ダーリン・イン・ザ・フランキス:Parallel   作:祈Sui

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第4話(Parallel23話)いつか還る場所

《ensemble・13部隊side》

 

 目の前には、黒紫色の九式の群れ。冗談の様な光景。アパスが倒しきれなかった九式に叫竜の群れが押される。デルフィニウム達に随伴していた自律兵装が反応。九式を破壊していくが追いつかない。デルフィニウムとアルジェンティアが九式を斬り裂き、クロロフィッツの多連レーザーが焼き払う、それでもその奥から黒紫色の九式が現れ、頭部を破壊されなかった九式が、折れ曲がった首をそのままに突進してくる。

「誰も乗ってないから、恐怖も痛みも躊躇いも無いのか」

ゴローは自分の言葉に嫌な感覚を覚えた。

「なんだよそれ、ふざけんなよ」

ゾロメが叫びながら黒い九式を破壊していく、何か得体の知れなかった叫竜と戦っていた時と違い。九式というフランクス、人型の兵器を破壊するという事に、心が削られていく気がする。

「イクノ、エネルギーが少なくなってる」

「分かってる」

そう答えながらも、射撃を止めるという選択肢は無い。三機に対する包囲網が少しずつ狭まっていく。

「いったん退いて防御態勢を、アパスで一気に蹴散らす」

ゼロツーの声に、三機が頷き叫竜達も退く、追ってきた黒紫の九式とヴィルム兵器群に対し、叫竜達は防御シールドを展開し耐える。アパスがハッチを開放。そこから周囲に照射されたレーザー光がヴィルムの兵器群と黒紫の九式のほとんど、そして本体の惑星までも刻む。味方にあたらないように緻密に計算された広範囲攻撃。ヴィルムの侵攻が弱まったところに、デルフィニウム達や、叫竜の群れが反転攻勢。叫竜の避難船に向かっていた黒紫九式及び兵器群を殲滅した。小型の避難船が、まず鳥籠を抜け。そして最後尾を飛んでいたトリノスを包み込んだ超レーマン級の叫竜も金色の膜に触れ、すり抜けた。

「やった」

避難船が鳥籠を抜けた事にフトシが歓声を上げる。

「だが、さすがにこれ以上は・・・」

ゴローの視線の先では刻まれたヴィルム本体が再生を始め、黒紫の九式と、ヴィルムの兵器群が再生産され始めている。

「でも、アパスは圧倒してる」

イチゴは仲間たちを鼓舞するように言い、そのやり取りにゼロツーが口をはさむ。

「いや、アパスにもエネルギーの限界はある。破壊力が大きいだけ消費するエネルギーも多い。対するヴィルムは無尽蔵だ。持久戦になれば負ける」

「それじゃあ、勝てないって事?」

フトシの声は震えていた。

「手段はある。だけど敵の中枢が分からないとなんともできない」

管制室に響くゼロツーの声にミツルは歯を強く噛みしめていた。

「何か、ここからできることはないのか?」

此処に来る前に病室でフランクスに乗れなければ意味が無いと言ったコード556の悲しそうな声が脳裏をよぎる。

「倒しても倒してもまた湧いてきやがって」

ゾロメが再び迫ってきた黒紫九式の一体を破壊、忌々しそうに言った。ミツルにはその言葉が引っかかった。

「倒しても再生している?・・・いや」

ミツルは自分の言葉を否定する。

「ハチさん、さっきアパスがレーザーを使った場面を再生できますか?」

「ああ、可能だが」

ハチがパネルを操作して映像を再生する。アパスのレーザーでヴィルム本体の一部が切断され弾け飛んでいる。そして再生される一連の動作に気が付く。ヴィルム本体から切り離された兵器群も同じだ。ミツルが通信に飛びつく。

「破壊した個体もヴィルム本体も厳密にはその場で再生を開始していません。一度ヴィルム本体に取り込まれるように動いた後で再生しています。恐らくヴィルム中枢がそれを制御している」

「一度本体が取り込まなければ、再生できないって事?」

ミツルにイクノが問う

「そうです」

「つまり・・・どういうことなんだよ」

ゾロメの叫ぶような声にゴローが応じる。

「操り人形なんだ。それ自体に意思があるわけじゃない」

「だから壊されると単体では再生できない」

フトシも理解を示す。ゾロメに向けてミツルが補足する。

「トカゲの尻尾のようなものです。本体から尻尾は再生できても尻尾から本体は再生できない」

ゾロメは頷いてから首を傾げる。

「・・・だから?」

「強引に言えばトカゲが切り離した尾をつかって尾を再生するためには切り離して動かなくなった尾を本体が一度摂食する必要があるって事ですよ」

ゾロメの頭の中には大量の疑問符が浮かんでいた。

「でも、どうしたらいいの?」

ゾロメを置き去りに、不安そうに言ったミクの声にミツルが考える。

「もう一度本体を刻めますか?できる限り細かく、データが足りません。トリノスで観測します全ての破片が吸い寄せられる場所に、奴らの中枢がある筈です」

「それなら」

ゼロツーが答える。何か考えがある事を伝えてくるその意識にヒロは疑問を抱く、操縦席のモニターに表示されている警告ランプ。アパスのエネルギー残量はもう残りわずかだ。さっきと同じような攻撃がもう一度できるのか?ヒロの目は再生を始めているヴィルム本体に向けられる。

「ゼロツー!」

ヒロが視界に捉えたものを見て咄嗟に防御姿勢をとった。ヴィルムを構成する惑星から巨大な腕が伸びる。分断された構成物で隠しながら生成されていた腕の超質量の一撃が防御姿勢をとったアパスをそのまま弾き飛ばす。アパスはそのまま鳥籠を抜け、鳥籠によって阻まれたヴィルムの腕が圧力に耐えかねてひしゃげた。構築している物質が粉々になって散る。打撃から解放されてもアパスは勢いを殺せず、そのまま加速していく。アパスの左腕は折れ曲がってしまっていた。開かれている回線を通して、ヒロの耳にイチゴの叫び声が聞こえる。

「大丈夫。皆、急いで鳥籠の外へ」

イチゴを安心させるようにゼロツーが言い。飛ばされ続けていたアパスは体を回転させて態勢を整える。仲間たちが鳥籠の外へ移動するのを見ながら、推進装置を点火させ前進しようとしたヒロをゼロツーが止めた。

「ダーリンこのまま月に降りよう」

完全に理解しないまま、ヒロはその指示に従う。飛ばされた勢いのままアパスは月へ到達。舞い降りるように月面に降り立つ。月面に降り立ったアパスは足を深く突き立てた。枯渇しかけていたエネルギーが急速に充填されていく

「なんで?」

「ああ、月はね叫竜人達が改造したアパスの追加兵装でエネルギー貯蔵庫なんだ。奴らの命名法則に従うなら、バロールの目ってとこかな」

月の表面が揺らぎ、それがアパスの上方に流れていく。揺らぎはそのまま複数のレンズのようなものを構築した。現れたレンズ群はアパスの角の先に展開される。ヴィルムの腕が、何度も鳥籠を殴打している。鳥籠が軋み内側からの圧力で歪む。鳥籠の膜にひびが入り、一部が崩壊した。僅かに開いたその裂け目へヴィルムの傀儡と腕が殺到。

「もう遅い」

ゼロツーが嗤う。アパスの角の先端に膨大なエネルギーが収束。角の先端で光球を成したエネルギーは、そのまま線へと転じる。放たれた閃光は展開されたレンズ群を透過。レンズによって光は増幅され一瞬で鳥籠の端に到達。殺到していた傀儡と腕が蒸発。さらに前進する光にヴィルム本体から生えた複数の腕が掲げられる。その腕の先に巨大な青い渦が発生。到達したエネルギーが曲げられヴィルム本体を避けるように流される。取り込んだ惑星の水と大気を利用した防壁。

「押し切るよ。ダーリン!」

ヒロが猛り、アパスから放出されるエネルギーが増大。ヴィルムの張った防壁を強引に散らしていく、ヴィルムの腕が押され、流されていた閃光が防壁を突き破り収束。ヴィルムの腕が吹き飛び、その身体を構成する惑星に巨大な穴が穿たれる。閃光が絶えると同時にヴィルムは即座に再生を始めた。

〈‐無駄だ。どれほどの威力を持とうと、我らを破壊することはできない‐〉

ヴィルムの言葉をゼロツーは無視する。角の先に展開されていたレンズ群が転写されるように増加。新しく生まれたレンズ群が回転しながらアパスを取り囲むように展開。さらに転写され続けながらも上方に留まったレンズ群は円を描く様に再配置された。頭部のヴェールが広げられ月面に突き立てられるように伸びる。ヴェールが触れるのと同時に所々で月の表面が剥離。浮き上がったそれは衛星のように月の周囲を廻りはじめる。剥離したアパスに匹敵するほどの塊は、それ一つ一つががアパスに搭載されていた自律兵装に似ていた。アパスの全ハッチが解放。アパスが腕を引き寄せる。月の衛星と化した巨大な自律兵器群がその砲身を地球へと向ける。

「ミツル、観測の用意を!」

「わかりました。ハチさん!」

ハチが、トリノスの演算能力を全て観測に回す。トリノス内の恒常設備が生命維持に必要な最低限まで落とされる。アパスが力をとき放つように腕を広げた。開放されたアパスのハッチから膨大な数のレーザー光が放射される。レーザーはアパスの周囲に展開されていたレンズ群によって強引に捻じ曲げられ鳥籠の欠損部に向かって奔る。それに呼応するように、巨大な自律兵器群からもレーザーが放たれ、上方に展開していたレンズ群がその全てを増幅させながら鳥籠の欠損部に向かい屈折させる。大量のレーザーが鳥籠の僅かな崩落部分一点に収束し、そこから鳥籠内部へ広がる。異なる角度を持たされた降り注ぐ光の線がヴィルムを貫き背面の鳥籠表面に接触、鳥籠に反発するように調節された光が乱反射。球形の鳥籠の中から抜け出せなくなった膨大な数のレーザー光が全方位からヴィルムに突き刺さりその再生速度を圧倒。僅かに動かされたレンズ群によって、レーザー光は点から線へと変化し、刃となったレーザーがヴィルムを構成する惑星を数え切れないほどの欠片に分断した。閃光の終結と同時に鳥籠周囲の叫竜達が観測データを送信。それを受けたトリノスが全力で演算を開始。取り巻いた超レーマン級の叫竜が処理能力を増大させる。トリノスから観測された分裂したヴィルムの再生過程がアパスへ送られモニターに表示される。アパスがそれを多数の矢印に変換。のたうつように折れ曲り進行する矢印の先が、ある一点に集中する。

「あそこだゼロツー」

ヒロが叫び、ゼロツーが頷く。

「叫竜の槍、喚起!」

ゼロツーの声に合わせ、アパスが持っている槍をゆっくりと回転させた。槍と柄の外装の一部が変形、内部の青い光が露出し伸長。蒼い焔の様な輝きは増加し、フリングホルニはアパスの全長を優に超える長大で優美な槍へと変貌した。

〈‐待て、やめろ、我らの消失は、この宇宙全ての知的生命がただ終焉を待つだけになるということ‐〉

ヴィルムがまるで初めて焦ったかのように訴えていた。ヒロが応える。

「確かに俺たちは愚かで、儚くて、不完全な存在かもしれない。でも、だからこそ誰かを知りたいと思う。側に居たいと思う。この選択が例え滅びへ向かうのだとしても、俺達はお前を拒絶する」

アパスは青い光と化した槍を逆手に持ち変え、その右手を大きく引き、月面から引き抜いた右足を一歩下げた。身体は僅かにひねられ上体が弓のようにのけ反る。一連の動作に合わせ浮かんでいた全てのレンズ群が形状を変化させ巨大な螺旋構造物を形成。内部の螺旋模様(ライフリング)に添うように紫電を放ちながら回転を開始する。それは、イチゴたちの目には月から塔が伸び上がる様に映った。

「いくよダーリン!!」

ヒロはゼロツーの呼吸に合わせて叫ぶ。アパスが身体のひねりを直しながら、上体を一気に起こし、右腕を全力で真上へ向かって振り抜く。暗い宇宙空間で青い光が爆発した。周囲に形成されていた巨大な擬似砲身がフリングホルニをさらに加速させながらその通過と共に崩壊。細かな硝子の粒子のようになって光を反射させて煌めく。時間にすれば刹那。イチゴ達には強い青光が網膜を刺した後で、ゆっくりと尾を引く様に崩壊していく砲身の煌めきがフリングホルニの軌跡のように見えた。青い光が途絶え一瞬宇宙が再び暗闇に包まれる。そして分割された惑星の奥、ヴィルム本体の中に一つ灯るように小さな青い光が生まれた。トリノスや、フランクスに取り付いていた叫竜たちが形を変え、遮光幕を形成。小さな青い灯は急速に膨れ上がる。爆発するようにヴィルム本体を包み込んで荒れる。そして先ほどの光とは比べ物にならないほどの膨大な光が、まるでその場所に新しい恒星が誕生したように溢れた。フランクスや、トリノスに取り付いた叫竜たちが形状を変化させ到達する光を減衰させていなければ、それを見るどころか、失明していただろう。叫竜の膜が光のほとんどを遮ってもなお明るく見えるその内部では膨大な数の光の手が助けを求めるように伸び、薄闇を引きずり込んでいる。時折生まれてはすぐに崩れる人の顔のような三つの穴が、青い光の手の隙間から浮き上がっては消えていく、喜びや、悲しみ、怒り、絶望、怨嗟、慈悲、愛、憎しみ、刻一刻と移り変わる様に浮かび上がる穴は感情を表しているかのように見えた。

〈‐統一された我々が、膨大な数の文明を取り込んだ我々が、こんな雑多な感情の残滓に侵食されて消えるというのか、ありえない。ありえ・・・‐〉

青い輝きが波のように広がり、ヴィルムを貪り食っていく、光の拡大は鳥籠の端までいきわたり、暫らく輝いた後、一気に収縮し初めから何もなかったかのように消えた。斜光膜を形成していた叫竜たちの身体が元に戻っていく。世界には静寂が満ちて、ヴィルムを構築していた惑星の欠片がそれぞれ勝手な方向へと動き始めた。

「勝った、のか?」

ゴローが茫然としたまま呟く。

「えっと、喜んでいいの?」

フトシが戸惑ったまま口にし、ゾロメが錯乱したように叫んだ。

「いやいや、どうすんだよ。オレ達の惑星が無くなっちまったぞ」

ミクは、目の前の光景についていけなくて何も言えなかった。

「このまま他の惑星に行くの?」

イクノが冷静に問う。

「ゼロツー、それでいい?」

イチゴはゼロツーに聞いた。アパスと繋がり叫竜の知識を全て手に入れたゼロツーの判断が必要不可欠だった。

「いや、アパスだけならともかく、叫竜たちに居住可能な惑星まで航行するだけの余力は無い。それにできたとして惑星間航行はとても時間がかかるんだ」

「じゃあ、どうしたら・・・」

「ちょっと待って」

ゼロツーが通信を遮断した。ゼロツーはそのまま接続も切ってアパスが待機状態に戻った。外部映像を映し出していたディスプレイが全て消え、非常灯の淡い光だけになる。なんの音も聞こえない。ヒロは世界が、ただその狭い場所だけになってしまったように感じた。

「どうかした?」

ヒロの言葉に何も答えずにゼロツーは振り返った。ヒロの目に映ったのは長く伸びた二本の角と桜色の髪の下から覗く赤い肌。

「ゼロツーそれ」

ゼロツーは自分の両手を眺めた。

「ああ、人間の皮が全部剥がれちゃったみたいだ」

じっと見つめている事に気付いたゼロツーが聞く

「やっぱり変かな?」

僅かな不安がその声には混ざっている。それに気付いたヒロが慌てて首を横に振る。

「ああ、ごめん。そんな事ないよ。ただ、なんか懐かしくて、初めてあった時のゼロツーみたいだ。小さな獣みたいで、可愛かった頃のゼロツー」

「可愛かった頃って今は?」

ゼロツーは膨れて見せる。

「今はとっても綺麗だ」

ゼロツーは少し照れたような顔をしながら、ヒロの額を指さした。

「ダーリンはツノが伸びちゃってる」

ヒロは額に手を伸ばして、生えていた小さな角が、今はゼロツーと同じような大きさになっている事に気付いた。

「ああ、本当だ」

その不思議な感覚に、ヒロは何度か触って確かめてみる。

「でも肌の色は変わってないよ。ちゃんと人間に見える」

励ますようなその言葉にヒロは微笑んだ。

「そんなのどっちだっていいんだ」

「・・・そっか」

それからゼロツーは身を乗り出すように顔を近づけた。

赤い腕がヒロの胸に伸びて、優しく触れる。

「ゼロツー?」

そのままゼロツーはもっと近づいて、唇は耳に触れそうなほど寄せられる。ヒロの耳元でゼロツーが囁く

「ねぇ、ダーリン逃げちゃおうか?二人だけなら別の惑星まで行ける」

どこか熱を帯びたような艶っぽい声だった。ねっとりと絡みつく狂気を含んだような。ヒロは目を閉じて、少しだけ笑う。

「他には?」

驚くこともなくまるで別の答えがある事を知っているように。

ゼロツーが離れていく、今度は真っ直ぐに向き合ってヒロの目を見つめる。口を開き紡ぎ出した声はいつものものに戻っていた。

「アパスを使って惑星を再構築することもできるよ。でもそれをしたら・・・たぶんもう戻ってこられない。それでも・・・」

「やろうゼロツー」

ゼロツーの問いかけの途中でヒロは言った。

「そう言うと思った」

ゼロツーが笑う。ヒロも笑みを返す。ゼロツーだって初めからそのつもりだった。少し前ならそんなことはしなかったかもしれない。ヒロだけを連れて他の惑星まで旅をしたかもしれない。でも今は違う。もうそんな選択肢はあり得ない。ヒロが悲しむからだけじゃない。今はもうゼロツー自身からも繋がりがのびている。自分の行動を制限する枷のようなそれは重たくて、でも温かい。

「ダーリン。あのね」

「なに?」

「ツノを合わせてくれないかな。それでも接続できると思うんだ。最後はダーリンの顔を見ていたいから」

「いいよ」

赤と、青の二つの角がゆっくりと近づいてそっと触れ合う。

 

***

 

《13部隊・イチゴ&ゴローside》

 

 アパスは月面をそっと蹴った。まるで湖面から飛び立つ鳥のように、上昇はやがて下降へと転じアパスはゆっくりと惑星の残骸へ向かって落ちていく。

「ゼロツー?」

突然動き出したアパスの行動が理解できないままイチゴは呼びかける。

通信は回復している。それでも映像は展開されず、音声通信のみとなっていた。

「アパスを使って惑星を再構築する。そのあとは叫竜たちに任せて」

通信回線から響いたのはヒロの声。

「なんだよそんなことできるなら、早く言えよ」

ゾロメは素直に喜んでいるが落ち着いたヒロの声に、イチゴは胸騒ぎを覚えた。

「ヒロとゼロツーはどうするの?」

それに対する答えは無い。

アパスは、落下速度を増す。

「ヒロ!」

残骸の周りで渦を巻き、鳥籠を形成していたマグマ燃料が、縮小。アパスを招く様に動き、かつての惑星の中心に向けて道を作る。

「・・・皆、ありがとう」

ヒロの声が通信で響く、アパスを取り巻いたマグマ燃料が黄金色に輝き、飛散した大気や水、惑星の欠片が吸い寄せられるように集まり、アパスの姿を覆い惑星を再構築し始めた。

「ゴロー、ヒロとゼロツーを助けに行くよ」

デルフィニウムの中でイチゴが叫ぶ。それは自殺行為だ。惑星が再形成されるただなかに飛び込んでは、デルフィニウムでは耐えられないだろう。それでも、ゴローだってそうしたかった。じっとしてはいられなかった。だが、デルフィニウムが実際にできた事は遠くで覆い隠されていくアパスに向かって手を伸ばす事だけだった。さっきまで、デルフィニウムの性能を拡張していた叫竜たちが沈黙していた。それどころか今は枷となっている。まるで此処に留まる事が彼らの意思であるかのように

「なんで、なんで、なんで、なんで」

半狂乱となったイチゴの声と共に、デルフィニウムは何度も手を伸ばす。ゴローは、イチゴを止めるために操縦席から引き剥がそうとした。けれど無理に引き剥がせば怪我をさせかねないほどにイチゴは操縦席にしがみ付いている。

「ごめん、ね、イ、チゴ・・・」

デルフィニウムの中に、ノイズにまみれたゼロツーの声が流れ、そこで通信が切れた。デルフォニウムの腕が垂れる。イチゴは嗚咽を隠そうとすることも無く泣いていた。ゴローにできたのは、その身体をただ、きつく抱きしめる事だけだった。今にも壊れてしまいそうなイチゴを留めるために、そして自分自身の無力さに潰されてしまわないために・・・

 

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