死の支配者と荒ぶる鬼神   作:ボンズリ

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第1章 ~異世界~
第1話 ~状況把握~


「あの…いかがなさいましたか?」

 

 

―――目の前であり得ないことが起きている。

 

 

NPCであるはずのアルベドがこちらを心配そうな表情で伺っているのだ。

 

こんなことを他の者に話しても鼻で笑われるかもしれない。

 

「あり得ない」だの、「ついに頭がおかしくなったのか」と言われるであろう光景が容易に想像できた。

 

自分でも頭が変になったのかと思ってしまう。

いや、そう思ってしまいたかった。

 

 

だが、時に現実は非情である。

 

 

 

目の前のアルベドはどう見ても呼吸しているし、頬も微かに赤みがかっている。

 

それに、周りをよく見ると待機しているはずのセバスたちもこちらの様子を伺っているようだった。

 

―――信じたくはないが、何かしらのトラブルによってアルベドたちNPCに命が吹き込まれた、と考えて間違いないだろう。

 

このまま考えていても埒があかないので、取り敢えずアルベドに返答してやることにした。

 

 

「運営にGMコールをしようと思ったのだがな、何故かコンソールが開かぬのだ」

 

「…申し訳ありません。私ではGMコールというものが分かりかねます」

 

「なるほど…すまぬなアルベド、気を悪くしてしまったか」

 

「そんな!そのようなことは決してありません!!我らは至高の御方々にお仕えしてこその存在であります!

気を悪くするなど、天と地がひっくり返ってもあり得ません!」

 

「そ、そうか。それならばよいのだ」

 

 

―――何です?この忠誠心の高さ。

 

正直なところ、こんなに忠誠心高い姿見せられて困惑しない方が可笑しいと思う。

しかしながら、咄嗟に上位者らしい発言が出来たことはかなり助かった。

普段から我が愛する「茨木童子」のロールプレイをしていて良かったと思えるほどだ。

隣にいるモモンガもこちらに向かって親指を立ててサムズアップしていた。

この骨野郎…本来はお前がやるはずのことだろうが…

この状況把握が終わったら少しお説教をくれてやらんといけないな…

 

密かに怒りの炎を心に抱きつつ、モモンガに少しアドバイスを送ることにした。

 

 

「おい、今度は汝の番だぞ。少しは支配者らしい姿と言動を示してやるがよい」

 

「えぇ?俺がですか?どうせならばらきーさんがさっきみたいにやってくださいよ~」

 

 

 

 

―――そんな気の抜けた返答に、心の中で抑えていた怒りの炎が爆発した。

 

 

 

 

「ほう…そんなに土に還りたいか…」

 

「…えっ?」

 

この時、モモンガはやってしまったと思った。

ゆっくりと、ばらきーの背後から巨大な二匹の鬼の顔を象った焔が立ち上ったのだ。

この状態の彼女は怒っている。それも激烈にだ。

この姿こそ、彼女が『荒ぶる鬼神』と呼ばれる所以である。

あの状態の彼女はあまりの怒りのためか、手加減が一切できない。

つまり、キレた彼女が手加減無しであの骨刀を振るうと、お察しくださいとも言うべき惨劇が繰り広げられるのだ。

 

このままでは自分だけでなくナザリック地下大墳墓までもが土に還りかねない。

ばらきーの突然のブチ切れによりアルベドやプレアデスたちが慌てふためく中、急ぎセバスに指示を出すことにした。

 

 

 

「せ、セバス!急ぎナザリックの外に出て周辺を確認せよ!」

 

「り、了解致しました。すぐに確認を行って参ります」

 

「あぁ待て待て!プレアデスたちも護衛として連れていくのだ!」

 

「分かりました。それでは皆様方、行きましょうか」

 

 

そういうとセバスとプレアデスは全速力でナザリックの外の確認に向かった。

―――彼が額から大量の冷や汗をかいていたのは見なかったことにしよう。

 

 

「さて…やるか…」

 

 

セバスを見送ったモモンガは、覚悟を決めてばらきーに向かい合った。

 

そして、そのままキレイなフォームで頭を下げた。

モモンガは現実世界ではサラリーマンであったため、上司などに頭を下げるのは日常茶飯事だった。

そして、これが怒りで荒ぶるばらきーを鎮める最適の手段でもあった。

 

ばらきーは非常に怒りやすい性格であるため、このような状況になるのはそう珍しいことでもなかった。

しかし、やはり放っておくとそのままナザリックを壊滅させかねないので、モモンガが代表して彼女に頭を下げる役割を担っていた。

(なお、特に彼が関与していないことであっても強制的に頭を下げることになっていたため、「理不尽だ!!」とよく叫んでいた)

 

 

「ば、ばらきーさん!言った通り指示を出しました!だからどうか!どうか!その怒りを鎮めて下さいませんでしょうか!!」

 

「………」

 

「どうか!!」

 

 

しばらく頭を下げていると、彼女の背から立ち上っていた焔が消え去った。

よかった、ナザリック崩壊の危機は去ったようだ。

 

 

「えぇい!興が冷めてしもうたわ!おいモモンガよ、汝は後で説教だからな!覚えておれよ!!」

 

(あっ俺終わったかも)

 

 

ある意味死刑宣告を受けてしまったが、それはそれ。

気を取り直して状況把握を続けることにした。

 

 

「ばらきーさん、各階層守護者を集めて状況の整理と共有化を図ろうと思うのですが、如何でしょうか?」

 

「ふむ…確かにそれは重要だな。ではここより広い場所で行うとしようか。第6階層辺りがよいのではないか?」

 

「ではそのように伝えますね。

アルベドよ、各階層守護者を第6階層に集合させよ。時刻は今から1時間後とする」

 

「御命、承りました。すぐに各階層守護者たちに伝えて参ります」

 

「うむ。頼んだぞ」

 

 

アルベドは深く一礼し、各階層守護者への伝達のため玉座の間を後にした。

 

 

「さて、吾も自分のNPCを呼びつけるとしようかのう。汝はどうするのだ?」

 

「いや、自分はやめておきます…」

 

「あぁ、そういえば『あれ』は汝にとって黒歴史そのものであったなぁ」

 

「嫌なことを思い出させないでくださいよぅ…過去に戻れるならあの時の俺にフルスイングでぶちのめしたいくらいなんですよ…」

 

 

ナザリックには各階層守護者だけでなく、ナザリックにおいて重要な拠点である領域を守護する「領域守護者」と呼ばれる者たちがいる。

例えば、このナザリックの所有するアイテムを管理する「宝物殿」が良い例だ。

そこにはモモンガが創造したNPCがいるのだが…

 

 

「滅多なことではへこたれぬ汝がそこまで言わせるとはな…。だが、そんな黒い歴史の塊ではあるものの、『あれ』は汝が創造したものであろう?」

 

「それは…そうですが…」

 

「ならば『あれ』の生みの親といっても過言ではなかろうに。親として、呼んでみてはどうだ。あやつも必ず汝の呼び掛けに答えてくれると思うぞ」

 

「…分かりました。それじゃあ宝物殿にいるあいつを呼んでくることにします。それでは、また1時間後に第6階層で」

 

「うむ、また後でな」

 

 

そう言って彼を見送った後、第9階層に隠されている自室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 

第9階層 ばらきーの自室

 

 

自室に足を踏み入れると、恐ろしいまでの不協和音が自室を支配していた。

普通の人間なら鼓膜が破れて卒倒してしまうほどのひどい音程の歌…もとい、超音波が聞こえてくる。

 

 

「やはりそうか…そうではないかとは思っていたが、ここまでとはな…」

 

 

げんなりした顔で深い溜め息をしつつ、不協和音の発生源に近づいていった。

 

 

「恋はドラクル~♪愛はブレイブ~♪」

 

「おいこら」

 

「あなたのはぁともブレイク~♪」

 

「いい加減にせんと羅生門大怨起をぶちかますぞ」

 

 

そう言うと不協和音の発生源が歌を止めてこちらに振り返った。

 

現実世界で言うところのアイドルが着るようなドレスを着こなし、頭には子ブタと子リスが飾られた帽子を被った彼女は、よくあるところのお嬢様のような外見をしている。 

だが、普通の少女にはまずないであろう巨大な尻尾をブンブンと振り回しており、怒りを露にしているのが容易に見てとれた

 

彼女こそ、自分が創造したNPCである『鮮血魔嬢 エリザベート=バートリー』である。

 

彼女は「Fate/EXTRA CCC」と呼ばれるゲームに登場するキャラクターであり、自分が「Fate/」シリーズに没頭するきっかけをくれた存在でもある。

そんな思い入れの深いキャラクターだったため、つい調子に乗ってNPCとして創造してしまった。

その結果がご覧の有り様である。

 

 

「もう!何で止めるのよばらきー!これからがいいところだって言うのに~!!」

 

「五月蝿かった故な、許せ。そんなことよりさっさと外出の支度をせよ」

 

「なによ、コンサート!?ついに(アタシ)の歌を披露する時が来たって訳ね!?」

 

「違うわ阿呆」

 

「誰がアホよ誰が!それじゃあ、コンサートじゃないなら何なのよ?」

 

「今から1時間後に第6階層で各階層守護者が集まることになった。汝も吾のNPCとして参加せよ」

 

「えぇ~?各階層守護者ってことはシャルティアも来るんでしょ~?私アイツ苦手なのよね~」

 

「…後で第6階層の闘技場で好きなだけ歌ってもいいから、はよう準備せよ」

 

「デジマ!?なら早く行ってステージの場当たりしなきゃ!急ぐわよばらきー!!」

 

 

その言葉を残してエリザベートは急ぎ足で部屋を出ていった。

あまりにもチョロい彼女に対して頭を抱えながら、ばらきーも第6階層に向かうことにした。

 

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