150件以上の感想、ありがとうございます!
感想返しが本当に楽しいんです。
今日もtwisterのダイレクトメッセージに目を通す。
9割方ひどい内容なので無視しているが、かといって見ないで無視するわけにもいかない。
――お、まともな日本語が見える。
『ノームさんのまとめ動画やMADを作っても良いでしょうか?』
『許可なんて必要ないですっ! 常識的な範囲であれば自由に使ってくださいね』
気分も良いので特に考えもせずに返信をしておく。
そう、今の私は最高に気分が良いのだ。
先日ついに、ネットで買ったキャプチャボードとゲームソフトが届いた。
キャプチャボードというのは、据え置き型のゲームを配信に載せられるようにするもので、配信者の心強い味方だ。
これでノー民達と一緒にモンスターを狩ったり、床にインクを撒いたりすることもできるのだ。
早速配信で使いたいのだが、ノー民達はどんなゲームをしてほしいんだろう。
『キャプチャボードが届いたので、本日21:00からゲーム配信を行います!そこで何のゲームをしてほしいかのアンケートを取らせてくださいっ』
アンケートの内容はRPG、アクション、レース、ホラーの4択に絞らせてもらう。
パズルゲームも好きだが、今は手元にないので断念。
『恋愛ゲームしろ』『野球やって♡』『地上絵を描け』『ノームに百合ゲーさせたい』『アイワナってアクション?』
……この世界の百合ゲーに需要はあるんだろうか。
「どうも、こんばんはノームですっ。今日はtwisterのアンケート結果で1位だったホラーゲームをしていこうと思います。たぶん怖いのが苦手な方でもできるのを選んできました!」
『何…だと…』『怖がるノームはどこ…ここ?』『個人的には助かった』『悲鳴は聞けないんですか……?』
私は怖いのが苦手だ。
特に戦うタイプのホラーゲームは本気で無理、怖くて逃げるのが限度だ。
なのにホラーゲームがアンケートの選択肢に入っているなんておかしい話で、対策しているに決まっている。
「今日はこの『NIGHTMARE』というゲームです!PVを見た限り、綺麗な3Dで画面も明るいのでいけるはずですっ!おそらく、怖さやグロさも大したことはないと思いますっ」
事前にそれっぽそうなサイトにも怖くないとあるのを確認してある。
『あっ……』『もしや騙さ…』『女の子にはきつい』『怖E』『期待に応える配信者の鑑』
「もしや、私なめられてますね。昔に雰囲気ホラーならクリアしましたし、他の女性より耐性はあると思いますよ……よしっ。こういう少しの狂気とポップな雰囲気、ちょっと好きなんですよね」
自身の夢の中を探索していく、というコンセプトでメルヘンな雰囲気が本当にホラーなのか、疑問を抱く。
ゲーム開始地点は飴やリボンが散らばる部屋。
そこから廊下を真っ直ぐに進むとPVでも見たことのある扉。
ここから色んな夢の世界を旅していく、というのがストーリーで、少しだけ怖い世界もあるというもの。
意気揚々と扉を潜ると――血塗れの世界が広がっていた。
え?
『そのサイトネタゾ』『作った人病んでた奴』『ホラゲーボスバトル』『病みゲーだぞ』『綺麗な絵柄(笑)』『ケツからエメラルド漏れた』
「嘘でしょう?……今からでも他ゲーに変えるのは……いや、頑張りますっ!楽しみにしてくれてた人もいるはずです!」
『よう言った!それでこそ女や』『意外とクリアまで短いぞ』『後悔することになるぞ』『ヒエッ』
大丈夫、ホラーゲーム1つクリアできないのに、これから配信者が務まるはずがない。
戦闘がない、とパッケージに書いてあったし、それは嘘じゃないはずだ。
……ならいけるっ!
風呂に溜まった血の中から突如として現れる死体。
後ろを振り向くと突如違う場所にいたりして、いちいち心臓に悪い。
「やっぱり無理ですっ!なんでずっと主人公息きれてるんですかっ!?息止めてくださいよっ……しっ、死体がぁっ。ぁぅぁ……」
『お絵描きで同じようなん書いてたやんけ』『おい農民、守れよ』『くーっそかわいー↑』『息止めたら主人公が死ぬやん』『泣かないで』『精神的にクるな』
綺麗な3Dが余計にリアルな怖さを感じさせる。
それなのに夢の中だから、と言わんばかりに世界が急に変化するのだ。
殺人鬼が来たと思ったら、次の瞬間には化け物に追われている、なんてこともザラ。
そこらかしこに主人公の死体が転がっており、臓物や血、脳味噌までもぶちまけられている。
……怖くないはずがない。
2時間以上様々な世界から逃げ回り、最後は脱出するだけ。
ワンミスすると即死の道を、約1分逃げ続ければ終わり、終わりなのに……。
「BGM盛り上がらないで下さいっ!……あうっ……。これ、本当に逃げられるんでしょうか……?」
私も上手くなってはいると思うんだが……。
既に最後の一本道には主人公の死体がたくさん転がっており、それが移動を妨げているのだ。
――死ねば死ぬほど、難易度が上がるなんてゲーム初めてだ。
少しずつ配信を気にする余裕がなくなってきて、ほぼ半狂乱で走り抜ける。
「ごめんなさいっ。ごめんなさいっ!痛いのはイヤっ。やめてください……ぁあ。……終わった?――すみません、取り乱しました」
『ガチビビリ』『怖すぎて痛いって言うのわかるわ』『泣かないで』『ママを泣かせるな』『NIGHTMARE、名前覚えたからなあ』『素材確定』『スッて立ち直るの草』
コメントを見る余裕も生まれてきた。
配信画面ではエンディングが流れているが……、うーむ、途中から目を瞑っていたのでストーリーをよく見れてない。
なお、最後の逃走だけは目を瞑っていてはできないのが鬼畜仕様。
二度とやらない。
「はあ、本当に疲れました……。適当にホラーゲームを選ぶことは二度としませんっ。次にやるゲームはまともな物をしたいと思います。今日は皆さんのお陰で何とかクリアできました。本当にありがとうございましたっ。以上、ノームでしたー」
マイクから離れて、お茶を取りに行く。
……後ろに誰かいないよね?
これからこのアーカイブの確認と思うと気が重い。
思えばホラーゲームも男性用に作られているわけで、グロ描写や流血描写なんて当たり前。
「まだ心臓なってるし……。夜眠れますようにっ」
パソコンの前にフラフラ向かい、流れていくコメントを眺める。
……?
なんでコメントが流れているんだろう。
「配信切れてなくてごめんね!以上ノームでしたっ!」
誤字報告をしてくれる方、ありがとうございます。
感謝を伝える場がここくらいしかなくて、申し訳ない。