天才物理学者と筋肉バカの新世界より   作:alnas

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「正規職員として駒王学園で立派に教師を務める、仮面ライダービルドである桐生戦兎は、用務員として雇用された相棒の万丈龍我と共に、初日の業務を立派に――」
「おい戦兎、一誠のダチでおまえの生徒がスマッシュにされたってよ! どうすんだよ!」
「おまえね、それもう前回の情報なんですけどー。いまはどう松田を救い出すかん話が優先なんだよ」
「え? あ、そうか……」
「松田……もう少し待ってろよ。おまえの先生である俺が必ず助けてやるからな!」
「俺たち! たち!!」
「そんな、滅多にない俺の真面目なバトルシーンがあるかもしれない第26話!」
「だから俺たちって言ってるだろ!!」


アンナチュラル昼休み

 ――どういうことだ?

 万丈と2人で戦っているが、スマッシュは一向に衰えを見せない。

「だー! おい、いつまで戦えばいいんだよ!」

「わからない。もしかして、新型なのか? っと、危ないな」

 一方的な戦闘を繰り広げているにも関わらず、スマッシュは怯みもせずに向かってくる。仰け反り、倒れ、吹き飛ばしたとしても、それでも自身になんら関心がないのか、ダメージを気にせず突っ込んでくるのだ。

「これ以上は松田の体が危ないかもな……」

「……だな。なら、早々に倒すとするか!」

 俺の言葉に万丈が意見するが、果たしてこの選択は正しいのか?

 時間をかけられないのはわかっているんだが、どうにも踊らされている感じが否めない。

 なにより、おかしいのだ。

 一誠の友人を、彼の前でわざわざスマッシュにした奴がいる。そして、そいつはいま、この場にはいない……けれど、なにかしらの目的があったのは間違いない。

 それは一誠に関係しているのか、それとも悪魔たちに訴えているのか、だが。

「迷ってても誰も救えないか」

 たとえ、この先に陰謀があるとしても。

 目の前の誰かを助けないのはあり得ない。

「約束もあるしな。やるか、万丈!」

「おう、よくわかんねえけど、吹っ切れたんならいくぜ!」

 万丈が思い切りのいい、大振りの蹴りをスマッシュへと放つ。

 自分の体に関心がなく、怯まないで挑んでくる相手だとしても、吹き飛ばされた際に隙はできる。

「万丈、決めるぞ!」

「おうっ!」

 必ず救う。

 関係があろうとか、ないとかじゃない。誰もが平和に生きる、この新世界で。

 愛と平和が溢れる、明日があるこの世界で!

「もう犠牲なんて出させやしない!」

 ビルドドライバーのレバーに手をかけ、一気に回す。

「松田、もう少し待ってろ!」

『『Ready Go!』』

 万丈はそのまま姿勢を整え、俺は空中へと跳躍する。

「勝利の法則は、決まった!」

「いまの俺は、負ける気がしねぇ!」

 俺の前には、スマッシュに向けて滑走路が伸び、万丈の背後にはドラゴンが浮かび上がる。

 いま助けるからな!

『ボルテックフィニッシュ!』

『グレートドラゴニックフィニッシュ!』

 地上と空中から、同時にライダーキックを放つ。

「はあっ!」

「おりゃあぁぁぁぁっ!!」

 滑走路によって挟まれ、退路を断たれたスマッシュは、いとも容易く蹴り抜かれ、遥か後方へと吹き飛ぶ。

 やがて、地面を何度も転がったところで停止し、動きだす素振りを見せない。

「やった、のか?」

「さあな。それよりも、どうやって成分を抜き出すかを考えないと……よく考えてみれば、新世界にエンプティボトルがあるはずもない」

 空のボトルがなければ、スマッシュの成分を採取し、松田を助け出すことができない。

 ジーニアスなら可能だったかもしれないが、それも、いまここにはない。

「どうすんだよ!」

「わかるわけないでしょうが! おまえの不思議パワーでどうにかしろよ!」

「はあ!? できるわけねえだろ!」

 ああ、もう! 不毛な争いをしてる余裕はないってのに!

 とりあえず松田の元に近づいてみるが、ひとまずスマッシュの無力化には成功しているようだ。

 あとは、ここからどうするか……。

「なんだ?」

 どうにかならないかと動き出そうとしたとき、スマッシュの成分を採取するときのように、スマッシュの外殻が粒子状になり、一箇所に集まっていく。

 同時に、スマッシュは段々と松田の姿へと戻っていき、やがて、松田の手の中には、ひとつのフルボトルが握られていた。

「どう、なっているんだ……こんなこと、いままでに一度としてなかったはず!」

「お、なんだよ、成分の採取できてるじゃねーか」

 万丈は気楽に言ってのけるが、これはそんな生易しいものじゃない。

「なあ、良かったな戦兎! ――戦兎? おい、どうしたんだよ」

「万丈……よく思い出してみろ」

「なにを?」

「俺たちがいままでに倒してきたスマッシュは、俺がスマッシュの成分を採取して、美空がそれを浄化することでフルボトルとして俺たちの力になってきた」

 そう。これまでのスマッシュは必ず、浄化するまではフルボトルとして機能しないはずだったのだ。

 美空――厳密には彼女の力ではないが、浄化してもらうことによって、フルボトルとして使用可能になっていた。

 再度、松田の手の中にあるボトルを眺める。

 間違いなく、あれはゴリラフルボトルだ。使ってきたからこそ、既に使用可能なフルボトルの状態だと識別できる。

「それがなんだよ」

 だが、万丈はまだ気づいていない。

「松田が握っているボトルは、既に浄化されている」

「はあ!?」

 指摘されて、初めて気づいたんだろう。

 成分が採取できたとか、そんなことはどうでもいい。

 問題なのは、フルボトルがそのままの状態で人体に影響を及ぼし、あまつさえ、スマッシュへと至らせた。

「これは、前の世界ではなかった技術だ」

 エボルトが実行しなかっただけなのか、できなかったのかはわからない。けれど、確実に、前の世界では起きなかったことが起きている。

「最っ悪だ……」

 科学は進歩する。

 けれど、これは――。

「これは、人のためになる科学じゃない」

「ったく、しっかりしろよ、新世界のヒーロー」

「いたっ!?」

 俯いていると、万丈が後頭部を叩いてきた。

「俺にはどんだけやべえことかはわからねえけど、とりあえず、おまえの生徒は救えたんだ。まずはそれでいいじゃねえか!」

 悩みのなさそうな笑みを浮かべた万丈は、そうして俺の背中を叩き、松田を起こしにいく。

「だから痛いっつーの」

 新しいスマッシュの誕生に、フルボトルの生成。

 見えてきた新世界の問題を解決する必要はある。だけど、バカの言った通り、松田が助かったのは事実だ。

「たまにはいいこと言うじゃないの」

 あいつを見ていたら、自然と笑みがこぼれた。

 ひとまず、悪用されるのは避けたいので、フルボトルはこちらで回収しておこう。

 松田の手からフルボトルを取り出すと、今度は万丈が松田を抱える。

「保健室でだいじょうぶか?」

「ああ。保健医の先生がいれば、そのまま寝かせてもらおう。一誠、祐斗、おまえたちは怪我平気か?」

 こちらに近寄ってきていた2人に呼びかけると、

「俺はだいじょうぶっす。それよりも、松田のこと、ありがとうございます!」

「僕も平気です。元より、イッセーくんを止めに来ただけでしたので。それから、僕からも。イッセーくんの友人を助けてくれて、ありがとうございます」

 どちらも本当にだいじょうぶそうな顔をし、頭を下げてくる。

「助けられて良かったよ。けど、駒王学園には前からこんな騒ぎが起きてるのか?」

「いえ、こんなことは過去に1度として起きていないと思います。それに、あの異形の姿……アレは、僕が知っている限り、どこの陣営にも属していない者かと。初めて見る相手でした」

 スマッシュの登場は、今日が初めてか。

 駒王以外じゃわからないが、少なくとも、駒王町を管理している側が知らなかったとなれば、この町では初めての騒動であることは間違いない。

「いま戦った奴に対しては、俺と万丈は少し知っている。放課後、リアスとソーナに話がしたい。それから、一誠からも話を聞きたい。いいか?」

「わかりました。リアス部長には僕から話しておきます。会長には、リアス部長から話を通してもらえないか頼んでみます」

「俺も、了解です。松田を狙ったってことは、また誰かが狙われるかもしれない。そんなこと、俺は許せません!」

 二人が頷いてくれたので、スムーズに話が進みそうだ。

 その後は、保健室に松田を運び込み、ベッドに寝かせておいた。

 保健医の先生はいなかったが、身体的に怪我はなく顔色も正常だったので、じきに目を覚ますだろう。

 校内の様子からも、先ほどの戦闘が知れ渡ったような騒ぎは起きていない。

「でもよ、派手な音が鳴ってたわりには、全員知らなすぎじゃねえか?」

 万丈が疑問を口にするが、それに対する答えは俺も持っていない。

「知られてない方が都合がいいのは確かだが……言われると引っかかるな」

「だろ? やっぱり変だよなぁ」

 このあたりの話も、リアスたちに聞いておいた方が良さそうだな。

 フルボトル、スマッシュ……エボルトがいた前の世界なら、全部解き明かせるはずなんだが。

 考えられるのは、異形の存在がフルボトルを利用していること。あるいは――考えたくはないが、人が自ら悪事のためにフルボトル、もしくはライダーシステムを悪用している可能性。

 朝に会った謎のカメラの男といい、捨てきれない可能性だ。

 

 

 

 

 

「珍しいですね。士くんがみんなでおでかけしようなんて言うの」

 隣を歩く夏海の言葉をうっとうしそうな様子で聞いている士だが、もう一方を陣取っているユウスケもまた、笑顔を浮かべていた。

「ほんとほんと。士の方から誘うことって滅多にないから、楽しみだなぁ」

 こちらも言っていることが先ほどから変わらず、士を疲れさせている原因でもある。

 にまにま、にまにま。

 普段とは違う柔らかい笑みに囲われた士は一見機嫌が悪そうだが、二人を両隣に置いたままのあたり、本気で嫌がっているわけではないのだろう。

「それで士、俺たちを誘ってまで、どこに行きたいんだ?」

「……おまえたちがこの前行ってきたって言う喫茶店だ」

「「え?」」

 士の答えを聞いて、驚きの声を上げる夏海とユウスケ。

 前回は駒王町で姿を見失い、勝手に行動していた者の発言とは思えなかったのかもしれない。

「士くんにしては意外ですね。落ちてるものでも食べましたか?」

「俺をなんだと思っているんだ。ただ……前回は放り出して一人で行動したからな。たまにはおまえたちに合わせようかと思っただけだ」

「「……怪しい」」

「おい!」

 またも口を揃えた夏海とユウスケに対し、士も今度こそ声を上げる。

「冗談ですよ」

「そうそう、冗談だって。素直に嬉しいよ」

 夏海が士との距離を更に詰め、ユウスケも士の肩に手を回すことによって、自然と距離がゼロになる。

 こうして、3人が広い道を詰めに詰めて、nascitaに進む。

 




響け! ユーフォニアム 誓いのフィナーレを見に行ったためか、響けの話を書いていました。
気持ちは収まってはいませんが、やはりこの作品は書きやすい。
好きなものは書き続けていたいですね。
響けも書いてるので、見て!
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