとしてもわからない。
この
【お主らには、ちょっと異世界に行ってもらいます】
惨めに寿命を迎えたはずの今日が、明日に繋がったと知った気分は最悪だった。
いや、なにをどう惨めとするのかは他人任せだが、少なくとも自分にとっては納得の行く一日だったと言える。特別に幸せだったとか、特別に不幸だったというものではない。
ただひたすらに穏やかで、侘びしく、それでいて空虚。
だからこそ、自分の歩んだ道筋に間違いが合っても、不満足はなかった。
欲しいものが手に入らないことなど星のようにあったが、手放したくないものを手放さないことだけは、自分の命の数が変わらないように絶対だった。
そこに誇りを持って、納得して『死んだ』はずだったのだが。
・・・・・・どうにも、目の前の老人もどきは面白いことを口にする。
【ほれ、そういう二次創作物ってあるじゃろ?
なんなら一次創作でもいい。つまりはの、そういう話じゃ】
そういう話って、どういう話だ。
そんな声を上げた誰かが、どこかにいた。サブカルチャーに疎そうだ。
【転生じゃよ、強くてニューゲームじゃよ?
・・・・・・あれ、もしかして、あんまりメジャーな娯楽じゃないのん?】
ジジイが「のん?」とか言うんじゃねぇ、キモいわ。
そう罵声を浴びせた誰かが、どこかにいた。豪胆すぎやしないか、こいつ。
【あ、ワシ、あとでちょくちょく出番あるからな?
みんな同じ世界にぶち込んどくから、もし会ったら覚悟するがよい】
え、なにそれ、メタすぎて怖っ。
その声を発端として、ざわざわと周りが煩くなった。
殆どは神様に対する暴言か、謙る声かの二種類。まともに聞くまでもない。
・・・・・・さてはこいつら、かなりの割合で気がついたらしい。自分と同じように。
【はい、ということでワシ、神様です。
ワシの手違いで殺しちゃった、テヘ。っていうので有名な神様です。
もちろん手違いじゃないぞい、なんか冥界から溢れたから在庫整理でな。
細かいことは問わんでくれ、懲役数億年とかある向こうが悪いんじゃからな?】
ああ、今のでもうゲンナリしそうだ、ボクは。
おそらくは、仏教の地獄の話をしているのであろう。
仏教出身なのか神道出身なのか、あるいはインド神話出身なのかサッパリわからない自称『神様』を見て、ないはずの目が疲れてきた。(肉体がないのだから、目は疲れなくて当たり前である。)
【行き先は、『遊戯王ARC-V』の世界じゃな。
もちろんアニメじゃよ。ワシも楽しみじゃ、せっかくのバカンスじゃしのう!】
杖らしきものを神様は掲げると、自分の目の前からデッキケースが落ちてきた。
見覚えのある、馴染み深いデッキケースだ。
【その中に、お前さんらが使ったことのあるデッキが入っておる。
遊戯王やったことないヤツには、ルルブつきで適当に見繕っておいたぞい。
お前さんが使ったことのあるカードで、ARC-Vの世界に持っていっても問題のない、それでいてお前さんらをマスターと認めるカードを中心に連れてきたんじゃ。
一人に付き、魂のカード入のデッキが1つ、そんなところじゃのう。
GXみたいでワクワクするのう? ワシも楽しみなんじゃよ、これ!】
はしゃぐ老人の声が、男性の声が、女性の声が、子供の声が。
どこの国の人間の声かもわからないほどに混ざり合い、ただ笑い声であるということしかわからない『音』が響き渡る。どこかで悲鳴は上がるが、神様は気にもとめない。
目の前の居場所が『白い』だけの虚空であると、自分がふと気がついたときには。
どこの誰ともわからない、それでいて自分と同じ顔の人間が。
いいや、自分も同じ顔だったが、遠い昔に変わり果てた懐かしい顔をした人間が。
鏡の中で必死に歯を磨いていた。違う、自分の手が歯ブラシを握っていたのだ。
その後に慌ててネットを父さんから、前世の父さんそっくりな誰かから使わせてもらって、あの日の今がいつだったのかを、あの日のボクは知った。
ネット新聞のピックアップリストには、『榊遊勝』の写真が載せられていたのだ。
――――『ハートランドシティ』の中心にある、巨大なハートの塔を背景に含めながら。
アニメ『遊戯王ARC-V』第一話での時間軸から、数年前。
ボクの転生して物心がついた日とは、あの榊遊勝が、ある異世界から、『スタンダード次元』からハートランドシティにやってきて名を馳せた日だったのだ。
本当に、ただそれだけだ。
自分の居場所が『エクシーズ次元』の『ハートランド』である以上、『融合次元』の『アカデミア』という組織に所属する彼女の方で、どのような事情があったかなどさっぱりわからない。
本当に、彼女の身に何が起こったのかがわからない。
何をどうすれば、彼女はこの次元に来てしまうのだろうか。
原作の『天上院明日香』は、エクシーズ次元に攻め入っていないはずなのだが。
同じアカデミアの戦士同士で、どうして追いかけあっていたのかもわからない。
原作の流れからして想像するには容易いが、そうなるまでに何があったのか。
わからない、わからない。わからないことだらけだ。
「とりあえず、明日香さんって呼んでいいんだね?
それじゃあ、しばらくはよろしくです。ボクのアジトまで案内しますね」
それはともかく。
目の前の報酬を、美しい宝珠の花を鑑賞することに専念しよう。
せっかく生き残って、助けて、疲れたのだから。ああ、本当に助けてよかった。
彼女をGX二次創作でオリ主のヒロインにする人、けっこういますけど。
いっそARC-Vの明日香さんをヒロインにするのも、一応はアリだと思うんです。
なんならDM終了~GX開始までの時間軸とかの明日香さんとか・・・・・・どうせなら、そっち方面で、こう、こう! ぜひとも読みたい!