「ああ! やっぱりかよ! おい戦兎、どうなってんだよこれ!」
「うるっさいなぁ、なんだよ。いまあらすじの途中なんだけど?」
「これだよこれ! 俺たちまだ一回しか変身してないみたいだぞ!? いいのか? 俺たちメインライダーだぞ!」
「いや、そんなはずは……うわ、本当だ。最後に変身したの5話だし、その前も一回もビルドになってない!」
「な、これやばいだろ!?」
「いや、落ち着け万丈。これから悪魔のみなさんと教会に行く予定だから、そこで変身しよう! というか、変身しないともう出番ないぞ!」
「よっしゃ任せろ。最高の変身を見せてやるぜ!」
「というわけで、この勢いのまま行くぞ、第13話!」
「絶対変身してやるからな!」
「フラグ立てるんじゃないよ……」
俺たちが訪ねたこともあってか、これから教会へ向かうというリアスについていくことになった俺と万丈。
いくつかの打ち合わせを終えてから、夜になるのを待って駒王学園から教会へと行くことになった。
「悪魔ってのはもっとやべー奴らかと思ってたけど、案外いい奴らだな」
隣を歩く万丈がそうこぼすが、彼女たちは万丈が言ったようにいい奴らなんだろう。けど、これが悪魔全体の対応かと問われれば、そうとは思えない。
リアスたちは若い上に、一誠は元人間ときている。だからまだ、人と接する時間も長いことから人を見下さずに済んでいるだけの気もするんだよな。正しい意味で共存していくには、まだ障害も多そうだ。
でもそれは、悪魔側に人間と共存する意思があるかどうか次第、か……。依然劣等種である人間側に決定権はないんだろうし?
「いや……悪魔や堕天使がいるなら、悪魔祓いや陰陽師がいてもおかしくないのか?」
「あら、いるわよ?」
「いるのかよ……」
俺の独り言に律儀に答えてくれたリアスは、さも当然と言った様子。彼女たちの中では常識なのか。
オカルトちっくな世界になっちゃってまあ。前は科学と神秘の世界だったのに、どうやら新世界で幅を利かせているのは科学ではないようだ。
ショックか? ちょっとショックだな。でも、科学の進歩がないわけじゃない。当然だ、葛城親子がいるんだからな。父さんとあいつがいるなら、遠からず、大きな功績を残すだろうさ。
「なあ、エクソシストもいんのか?」
「ええ、いるわよ。私たちとしては、会いたくないけれどね。とは言え、これから行く教会にもきっといるでしょうね」
なんか、聞けばなんでも言いそうな雰囲気だな。万丈は気にせず聞いていくが、とてもじゃないけど全部を聞こうとは思えない。
これから会うってのはつまり、教会側、ひいては堕天使側の人員ってことだしな。
「はあ……結局、人間同士での争いも変わらないわけか」
どこに属していようと、人であることには変わりない。ついでに言えば、一誠たちも元人間ならばそこになにも感じないわけじゃないはずだ。
人と人の争い、人と悪魔、堕天使の争い。
簡単には無くせないんだろうな。聞いてみれば、神器持ちの人間を殺すのだって必要に駆られての面が強いらしい。
そうした事に関してはどこの勢力も目を瞑っているのだとか。
これはいま考えるだけ無駄だな。
「…………」
「あらあら、小猫ちゃんはよっぽど気に入ったんですね」
いま考えるのは、リアスを除く女性陣の視線だな。
万丈は万丈で一誠と祐斗に捕まってるみたいだし? お互いに話し相手になるしかないんだろうか?
「万丈選手はなんであんなに強いんすか?」
「あん? そうだな……やっぱ筋肉じゃねーか?」
「筋肉!」
「おう、筋肉だ!」
ちょっと心配になる会話が始まってるんですけど? あいつ筋肉しか言うことないのかよ。
こっちは放っておいていいかな。
「俺、将来ハーレムを目指してるんですけど、いいっすよね、ハーレム!」
「そうか? 悪い、俺にはわかんねえな」
そっかー、ハーレムの意味は知ってるのか。知っているのも興味ないことに対しても安心だな。
しかし一誠はハーレム目指してんのか。最近の男子高校生ってそういうものなのかね? ちょっと変わってるというか、ある意味男の夢そのものを見ているというか。
「俺、これから女の子たちを助けるし、仲間だって守りたいんです! それで助けた女の子たちから、『きゃー、一誠さま〜』って感じで感謝されたりとか、『かっこいい〜』って言ってもらいたじゃないですか!」
「お、おう?」
万丈が困惑してる……。
「女の子たちのピンチに颯爽と駆けつけて助けるのって、すっげえ正義の味方みたいじゃないですか! 助けた子からもイロイロしてもらえますし」
正義……。
「なあ、一誠。俺にはおまえの夢についてはよくわかんねえけどよ、これだけは言わせてもらうぞ」
「はい? なんですか!」
「ごめんなさい、話はそこまでにしてちょうだい。この先はもう、堕天使側の教会だから」
二人の会話に耳を傾けていたが、リアスから声がかかる。
何人もで移動していると時間の進みが早く感じるな。
「夜の旧校舎もですけど、夜の教会ってのもちょっと不気味ですね」
一誠が感想を漏らすが、不気味ってのはわかるな。
明かりも灯っていなし、木々のざわめきもそれを助長させてる。夜は近づきたくないってのが一般的な意見だろうな。
「さて。おそらく教会の中には堕天使たちの部下もいるでしょう。祐斗、持って来ているかしら?」
「はい、部長」
祐斗が取り出したのは、教会の図面。事前に見取り図を用意していたのか。
「用意がいいな」
「ええ、みんな優秀だもの。それにね、貴方たちが来ていなくても、近いうちに教会には行くことになっていたでしょうから、事前準備は怠っていなかっただけよ」
どうやら、リアスたちは彼女を中心によく回っているみたいだ。リーダーからの命令をうまくこなし、多分、期待以上のことをやってのけるのだろう。信頼関係があるのも頷ける。
「おまえら、いいチームだな」
万丈も俺と同じことを思ったのか、リアスたちに笑顔を向けていた。
「あら、ありがとう。そう言われるとみんなを褒められたようで嬉しいわ」
つられてか、本当にか。リアスの顔にも笑顔が浮かぶ。
みんなを褒められたようで、か。よっぽど仲間想いなんだな。
「さあ、話を戻すわよ。この手の堕天使の元には、少なくない確率ではぐれ悪魔祓いがいるはずよ」
「はぐれ?」
「ええ。理由は色々だけど、神から見放された者、禁忌を犯した者と、敬虔な信徒でなくなった人たちの集まりよ」
「これで行くと、やはり怪しいのは聖堂ですね」
祐斗が図面の一点を差しながら説明してくれる。
「この手の組織は決まって聖堂に細工を施しているんです。聖堂の地下で怪しげな儀式を行うために」
「なんでだ?」
「これまで敬ってきた聖なる場所。そこを否定することで自己満足を得たり、神への冒涜に酔いしれるためです。そこに至るまでの過程で愛していた者程、捨てられたときの憎悪は凄まじいんですよ」
だからわざと聖堂の地下で邪悪な行いをするわけか。
心がざわつくのを感じる。きっと、俺とは違ってなにもかも覚えているからこそ芽生える気持ちなんだろう。俺だって、一歩間違えばこの世界で一人そうなっていた可能性だってあったんだからな。
それでも――。
「なに見てんだよ」
こいつがいるから、それだけで救われていたんだな。
「なんでもねーよ。それより、図面は頭に入ったんだろうな?」
「はあ? 入るわけねえだろ。どうやったら紙が頭ん中に入るんだよ!」
「悪い、言い方が悪かったな。記憶できたか?」
「できてねえ!」
「威張って言うんじゃないよ。これくらい覚えなさいよ」
「おまえが代わりに覚えとけよ!」
「貴方たち、ちょっと黙っていてちょうだい!」
このままだと終わらないと判断されたのか、リアスに強制的に止められた。
「まったく……貴方たち、相当仲がいいのね。祐斗、続きをお願いできる?」
「はい、部長。入り口から聖堂までは目と鼻の位置。一気に行けると思います。問題は聖堂の中へ入り、地下への入り口を探すことと、待ち受けているだろう刺客を倒せるかどうか……」
「そうね。ありがとう、祐斗。いくつもの報告から考えていくと、堕天使はまだ何人か残っていそうね。裏から逃げられてもつまらないから、そちらにも人を配置しましょうか。裏は――私と朱乃で行くわ」
「え? 俺たち3人で前から突っ込むんすか?」
一誠の不安そうな声が漏れるが、リアスは一誠ではなく俺と万丈へと目を向けた。
「あら、3人ではなく5人よ。貴方たちも戦力と数えていいんでしょう?」
「――抜け目ないな。ああ、構わない。もしものときは俺と万丈でどうにかするしな」
「おう、こいつらまとめて任せとけ!」
「ふふっ、頼もしいわね。なら任せるわ。祐斗も、それでいいかしら?」
「はい、問題ありません。敵意があるとわかればその場で切り捨てます」
物騒だな、おい。
いや、ここまで堂々と言うのはある意味信頼の証か? 裏切るつもりは毛頭ないけど、こっちも注意しておきますか。
「じゃあ、行きますか」
「だな。これ以上動かねえでいるのも疲れるしよ」
「も、もう行くんすか?」
「あ? 決まってんだろ。こっちは元々ここに来んのが目的だったんだしよ」
一誠の質問に万丈が当然だと答える。
随分遠回りしたけど、教会に行かないと終われないからな。
「行くか」
「ああ」
「あの、二人はどうして人よりも強い堕天使と戦うんですか?」
俺たちが歩き出そうとしたとき、一誠がまた口を開く。その質問の答えは、一誠だけじゃなく、これから別行動を取ろうとしているリアスたちも聞くために残っていた。
みんながみんな、俺たちが答えるのを待っている。
どうして戦うか。そんなの変わらない。たとえ世界が変わっても、俺たち仮面ライダーが戦う理由なんてひとつだ。
「決まってるだろ。愛と平和のためだ」
「愛と、平和のため?」
「おう、俺たちはそのために戦ってんだ。まあ、本当は戦わねえで済むのが一番いいんだけどな」
そうもいかないからな。だから、誰もが笑って過ごせる明日のために、この力を使う。
「なんか、かっこいいっすね! なら俺は、ハーレム王の夢のために、女の子たちに愛される正義のヒーローになります!」
「正義、か……」
万丈がなにかを思い出すように、視線を遠くへやる。
「はい! 危険な目に遭ってる女の子を助けてその子からお礼をされるのって、男なら一度は夢見るシチュエーションじゃないですか! やっぱり憧れちゃいますって!」
「女の子を助けるのは、惚れてもらうためか?」
ハーレム王を目指すと公言している以上、そういうことだろう。
「え? はい、もちろんですよ!」
「そっか。確かに、かっこよく登場して、颯爽と助けられたら、女の子は惚れるのかもな」
「ですよね! 俺もそう思います!」
「でもな、正義のヒーローを目指すなら、それは間違ってる」
過去、まだ会って間もない頃にあいつに言った。殺人犯に仕立て上げられた万丈が、無罪を立証してもらうために鍋島の家族を助けに行こうとしていたとき。
「ここからは俺に任せろ」
肩を叩いて前に出る万丈。ああ、適任なんだろうな。エボルトとの最後の戦いのときから。いや、もっと前から、おまえはとっくにヒーローだったんだから。
「いいか、一誠。おまえの夢は夢で、きっとそのままでいいんだろうよ。でもな、誰かを助けることで見返りを期待したら、それは正義とは言わねえぞ。俺も過去、そうして助けられて、いまも助けられてる」
そう言いながら万丈が一度俺に視線を向けてから、改めて一誠に向き直る。
「誰かを助けるのに理由なんかねえんだ。おまえが本当に正義のヒーローになるってんなら、きっとわかるときがくる。そんときが来たら、間違えんなよ。――自分がなんのために戦うのかをな」
そうか。確かあいつ、クローズになってから一時期、戦う理由を探していたっけ。詳しく聞かなかったけど、その理由を持てたのは、他の世界の仮面ライダーたち、エグゼイドたちに世話になったからなのかもな。
俺と万丈の言葉を聞いていた面々は、様々な表情を浮かべていた。
俯く者、驚く者、関心する者、理解できていない者、冷たい顔を覗かせる者。
「深くは、聞かないわ。けど、いずれ聞きたいわね。でもそれは、この一件を片付けてからよ」
リアスの一言に、全員が緊張感を持った姿へと戻る。
「さあ、行きましょうか。身の程を知らない堕天使には即刻お帰りいただきましょう」
「「「「はい、部長!」」」」
こうして二手に分かれた俺たちは、教会へと正面から乗り込んでいった。