天才物理学者と筋肉バカの新世界より   作:alnas

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「天才物理学者である桐生戦兎は、不本意なことにこの世界唯一の相棒である万丈龍我と共に、新世界での暮らしについて考えていた」
「おい、不本意ってなんだよ!」
「不本意。自分の本当の気持ちとは違う様って意味だよ。これでまた賢くなったな」
「言葉の意味を聞いたんじゃねえよ! なんで俺が相棒なのが不本意なのかって聞いたんだよ!」
「それはほら、あれだよ」
「誤魔化すなよ!」
「そんなことより、あらすじ紹介始めるぞ。nascitaでの一時を楽しんだ戦兎と万丈は、平和になった日本の各地の周り、前の世界での仲間たちの姿を確認していた。そんなとき、万丈がある町に興味を示す」
「その町とは、えっと……こまおう? 町? でいいのか、これ」
「読めないならナレーション俺と変わりなさいよ。その町とは、駒王町という名前の町で、戦兎と万丈は、そこでひとつの」
「ああ、これ『くおう』って読むのか!」
「ちょっと黙ってなさいよ。まだ途中なんだから」
「よし、あとは任せろ! そこでひとつの出会いが待っていた! さあ、どうなる第2話!」
「いいとこだけ持ってくなよ……俺主役なのに…………」


金色のシスター

 前の世界では天才物理学者として、パンドラボックスの解析をしたり仮面ライダーをしていた俺も、いまの新世界では愛と平和を謳う一般人。

 ついでに万丈のおまけつきときた。

 いまのところなにかに困っているわけでもないが、戸惑っていないわけじゃない。

 前の世界との相違点をハッキリさせないと、どうにも安心しきれない自分がいるようだ。

「戦兎、おまえもカップ麺食う?」

「んー、おう」

 万丈が自分の物と、ついでに俺の分にもお湯を注いでいく。

 うん、あれだな。まず第一の問題として食生活かな。俺と万丈だと簡単な物を俺が作るか、万丈がカップ麺作るくらいしかできないのでいずれ食生活からして問題が起こる。

「料理か……毎日nascitaに行くのもなぁ。おい万丈、おまえ料理覚えたりは?」

「はあ? あんな工程の多い作業覚えられるかよ!」

「あー……だよな、悪い」

「素直に謝んなよ! ちょっとくらい否定してくれてもいいだろ! ため息つくな!」

 文句の多いこと、多いこと。

 注文の多い料理店かよ。ああ、でも料理できないから成り立たないか。

「にしても、どうなってんだろうな」

「あ? なにがだよ」

「これだよ」

 俺が指差す先にあるのは、俺たちが持っているビルドドライバーにフルボトル、ハザードトリガーにグレートクローズドラゴンと、これまで開発してきた内のほとんどが残っていた。

 さすがに俺たちの物以外は一切残っていないが、役目を終え、成分が完全に抜け落ちたジーニアスフルボトルだった物もある。

 これだけは残った意味が本当にわからないが、もう置物も同然だ。残ったにしても、どうにかなることはないだろう。

「ライダーシステムが残ったことで、問題が起きなければいいけど」

「いいんじゃねえの? これも俺たちにとっては大事なもんだしよ。仮に壊せって言われても、おまえ壊せないだろ? ならいっそ、このまま残しておけばいいじゃねえか」

「おまえな……」

「それに、どうせいまの世界じゃハザードレベルが3以上の奴なんて俺とおまえだけだろ? だったらどうせ変わらねえって」

「――バカのくせに」

 確かに、言っていることは正しい。まさかバカに言われるとは思ってなかったけど。

 俺と万丈以外、新世界で適正のある人間はいない、はずだ。

 なら、残しておくのもいいのだろう。

「それによ、エボルトは倒せたけど、またなにがあるかはわからないだろ?」

「不安になること言うんじゃないよ」

「それでもだ。せっかく平和になったんだ。次があっても、今度は俺たちだけで戦わないといけないんだぜ」

「――……それは」

 どんなに願っても、あの場所も、人も、もう前とは違う。

 どれだけ信頼していた人たちでも、新世界では前の世界であったはずの日常を送っている。頼ることはできない。

「わかってる。もしものときは、俺たちでだ。もちろん、そんなことは起きないのが一番だけどな」

「当たり前だっつーの。あー、考えてたら余計腹減った。って、麺伸びちゃってるじゃねえかよ! ほら戦兎、おまえもはやく食った方がいいぞ!」

「はいはい、いただきますよ」

 そうだ。

 なにも起きず、このまま平和になった世界が続いてくれればそれでいい。

「って、本当に伸びきってんな麺……」

 昼のカップ麺は、あまり美味しくなかった。

 

 

 

 午後は万丈を連れ立って近くの散策をすることが日課になっている。

 マシンビルダーに乗れば、近くの定義も少し変わってくる。

「今日はどこまで行くんだ?」

「この前は幻さんを一目見に行っただろ?」

「その前はカズミンたちを見に行ったな。紗羽さんも見てるしな。そうなるとどうなるんだ?」

 万丈が首を傾げている様子が浮かぶが、あとは内海さんの現状は確認したいところだ。とりあえずはそこまで把握できれば十分すぎるんだが。

「ん? こまおうちょう?」

 この先にある町の名前を見た万丈がそう言うが、こいつらしい間違い方だ。

「くおうちょうだな。駒の王でくおう。前は他の町を見ている余裕なんてなかったし、たまにはみんなのいまを確認するのをやめて町の風景でも眺めてくるか?」

「おおっ、それいいな! 行こうぜ!」

 後ろではしゃぐ万丈の純粋さを微笑ましくも思いながら、前に進む。

 ひとまずは町の中をぐるっと走ってみることにして、町中の景色を流しながら見ていく。

「なんか金持ちみたいな学校があんな」

「駒王学園だってさ。前は女子校で、最近共学になったらしいぞ」

「共学?」

「男女混合の――男子も女子も、性別関係なく通える学校ってことだ」

「ほーん、そっか」

 説明させといて適当な反応しやがって。

 他には公園に路地裏、神社らしいところも発見できた。あとは――教会? なんだか普通の町みたいだな。

「なんつーか、どこを取っても平和そうな町だな」

「ああ、俺もそう思う」

 けれど、平和に見えるのになんだ、この違和感は。なにがおかしいのかさっぱりわからないのになんだか嫌な感じがする。

「万丈、もう行くか」

「あ? おう、そうだな」

 万丈は周りをキョロキョロと見渡しながら歯切れ悪く答える。

「どうかしたのか?」

「いや、なーんかいい感じしなくてよ。言葉にできないんだけど、とにかくやべーって言うか」

「おまえもか」

「おまえもってことは、戦兎もか!」

 俺だけでなく万丈までか。こいつの直感は俺よりも当たる。いや、本当に悔しいことにだけど。

 となるとどうするべきかだ。

 直感のままに行動を起こすか、様子を見るか、立ち去るか。

 なんて、立ち去る選択はないよな。

「なにかあってからじゃ遅いか。町の中を見て回るか、万丈」

「おう! なにかあったら、俺たちで守らないといけねえからな」

 握りしめた拳を手の平に当て、気合を入れる万丈。

 とは言ったものの、そうそう問題なんて起こるはずがないんだよなぁ。というか、起こってもらっちゃ困る。

 マシンビルダーから降り、歩いての散策に切り替えるのだが、やっぱり町中に問題らしい問題はない。

「気のせい、か?」

 それが一番いい結果なのだが――。

「はわう!?」

 突然可愛らしい声が響く。

 後方から聞こえたなと振り返ると同時に、手を大きく広げて顔面から路面へと突っ伏したシスターが視界に映った。

 うわぁ、あれ痛いやつ。

「おい、だいじょうぶか!」

 そんでもってすぐさま助け起こしに向かう万丈。あいつの美点って優しすぎるところだよな。まあ、嫌いじゃないけど。

 なんか、エグゼイドの世界から「嫌いじゃないわ!」なんて声が聞こえた気がするが無視だ。

 万丈はシスターを支えるように起こしてやると、シスターは申し訳なさそうにだが立ちあがった。

「あうぅ、なんで転んでしまったんでしょうか……ああ、すいません。ありがとうございますぅぅ」

「なんだって? おーい戦兎! なんて言ってるか教えてくれ!」

 聞いた感じ、バカじゃわからないだろうな。

 でも天才の俺にかかれば、まあ簡単にわかっちゃうんですけどね。物理学のレポートなんかを読むには言語学もいるってわけ。

「なんで転んじゃうのってのと、ありがとうだってよ」

「そうか、お礼言ってたんだな」

 にしても、金色の髪に、グリーン色の双眸か。これはアイドルの素質ありだな。っていうか、若干ベルナージュを思い出す。

 どちらかといえばかわいい系だけど、クールな表情させたらベルナージュでしょこれ。

「あ、あの……どうしたんですか……?」

「ん? ああ、ごめん。ちょっとアイドル路線を考えていただけだよ。ところでシスター、もしかしてこれから教会に行く予定だったりしますか?」

「あ、はい! 今日からこの町の教会に赴任することになりまして……よくわかりましたね。あなたもこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」

「あー、いや。俺たちはこの町に住んでいるわけじゃなくてですね。偶然この町を見て回っていただけです」

「え? あ、失礼しました……」

 ペコリと頭を下げる彼女。

「おい、なんで頭下げさせてんだよ。会話についていけないんですけど!」

「あー、会話説明しないといけないとか面倒なんですけど。おまえちょっと勉強してこいよ」

「はあ!? 教えてくれたっていいだろ?」

「俺たちがこの町の住人だと勘違いしたってだけだよ。ついでに、このシスターさんは今日からこの町に赴任するらしい。ほら、途中で教会があったろ?」

「ああ、あったな。若いのにすげーんだな」

 若い、か。

 確かに若いだろうな。いや、若過ぎるんじゃないか? 見たところ中学高学年から高校生くらいでしょ? 一人で赴任されるには、あまりにも若過ぎるような。

 それに思い返せば不審な点がもうひとつ。

 駒王町には教会が一箇所にしかなかった。でも、あの教会は人の気配はおろか、ところどころ破損が見られた。やっぱり、こんな若い子を赴任させるには合っていない。

「妙だな」

「あん? 今度はなんだよ」

「このシスターの赴任先だよ。あの教会は使われている感じがしなかったし、こんな子を一人で来させるものか?」

「そう言われれば、そうだな」

 言い方は悪いが、古びた教会ってのはいわくつきなのが定番だと思っている。

「あ、あの……教会の場所を知っているのであれば案内していただけると嬉しいのですが……ダメですか?」

 けれど、シスターは教会へと行きたいと。

 もしかしなくても、現状を理解していないらしい。

「どうする?」

「って聞かれてもなぁ」

 妙案なんかないし、どこの子とも知れないシスターを連れ出したら誘拐で今度こそ警察のお世話になっちまう。

「わかった、連れてくよ」

「本当ですか!? あ、ありがとうございます! これも主のお導きのおかげですぅぅっ!」

 主……つまり創造主ってこと? それなら俺を崇めて――いや、やっぱいいや。

 そもそも、そんなことのために戦ってきたわけじゃないしな。

「おい、いいのかよ?」

「いいもなにも、止めようがないでしょうが。ここで俺とおまえがあの子を連れ去ってみろ。いまの平和な日本じゃ隠れるところもなく警察のお縄につく羽目になるぞ」

 そう答えると、さすがの万丈も「もう追われんのはいやだ」と言って引き下がった。

 さて、どうなるかわからないけど、とりあえず行ってみましょうか。

 

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