天才物理学者と筋肉バカの新世界より   作:alnas

28 / 32
「おまえもか。揃いも揃って……」

『これまでの仮面ライダーディケイドは』

「気にするな。そういう設定なんだそうだ」
「士くん、ここのパンケーキはかわいいですよ!」
「青春って……そういう年代よりは少し上に見えるけど?」
「――…………食えばいいんだろう」
「いや、科学者は足より頭を使うべきじゃ……」
『コブラ!』
「――蒸血」




 nascitaを出た士たちは、息をひとつ吐き出すと、目的地も考えずに歩き始めた。
「そういえば士、結局カメラってなんのことだったんだ?」
 お店の感想もそこそこに、店内で話していたときに気になったことをユウスケが質問する。
 店内でこそ答えなかった士も、人目がないことを確認してから、今度は簡単に口を開く。
「この世界での敵……だと思うが、そいつを倒した戦利品として拾ったものだ。俺には必要のないものみたいだがな」
 話しながら、前に拾ったカメラの造形が彫られたボトルをユウスケに渡すと、夏海も気になったのか、ユウスケの手に握られたボトルを覗き込む。
「綺麗ですね。でもこれ、なにに使うんですか?」
「さあな。そのうちわかるだろう」
 そうですかねぇ……。と夏海は呟くが、聞かなかったことにした士は、そのまま前を歩く。
「これが森に落ちてたのか?」
「いや、違う。変な格好をした鎧を倒したらそれが出てきただけだ」
「だけって! それ大丈夫なのか?」
「俺が知るわけないだろう。この世界の仮面ライダーがどうにかするはずだ。それを持ってれば、いずれは会うかもな」
 心配するユウスケに、あくまで自然体の士。
 幾度となく見てきた背中だが、やはり心配なものは心配なのだろう。
「おまえなぁ……そのよくわからない鎧が持っていたってことは、これを持ってたら狙われるんじゃないか?」
「え? そうなんですか、士くん!」
 ユウスケの指摘に夏海が反応し、疑いの目を士に向ける。
 こうなると、完全に2対1の構図が完成してしまう。
 しかし。
「だから、向こうの事情を俺が知っているわけないだろ。それに、狙われるっていうなら好都合だ。今度こそ話してもらわないといけないことがあるからな」
「なっ……士!」
「それどういう意味ですか、士くん!」
 ボトルをユウスケの手から奪い取った彼は、その後も寄せられる苦情を躱していくが、そうはさせまいと二人も彼が把握している事情を聞き出そうとする。
 仕方なく、近くにあった公園のベンチに腰を下ろしたはいいが、両隣を陣取られ、逃げるに逃げれない士は、一度ボトルに目を向けてから、息を吐き出した。
「士くん……」
「士……」
 この後に及んで話す気がないことに感づいてか、腕を取られた上に目つきが鋭くなる夏海とユウスケ。
 さてどうしたものか、というときに、異変は起こった。


『世界の破壊者・ディケイド。いくつもの世界をめぐり、その瞳は何を見る?』


驚愕なディフォメーション

 異変を感じることができたのは、彼らが力を持つ者だからなのか、この世界にとって異質なものだったのか。どちらにせよ、変化に気づいてからの行動は迅速だった。

「おまえたち、恐らくこれはボトルと関係のある奴らだ」

「もう来たんですか!?」

「っていうか、この公園をドーム状に囲っているバリアみたいなやつはなに!?」

 士が冷静に話すと、聞いていた二人は辺りを警戒しながら立ち上がる。

「大方、俺たちを逃がさないための結界ってところか?」

 最後に士が立ち上がったとき。

「――……その通りだ。やはりわかる類の者か」

 3人を囲う結界の中で、男性の声が響き渡る。

「誰だ?」

「誰、と言われても困るな。いまの私に名などないのでね。その代わりに、私は力を手にした」

 再び男性の声が響いた直後。

 虚空から幾本もの光の槍が3人に向けて降り注いだ。

 辺りに土煙が立ち込める中、その元凶を作った男が音もなく地に降り立つ。

 その姿は鷹の意匠を凝らした鎧の戦士であり、背中からは堕天使の羽が生えている。

「ふむ……呆気ないものだ。やはり人間はこの程度か。さて、では残ったボトルの回収と行こうか」

 背に生える羽をひとつ羽ばたかせ、煙を払った瞬間。

「むっ……!?」

 光弾が横を通り過ぎて行き、即座に後退する男。

「不意打ちとは卑怯な……」

 男が目つきを鋭くし、眼前の方向を睨む。

「この世界の連中は不意打ちがあいさつ代わりになってるんじゃないのか? おまえのあいさつに返してやっただけなんだがな」

 佇むは、変わらず3人。

「なんだ、その姿は。貴様ら、揃って神器の所有者だったのか? だが、全身鎧タイプの神器だと? そんなものがこの街にあったなどという調査報告は上がっていないが?」

「調査不足なんだろう。ああ、それとも――通りすがりは対象外だったか?」

 煽るように言うは、マゼンタの仮面の戦士。

 その言い草に、赤い仮面の戦士が何事かを申しているが、彼の言葉が鎧の戦士に届くことはない。

「仮面、ライダー……なのか?」

 鎧の戦士が、己が知識の中にある存在に最も近い名を発する。

 主人の側近より言い渡された、この世界で警戒するべき者。その者たちが、3人もこの場にいることの意味。警戒するだけの力があるのか、果たして。

「なんだ、知っているじゃないか」

「……貴様らのことは知らぬ。だが、そうか。貴様ら……各陣営の者ではなさそうだな」

「なんだ? この世界では国取りでもしてるのか?」

「裏の事情を知らない? そんわけあるはずがないが……惚けるなら結構。どの道、ここで貴様ら全員消すまでよ!」

 鋭く伸びた爪を向けられたマゼンタの仮面の戦士――仮面ライダーディケイドは、「血の気の多い奴だ……」と呟きながらも、並び立つ他の二人と視線を合わせる。

「あいつは俺たちを消すつもりらしいな。遠慮しないでいくぞ、ユウスケ、夏海」

「ああ、わかってる!」

「はい!」

 互いに闘志を高めていく中、その一瞬の高揚を狙ったかのように、鎧の戦士に向けて一筋の軌跡が描かれる。

「ぐっ……これは!?」

 甲高い音を上げた鎧の戦士は、ダメージこそ受けていないが、バランスを崩し膝を着く。

「この世界で好き勝手に動かれちゃ困るんだよ。ここは、あいつらが命がけで創った世界だ。もう二度と、あいつらが苦しむ顔は見たくないんでね。あいつらの笑顔のためなら、この身に鞭打ってでも、俺は戦う」

「貴様は……なん、なんで貴方がここに!?」

「はあ? いやいやいや、俺はおまえなんか知らないって。誤解されるようなこと言われちゃぁ困るな」

 第三者として介入してきたのは、nascitaのマスターが変身したブラッドスターク。

 フォルムからか、鎧の戦士の言葉のせいか、ディケイドたちは突如として現れたブラッドスタークに疑惑の目を送る。

「おいおいおい、待てって。俺はおまえたちの敵じゃないって。だいたい、仮面ライダーならわかるもんだろ、この意気込みをよぉ」

「ハッ、どうだかな。いきなり現れた奴の言葉を信じろってのは難しいんじゃないのか?」

 ディケイド側の当然の意見に、それもそうだよなぁ。と納得しかけるブラッドスターク。

 けれども、その言い分ならこちらとしても同じことが言えるわけであり。

「って言われてもなぁ。俺からすると、キミたちの方がいきなり現れた奴らってことになるんだけど? 俺の知ってる仮面ライダーは、ビルドとクローズ。それに彼らだけだからな……キミたちこそ、信用できない」

 とは言ったものの、マスターとしては、彼らを疑ってはいない。

 仮面ライダーを名乗っているからこそ、思うところがある。

「…………士、この人は信じてもいいと思う」

「ユウスケ?」

「大丈夫、この人は大丈夫だって!」

「なら、さっさとあの鎧を倒すぞ」

 ディケイドと、赤い仮面の戦士――仮面ライダークウガが構える。

 隣で佇んでいた白い仮面の戦士――仮面ライダーキバーラも、二人を見てから携えていたサーベルを鎧の戦士へと向けた。

「あー誤解が解けてよかった。さて、それであんたは何者かな?」

「…………その姿でいながら、こちらのことは知らない? そうか、なるほどそういうことか。まさか、その姿を騙る者がいようとは、許しがたい」

「よく聞こえないんだが、もっと大きな声で話せないのか?」

 小声で呟く言葉は構えた彼らには届かず、膝をついたままの鎧の戦士は、握っていた2つのフルボトルをおもむろに振り出す。

「なに?」

「そいつは!」

 ディケイドとブラッドスタークが同時に声を上げる。

「私はこれを使わないと、そこいらにいる中級堕天使と変わらないのでね。さあ、この力の前に平伏すがいい!」

『タカ』『ガトリング』

 鎧の戦士は2つのフルボトルを同時に己へと差し込む。

「フルボトルを人体に直接挿入だと!?」

 ブラッドスタークが驚愕するが、その間にも変化は起こり続ける。

 鎧の戦士の背からは、堕天使の羽とは別に、橙色の羽が広がっていく。手の甲から伸びていた爪はより鋭利になり、両手はガトリング砲へとその身を変化させていた。

 翼をはためかせると、即座に空中へと飛び立ち、上空から仮面ライダーたちを睨む。

「なんかわからないけど、フルボトルの力を取り込んじまったのかよ! しかもベストマッチをそのまま? どうなってるんだよこいつは!」

「落ち着いてください!」

「そうだよ。姿は変わったけど、俺たちなら倒せるって!」

 ブラッドスタークが慌てる中、キバーラとクウガは冷静に敵を見据える。

「とは言っても、敵は遥か空の上だがな。俺たちを囲っている結界ってのは、随分と上まで伸びているってわけか」

 のだが、水を差しつつも状況を把握するのはディケイドであり、同時に、この状況を打開する策を持っているのも彼であった。

 もっとも、すぐに実行に移せるほどの時間はなかったのだが。

「仮面ライダーは、我らが敵!」

 ガトリング砲から連続で発射される魔力弾が彼らを襲う。

 狭い公園の中、走り回り、己の武器で弾きつつ応戦するが、距離があるせいで一方的に攻撃されるだけとなってしまう。

「チッ、ライフルも届きやしねえ!」

「だな。流石に遠すぎるか。それに、こうも攻撃され続けるとな」

「随分余裕だな。なにか策でもあるってのか?」

「ある。だが、このぶんだとやる暇がないな」

 ディケイドとブラッドスタークは攻撃を捌きつつ会話を続ける。

「隙を作ればいいってことか?」

「……ああ。その間に俺たちであいつを落とす」

「よし、なら任せたぜ。ったく、おっさんには長期戦はきついからな。さくっといきますか」

 ブラッドスタークが胸部装甲から巨大なコブラを召喚し、自分たちを守らせるように配置する。

「なるほど。攻撃するだけじゃなく、盾を作るのも案としてはありか。おい、ユウスケ。いまのうちだ」

「あ、ああ! なるほどね!」

 したいことがわかったのか、クウガがディケイドの前に背を向けて立つ。

 ディケイドはライドブッカーから1枚のカードを取り出し、ディケイドライバーに投入する。

『FINAL FORM RIDE』

『K・K・K・KUUGA』

「ちょっとくすぐったいぞ」

「あ、その台詞聞くのも久しぶりかも……あっ、あっ、ああ!」

 音声が流れると、ディケイドがクウガの背に手をかざす。変化はすぐに起き、クウガの背中から羽が現れ、徐々に、その姿をクワガタを模した生体メカ・ゴウラムへと変えていく。

「うおっ、変形した!?」

「こいつに飛んでもらって、あいつをぶっ叩いてくる。行くぞ、夏みかん」

「はい。ユウスケ、失礼します」

 ディケイドとキバーラがクウガゴウラムの上に乗ると、コブラに攻撃が集中しているうちに、空へと飛んでいく。

「はぁ〜おっさんには理解できないないな。戦兎が見たら喜びそうな変形だったけど。いや、本当に物理法則どうなってるんだか」

 コブラに盾になってもらうのも限界が近いのか、コブラは倒れ、その身は消えていった。

 けれど、ブラッドスタークには不安はなく、その瞳には、クウガゴウラムに搭乗していた二人が鎧の戦士の翼を切り裂く光景がしっかりと映っている。

『FINAL ATTACK RAIDE』

『K・K・K・KUUGA』

 とどめと言わんばかりに、クウガゴウラムが鎧の戦士を顎で挟み、地上へと急降下してきていた。

 いつの間にか地上に降り立っていたディケイドが、既に次のカードをディケイドライバーに挿入しており、ブラッドスタークはなんとなくに察したのか、もう1匹のコブラを召喚すると、クウガゴウラムの先へとその身を伸ばさせた。

「気が効くな」

 ディケイドはそう言い残し、コブラの巨体を駆け上がっていき、クウガゴウラムの軌道の先へと目掛け、キックの体勢を整えて飛び上がる。

「はあああああぁぁぁぁぁぁっっ!!」

「バカな! こんな、こんなことがあるかァァァァァァッッ!!」

 空中でクウガゴウラムとディケイドが挟み撃ちにする形になり、ディケイドのライダーキックが鎧の戦士へと炸裂する。

 鎧の戦士は空中で燃え尽き、ディケイドと、クウガへと戻った2人の仮面ライダーが着地を果たす。

 燃え尽きずに残ったタカとガトリングのフルボトルは、マスターの元へと落下し、彼の手に握られた。

「おっと。2本のフルボトルを同時に取り込むなんて、これまで1度もなかった……なにより、仮面ライダーでもなければスマッシュでもない存在が、それを成したってことだ。嫌な予感がする……早く戦兎たちに知らせないと」

 戦いが終わろうとも、この新世界での問題は、まだまだ終わることがなく。

「で、そのフルボトルってやつはどうするつもりなんだ?」

 どういう理由か、ブラッドスタークの前にはディケイドが。その両隣には、クウガとキバーラが、ブラッドスタークと対面して佇んでいた。




徐々に増えていくあらすじの文字数……。
今回のは過去最長と思える1100文字オーバー。これもう1話として更新できる最低値に届いてるじゃないか。
もう前書きのあらすじだけでいいんじゃないかな!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。