「おい戦兎! 昼まだだしよ、ラーメン食ってこうぜ!」
「おまえなぁ、あらすじ紹介中に飯食ってどうすんだよ……ほら、続き読めって」
「いや、あらすじ紹介をしている暇があったら麺を啜るべきだ。せっかくの麺が伸びてしまう」
「いやいやいや、あらすじ紹介が先って、誰だ、あんた」
「あー! おまえは!」
「知ってんのか、万丈」
「こいつだよ、こいつ!」
「なにがだ?」
「あーもう! なんでわかんねえんだよ!」
「落ち着いたらどうだい? せっかくいい店に入ってきたんだ。ちなみにおすすめは――」
「せっかく久々に普通のあらすじ紹介のはずだったのに。人選ミスだ……あー、もういいから。21話見ながらラーメン食べよう。おすすめどれだって?」
「ああ、これとこれと……ん? ああ、21話、始まるみたいだな」
『おまえの好物をとやかく言うつもりはないが、奴らが不憫でならん……』
「「どっかからよくわからない声が聞こえた!?」」
『――気のせいだ』
マスターの気遣いなのか、もしくは純粋に居候が増えすぎて稼ぎが必要になったのか。
理由はどうあれ、昨日に引き続き、俺と万丈は駒王町に来ていた。
夜の間に騒ぎがあったというのに、昼のこの町は穏やかなものだ。悪魔の住む町なだけあって、情報が規制されているのか、教会に乗り込む前からなんらかの仕掛けがなされていたのかはわからないが、どうあれ、昨夜の出来事を気にする必要はないらしい。
「お、あそこうまそうな店だな! 昼もまだだし寄ってこうぜ戦兎!」
「はあ? 昼って……ラーメン屋か。まあいいか。まだ時間には余裕あるしな」
「よっしゃ!」
腹が減ったまま面接ってのも良くないしな。ひとまずは、腹ごしらえと行きますか。
意気揚々と店に入った途端、客が二人しかいない光景が飛び込んできた。
これは――どっちだ? 隠れた名店? それとも……。
「あー! この前の奴! やったな戦兎、たぶんここ当たりだ――ってえ!?」
店内の客を指差し、しかもお店側にも随分失礼なことを言う万丈の頭を叩いておき、俺たちを見ていた店主に頭を下げておく。
が、店主は気のいい人らしく、笑みを浮かべながら気にすんな、と声をかけてくれた。
「あんたたちも、連れが悪いな」
日本人らしからぬ容姿の二人組に声をかけると、こちらも気にしなくていいという反応をされた。
一人は濃い銀髪に、引き込まれるぐらいに透き通った蒼い目。見て分かる圧倒的な美少年力。高校生くらいだろうか? いや、もう少し上にも見えなくはないが……。
もう一人は爽やかそうな顔つきの男性だ。こちらは保護者? ではなさそうだな。どちらかと言うと友人関係に見える。
「で、知り合いか?」
明らかに知っていますと反応した万丈に問いかけると、
「おう! この間うまいラーメン屋を教えてくれた奴だ! もう一人は知らねえけどな」
「どういう知り合いだ? あんな美少年と筋肉猿のおまえが」
「あ? ほら、前に話したじゃねえか。うまいラーメン屋の情報貰った奴がいるって話あっただろ?」
そういえば。
確かに1話のあらすじ紹介のときにあったな。
『そういえば、この前ラーメン屋に行ったときやけに強そうな奴を見かけてよ。そいつからうまいラーメン屋の情報を貰ったんだよ。あとで行ってみねえか?』
なるほど。あのとき話していたのが、目の前にいる彼か。
強そう、ね……こいつが言うなら強いんだろうな。
にしても、美少年がラーメン啜ってるだけなのに随分と絵になるな。これがイケメンだけに許された特権ってやつか。
まあ? 俺も天っ才物理学者にして、人類に愛されたイケメンなんですけど!
「おい戦兎、おまえなに頼む?」
「ん? ああ、ここはなにがうまいんだろうな」
「さあ? なあ、あんたは知らねえか?」
首を傾げた万丈が、数席離れて座る銀髪の美少年に尋ねる。
問われた彼は、しばし黙り込んだ後、いくつかのメニューを指差していく。その間も麺を啜る速度は変わらず、どうあっても麺を堪能するといった意地が見えた。
「よし、じゃあ俺あれな〜」
「俺はそっちを」
互いに銀髪くんのおすすめを頼みつつ、それとなしに銀髪くんたちを観察する。
何処にでもいるって程平凡じゃない。けれど世間離れしているかと言われてもノーだしなぁ。なにかしら感じるモノはあるんだが、それでも嫌なモノじゃないってのがなんとなくわかる。
「なんだ? 万丈に近い要素というか……」
「なんだ、俺がどうかしたか?」
「いや、おまえがあっちにいる銀髪くんと何処と無く似てる雰囲気があるなと思ってよ」
「はあ? なに言ってんだよ……」
バカのこいつがんなこと考えるわけないか。
けれど、俺にはなんとなくわかる。こう、万丈と銀髪くんには同じモノがあるというか、似た性質を感じるんだよなぁ。どことなくクローズっぽいのか? いや、でも万丈にも……よし、考えるのやーめた!
「バカのことは考えるだけ無駄だったな。天才の頭脳でも予測できないバカだし」
「バカバカ言うんじゃねーよ! 褒めてんのか貶してんのかっての!」
「はいはい、褒めてるよ」
隣で騒ぐ万丈をテキトーにあしらっていると、銀髪くんが俺たちを見て小さく笑っているのがわかった。
「ああ、すまない。キミたちのやりとりが楽しくてね」
「いや、こっちこそ騒がしくて悪い」
彼の方から話しかけてきたので、こちらもそう返しておく。
「気にしなくていいさ。ラーメン屋はもっと喧騒があったって悪くない。それに、そっちの彼とは一度ラーメンについて語り合った仲だ。言い方は変かもしれないけど、ラーメン仲間みたいなものだよ」
「そ、そうか……」
そこまで話し込んでたのか。万丈が強そうと言っていたのも気になるが、ラーメン仲間と認定されている以上、もしかしたら能天気な部類かもしれないな。
「ところで、キミたちは駒王町の人かな?」
「いや、俺たちはこの町で暮らしているわけじゃない。今日は駒王学園の教師にさせられるために面接を受けにな」
「させられる?」
「陰謀だよ、陰謀。居候先のマスターが勝手に決めていた事だ」
部外者に話していいか迷ったが、特別隠すことでもない。
「そうだぜ! 俺なんてなにやらされるかわかったもんじゃねえよ!」
「バカが生徒に教えられるわけないだろ。精々警備員とか用務員じゃねえの?」
「はあ!? なんでそんなこと言うんだよ!」
「じゃあおまえ人に勉強教えられるのかよ?」
「無理ですけど!?」
自信満々に言いやがった……こいつを本当に駒王学園に連れて行っていいのか不安になってきたな。いっそのこと用務員にしてもらえないだろうか。
「教師はダメだな。学生がかわいそうだ」
「おうそうだなって、うるせえよ!」
そんな茶番を見ていた銀髪くんが、もう一度小さく笑った。
「仲がいいんだな」
「「そうか?」」
瞬間、万丈と視線がかち合う。
むこうからは、「なに合わせてんだよ」といった感情ごと向けられ、俺としても、同じことを思っちまったわけで。
「台詞が被っているし、いいんじゃないか?」
そう仲裁されたことで視線を外すが、思っていることまで同じなんだよなぁ、クソ!
「まあ、それはいいか。自己紹介がまだだったね。俺はヴァーリ・ルシファー。ラーメン仲間として、よろしく」
「おう、俺は万丈龍我。んで、こいつは桐生戦兎だ」
「よろしく」
にしても、ルシファーか。
リアスがグレモリー。
グレモリー家が悪魔の家系なのは間違いなく、そこにルシファーと来たとなれば、恐らく悪魔の家系はある系譜が関係していることになる。
「ふむ……二人とも随分と強そうだけど、今日はやめておこう」
そのタイミングで、ヴァーリの連れの男もラーメンを食べ終えた。
「またいずれ会おう。ああ、そうだった。これ、俺が作っているラーメン屋マップだ。チェーン店から個人経営店、特別メニューなんかがまとめてある。是非見て欲しい。それから、不足点があれば教えてくれ」
「おう、ありがとな! よくわかんねえけど、戦兎ならわかるからよ。任せとけ!」
立ち上がったヴァーリが万丈にカラー印刷されたと思われる小冊子を渡す。どうやら読むのは俺になりそうだけど。
「ふっ、それはいい。では、俺たちはそろそろ行くとするよ。また、いいラーメン屋で会おう。店主、美味しかったよ」
「じゃあな、お二人さん。ヴァーリが穏やかな笑みを浮かべて話すところを久々に見たぜい。ありがとな」
ヴァーリとその連れが店から出て行き、後には渡された冊子だけが残った。
まったく。変わった奴だったな。
「でも、悪い奴じゃないな」
「ん? おう、いい店教えてくれたしな。それに、真っ直ぐな奴に感じたぜ?」
「だよなぁ」
もしかして、悪魔って全体的に良識的な奴らなのか? ああ、いやでも待てよ。レイナーレも口こそ悪いがいい子だしな。
異形の存在って、俺が予想してるよりも常識があるってことか? 人間界で暮らしているリアスたちを見ていれば、そう思うのも普通か。
「これは、ちょっと本腰入れて調べないとダメみたいだな」
でも、それはそれとして。
「おい戦兎、ラーメン来てんぞ」
「ああ、せっかくのおすすめだ。早く食べないとな」
ヴァーリのおすすめを食べてから、考えるとしよう。あと、マップの方も見ておかないとな。
駒王学園には予定より早くついたので、応接室に通され、そこで時間まで待つことになった。
面接までそれでも時間があるので、貰ったマップを眺めていたが、これ相当研究されてるな……。
「まさか、ここまで有用性の高いラーメン屋専用マップがあったとはな」
「なんかわかったのかよ?」
ヴァーリから貰った張本人は理解できていないようだが、これは深く理解していなければ書くことのできないマップだ。というか、何度も同じ店に通っている口だな。
試行回数を増やして、おすすめのメニューを割り出している感じがある。
「このマップは手強いな。ここから不足点を出すとなると、どこから手をつければいいものか」
「いや、真面目かよ。ヴァーリだって、あったらでいいって言ってたじゃねえか」
「ダメだ。ここまで完璧だと、必ずどこかで抜けがあるはずだ。天才の頭脳にかけて、それを見逃すなんて許せない」
というか、ここまでいいものなら、もっといいものにしたいでしょうが!
「んなことより、面接の対策でも考えた方がいいんじゃねえか?」
「ああ、そこは問題ない」
「なんでだよ? 面接って普通はあいさつの練習とか、質問内容の予想とかして答えを考えとくもんだろ?」
「あのなぁ」
文句を言おうかとも思ったが、万丈だもんなぁ。考えるどころか、疑問に思うわけないか。
「いいか。夜間に連絡して、履歴書の提出も、それどころか俺たちに関する資料をなにも送っても、持ってこいとも言わない雇い主が、昨日の今日でいきなり面接すると思うか?」
「お、おう?」
「そして、昨日俺たちが会ったように、この学園には悪魔がいる。なら」
「ああ! 悪魔に操られてるってのか!」
「違ぇよ。恐らくこの駒王学園は、悪魔が人間社会に溶け込むために、悪魔が経営している学校なんだよ。だから夜間でも対応できるし、俺たちみたいなイケメンでも一見怪しい連中が入ってきても対応できると見越しての事だろう」
付け加えるなら、リアスからの口添えがあったはずだ。
それだけの権力を彼女は与えられている、と考えられる。そのリアスのことを「彼女」と親しげに呼べる相手……もしかして、別の権力者も絡んでいるのか? マスターの電話に出たのはこっちだろうことは予想できるが、駒王学園の教師になれば詳しい話をあいつらから聞く機会も得られるかもな。
「失礼します」
考えをまとめると同時、応接室のドアが開かれた。
中に入ってきたのは、二人の女子生徒。
厳格そうな凜とした表情の、黒髪の少女たちだった――。
ビルドも好きだし、クロスオーバーも気に入ってますが、そろそろ純粋なHSDDも書きたい欲。
これはグレモリー家の白龍皇も近々復帰ですね。確かいまはライザー戦のはず……こっちのライザー戦? それは、ねえ。もちろん色々ありますとも。暗躍、潜伏、洗脳強化ござれですからね。
そして進まない本編。本当は面接も終えてその後にいきたかった。
この話が中々進まないのは私の責任だ。だが私は謝らない。
ルパパトのアフターストーリーも書きたさありますね。あの話は続編作れる終わり方だったし、構成さえ上がればなんとか……。