「やっぱマスターの器広いよな。普段あんだけおちゃらけてんのに」
「前の世界ではエボルトに抗い続けた人だぞ。胆力も凄いに違いないでしょ。はい、続き行くぞ。何者かの殺気に気づき、nascitaに迷惑をかけないために公園へと舞台を移す。しかし、公園に入ってすぐに起きた現象に気を取られた戦兎と万丈は、敵からの奇襲を受けてしまった」
「なあ、どうでもいいけど結界に気づいたのって俺のおかげだよな? どうよ、俺の第・六・感!」
「……」
「なんとか言えよ!」
「さあ、どうなる第5話!」
「無視かよ! 絶対許さねぇ!」
「人の決め台詞を自分の台詞と間違えて使うんじゃないよ」
「え? あ、マジかよ!?」
まずい、完全に奇襲だ!
それでも、ライダーシステムの使用、スマッシュ、ガーディアン、仮面ライダー、エボルトとの戦闘を経て上がった動体視力と身体能力なら!
「まあ、これくらいの速度の攻撃、かわせないこともないってね」
「うおーっ!?」
なんて余裕を見せていたら、万丈がいたはずの場所から叫び声が上がった!? おい、まさか――。
「万丈ォォッ!!?」
叫び声が聞こえてから二度、三度と光の槍が万丈のいた場所へと向けられ、辺りを土煙が包む。あんのバカ!
俺より動体視力いいでしょうになんでだよ!
「おい、無事か万丈!」
土煙の中、万丈のいた場所へと進む。そこには、
「ほう、ふぇんと! ふじだっはか!」
「えぇ……」
おそらく初撃のものだろう光の槍を口で咥えて防ぎ、俺は躱した槍を手で掴む万丈の姿があった。
いやいや、バカかよ――バカだったな。バカの名に恥じない防御手段とも言える。
「いいから早く咥えてる槍捨てなさいよ」
「ぺっ、おう戦兎。無事みたいだな」
「俺はおまえの頭が無事じゃないことを再確認したけどな」
「どういう意味だよ!」
そのまんまの意味でしょうが。なんだよ口で噛むことでガードって! ギャグ時空じゃないのよここ!
っと、危ない危ない。いつものノリで話し始めるところだった。先手取られてるんだからしっかりしないとな。
「万丈、おまえだいじょうぶなんだろうな?」
「ん? ああ、問題ねえみたいだな。あの光のやつ、見た目凄え光ってるけど大したことないぞ」
確かに、万丈が掴めていたことも考えれば大した威力はないように思えるが、土埃で辺りが見えなくなるまで地面をひっくり返せるだけの力はあるんだよなぁ。
それを平気って……いや、待てよ。もしかしたら万丈なら平気でも不思議ではないのかもしれない。
「戦兎、どうすんだ?」
「あ? ああ、とりあえず相手の正体を突き止めて、できるなら捕まえておきたい。こんな攻撃方法を取れるとしたら、スマッシュか……」
「ライダーシステムか?」
「そうなる。この新世界でのイレギュラーは俺たちだけだと思っていたが、確認するしかない」
「おう!」
俺と万丈は同時にビルドドライバーを取り出す。
「なんか久々に感じるな」
「当たり前だろ。本来なら、もう必要のない物のはずだったんだからな」
普通に話しているように見えて、俺も万丈も表情は硬い。
それは驚き、不安なんかじゃない。せっかく平和になった世界でなにをしてくれたのかという、この煙の向こうにいる誰かへの怒りだ。
懐から、手元に残ったフルボトルのうち2本を取り出す。
「あいつらが命をかけて託してくれた世界を壊すようなら、絶対許さねぇ!」
「落ちつけって。台詞間違えてるぞ」
「あっ、やべ……コホン、とにかく行くぞ戦兎!」
「なーにやってるんだか」
万丈の手元にもグレートクローズドラゴンが収まる。
ビルドドライバーが腰に巻かれ、機械音が発せられた。
俺は両手にひとつずつ持つフルボトルを振り始め周りには公式が漂流を始め、万丈はグレートクローズドラゴンにフルボトルを差し込む。
『覚醒!』
ひとつ音声が耳に届く。
なら、俺も。
『ラビット!』『タンク!』
『ベストマッチ!』
ビルドドライバーのスロットに2本のボトルを挿入する。
「よっしゃぁ!」
『グレートクローズドラゴン!』
ベルトから音声が聞こえて来るのを確認してから、右側にあるレバーを回す。
俺たちの前後には、レバーを回すたびにビルドドライバーから伸びたパイプによってスナップライドビルダーが構築され、装着者を挟み込むように装填したフルボトルの成分に合わせたハーフボディが形成されていく。
その間も機械音が流れているが、一定のリズムを刻むと音楽は止み、また別の音声が聞こえて来る。
『『Are you ready?』』
いつだって、できてるさ。
「「変身!!」」
スナップライドビルダーが俺と万丈を各々挟み込むと、ハーフボディ同士が結合され、変身が完了する。
『鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!』
『ウェイクアップ クローズ! ゲット グレートドラゴン! イエーイ!』
俺はラビットフルボトルとタンクフルボトルを使い、仮面ライダービルドの基本形態となるラビットタンクフォームへ。
万丈はグレートドラゴンエボルボトルを装填したグレートクローズドラゴンを使ってグレートクローズへと。
決め台詞も、忘れずにな。
「さあ、実験を始めようか」
土煙は俺たちの変身と共に晴れ、そして――俺たちの前には痴女が現れた。
「は?」
「あん?」
俺と万丈の口から、同時に間抜けな声が漏れる。
いやいやいやいや、あれはやばい奴だって。むしろ俺たちじゃなくて警察が相手にするべきでしょ。
「なあ戦兎、俺の目はどうにかなっちまったのか?」
「安心しろ、俺もあれはおかしいと思ってる。っていうか、あれがさっきの攻撃してきた敵なのか?」
「さ、さあ……? でもあいつ以外誰もいねえしな」
困惑するばかりだが、とりあえず常識的にありえない。あのエボルトでさえそのあたりの常識は持っていた。
「でもよく見ろよ! あんなん普通の女がする格好じゃねえよ!?」
万丈が俺たちの前に立つ女性を指差す。普段なら人のことを指差すんじゃないよと言っているところだが、生憎そのツッコミをしている余裕がなかった。
だってなぁ、あれはちょっと……。
「あなたたち、随分な言いようね……というか、なに、その格好」
頬がヒクヒクと動いていることから、お怒りの様子の女性の格好は、背中から生える黒い一対の翼に、肌を大きく露出させるボンテージ。
そのくせ顔は綺麗に整っていて、美少女の部類に入るものだろう。
「なんて残念女だ」
「うわ〜命知らずー」
「なんですって!?」
ポツリと万丈がこぼしたつぶやきに噛み付いてくる露出美少女。
しかし、目の前の少女の言葉はそれだけでは終わらなかった。
「あんたたちだって変な格好しているじゃない! なによそのださい格好!」
「はあ?」
「ああん?」
いま、なんと言っただろうか? 変な格好? ださい?
「かっこいいでしょうが!」
「戦兎はともかく俺はかっこいいっつーの!」
「は?」
「あ?」
「あなたたち、ちょっとは危機感持って焦りなさいよ!」
俺たちの遣り取りに我慢の限界が来たのか、黒羽の少女が光の槍を空中に作り出し俺たちへと投げつけてくる。
「やっぱりあいつがさっきの攻撃をしてたのか!」
それを難なく殴り壊した万丈。
俺も左足で蹴ってみたが、こちらへのダメージは一切なく、光の槍は難なく砕け散った。
「うそ……」
「はっ、よくわからねえが、どうやら俺たちの勝ちみたいだな!」
「くっ、このままじゃ終われないわ!」
「知るか!」
駆け出した万丈が少女を捕まえようとするが、それより早く少女は羽を羽ばたかせると空へと舞い上がった。
「なに!?」
「残念ね、飛べないのなら私には追いつけない。それにいいわ。あなたたちを誘い出せたおかげで、いまあの店には他に力を持った人間はいないのでしょう?」
店……まさか!
「nascitaを襲う気か!?」
「なに? やべえ、まさかこいつ他に仲間がいんのか!」
「ここでのんびりしていていいのかしら? まあ、この公園の辺り一帯は協力者によって結界が張られていて、並大抵の力では出られないわよ」
「うるせえ! おらぁ!!」
パリン、と破砕音を響かせ、公園に入った際に見えた公園を覆っていた薄い膜のようなものが消え失せた。空に逃げている少女は口を大きく開け、「なんなのあいつら……めちゃくちゃじゃない」なんて言っていたが、相手にしている時間はない。
「さすが筋肉バカ。おまえにしてはよくやったよ」
「うるせえ、早く戻んぞ!」
「わかってる」
あそこには傷ついてほしくない人たちがいるんだ。
「おまえにはあとで必ず事情を吐かせる」
事態の展開に追いつけていないが、少なくともあの少女がなにかを知っているのは確かだ。そして、その狙いがnascitaにいる3人のうちの誰かだということも! くそ、間に合ってくれ!
戦兎と万丈がnascitaから出て行ってすぐのこと。
「今日もやってまいりました。これ、今日のお花です。綺麗なあなたに似合うお花が咲いていたので、つい。ああ、美しい!」
「カシラ、店の前で練習してないで早く入りましょうよ」
「そうだよカシラ〜」
「カシラ、いつも渡すとき噛むからな」
「うるせえぞこら! ったく、もういい。早く俺の天使に会いに行こうぜ」
そうして、3人の男性を引き連れたリーダー的な雰囲気を醸し出す男性がnascitaへと来店した――。