男女比に差のある世界のTS配信者   作:熊猫パンダ

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日刊2位、一気に人が増えましたね。……おそろしや。
期待されてると思って頑張ります。


お絵描き配信

「どうもこんにちはー、ノームです。今日はこの『お絵描きの林』をやっていこうと思います……。」

 

『待ってたで』『わこつん』『ノー民蜂起の時間だああああ』『今日ちょい元気ない?』『ママの絵だぁ!』

 

憂鬱が隠せない。

理由は単純で、私の絵が下手だから。

無料で視聴者も気軽に参加できて、配信映えも見込めるゲーム。

ああ、これが絵を描くゲームじゃなければ完璧だったのに。

 

まず、男の頃から絵を描くのは苦手だった。

そしてそれは今も変わってないのだ。

これから女の子は絵がうまい、という幻想を打ち壊してしまうことに申し訳なさしかない。

 

「えーっと、私は絵が上手くないので失望させたり、迷惑をかけるかもしれないです。本当にごめんなさい」

 

『ええんやで』『ネタになるしセーフ』『むしろやってほしかった』『ママの絵楽しみすぎる』『安心しろ、女子の絵やぞ』

 

……うわあ、わかってなさすぎる。

落ち着け配信者ノーム、やるからには開き直れ。

質問箱でもやってほしいという意見が多かった、つまりは需要があるということだ。

 

 

「はいっ。ロビーは中級の広場は06にしてます。パスワードは……596306にしてますよーっ」

 

間髪入れずに5人入ってくる。

それと同時にお絵描きの林が重くなった気がする。

――全画面でゲームを起動してるせいで、視聴者の数が見れないのがもどかしい。

 

『ガチ勢ハヤスギィ!』『バリーニキおるやん!』『もう広場まで埋まってるんですが』『入れなかった』『【定期】パスワードは596306』

 

「バリーさんって初配信にも来てくれてましたよね?いつもありがとうございます。後、パスワードを配信の詳細に貼っておきますね」

 

何度か試しに遊んだが、視聴者とは初めてなので緊張する。

……あ、私が最初の書き手だ。

お題は――『ラジオ体操』ときたか、難しい。

とりあえずは棒人間をたくさん書いて、それぞれにポーズをとらせる。

うん、微妙な絵だがラジオ体操に見えないこともない。

 

『なにこれ』『黒ミサ』『狂信者?』『ノー民か?』『なるほど下手だ』『攻めたね。』

 

攻めてねえよ。

ああっ、2番手の人が困ってる。

既に棒人間達が1つの塊になろうとしている。

 

最終的にはたくさんの棒人間がくっついて木になった。

なぜか選ばれるMVPが心に刺さる。

 

 

「あっ、あっ。――ごめんなさいっ。頑張ったつもりなんです!」

 

『喘ぐな』『泣かないで』『ありがとう今日使います』『ハンゲが悪い』『予想の6倍ひどかった』『ここぉ↑スキッ』『草』

 

……ひどい罵倒が飛んでこないのが余計に辛い。

自重してくれてる視聴者の優しさも時にはダメージになるのだ。

どれくらいひどいかというと、私が書き手になると次の回答が大体変化する。

4巡したがあまりに正答率が低いので、お絵描きリレーじゃなくて皆で協力できるスピードリレーに変える。

 

自分が書いたところに付け足してくれる人がいる。

……絵が絵になってる!

 

「介護してくれたノー民さん達、本当にありがとうございます!初めてまともに絵を描けた気分ですっ」

 

『介護されてた自覚あったのか……』『絵心を手に入れた女』『ワイも初めてに携わりたかった』『スコこここーん』

 

「だってやってほしい、という意見が多かったんだもん……」

 

少しずつ正解が増えていく。

協力していることで、本当に視聴者がいるというのを実感できる。

――今が配信していて一番楽しいかもしれない。

 

およそ1時間遊び続けて、そろそろ切り上げることにする。

名残惜しいが、また『お絵描きの林』配信をしよう。

 

 

その後は質問箱にある質問を返していく。

 

「えっと、チョココロネさんより頂きました。『タケノコ派ですか、?キノコ派ですか?』――答えたら戦争になるので黙秘しますっ」

 

今の視聴者は念願の1000人を軽く超え、およそ1300人いる。

ここでキノコタケノコ戦争が始まったら収拾をつけれる自信はない。

質問を選んでおいて悪いがスルーだ、次。

 

「塩のレモン漬けさんより、『ノームさんのファンアートを描きたいんですが、少しでも特徴を教えてくれませんか?』難しいところですね……」

 

もちろん、身バレが嫌なのでまともに答える気はない。

でも、確かに絵を描きたいと言われると困り所だ。

やっぱり好意は無下にできない。

 

「身長は特に高くないですし、皆さんイメージ通りの黒目黒髪を想像してもらってボブヘアーにすれば、大体私になりますよー。以上っ」

 

『特定した』『胸小さそう』『ほーん、ええやん』『あくまでノームの話だからなあ?』『清楚だ間違いない』『特定ネタやめとけ』

 

実際の私は目は藍色に近いし、髪も茶色寄りの色をしている。

……胸はそんなにないです。

でもノームは黒目黒髪、それでいい。

 

 

放送を終えるとすぐにエゴサーチ。

twisterの感想はすぐ確認しないと、流れてしまう。

 

『弱点があって安心した』『今日も可愛かったぞ』『ナスカの地上絵の方がわかりやすい』――うるさいわい!

『神回だったわ』『ネズミのお題でミ○キー描いてたの草』『ノーム喘ぎ声.mp3』『ノームさんへ、お納めください』――ん?

 

最後の呟きを確認すると、そこには放送で言った特徴をした女の子がデフォルメされて描かれていた。

……質問に答えてからおよそ10分、仕事が速すぎではないだろうか。

 

高速でリツイートした。


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