天才物理学者と筋肉バカの新世界より   作:alnas

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「仮面ライダービルドであり、天才物理学者である桐生戦兎は、悪魔と名乗る怪しい集団から話を聞くためにって、ちょっと。悪魔と名乗る集団ってなによ! これ書いたのは貴方ね? 悪意を感じるわ!」
「うおォッ!? ちょっと待って! 確かに書いたのは俺だけど、この段階だとそう書くのが当然っていうか、それよりいきなり攻撃しないでもらえますか!?」
「うふふ……私たちがまるでエセ悪魔みたいな書き方ですね…………どうしてあげようかしら」
「なんか増えたんですけど……」
「あら朱乃。これ見てちょうだい」
「ええ、リアス。よぉく見ましたわ。ですから私、新しい台本を用意してきたのよ」
「さすがね。悪魔との話し合いを始めた戦兎は、佐藤太郎と間違われ、調子に乗って彼の真似をし始める。そこには佐藤太郎最大の名言とも言える「夜は焼肉っしょ!」も含まれており――」
「すいませんでした! 台本を一部修正します!」
「ふふっ、まだまだありますわよ?」
「あら、本当ね。続き、どうしようかしら」
「「ふふふふふ……」」
「ちょ、これもう放送できないでしょ! とっとと本編いっちゃって! さ、さあどうなる第12話!」
「さて、それじゃあ続きをゆっくり読みましょうか」
「え?」


デビルとの語らい

 俺が精神的大ダメージから立ち直るのを待ってもらってから少しして。

 紅髪の子――リアスは慣れたもので、俺と万丈がシスターと出会ったことから、行きつけの喫茶店にその子を案内した際に堕天使に襲撃されたことを、一切質問せずに聞いてくれた。

 まずはこちらの話を聞くことに徹するらしい。まだ高校生だろうに、大したもんだよ。

「というわけで、俺たちを襲った堕天使について詳しく調べるために、手がかりのありそうな駒王町の教会まで行こうとして、その最中にキミたちと出会ったってわけだ」

「なるほど……ちなみに、神器についてはどこで?」

「行きつけの喫茶店が襲われたときに、その襲撃犯が言ってたらしい」

「そう。確かに、裏の事情を知らなければ神器についての知識がなくても不思議じゃないわね。土壇場で覚醒したのなら辻褄もあう、か」

 話を聞いていたリアスは何事かに納得したらしく、何度か小さく頷いている。

 ここまでの話を疑っている様子もなく、今回の事に対しても真面目に考えてくれているようだ。

「なにかわかったのか?」

「その前にひとつ確認させてちょうだい。貴方たちも堕天使と戦ったのよね。そして生き残った。そうよね?」

 話していれば突っ込まれるところなのは自覚していた。

 相手の態度次第で情報を開示するかしないかを決めればいいと思っていたが、果たして彼女たちはどうだろうか? まだ早いか? それとも素直にライダーシステムのことを話して更なる反応を見るべきか……。

「おう、戦ったぞ」

 難しいことは考えない万丈が、黙っていた俺に代わって答えてしまった。それはまだ続き、

「というか、あんぐらいなら素手で殴っても倒せるぞ」

 余計なことを口走った。

 バカの顔には「エボルトのことも前の世界のことも話してないぜ」とわかりやすいくらいに堂々と書いてある気がした。

「素手ぇ!?」

 案の定、目の前の彼女の後ろに控えていた一誠から驚きの声が上がった。

「あん? 悪魔なら堕天使とも普通に相手できんだろ?」

「さも当然のように話を進めるんじゃないよ」

 見てみなさいよ、一誠の顔を。ありえないって感じ出してるでしょうが。第一、人間は彼らにとって劣等種的立ち位置なら、対等かそれ以上の力を持っているだけで危険因子になりかねない。さすがにマスターまで巻き込んでいる状態で悪魔にまで敵対されるわけにはいかないぞ。

「イッセー、静かにしていてちょうだい」

「あ、はい! すいません!」

 などと思っていると、リアスは一誠を宥め、俺と万丈に向き直る。

「ごめんなさいね。彼はまだ力の扱いに慣れていないから、堕天使と戦える人を見て驚いているだけなの」

「いや、こっちこそバカが余計なことを言って悪かった」

「おい、バカってなんだよ戦兎!」

「おまえのことだよ。いいからちょっと黙ってなさいよ。今度は彼女からの質問に答える時間なんだから」

 仕方ねえなぁ、とリアスへと視線を向ける万丈。俺もリアスを見ようとしたのだが、白髪の少女がまだ俺を見ていたことが気になり耳を澄ますと、

「本名はセント? いえ、佐藤太郎という平凡な名前をあえてつけることで親しみやすさと覚えやすさを優先させて、本名であるセントという独特な名前よりもファンを優先したということでしょうか……いまの冷静な姿といい、もしかしてお調子者のあの姿は偽りで、これが本来なんでしょうか? 興味深いです」

 お、おう……分析されてるな。一見無表情に見えるが、声に熱があるしもしかしたら表情豊かなのかもしれない。

 とりあえず、いい具合に勘違いされているなら好都合――ということにしておくか。

「さて、貴方たちは堕天使と戦える人間だということで、なにかしらの力を持っているのは確定ね。仮に神器だとしたら、そのものを理解できていないとわからないだろうし、まずはそちらの話からしましょうか」

「ああ、頼む」

「ええ。まずは見せた方が早いわね。祐斗」

 リアスが控えているもう一人の男子――木場祐斗と名乗っていた少年を呼ぶ。

「はい、部長」

「貴方の神器を見せてあげてちょうだい」

「わかりました。けれど、いいんですか? 失礼を承知で言いますけど、まだこの人たちのことを僕らはなにも知りません。知っているのは一面のみで、裏についての関係性なんかも――」

「いいのよ。今回の件、彼らは私の管理態勢がもたらした被害者で、ひいては悪魔側の失態故のことだもの。それに、見ず知らずの女の子を助けるようなお人好し、私は放っておけないわ」

 そこまで言うと、リアスは改めて祐斗を見た。彼の表情は柔らかく、そしてひとつ頷いてみせた。

「はい、部長。お二人も、失礼なことを言ってすいませんでした。代わりと言ってはなんですが、精一杯期待に応えますよ」

「だいじょうぶだ、気にしないでくれ」

「では、お言葉に甘えて」

 ひとつ笑った祐斗は俺みたいにイケメンスマイルを浮かべると手を前にかざした。

「いまから祐斗が神器の力を見せてくれるわ」

 リアスからはそう言われたので注意深く見ておこう。

「では、いきます。魔剣創造」

 一瞬の発光の後、彼の右手には西洋剣が握られていた。

 いつの間に……。

「どこから出したんだよ! 全然わからなかったぞ!?」

 隣で万丈が驚いているが、まさにその通りだ。

 俺も一切見えなかった。万丈でさえ見えないのだから、どこかから取り出したっていうのは考え難い。

「能力、か? 堕天使も光の槍を作り出していたし、そんな感じか?」

「近いと言えば近いですね。これは確かに、僕が作った剣です」

 言ったそばから、たったいま作った剣と似た剣をもう一本作り出す祐斗。それが何度か続き、彼の足元に数本の剣が置かれていった。

 作った剣。

 この場で作り出したのなら、それは人の身には余る力だ。――そうか、もしかして。

「それが神器ってことか?」

「はい。これは数ある神器の中のひとつです」

「他にも色々あるのか?」

「僕らでは把握しきれていないのが現状ですね。神器とは、特定の人間にのみ宿る、規格外の力。たとえば、歴史上に残る人物の多くがその神器所有者だと言われています。これだけの力があると、神器の力を使って歴史に名を残した人がいても不思議じゃない」

 人にのみ宿る力か。そして祐斗の剣だけでなく、多くの種類がある。

 これは堕天使が間違えてもおかしくない。そうか、だからマスターに対しても聞いたのか。

「現在でも神器を宿す人はいるのよ。世界的に活躍している人や、裏で暗躍する人……使い方は様々だけど、良くも悪くも人の世界に陰で浸透している力なの」

 祐斗の説明に、リアスが補足として現在の状況を教えてくれる。

「ん? つまり、人が戦うための力だけじゃないってことか?」

「大半は、人間社会の中でしか機能しないものばかりなの。けれど、中には私たち悪魔や堕天使にも対抗できるかそれ以上の力を持った神器が存在する。ここにいる祐斗やイッセーもその中の一人」

「なるほど。だけど変だ。神器が人の身にのみ宿るなら、祐斗と一誠が神器を持っているのはおかしい」

「……そうね。そこも説明するわ。なにより、今回の堕天使の一件の説明をするためには、しなければいけない話だもの。神器のことも含めてね」

 最初から話すつもりだったのか? それとも已む無くか?

 どちらにしろ話してもらえるなら聞いておかないとな。なにかカラクリがありそうだし?

「まず、私はこの町を管理している悪魔なの。現在、悪魔と堕天使の仲は良くなくてね。お互いに様子を見て、過干渉はしないはずだった。そこに今回、危険な神器所有者を殺すために、堕天使が私に一言もなく駒王町に侵入した」

「それが俺とこいつが遭遇した堕天使ってことか」

「恐らくね。本来なら、私から上に報告したことで今頃堕天使側にも話は伝わっていると思うのだけれど……それでも活動しているということは独断でのことか、組織から抜けてきた堕天使なのか……ごめんなさい、これは私の愚痴。貴方たちには関係のないことだったわ」

 異形の世界にも面倒な事情があるのか。元の世界のような、北都、東都、西都のような勢力争いに近いものが繰り広げられているのかもな。

「それはいいけどよ、それがどう関係するってんだ?」

 軽く流した万丈が質問する。これは、俺たちの身に起きたことと、その話がどう関係するかということだろう。

「神器所有者を狙っている、というところよ。実はね、イッセーも堕天使に狙われた一人なの」

「なに?」

「イッセーもその身に宿す神器のせいで堕天使に害されたのよ。問題はそこからで、この子は堕天使に襲われてね。死ぬ間際に私を召喚して、貴方たちみたいに願ったの。だから私はイッセーの命を救った。悪魔として、私の仲間として生まれ変わらせたのよ」

「生まれ変わらせた……?」

「ええ。彼は人から悪魔になったの」

 そうした技術があるってことか。火星人や星を狩るような存在がいるくらいだし、新世界にもそんな方法があってもいいのだろう。結果的に、一誠は死ぬことなく生き残れたわけだしな。深く聞かなくてもいいだろう。必要になれば、説明してもらうしかないけど。

 少なくとも、彼女たちは人の敵ではないみたいだしな。

「一誠も神器の件で狙われたってことは、シスターのアーシアも神器関連で狙われたと見て間違いないか」

「その線が尤もね。けれど、駒王町から離れた相手まで狙うかしら? なにか他の狙いがありそうね。少なくとも、イッセーを襲ったときとは違う感じね」

 話を聞いていくと、一誠を襲ったときもそれなりに計画を練っていたらしい。悪魔になってからも襲撃を受けたが、そのときはリアスが出向くと撤退したとか。

 けど、マスターと敵対した堕天使は最後まで戦った。もちろん、人間と侮った部分もあるだろうけど、それだけシスターに拘ったということでもある。俺の計算が間違っていなければ、そういうことになるわけだが。

「アーシアを堕天使の奴らが恐れているか、利用しているってのか?」

「そうだ。万丈も聞いただろ、怪我を治す神器……どうあっても、利用価値が高すぎる。シスターの様子からしても特にデメリットはない。それでいて他者の怪我を完全に治せるとなれば、利用したい勢力がいてもおかしいことじゃない」

「くそっ……気に入らねえ!」

 万丈がいまにもnascitaに戻りそうになるが、それを抑えてこの場に留まらせる。安易に話したのは失敗だったか?

「いまはマスターに任せて、俺たちは堕天使の計画を探ることが優先だ。狙いがわかれば戦い方はある。そうだろ?」

「――ああ。わかってる」

 万丈は煎れてもらった紅茶を飲みながら自分に言い聞かせるように目を瞑る。これなら平気そうだ。

 それにしても、随分詳しく話してくれたな。正直予想外なんだけど。

「ここまで話して良かったのか? 自分で言うのもなんだけど、俺たちみたいな怪しい二人組の話を真に受けるのは危ないと思うんだが」

「あら、そうかしら? 私はそうは思わなかったわ。第一、私の可愛い仲間のために面白いことをしてくれるような人が私たちを害するとは思えなかったもの。それより、ごめんなさい。私の管理態勢の甘さからこんなことに巻き込んでしまって。これでも人に被害が出ないようにと思ってやってきたのだけれど、難しいのね、なにかを守ることって」

「……そう、だな。守るのって、難しいんだ。争いって止められなくてさ。その元凶も止められなくて。自分たちの知らないところで、気づいたら誰かが泣いている。そんなことばっかりだよ。だから、見える全部を救いたい。手を伸ばして、自分の届く範囲全部、救いたいって思っちまうんだ。だから、何度躓いても立ち上がる。そして救えるまで、何度でも」

「貴方は……」

「悪い、なんでもないんだ。ただ、守れなくて後悔できるなら、きっとだいじょうぶ。怖いのは、それを当然のように受け入れて、誰かが傷つくこと、傷つけることを平気になることだから」

「――そう。そうね。ありがとう。なら、やっぱりこの件は私が解決するべき問題だわ。貴方たちには悪いけれど、この堕天使の騒ぎ、もう結構な情報を掴んでいるの。この先は私たちに任せてもらえないかしら?」

 そう来たか。

 慰めたつもりが、火までつけちまったか。

「俺たちも事の真相を知りたいんだが、動くなら俺たちも混ぜてはもらえないか?」

「わかったわ」

 了承はやいな!?

「部長、よろしいのですか?」

「さすがにそれはどうでしょう?」

 祐斗と巫女服の少女からは即座に声が上がる。

 二人からは、俺たちがついてくることで傷つくことがないかという心配が先立って見える。

「問題ないわよ、たぶん。戦うだけの力は持っていそうだしね」

「おう、問題ねえよ。堕天使なんて俺の拳で蹴散らしてやるよ!」

 そこで万丈からも気合の入った一言。

 一誠なんかは「万丈選手スゲェ! くっ、俺もいつかはあんな風に……」なんて羨望の眼差しまで向けてるがだいじょうぶだろうか? こいつがバカだってことは新世界では知れ渡っているんだろうか?

「っていうかよ、俺たちは依頼を受けてもらったんだよな? なにを要求すんだ?」

 なんて思っていたら万丈が対価について聞いてるじゃないですかー……。

「依頼のことかしら? それなら、もうもらってるわよ?」

「「はい?」」

 リアスの答えに、俺と万丈は揃って間抜けな声を漏らしてしまった。

「こちらにも来ていなかった情報が回ってきたし、こちらが流した情報以上に価値があったわ。それに、貴方のアレが面白かったから、依頼についてはもうなにも望まないわ。初回だしサービスもしないといけないしね」

 と、いい笑顔で言うのだから、性質が悪い。

 並の男ならこの笑顔だけで堕ちていることだろう。悪魔と名乗るだけあって、美男美女の揃いというのはズルいことだ。

「おー、マジかよ! ありがとな!」

「そういうことならありがたく。助かるよ」

 払えるような物は持っていないしな。助かった。

「ふふっ、いいのよ。じゃあ、行きましょうか。堕天使の皆様にちょっとお話をしにね」

 

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