「なあ、この二人が面接した理由って結局明かされなかったよな?」
「おまえなにネタバレしてんだよ! それ次回言うはずだったとこだろ!」
「え? あ、やべぇ! なし、いまのなしだからな! えっと……だが、待たされていた応接室に入ってきたのは、」
「それもう俺が読んだところだよ! ああ、もう最近まともなあらすじ紹介できてないんですけど!」
「なあ、それより気になってたんだけどよ。ここって昨日は喫茶店じゃなかったか?」
「なんの話してんだよ! もういいから、本編いくぞ。さあ、不安なことしかないけど、どうなる第22話! そして、果たして万丈は教師になれるのか!」
「おい、なにさらっと自分は受かるみたいに言ってんだよ!」
通された応接室で待っていると、入ってきたのは二人の女子生徒。
どちらかというと個性強く、自由人の集いといったnascitaの面々やリアスたちに比べ、規律正しい様子の子たちだ。
「面接に来る方々がいると伺っていましたが、貴方がたでしょうか?」
俺たちを見るやそう切り出した少女は、俺と万丈を交互に見る。
「失礼ですが、桐生戦兎さんと、万丈龍我さんで間違いありませんか?」
「あ、ああ。俺が桐生戦兎で、こっちが万丈龍我だ」
かけているメガネを一度調整した彼女は、しばし考え込む様子を見せたが、すぐに笑顔で対応してきた。
「そうですか。本日は忙しい中足を運んでいただき、ありがとうございます。さっそくですが、面接を始めさせていただきます」
もう一度俺たちを見て、後ろに控えていたもう一人の女子生徒へと声をかける。
「椿姫、他の生徒に話を聞かれても困りますし、外で待機を。匙たちを呼んでも構いませんので、あとはお願いします」
「はい、会長」
恭しく礼をした、椿姫と呼ばれた子は廊下へと出て行き、残ったのは会長と呼ばれた子のみ。
笑みを浮かべているが、どちらかと言うとキツめの印象を与えてくる目つきや、冷たい氷のような、鋭利な雰囲気を持つ子だな。張り詰めている、というわけでもなく、これが自然体なんだろう。
相当な美貌なのは間違いないけどな。これは、お姉さまって感じの、女性にモテるタイプだな。
とりあえず、この美貌は間違いないな。
「おい、面接するって、まさかおまえがじゃねーよな?」
が、万丈は納得いかないらしい。
けど――。
「やめとけ、万丈」
「なんでだよ戦兎!」
「いいから、やめておけ。俺の仮説が正しければ、マスターの連絡を取った、もしくはその話を貰ったのがこの子だ。そして、おそらくリアスたちと同じ、だよな?」
「はあ!?」
そこまで言うと、眼前に立つ少女はひとつ頷き、俺たちとは反対側に設置されているソファへと腰を下ろした。
「いつから気付いていましたか?」
座るや否や、少女は興味深そうに訪ねてくる。
「気付いたってわけじゃない。ただ、推理しただけだ。夜中に対応でき、学園に俺たちみたいな不審者を容易に招き、しかもリアスたちと同じ学生にも関わらず、俺たちに会いに来た。察するにここは、悪魔の経営する学校なんだろ?」
「……流石ですね。リアスから面白い話を聞きましたよ。不思議な人たちと知り合った、と彼女も楽しそうに話していましてね」
認めた、のか? 俺の推理もほとんど正解ということでいいのだろう。
「申し遅れました。駒王学園の生徒会長を務めています、支取蒼那――いえ、ソーナ・シトリーです。生徒会として、『表』の生活の管理をしています」
シトリー。
薄々わかってはいたが、これで決まりだな。
「リアスと同じ、仲間を束ねる王ってことか」
「そうですね。私はシトリー家の次期当主ということにもなりますし、リアスと立場はそう変わりません」
なるほど。やはり、駒王町にはリアス以外の権力者も絡んでいたか。
「なあ、それはいいけどよ。俺たちの面接はどうなるんだよ」
「ああ、すいません。リアスから話は聞いていますが、教師になっていただく以上、私も直に見ておきたくてお呼びしました。桐生さんは天才物理学者だそうですね。知識としては申し分なしですが、あとは人柄ですが――リアスが会ったその日に信頼できると評した以上、問題ないでしょう」
なるほど。
俺たちの人となりを確認しておきたいということか。で、それもリアスのおかげで大方クリアと。それだけリアスの影響は強いとも捉えられるが、この場合は単に仲がいいんだろうな。
「それで、万丈さんですが……その、教師は難しいのではないか、とリアスや朱乃から言われまして」
万丈……初対面だった彼女たちにすらその評価か。
いや、正しい。あいつらの人を見る目が正確なのはいいことなんだが、それでもこれは酷い。
「え? なに、俺不採用!?」
「落ち着けよ。受かる気でいる方がおかしいだろ」
「なんでそういうこと言うんだよ! 俺だってわかってるっつーの!」
「あ、ならフォローとかしなくていいな」
「フォローくらいしろよ!」
「やだよ。なんでおまえみたいな筋肉ゴリラを慰めないといけないんだよ」
っと、面接の場だったな。ちょっとふざけすぎたか?
生徒会長の方をうかがうと、予想に反して、楽しそうな表情を浮かべているのが視界に映った。
「ふふっ、ああ、これはリアスが好みそうな方々ですね」
「そう、なのか?」
「はい。でも、これで私にもわかりました。突然堕天使について尋ねてきたと聞いていましたから、他の組織の回し者かとも疑っていましたが、少なくとも、その線はないですね」
「そう言い切っていいのか? 油断させるための演技かもしれないぞ?」
問うと、彼女は首を横に振る。
「ありませんよ。少ない時間でも、見ていればわかりますから」
「……そうかよ。まあ、判断は任せるさ」
「はい。それがいいかと」
それからしばらく、俺の担当する科目や教師の話を進めてもらった後、生徒会長は万丈へと話を切り出した。
「それと、万丈さんに対しては申し訳ありません。教師に、とはいきませんが、こちらを」
渡された1枚の紙には、用務員と書かれた採用用紙だった。
「これは?」
「はい。こちらは万丈さんへと思いまして。万丈さんは人との関係の築き方や面倒見がいいと聞いていましたので、生徒たちにいい影響を与えてくれることを期待して用意しておきました。もしよければ、ですが」
どうでしょう? と彼女が聞いてくる。
決めるのは俺じゃないし、こいつ次第だが。
「どうなんだ?」
しかし、このバカは決断することも、考えることもなく俺へとパスしてきた。
nascitaにはマスターがいるし、事情には詳しいだろうレイナーレも控えている。なんだかんだで一海たちもいてくれるから、美空とアーシアのあらゆる安全は保障されているようなものだ。
俺と万丈が分かれて行動する理由があるわけでもない。
教師に比べて、用務員なら自由が利くかもしれないしな。なにより、指名手配されてとはいえ、前の世界じゃ俺だけ働いてたんだ。今度はこいつも働かせてやるか。
「わかった。その話、受けさせてもらう」
「ん? いいのかよ」
「いいんだ。マスターにおまえだけ落ちたって言うのもあれだしな」
「ふーん、そうか。ならいいけどよ」
問題なのは、こいつに振り回されそうな駒王学園の人たちだな。雇ってくれるのはありがたいけどな。
「わかりました。そのように手配しましょう。後日、改めて連絡します。今日の面接はこれで終わりですが、なにか聞いておきたいことはありますか?」
「いや、いまは十分だ」
「そうですか」
彼女が立ち上がると、俺たちもつられて腰を上げた。
そのまま、応接室の扉が開かれる。
「短い時間でしたが、楽しかったですよ。今度は教師と用務員として会いましょう」
「ああ、こちらこそありがとう」
「おう、助かったぜ!」
終わりということなので、早々にお暇しようかと思ったのだが、その前に生徒会長が口を開いた。
「最後に、私からひとつ」
「なにかな?」
「私の友人と、その仲間を助けてくれてありがとうございます。お礼が遅くなってしまいましたが、これだけは伝えておきたかっただけです」
悪魔ってのは、どいつもこいつも。
「気にしなくていい。誰かの明日を守るのが仮面ライダーって奴だからな」
「ラブ&ピースじゃねえのかよ?」
「うるさいよ。とにかく、守るのは当然のことなんだよ。でも、お礼は嬉しかった。ありがとう」
立ち話もそこそこに、俺たちは駒王学園の敷地の外へと出る。
それにしても広い学校だ。それだけ悪魔が根強く人間社会に浸透してるってわけか。
もしかしたら、俺の予想よりもずっと深く、人間社会に紛れているのかもしれないな。それでも、影響がないのであればいんだけど……そうもいかないよな。
「万丈、リアスたちはいい奴らだったよな?」
「おう、そうだな!」
「だよな……」
あいつらが人に危害を加えるとは考えにくい。駒王学園で教師を続けていけば、他の悪魔と会う機会も得られるかもしれない。
リアスたちは学生。つまり、まだ精神的には多くの影響を受ける年頃なわけで。
1度、しっかりと悪魔に会う必要があるな。それも、リアスたちじゃなく、大人の、上に立つ悪魔に。
「それはそれとして」
「なんだ?」
「せっかく採用してもらえるんだ。いい報せに変わりはない。マスターに報告しに戻ろう」
「だな。行くか!」
いずれ、悪魔も堕天使にも会わないといけない日がくるのはわかっている。
この新世界はどこかおかしい。なにかが狂っているのを感じる。それでも、普通に暮らしている人たちは気付かないのだろう。
それでいい。
平和な日々を壊す必要はない。
俺たちは守るだけだ。
誰もが平和に暮らせる明日を――。
「なあ、戦兎。あの建物、あんな形だったか?」
マシンビルダーで駒王町を走る中、万丈がひとつの建物を指しながら声をかける。
「知らねーよ。昨日初めてきた町のよく見てもない建物なんて覚えてらんねえって。まして、昨日は驚くことが多かったしな」
「はっ、天才、天才って、こんなときは覚えてねえのかよ。年寄りかっての」
「はあ!? おまえね、年寄りなわけないでしょうが。見なさいよ、この肌のツヤ!」
「うわ、やめろ! 気持ちわりぃな!」
中にはカメラのシャッターをきるような人もいたが、俺と万丈の騒ぎで町の人たちに何事かと見られながらも、俺たちはnascitaへの道を進んでいく。
「あれが仮面ライダービルドか。それにしても変な世界だ。まるであのときと同じような――まあいい。そのうちこの世界のことも見えてくるだろ」
「どこ行ってたんですか? 急に出て行ったと思ったら」
「ちょっと、この世界の仮面ライダーを見にな」
「え? もう会えたのか? 俺が見てきた方にはnascitaって喫茶店があったくらいだったんだけど。あ、でも喫茶店の人たちはいい人たちだったなぁ」
「いや、会うのはまだだ。だが、この目で見てきた。仮面ライダービルド。創造の仮面ライダー。ああ、それよりも現像だ」
「ええ? ちょっと、現像代もらわないとうるさく言われちゃうんだけど……」
「つけといてくれ」
「えぇ……もう、しょうがないなぁ」
「少し手を出してみるか。俺が持ってるこいつについても、聞かないといけないしな。まったく、妙なもんを押し付けてくれたもんだ。――禁断の箱、か。あいつもどこから盗み出してきたんだか」
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