天才物理学者と筋肉バカの新世界より   作:alnas

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「なあ、ところでよ。なんで前回のサブタイだけ英語表記なんだ? いままでは片仮名だったよな?」
「はあ? 万丈、おまえ!」
「なんだよ?」
「英語表記とか、片仮名って知ってたんだな」
「おまえの中の俺はどんだけバカなんだよ。それより、なんで英語表記なんだ?」
「ああ、それは第1章の最終話ってことで、区切りをつけるために英語表記にしておいたんだよ。なんとなく締まるだろ? これからも章の最終話はそうしてくからなー」
「は、どうせ次の章では忘れてんだろ?」
「天才は忘れないから天才なんですー」
「なに意味わかんねえこと言ってんだよ。あ、それともあれか? 間違えて英語表記にしちゃいましたーってか!」
「んなわけないでしょうよ!」
「落ち着きたまえ、キミたち。この本によれば、天才物理学者である桐生戦兎には、新世界にて万丈龍我と2人きりの未来が待っていた。ところが、異形の存在と出会うことで、彼らの未来は大きく狂い始める。本来存在しないはずのフルボトルが見つかり、nascitaのマスターは変身を遂げた。さらにこの先の未来では……なるほど。これは大きな未来の変遷だ。完全に歴史を書き換えていると言っても過言ではない。このモデルケースはぜひとも、今後の我が救世主のために活かさなくては。さて、ここで問題です。今回桐生戦兎の前に立ちふさがる人物とは、いったい誰なのでしょう」
「「また出た!?」」
「おや、キミも未来を変えた者だね、桐生戦兎。できることならその心意気を我が救世主にも教えて欲しいところだが。ふむ、どうだい? 我が救世主の家庭教師なんてしてみるのは」
「いや、っていうかなんなんだよおまえ!」
「やあやあやあ、万丈龍我。私かい? 私のことはいいんだよ。それより救世主の話だ。まだ前書きだ。後書きがくるそのときまで、しばし救世主の話をさせてもらおうか」
「……また乗っ取られた。新章スタートなのにぃ」


エブリデイ新世界

 地下室。

 それは男のロマンを詰め込んだ素敵な夢空間である。

 同時に、俺にとっては慣れ親しんだ研究所と言っても過言じゃない。

 ああ、やっと帰ってこれた。俺たちが過ごした懐かしいあの場所。

 なんてこともなく。

 ――地下室が一夜にしてできるわけもないので、俺と万丈はnascitaの店内で雑魚寝をして夜を過ごした。

 設計からなにもかもを1からやっていては、流石に一晩で地下室が作れるわけもなく。前段階の設計を進めているうちに寝落ちしていたらしい。マスターも離れたところでドライバーを握りながら落ちていた。

「いや、ドライバーでなにするつもりだったんだよ」

 リアスたち悪魔と出会い、レイナーレを倒したあの後。

 帰ってきてすぐにレイナーレはマスターに連れて行かれ、アーシアに会いにいった。それから今朝まで一度も戻ってこないところをみると、昨夜はアーシアと共に過ごしたんだろう。

 俺と万丈はマスターに夕飯を作ってもらい、それを食べてすぐに寝てしまった、と。つまり進んだのは夕飯が出てくるまでの僅かな作業時間での作業分だけってことか。地下室への道のりは長そうだ……。

「にしても、新世界での初変身。思ったより気張ってたのか? それとも歳……はまだ早いな。この新世界の平和も守らないといけないし」

 まだまだ、仮面ライダーとして守っていかないといけない未来があるしな。

「おはようございます」

「……おはよう」

 なんて、寝起きの珈琲を入れようとしていると、アーシアとレイナーレが起きてきた。

 出会った当初の印象が強かったせいか、レイナーレは残念少女かと思っていたが、パジャマ着てると普通なんだな。というか、パジャマは普通なんだな、と言った方がいいのか。

 彼女の目元が若干赤いが、昨夜はアーシアと話してなにかあったのかね? まあ、これは聞かなくてもいいだろう。本人たちが納得して、前に進んでいるなら大人の出る幕はないな。

「ああ、おはよう。マスターはまだ変身の疲労もあって寝ているだろうから、朝は俺が作るよ」

「あんた、料理できるの?」

 レイナーレは訝しげに聞いてくるが、これでもマスターのいなかった時期の食事は俺が作っていたわけで。

「当たり前だろ。天才の頭脳に不可能なんてないんだよ。ま、味じゃその道のプロには敵わないけどな」

 もっとも、前の世界のnascitaの珈琲には完勝ですけどね! 当然だよな。

 逆に、新世界のnascitaの珈琲にはどうやっても完敗だ。これは新世界での嬉しい誤算だったな。この天才の頭脳の疲れを癒す最高の珈琲。そして天才的発明によって生まれつつある地下室!

 天才でしょ!? 最っ高でしょ!

「戦兎さんはどうして笑っているんでしょうか?」

「放っておいた方がいいわよ、アーシア。ああいう類の人は基本イカれてるか、狂気じみた発想をしている輩だから。純粋な貴女は特に触れちゃダメよ」

「は、はあ……? よくわかりませんけどって、レイナーレさん!?」

 意外なところで科学者の本質を理解しているらしいレイナーレが、アーシアの背中を押して俺から遠ざける。遠ざけた先は、あろうことか万丈の方に、だ。

 どうやら昨日の出来事や本能的な部分であちら側が安心と感じたらしい。

 俺も大活躍だったはずなんですけど? 本来ならそのポジション俺じゃない?

 なんて思うものの、あいつにの心の中には、いまもただ一人の彼女が生き続けているし、周りに少女がいても興味ないだろうからな。そういう意味でも、俺たちの中では最も安全な男なのかもしれない。そう思うと、確かにあいつの側にいる少女たちは安全なのだろう。

 なんてったって、手は出さないけど、危険が迫ったときは絶対に守ってくれるはずだからな。

「ったく。一丁前にヒーローやりやがって」

 本当に、誰がなんと言おうと、この世界のヒーローだよ、おまえは。

 口には絶対に出さないけどな。

 なんて無駄話をしているうちに準備なんて終わるものだ。

「ほら、トーストにサラダ、コンソメスープだ。冷蔵庫にオレンジジュースも入ってたからアーシアにはこっちを。レイナーレには珈琲を入れておいた。ジャムは好きなの使っていいと思うぞ」

 ついでに目玉焼きを作っておき、もう1枚のトーストの上に乗せておく。

 これで一人につきトーストが2枚になったわけだし、量的にもいい具合だろう。

「あら、本当に朝ごはんが出てきたわ」

「すごいです戦兎さん!」

 片やなぜか不満げであり、片や笑顔を咲かせる少女たち。対照的な娘たちだが、仲良く席について、ジャムを渡しあったりと楽しそうな光景が広がる。

 若干大人びたレイナーレがアーシアの相手をしてる様は、前の世界での美空と紗羽さんみたいだ……。

「……ん? なんだよ、飯の時間か?」

「おまえね……」

 人が感傷に浸っているときに、起きた万丈が二人の姿を見て確認してくる。

「残念ながらおまえのぶんはねえぞ」

「はあ!? なんでだよ!」

「当たり前だろ。なぜなら俺のぶんもないからだ」

「なんでないんだよ!」

 決まってるでしょうが。いつだって、手間暇かかった……まあ、そんなにかかってないけど、美味しいものを食べるのは可憐な少女たち。

「俺たちの飯はこっちだ」

 積んであったカップ麺のひとつを万丈に投げ渡し、俺もそのうちのひとつを選んで取る。

「なんだ、あるじゃねえかよ! 安心したら腹減った〜。おい、早く食おうぜ戦兎!」

「はいはい。ほら、俺のぶんも開けとけよ」

「おう! 任せとけ!」

 万丈が封を開けている間に沸かしてあったお湯を持っていく。

「はーい、お湯入りまーす」

「よっしゃあ!」

 俺のノリに合わせた万丈がガッツポーズを取る。

 やっぱりバカだろ、こいつ。

「「……」」

 お湯を二つのカップ麺に入れ終えると、奇妙なモノを見たような視線が2つ、俺たちに突き刺さる。

「なんだ?」

「いえ、あのぉ……」

「あんたたち、もしかして毎日そんな食生活なわけ?」

 言いにくそうなアーシアを思ってか、レイナーレが口を開く。

「まあ、そうだな」

「俺たち稼ぎなかったしな」

 俺と万丈が答えると、二人ともなんとも言えない表情を作った。

「あのね、それなら私たちにパンを出してないで、自分たちで食べなさいよ!」

「そ、そうですよ! お二人は昨日も戦ったって聞きましたし……ちゃんと栄養のあるものを食べないとダメです!」

「いや、育ち盛りの二人こそ食べるべきであって」

「言いたくはないけど、私はこれまでそれなりの物を食べてきたんだから、あまり気を遣わなくてもいいのよ」

「わ、私もです! それに量だって、こんなに頂いてしまって……」

 いい子! なにこの子たち。自分の境遇だってあるだろうにこの気遣い!

「よし、俺たちはカップ麺で十分だ。二人はしっかりうまい物を食べるんだぞ」

「そうだな! というか俺はカップ麺好きで食ってんだから、これでいいんだよ!」

 まさかの万丈の援護射撃。

 本人にその意思はないんだろうけどなぁ。こいつ、毎日好んで食べてたし。

「どういう思考回路してたらその言葉が出てくるのよ……」

「もう少し自分たちのことも……」

 まるで納得していなそうな二人がなおも詰め寄ってくるも、

「ちょっと待ったぁ!」

 フライパンと包丁を持ったマスターが俺たちと彼女たちの間に立ち塞がった。

「マスター?」

「おう、戦兎。みんなもおはよう! そして話は寝ながら聞かせてもらったよ」

「理解できてんのかよ」

 万丈からのツッコミを無視したマスターは、アーシアとレイナーレの側まで寄ると、あたかもそっち側についたかのように俺と万丈を見返した。

「この子たちの言うことももっともだろ? おまえらはさ、もっと幸せになっていいっつーか、なれ! やっと終わったんだ……少しくらい自愛してくれないと、俺もおちおち喫茶店のマスターなんてやってられなくなっちまうだろ?」

「いや、そう言われてもな」

「なあ? もう俺たちのやるべきことは曲げらんねえしよ」

 二人して答えると、マスターが深いため息をつく。

「ったくよぉ……ああもう! おまえたち暫くカップ麺諸々禁止だからな! 偏った食生活が治るまで俺が作る! 異論なし!」

「は?」

「ああっ!? 俺のカップ麺! ああ〜……」

 言うが早いか、万丈が楽しみに待っていたカップ麺を取り上げ、ものすごい勢いで麺を啜っていくマスター。

 ものの数十秒で空になった容器はゴミ箱へ。

 そしてマスターは厨房へと向かっていく。

「バカたちがごめんな、二人とも。決して悪気はないんだけど……まあ、これから変えてくから大目に見てやってあげてよ」

 マスターの言葉に頷いた少女たちが席に戻り、マスターは料理を作り始める。

「今日からおまえらの飯は俺が作ってやるからな。ほれ万丈、カップ麺よりうまいもん食わせてやるからしっかり待っとけよぉ?」

「――マジか!?」

 床に倒れてた万丈が即座に起き上がり、待ちの姿勢を取る。

「はあ……まあ、これはこれでいいか。マスター、甘い卵焼きも追加で!」

「はいよー! ちょいと待ってな!」

 喫茶店だからだろうか? それとも麺を食べるつもりだったからだろうか? ナポリタンができあがりつつあるのを眺めながら、追加の注文を頼んでしまった。

「ああ、それとな戦兎」

「なに、マスター」

「おまえと万丈には、近々働いてもらおうと思っていてな」

「ふーん?」

「夜中のうちに、駒王学園に教師の推薦しといたから、今日の午後には面接行ってきてくれる?」

「って、はあ!? 聞いてないんだけど! というか、夜中に対応してくれるわけないでしょ!」

「あれ? 言ってないっけ? ごめーん! でも、もう話通しちゃったし、仕方ねえよなぁ。なんせ、夜中でもかけたら出たんんだからさぁ。もうびっくりだよなー。なんか凛とした女性が電話に出てさ? 『わかりました。彼女からの話もありましたし、一度面接をおこないましょうか。ふふっ、どんな人なのかしら』なんて言ってたぜ」

 夜遅い時間でも対応でき、彼女からの話?

「もしかしてリアスの関係者か? いや、駒王学園そのものが悪魔が経営する学校だとするなら、それも可能か。まあ、わかったよ。あとで行ってくる」

「おう、頼むよ〜」

 なんて話込んでると、マスター特製ナポリタンに卵焼き、珈琲が運ばれてくる。

「なんだよ、うまそうじゃねえか!」

「うまそうじゃなくて、うまいんだよ。ほら、食った食った!」

 急かされるようにして口に入れた卵焼きは、知ってか知らずか、相当の甘さがあり、激動の中から今日に至るまで口にしていなかった懐かしさが広がる。

「…………うまい」

「めっちゃうまい!」

 万丈もナポリタンをかきこむように食べ、それを見て嬉しそうに頷くマスター。

「おはよう! って、みんな早くない?」

「おはようございます、美空さん!」

「おはよ、美空」

「あ、レイナーレ照れてるんでしょ〜?」

「て、照れ……うっさいわね!」

 女性陣が楽しそうにあいさつを交わし、みんなで朝ごはんを食べていたことに気づいた美空が、マスターを催促させ、作らせにいく。

 そのままアーシアとレイナーレの方に行くかに見えたが、僅かに俺たちへと寄ってきて、

「二人も、おはよう」

 それだけ言い残し、早足でアーシアの隣の席へと座ってしまった。

「なあ、いまのって」

「あ? ただのあいさつなんじゃねえか?」

「そう、だよな」

 いま一瞬――いや、気のせいか。

 一夜にして賑やかになったnascitaでは、朝から笑い声が絶えず聞こえてくる。

 




以前書いていたDALのssの断片を発見したので、形にしようかと書き始めました。私は美九と六喰を眺めていたいのです。DALだと他には問題児原作で過去に書いていました。気になる方は探してみてください。
それと、そろそろグレモリー家の白龍皇も更新復活しそうです。あの話ですと、「あの決意は劇薬」「この激情は覚醒」の2話が個人的に好きな回ですね。あんな感じの話を今作でもしてみたいものです。

では、後書きにも救世主の話が割り込んでくる前に締めとさせていただきます。
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