「なあ、仮面ライダービルドを名乗ってるのはいいけどよ、俺たち全然変身してねえよな? おまえの天才物理学者と同じくらい影薄くなってねえか?」
「んなわけないでしょうが! 天才物理学者も、仮面ライダービルドも、どっちも知れ渡ってるに決まってるでしょ! だいたい、これまで本人が強化アイテムを作ってきた仮面ライダーがどれだけいると思ってるんだよ。周りの仮面ライダー含めて強化アイテムやベルト作ってきたこの天っ才物理学者の影が薄いわけないでしょうが! ほら、続き読んだ読んだ」
「……しょうがねえな。悪魔の一人である兵藤一誠との問いに答えつつ、様々な表情を覗かせる悪魔たち。だが、そんな語らいも終わりを告げ、ついに戦兎たちは教会へと歩を進める」
「今回こそ、かっこいい俺たちを見せないとな」
「ああ、たまには見せてやらねえとおまえがビルドだって忘れらちまうもんな。ってなわけで、どうなる第14話!」
教会を正面から攻略するメンバーは、全部で5人。
逃口を塞ぐ役目がもう2人。
計7人での堕天使及びその部下の人間の制圧になるわけだ。
「なんか、前にファウストと戦ったときみたいだな」
一誠たちが打ち合わせをしている間、待っていると隣にいる万丈が話しかけてきた。
もう随分前に感じるそれは、俺とこいつが乗り込んだときの話だろう。
「確かに、ちょっと雰囲気似てるよな。怪しい実験をしているかもしれない点も含めてな」
「おう? ああ、そうだな」
「おまえ、絶対忘れてただろ……まあ、いいけどさ」
別に、もう終わったことだし、組織自体もないしな。ある程度覚えているなら問題ないだろ。
「そういや、俺たちの話を49の話にするってやつだけどよ。あんときの話が49の話の中に入ってなかったのは良かったのか?」
「あんとき?」
「なんだよ、本当に忘れてんのか? ほら、エボルトの仲間が動いたときだよ」
「ああ、あのときな……あれ、みんなから逃げるの大変だったんだよなぁ」
「いや、おまえの感想が聞きたいわけじゃなくてだな」
なんだよ、ちょっとくらい人の話に乗りなさいよまったく。
「ちなみに言っておくと、忘れてたわけじゃない。あれは49の話とは別の話でやりたいんだよな。もっと人気出てきたら、映画なんてどうよ?」
「いや、色々大変じゃねえか?」
「いいんだよ、それで。あんときの話は別枠でやるの」
49のエピソードにすると釈足らないし、エボルトとの戦いとは別の戦いだったしな。あれはあれで、もうひとつの俺たちの話になるんだろう。
「ん? だったらよ、他の世界の仮面ライダーたちとの話も別枠ってやつでやれるんじゃねえか?」
「お、いいなそれ。あのときの話も加えることにするか」
「まさに、俺たちの歩みって感じだな!」
そうだよな。いまみたいに戦わないといけないときもあれば、楽しく過ごせるときだって絶対にある。その明日のために、いっちょ頑張るとしますか。
向こうも準備は終わったようで、祐斗が近づいてくる。
「おおまかな役割分担が決まりました。それで、できれば堕天使の中のある人物だけは、僕たちの方で――とりわけ、兵藤くんにどうしても譲って欲しい相手がいるのですが、いいですか?」
「因縁か?」
「そのようなものです。お二人には申し訳有りませんが、僕はこれを、兵藤くんが超えるべきモノだと思っています」
「そういうことなら任せる。俺と万丈は原因の解明と、シスターの安全が守れるなら問題ない」
「ありがとうございます。それでは、行きましょうか」
お互いに不利益を被らないために。
それさえできていれば、俺たちが争うこともないだろう。問題なのはむしろ、一誠の戦う意志なんじゃないかと思うけど、こればっかりは周りに言われるより本人が見つけるものだしな。
「入口を潜った時点で、堕天使は僕たちの侵入を察知できます。ここから先は十分気をつけて!」
前半は俺たちに、後半は全員に聞こえるように教えてくれる祐斗。もとより、油断するつもりはない。
全員で入口を通り抜け、一気に聖堂まで走る。
「後戻りはできないな……」
不安そうな声が一誠から漏れる。不安なのは当然だろう。急に戦うなんて、普通はできない。いざってときは俺と万丈でなんとかしてやらないとな。
周りを見渡せば、長椅子と祭壇といった普通のよく知る聖堂だ。外は暗かったが、中はロウソクの灯りに加え、電気の灯りが内部を照らし出していた。予想していたものよりもあまりに普通だ。
普通じゃないのは、十字架に磔になっている聖人の彫刻。その破壊された頭部くらいのものだろう。つまりここに居るのは聞いていた通りの人たち、というわけだな。
「おんやぁ? まさかまさか! そこにいるのはもしかしなくても悪魔くんじゃあーりませんかぁ?」
賑やかな、されど明確な敵意の籠った声が聖堂内に響く。
「初対面!? 初対面だねはじめましてぇ! 俺は神父、少年神父〜。どの悪魔くんも知らない顔だねぇ、当然だね! 俺ってば強いから二度見る悪魔くんとかいませんし?」
「なんだよ、あいつ……」
一誠が一歩後ずさり、祐斗と小猫は警戒して即座に構えをとる。
万丈はリラックスしたもので、「あいつ、さてはバカだな!」と神父と名乗った白髪の少年を指差していた。人を指差すのはやめなさいよ。あと、絶対おまえより賢いよ、あいつ。
「悪魔に対する殺気……そうか、キミが最近僕たちの契約者を殺して回っていた犯人か!」
「……同じ人間でも殺すなんて、最低です」
祐斗と小猫の言葉からわかる通り、やはり悪魔側とは敵対している人物のようだ。
「イエス、イエス! 俺が殺って回ってましたとさ! でも仕方ないよね? 悪魔を呼び出してる常習犯とか、もう大罪でしょ? したら殺すしかない――うおっ!?」
べらべらと話していた白髪が驚いたように後ろに下がった。瞬間、彼のいた場所を何発もの攻撃が撃ち抜いた。
当然だな。
俺がホークガトリンガーで撃ち抜いたんだから。元から牽制のつもりだったけど、見事に躱された。
だがそんなことは関係ない!
「人を、殺したんだな」
「おまえ、自分がなにしたかわかってんのか!」
俺と万丈が同時に前に出る。
「おおっとぉ!? なんですか、なんですかー? 悪魔だけかと思ったら人間もいるのねぇ。おかしいねぇ、変だねぇ。悪魔とつるんでるとか、俺的殺したいランキング上位っすよお兄さん方!」
「知るかよ! こいつらのことなんも知らねえくせに、勝手なこと言ってんじゃねえよ!」
「まあ、俺たちも知ったのは今日だけどな」
万丈がフルボトルを取り出したので、俺も続いて両手にひとつずつフルボトルを握る。
「なんだ、あんたたちもなにも知らない、短い関係じゃないですか」
冷めた目で俺たちを睨んでくるが、その程度の殺気に今更怯むことは許されない。それから、ひとつ訂正させてもらおう。
「いいや、それは違う。こいつら全員――」
「――昼からの長い付き合いだ!」
腰に巻いていたビルドドライバーにボトルを差し込む。
『ラビット!』『タンク!』
『ベストマッチ!』
万丈はグレートクローズドラゴンにボトルを――差し込まずに右手にドラゴンフルボトルを握って上下に振り出した!?
「おま、え? ちょっと……ウソだろ!?」
しかし、俺の言葉なんてなんのその。
「アーシアを利用しようとした堕天使はどこにいんだ!」
「んー? アーシア……ああ、あのクソ上司さまの儀式に使うって奴か。それならそこの祭壇の下に地下への階段が隠されてございます。そこで儀式をおこなうって張り切ってましたぜ」
祭壇を指しながら、拍子抜けするほどあっさりと暴露する。
「よし、おまえらは先に行け! ここは俺と戦兎でどうにかする!」
「わかりました! 僕たちは先に行きます!」
「……お任せします」
「え、ちょっと二人とも!? いいのかよ! ったく、もう!」
三者三様の反応を見せながら、祭壇の隠し階段へと向かっていく三人。
「あ〜らら、こいつは大変だ。まさか悪魔が教会に乗り込んできて、なおかつ地下に行ってしまうなんて! 僕ちん大失態! でもいっか、こっちはこっちで面白いことになってきましたし? さあ、惨たらしくズタボロになって泣きすがってちょ! せいぜい俺のためになれってんだよォッ!!」
一気に激昂した白髪神父が懐から拳銃と剣の柄のようなものを取り出す。
柄のような物の先からは光の刃が出現した。
「先行くぞ!」
変身しない万丈は前のように生身で飛び出していく。
「ああ、もう無茶をする!」
高速でビルドドライバーのレバーを回す。
その都度、ドライバーから伸びたパイプによってスナップライドビルダーが形成され、俺を挟むようにフルボトルの成分が形になっていく。
『Are you ready?』
「変身!」
スナップライドビルダーが俺を挟み込むと、形成されていたハーフボディ同士が結合される。
『鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!』
「さあ、実験を始めようか」
先に行ってしまった万丈を追う形で、万丈と白髪神父に向けて走り出し、
「ぐぼぉ!?」
その頃には万丈の拳が神父の顔面を捉えていて。
「うぉらあっ!!」
その膂力によって壁へと吹き飛んだ。
これ、だいじょうぶかあいつ。言葉から察するに悪魔でも堕天使でもなく人間だよな? そんなのが万丈みたいな奴に殴られたら体がもたないだろ……。
「前々から生身で戦ってきたとは言え、これはないだろ……俺の出番が減るでしょうが」
壁が崩れ、神父のいただろう場所に瓦礫が降り注ぐ。
「おい、だいじょうぶかよ!」
万丈が気になったのか、自分が吹き飛ばした相手に向かって駆け出していった。
瓦礫に埋もれた彼が起き上がる気配は、いまはまだない――。