今回の話は、赤馬零児を含めた「レオ・コーポレーション」へのツッコミから始まります。今回はアークファイブの物語自体がなぜ成立するのか、もう自分にもよくわからなくなりました。
え、フィクションだから別にいいだろって?
子供向けアニメは「子供騙し」とは違うんだぜ。
【仮面ライダーシリーズ】と【HUGっと!プリキュア】を見てから、その台詞の意味を考え直してほしいな。
舞網チャンピオンシップ。
それは海馬コーポレーションが開催した伝説のデュエル大会『バトルシティ』とは異なり、第三回戦だけが舞網市のスタジアム周辺地域に交通網やら通常勤務やらを放棄させて、ようやく成立するバトルロイヤル方式であるなどという頭のおかしい大会だ。
・・・・・・え、そんなはずはない?
いやいや、そんなはずがあるからこそ成立する大会なのだ、アレは。
諸君らも気がついているだろうが、舞網チャンピオンシップ第三回戦は「スタジアム周辺地域」が戦いの舞台となるということは、街中にリアルソリッドビジョンが投影されてしまうため、元々そこにあったはずの市街地の姿など見えはしないし、触れられもしない、ということでもある。
上書きするわけではないが、市街地にテーブルクロスでもかけるかのように覆い尽くしてしまう。当然質量がある映像なので、そこにあったはずの建物に入ることさえできない。
もし当日に仕事があっても第三回戦が始まろうものならば、会社から出ることはもちろんのこと、休憩時間であれ営業であれ外に出てしまえば会社に戻ることもできない。
タイミングが悪ければ、リアルソリッドビジョンの中に埋もれるか、リアルソリッドビジョンが投影される際の処理で歩きながら雪に埋もれるか、マグマに呑まれるか、そんなことなどなくとも土地がまるごと変化するため「自分がどこにいるのか」を把握しづらくなってしまう。
歩道だけ普通に通れるようにして仕事がある程度できるようにしても、第三回戦は二十四時間もやるためコンビニや飲食店では食料品や食材の供給すらままならなくなるにも関わらず、その状況下で余計に食べ物の需要が高まってしまう。
もちろん、タクシーやバスや運送トラックなど走ることすらできない。選手を交通事故で死なせる訳にはいかないし、リアルソリッドビジョンの演出でタクシーやバスを破壊してしまうわけにもいかないためだ。
この時点で運送業が関わる商売は、スタジアム周辺地域に限って儲からなくなるも同然だ。極めて広い範囲で土地を占拠するため、スタジアム周辺地域を挟んだ反対側にある町まで運ぶための運送料だって大幅に変化してしまうだろう。
では、ここまでの話をわかりやすくまとめよう。
スタジアム周辺地域外では警官が交通規制をして、周辺地域内の出入りを抑止して。
スタジアム周辺地域内では一切の営業活動を丸一日休止してもらい、土地を確保する。
これらの意味を、冷静に考えてみよう。
馬鹿じゃないのか、レオ・コーポレーションの御曹司殿と塾長様は。
そんなことを実行すれば、舞網市の経済がガタガタになるに決まっているだろう。
たった丸一日会社が休むだけと言えば易い問題に思えるのだろうが、現実はそんなことはない。スタジアム周辺地域のすべての企業が休まないと成立しないのだから、一時的に電気水道ガスおよび各業種の工場での生産活動以外の経済活動が急停止してしまうようなものだ。あの地域に保険会社や小売業、SE関連の本社でもあろうものなら目も当てられない。
すべての企業や店舗が日曜日に休むわけではないのは、そういう理屈だ。平日に稼ぐ商売をしている企業や店舗は極力日曜日に休めるように努力をしているだけで、日曜日や祭日が書き入れ時となる企業や店舗は休むわけにはいかない。
本社移転の話をまとまらせるとしても、それをやるための大会のプレゼンやら不動産売買契約ありきの立ち退き交渉やらを退いてもらいたい相手企業に対してやらねばならないのだ。舞網チャンピオンシップを開催する何年も前から。
仮にそれらすべてを、全部やりきれたとしてもだ。
スタジアム周辺地域から飲食店やコンビニを出入りするサラリーマンやOLが大幅に減ったという時点で、もうスタジアム周辺地域の飲食店やコンビニは儲からなくなって撤退するほかに道がなくなりうる。
つまり、大企業の思惑のためにチェーン店を展開している企業が大損をして、不動産会社も空いた不動産ばかりを確保した状態になりかねず、エトセトラ、エトセトラ・・・・・・。
そんなもん実際にやってみろ。
舞網市を融合次元から守る前に、舞網市がレオ・コーポレーションに殺されるわ。
【で、それを赤馬零児が実際にやらかして、この有様なんですよねぇ・・・・・・?】
「そーだね、この有様だね」
死んだ魚の眼を通り越して、もはや表情がデスマスクかなにかのように色を失った状態の《ブラック・マジシャン・ガール》(OCG)の付喪神が呟く。
【スタジアム周辺の町をゴーストタウン一歩手前まで追い込んで?
立ち退きが無理だった企業は高額の取引をして黙らせたとして?
っていう前提の上で、それでもスタンダード次元を守りたいひとなんでしたよね?】
「なんかそーみたいだよね、昨日とか店が何件か潰れてたし。
マジで実行したんだろうね、こっちの予想でしかなかったはずなのにね」
【じゃあ、じゃあですよ、マスター?】
わなわなと肩を震わせ、くたりと宙に浮いた身体をボクに乗せてくる。
だから、キミはもうちょっと自分のキャラというものを考えてください。
ただでさえ際どい恰好なんだから、肩に顎乗せるだけでも当たるんだから。何がとは言わないけど、本当にもうちょっと自分のキャラというものをですね。
「いま実体あるからってそういうのするの、禁止にしていい?」
【マスター、マスターも現実を見ましょうよ。
そろそろ背中のちびっこくん・・・・・・ちびっこちゃん・・・・・・ちびっこくんちゃん?
とにかく、ちゃんと話に付き合ってくださいよ、私だってメンタルに限界バトルぶちかまされて燃え尽きそうなんですってばぁっ!】
ちらちらと後ろを観ながら、《ブラック・マジシャン・ガール》は叫ぶ。
しょうがない、そろそろ本題に移ろうか。
両手と顎を乗せられた右肩を手で払い、左へと首を回して振り返ってみる。
そこには、帽子を拾おうとしている長髪の少年(※主に未成年の子供を指す。男性の子供だけを指さない。一例として《ユベル》はアニメ公式設定では「ユベル少年態」と呼ばれる形態である)がいた。
「そうだね、プロテインだね」
【マスター、この世界に「ニつニつ動画」はありませんよ。
現実を見るのがキツイのでしたら、その、私もなので。えっと。
・・・・・・手とか握りましょうか? むしろ握ってくれません?】
「はい」
手を握り返し、改めて前を見る。
こちらを見て下卑た笑いを浮かべたもの、なにやら羨ましげに口をとがらせて文句を吐き出すもの、両手で顔を抑えたもの。口笛を吹いてからかうもの、怒号を吐き続けて何かを要求するもの。気持ち悪がって叫ぶもの。
色んな種類はいたが、どれもが似たような制服を身にまとい、似たようなデュエルディスクを左手に構え、似たような仮面を顔につけていた。
「リアルソリッドビジョンっていいね、体温があって落ち着くし」
【・・・・・・そ、そうですね。
って、マスター、いつもより手が白くないですか?】
そう、全員が全員、同じ外見をしているようなモブキャラクターじみたデュエリスト。
共通点だらけで関連性を見つけないことに無理がある連中を、遊戯王アークファイブではなんと呼ばれていたのだったか。
「いいから。何が言いたかったのさ?」
【ああ、そうです、そうでした!
マスター、赤馬零児が彼なりに頑張っていたのだとしたらですよ?】
両隣に倒れているのは、どこかで見たことのあるような装束に身をまとう二人組。
その姿は光と共に消え去り、2枚のカードだけが風に舞う。影も形もなく、種も仕掛けもありませぬ、これが本当の隠形の術にござるってか。
隠形の術を楽しむ上で惜しむらくは、彼等が披露した手品は二人がかりの忍法などではなく、場所も場所で風情のある密林ですらなく、火山や氷山、遺跡などの神秘的と言えなくもない場所ですらない。
【あのひとたち、なんでデュエルフィールドから出てきちゃってるんですか!?
オベリスク・フォースとかっ、月影とか日影とかっ!
よ、よりにもよって、その、――――あの零羅くんちゃんとかぁっ!?】
現代建築ばかりが目に映る、市街地のど真ん中。
デュエルフィールドに設定された範囲外だったことだろうか。
「お、おお、おおおっ・・・・・・・・・・・・!」
原作通りの展開になんか、榊遊矢の前になんか通りすがりたくもなかったから、舞網チャンピオンシップに参加する権利をついうっかり手に入れたりしないように、それを理由にかこつけて舞網チャンピオンシップに参加するように強制されたりしないように、何かにつけてデュエルを拒否して勉強一途に生活してきたのに。
「おのれおのれおのれおのれ、おのれぇっ!
おのれ、赤馬零児ィ!」
まさか、向こう側からポカやらかしてくるとは思わなかったよ。
原作に関わらないと決める分には、何の問題もないんですよ。
デュエルをしないということは、普通に学生生活をエンジョイしつつエンタメデュエルの舞台の上から遠のくという意味でもあるので、一般人としては問題がないんです。
もちろんデュエル塾になんか通わずにすみますし、それをきっかけに榊遊矢とデュエリストとして面識を得てしまうことも、LDSの動向に左右されることもありません。
短編集ではなく連載版だったなら、榊遊矢や沢渡シンゴらと学校が違うであろうLDS三人組、あるいは両手に花とばかりに斜芽美伎代、オルガら女性陣との出会いなんてものも、ひょっとしたら描かけたかも知れません。
そんな展開をカットして打ち切り、新しいアイデアを短編集に乗せるのも悪くはないでしょう。自分は、そういうことをせざるを得ない自分を許せるでしょう。
> > だが、オベリスク・フォースが許すかな! < <