「おい、またなんか出てきたぞ」
「こいつ、前にその先の内容まで言っていった奴だな……はいはい、あんたの世界はここじゃないから帰った帰った」
「そう言わないでくれ、桐生戦兎。せっかくめでたい日が連続で来ているんだから。まず、我が魔王の歴史が平成仮面ライダーの最後の1ページとして刻まれたのが昨日。そして去年の今日。それはこの物語『天才物理学者と筋肉バカの新世界より』が連載開始した日である! これを祝わずにはいられない!」
「へー、そうなのか」
「そうか。特に気にしたことはなかったけど、もう1年経つんだな……ん? いや、俺たちまだ新世界でアーシアとレイナーレと出会って、リアスたちと協力関係を持って、駒王学園の教師になったばかりだから、1ヶ月程度しか経ってないんじゃ――」
「すまないが、話がややこしくなるから黙っていてもらえるかな? とにかく、祝え! ビルドロスを補うために始まった今作が1周年を迎えたことを!」
「まーたあらすじ紹介乗っ取られたよ……」
「っていうか、俺たちが紹介するのもなんだか久々な気がするけどな」
「紹介できてないんですけどー。もうなんなのこいつら……」
放課後になりしばらく経ってから、俺と万丈は旧校舎へと向かう。
一誠と裕斗も既に向かっているだろうしな。
「なんでこんなに遅くなってんだよ!」
「しょうがないでしょうが。教師として明日以降の授業の準備、提出されたプリントの整理なんかもあったんだから。それに、他の教師陣との話もあったんだし……ああ、そっちは一人なのか?」
「あ? おう。って、なんだよその可哀想な奴を見る目は!」
「はいはい。ほら、さっさと行くぞ」
「おまえを待ってたんだろうが……」
ぼやく万丈を連れながら旧校舎に着くと、裕斗が待機していた。
こちらを見ると表情を穏やかなものに変えたあたり、俺たちを待ってくれていたのかもしれない。
「悪いな、待たせた」
「いえ、気にしないでください。教師よりも生徒の方が早いのは当たり前のことですから」
なんでもないことのように言いながら旧校舎の中へと招いてくれた裕斗は、そのまま前を進んでいく。
一応、前回来たときに道順は覚えているのだが、彼なりの気遣いなんだろう。
程なくして、この前訪れた部屋へと招かれたわけだが、やはり悪魔らしい装飾というべきか。そこには、既にリアスたちオカルト研究部の面々が揃っている。
「みんな居るんだな」
「ええ。貴方達から話があるということと、昼休みの騒動についてよね? さあ、座ってちょうだい。朱乃、二人にもお茶をお願いできる?」
「はい、部長」
朱乃が席を離れていき、俺たちはリアスの前の席へと通された。
「まずは、教師就任おめでとう、と言った方がいいのかしら?」
「いや、それよりも万丈に用務員就任おめでとうとでも言ってやってくれ」
「ふふっ、駒王学園の用務員って大変なのよ? 生徒会長のソーナからのお願いもあるだろうし、肉体労働ばかりなの。おめでとうなんて言っていいのかしら?」
「いい、いい。こいつは頭使うことは無理だけど、そういったことならなんでもやるよ」
隣でクッキーを頬張る万丈を視界に収めながら、リアスの疑問に答える。
聞いていた高校生組は「万丈の扱い雑だな〜」といった曖昧な笑みを浮かべていたが、そのすぐ後に「まあ、それもそうか」と自分たちの中で納得したのか、小さく頷くのが見えた。
「よかったな」
「なにがだよ?」
万丈の肩に手を乗せてそう言ってやるが、当の万丈はなにも気付かなかったようだ。こいつはこれでいいんだけどな。
なんて談笑しながら待っていると、朱乃がお茶を淹れてくれた。
「さて……まずはなにから聞けばいいのかしら? もしくは、私たちがなにかを話した方がいいかしら?」
紅茶に口をつけて落ち着いたリアスから、そんな言葉が出てくる。
これはつまり、彼女たちが持つ情報の中に関連する事柄があれば開示してくれると告げられたのと道義というわけだ。自分たちだけでは手に負えない大事になるかもしれないという直感があるのかもしれないな。
「ああ、もちろん聞きたいこともある。けど、最初に昼休みの一件についての擦り合わせをしたい。始めに、昼休みに何者かの手によって駒王学園の生徒が怪物にされたことについては、一誠と裕斗から聞いていると思う」
全員が頷くので、続きを話す。
「あの怪物の名前はスマッシュ……俺と万丈が戦ったとある組織の実験で生み出された存在なんだが、早い話が改造人間か」
「改造人間……そんな実験があったなんて」
一誠が声を漏らすが、隣にいた裕斗の顔も苦渋で歪む。なにかあったのか聞きたいところだが、そんな雰囲気でもないな。
「ただ、おかしな点がある。通常、スマッシュになった人間を元に戻すには、倒したスマッシュからその成分を抜き取る必要があるんだ。そうすることで初めて、無事に人間の姿に戻るはずだったんだが……」
「なにか異変があったのね?」
「そういうことだ」
質問に答えながら、懐からボトルを取り出す。
「それは?」
「これは、例のスマッシュを倒したときに採取した――いや、取り出した成分の源だ。これを俺たちはフルボトルと呼んでいる」
「松田から出てきた奴だな」
万丈が補足としてなのか、ただの感想なのか分からないが、追随して口を開いた。
「これは――貴方たちが使っているものとよく似ているわね」
机に置いたフルボトルを見てすぐにわかったのか、リアスがそれを手に取る。
ゴリラの意匠の凝らされた、仮面ライダービルドを支えてくれたフルボトルのひとつ。
「俺たちの力も、元を辿れば同じ物だからな。力なんて、使い方ひとつで変わるものだろ? そのフルボトルも、そのひとつでしかない」
「そう……それで、なにがおかしかったのかしら?」
「本来、フルボトルはスマッシュから成分を採取することで、その成分を浄化しいまの形になるんだ。けど、今回スマッシュを倒した際には、既にその状態で人体から出てきた」
「それはつまり」
「俺たちの知っているスマッシュとは別物……別口から生み出された存在になる」
あってはならない研究がこの新世界でも始まっている。
原因は、フルボトルの発見だろうか? それとも、まったく関係のない悪魔や堕天使の仕業? 考えられる可能性はいくらでもある。
その中には、絶対に有り得てはならない可能性も。
「つまり、貴方たちも関与していない相手というわけね……レイナーレといい、今回の件といい。今日のところは騒動に気づいた朱乃が周囲に結界を張ってくれたおかげで一般の生徒にバレることは防げたけど、警戒を引き上げるべきかしら?」
「結界? んなもんあったのか?」
「ええ。敵の対処自体はできなかったけど、それくらいのバックアップは任せてちょうだい。実際、騒ぎにはならなかったでしょう?」
なるほど。
道理であれだけの騒音があったはずなのに生徒たちがおとなしいわけだ。同時に謎も解けてスッキリだな。
「次、同じことを起こさせるわけにはいかない」
「その通りね。この地は私の管理する土地であり、暮らす人たちを守るのも私たちの使命。誰かは知らないけれど、好き勝手に暴れられては困るもの」
リアスの言葉に、彼女の眷属たる仲間たちの目に力が宿る。
とはいえ、いくら悪魔といっても彼女たちはまだ高校生。本来体を張るべきなのは大人であり、仮面ライダーである俺たちなのだろう。
と言って、素直に聞くタイプじゃないよなぁ。
「わかった。ただ、できれば戦うときは俺か万丈がいるときにしてほしい。フルボトルそのものが排出されるとは限らなし、もしものときは成分を抜く必要がある」
「――……わかったわ。それなら、もしそのスマッシュというのを見つけたら、貴方たちに連絡を入れる」
一瞬渋い顔を見せたものの、納得してくれたようだ。
自分たちでどうにかできると思われていないことへの瞬間的な感情だろうか。どこかでフォローも必要そうだな。そういうのは俺よりもあいつらの方が……いやいや、この世界で戦うのは俺と万丈、あとは成り行きだったけどマスターだけで十分だ。マスターだって、そう頻繁に戦うわけじゃないだろうし。
いつまでも、あの世界での仲間たちを巻き込み続けるわけにはいかない。
今度こそ、あいつらが平和に生きるためにも――。
「よっしゃあ! スマッシュ相手なら任せとけ!」
「バカ、出ないのが一番いいに決まってるでしょうが」
「そうね。出てこないのが一番いいわ」
「お、おう。そうだよな!」
万丈に対して俺とリアスから小言が飛び、緊張していた空気が霧散していく。
「ところで戦兎。このフルボトル? だったかしら。これを使えば、貴方と龍我は新しい力が手に入るのよね?」
「ん? ああ、そうだな。フルボトルが増えれば増えるほど、仮面ライダービルドの戦術は広がっていく。早い話が、相手に合わせて的確なフォームチェンジが可能になり、有利に戦えるってところだな!」
とはいえ、手持ちはフルボトルの総数からすればかなり心もとない。
新世界創造後に増えたフルボトルは、ライトとゴリラのみ。せめてベストマッチのひとつでも増えてくれれば……。
「敵に合わせたフォームチェンジ。それはまさにヒーローの証……」
暗い考えをしていれば、小猫からの呟きが耳に届く。
彼女の目には確かな輝きがあり、リアスが握るゴリラフルボトルをしっかりと捉えている。
「やっぱり、小猫は話がわかるみたいだな」
「わかります。フォームチェンジ、それはロマン」
「そうそう。機会があったら見せてやるからな!」
「はい、楽しみにしています」
「おい、俺には戦うことがないことが一番みたいに言いやがって」
小猫と意気投合している最中に万丈から茶々が入るが、
「違いますー。変身するだけなら戦うことにはなりませんー」
そう返しておこう。
この後も雑談が続き、互いに聞きたいこと、必要な情報が判明次第共有することが決まり、今日のところは解散となった。
まだまだ悪魔である彼女たちのことやその悪魔社会についてはわからないことだらけだが、駒王学園に通う生徒であるあの子たちは信じてだいじょうぶだろう。
「高校生のくせに自分たちがみんなを守らないとなんて、凄え奴らだよな、あいつら」
マシンビルダーを走らせる中、後ろに座る万丈からそんな言葉が漏れた。
確かに、高校生のうちからそんなことを思えるのは凄いことだし、戦うことは怖いことのはずなのに前に立とうとする。
「だから、俺たちが支えて、守ってやらないとな」
「おう! 当たり前だぜ!」
さて、あとはnascitaに帰って、今日のことをマスターとレイナーレに報告しておくか。
なんて、軽い気持ちで帰ってきたのがいけなかったのかもしれない。
「ただいまー。初日の天っ才的授業内容を――はい?」
「腹へったー! マスター、なにか食べるもん……ん?」
nascitaのドアを開け、中に入ってすぐ。
対面するように座るマスターと、その反対側に座る3人組が目に入った。
しかも、3人組のうち2人は以前店に来て、少しだが話した覚えがある。あとの1人は知らないが、一緒にいるのだから知り合いなんだろう。
「こんな時間に客がいるのも珍しいな」
「だな。普段なら飯作ってる時間のはずなのに」
万丈と一緒に頭を傾げていると、座っている4人から一斉に目を向けられる。
「おお、戦兎! 万丈! 帰ってきたのか……良かったぁ。もう俺だけじゃ意味わからなくてよぉ」
座れ、座れ! とマスターに促されるままに、これまでマスターが座っていた席に座らさられ、その横に万丈も腰を下ろす。
「よお、前に来てくれたよな?」
「ああ、うん」
「はい!」
万丈から話しかけられ、人の良さそうな笑顔を浮かべて応えるのは、以前も来てくれた2人だ。
その二人の間に座っている――真ん中の席にいる男は……。
「ああーっ! おまえ、今朝のカメラ男!?」
「よお。朝以来だな?」
「なにが朝以来だよ! おまえなにしに来たんだ!」
こちらがなんと言おうと偉そうに腕と足を組んだ様子を崩さないその男は、ふと行動を起こし、象徴でもあるかのように下げたカメラのシャッターを切り、満足そうに頷いてまた腕を組む。
「なんだ、こいつ……」
「ごめんなさい、士くんも悪気があってやってるわけでは……というか、今朝の話ってなんですか士くん!」
「そうだよ士! もしかして、この人に迷惑かけたんじゃないだろうな!」
よくわからない奴だが、一先ず文句を口にしようとした直後。
両隣に座る優しげな2人が先に文句を言いだす。
面倒臭そうな態度をする真ん中の男と、よほど言いたいことが溜まっていたのか言葉が止まらない人たち。
「どうなってんの、これ……」
「っていうか、結局なにが起きてんだよ」
状況がまったくわからない俺たちを他所に、話は止まらず、珈琲を淹れに行ったマスターはニコニコしながらこちらに口を挟んではこない。
なんか、どっと疲れが襲ってきたな……。
というわけで、1年が経ちました。
ビルドロスから始まったif兼クロスオーバーのアフターストーリー。まだまだ展開が残っている作品ですが、安心してください。この先も書いて行きますので。
この先も仮面ライダーである彼らを書いていければと思います。
ジオウも最終回を迎え、なにか書きたい欲がありますが、あわよくば今作に登場も考えていますが、さてさて、どうなることやら。
それはそうと、この話も30話近く書いてるわけですが、強化フォームはいまだ出番がなく(パワーインフレの都合のため)そもそも変身回数も少ない事実。それでもこの先は変身も増えるといいかなと。