Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
それではよろしくお願いします。
<9/18 若干修正しました>
冴える月明かりが、石段を仄かに照らしていた。
市街から離れたこの場所は喧騒とは程遠く、また草木がさざめく音一つない。
山門へと続く石段の頂より街を見下ろせば、麓の明かりは疎らながらも、その先にある街の明かりは天空の星々の如く瞬いている。
しかしここ数日は、その星々も心なしか寂寥を禁じ得ない。
「斯様な仕儀も、あの女狐の仕業故、か…」
そう
連日発生している新都のガス漏れ事故。裏面に在る真実は、
サーヴァントは基本「
魂とは即ち生命力の源。そして生命力は、魔力の源となる。
サーヴァントは、本来魔術師であるマスターからの魔力供給により現界を保っているのだが、魔力を得る方法はそれが唯一の方法ではない。
自らの内で僅かばかりの魔力を生成するか、他者から魔力或いはそれに類するもの奪い取るか、だ。
己の望みを成就せんが為に。その他多くの望みを蹂躙し、裏切ってでも。
「今宵は月を肴に一献傾けたいところだったのだが……」
石段の頂で胡坐をかいていた
「
その視線の先には影があった。
「あの女狐の命令は「門を通ろうとする者は倒せ」であったが………これはどうしたものか………」
影は次第に陽炎のように揺らめき、僅かばかりの明かりを侵食している。
「刀が通用するような怪異とも思えぬ。さりとて見逃すわけにもいかぬ……」
背中に差した五尺余りの長刀を静かに抜き、八相から霞に構える。
三日月の如き長刀は、しかし空に流れ込んだ雲によって月光を遮られ、返す光を失っていた。
一面に満ちる影は、不自然な瘤のように盛り上がり始める。
「これはこれは………
閻魔王の妃とされ、福徳を授ける仏教守護の女神「吉祥天」の妹。容貌醜悪で、厄災をもたらす黒夜の女神。
徐々に形作られたその影は、その在り様もすらも彼が思い描く黒闇天そのものだった。
影が揺らめく。その触手の如き揺らめきは、一反の帯のように彼に襲い掛かった。
袈裟懸け一閃。影の帯を掃う一刀は、しかし空を切り、群がる影の帯が彼の両腕を切断した。
「……やれやれ……悪鬼の類ならともかく、仏まで私に祓わせようとはな………。あの女狐も中々に業が深い……」
膝をつき、万事を窮したアサシンは、己の死を確信した。
否、サーヴァントである以上、これは「死」ではなく「現世からの消滅」だ。
だが、影は
その影の先から老僧の念仏の如き声が聞こえ、同時に足元には己と中心に据えた陣が浮かび上がる。
「……ふ……私は生贄、と言う事か………」
諦観した彼は口元を緩めて笑う。
「………………成る者。我は常世全ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天……」
アサシンの腹の内から何かが出てこようとする感覚に苦悶する。
「…抑止の輪より来たれ。天秤の守り手よ!」
内側から臓腑を、肋骨を弾けさせ、黒く長い手が伸びる。
「
「……………良かろう……好きにするがいい……」
アサシンの内より現れた
「所詮は我が腹より這い出たもの……。碌な性根では無かろうよ………」
暗闇に、肉と骨を咀嚼する音だけが響き渡った。
「
山門に顔を出し、
世俗から離れた寺には似つかわしくない容貌の女性は、この寺の尼僧ではなく、
「どうした
背後に立つ痩身長躯の男が訪ねる。
「いえ、
問われた女性、
異状はあった。
彼女が召喚し、使役する
それは
「ですが
唯ならぬ事態と察した
そのマスターである
いや、
その眉間に黒い短剣が深々と突き刺さっていたからだ。
「宗一郎!」
その名を叫ぶも、既にマスターは絶命していた。
短剣が飛んできた方向をキッとにらんだ瞬間……
「
赤く長い手が伸び、その身に触れた。
何かが奪われる感覚。
不吉な予感を、マスターを殺された激情でねじ伏せて見据えた先には黒い人影。
その面貌には白い髑髏の仮面があった。
「
呻くように口にする
その手には、脈動する心臓が握られていた。
その心臓が誰のものであるかと思い至る前に、
直後、
「……アハ……アハハ……アハハハハ…………また…こうなるのね………」
なんて茶番と嘲笑う。
女神の呪いにより国から逃げざるを得なくなり、逃げるために肉親を八つ裂きにし、帰るべき
英霊として召喚されてみれば、裏切りと理不尽な死が、変わらず彼女に待ち受けていた。
世界に拒絶され続けてきた者。
彼女は、唯々故郷に帰りたかっただけなのに。
故郷と呼べる場所に帰りたかっただけなのに。
帰るべき場所が欲しかったのに。
その細やかな望みすら、世界に拒絶された。
私の想いは何処へ往くのか。
私は何処へ往けば安息することが出来るのだろうか。
故郷の黒い海のさざ波が聞こえる。
マスター共々黒い影に覆われてゆく最中、彼女は最後の祈りを口にした。
宗一郎……せめて貴方だけでも、安らかでありますように………。
キャスター&宗一郎、小次郎ファンの皆さんごめんなさい。
お三方早々にリタイアです…(汗)
でもなんか、メディアの理不尽エピソードって、桜のそれに通じるような気がしないでもないというのは自分だけでしょうかね?