Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
今回は短いながらも、あまりお待たせする事無く投稿出来ました。
さて、今回のお話は拙作オリジナル展開への布石と言いましょうか、現在の本筋にはほとんど絡んできていない愉悦コンビ中心でお届けします。
それでは、今回もお付き合いください。
中天に達した
その明かりを背にして建つゴシック建築様式の教会は、宛ら降臨した御使いの如き威容を示しているかのようであった。
礼拝堂の扉の前に立つ聖母像の脇を通り抜ける影が一つ。
影は静かに礼拝堂の扉を開き、扉もまた影を迎え入れた。
教会の最奥に在る薄暗い一室で、男が一人、思考に耽っていた。
この教会にて祭祀を司る神父にして、聖杯戦争の監督役でもある
彼は以前から、今回の聖杯戦争に奇妙な違和感を感じ取っていた。
それは明確なものではなく、漠然とした何か。
だがそれも、マスターの一人であり、冬木の
それは
とうに老衰したと思っていた臓硯が未だ現役だったと言う事は、彼にとっては意外の念を禁じえなかった。
六代前の魔術師であり、際立った蟲使いであった臓硯は、本来間桐家の相談役のようなもので、それが表舞台に上がったとなれば、何らかの勝算あっての事。
間桐のマスターは早々に脱落したが、それは“様子見の捨て石”程度だったのだろう。
そうでなければ、魔術師の第一義である「神秘の隠匿」に配慮を怠る、いや、それすらも知らない
本命は臓硯、或いは………。
「やれやれ………あのご老人にも困ったものだ…………」
嘆息しながら、現状を取りまとめた感想を口にする。
実に簡素ではあるが、これ以上は情報が無い為、これ以上の感想が出よう筈もない。
今の彼には、可能な限り現存するマスターたちと情報交換を行い、監督役として被害の拡大に備えるしか出来ない。
目の前のチェスボードに視線を落とす。
常のチェスピースとは異なり、七つの
次いで、
テーブルの脇に置いてある小箱から、本来のチェスピースである
先程まで
最後に、
最早チェスのルールからはかけ離れた状態の、今回の聖杯戦争の縮図が如き盤面を凝視し思考する。
宛ら盤面の戦況を俯瞰するかのように置かれた
即ち………
そして、
現状二騎が脱落し、三つの陣営が出来上がっているこの状況、アインツベルン陣営の動きは定かではないが、彼らの性格上、衛宮、遠坂陣営と間桐陣営が、早々に衝突する事は必至。
どちらが倒れるにしても、残って疲弊した一方を、アインツベルン陣営が漁夫の利を得る形で強襲すれば、これで聖杯戦争は決着を見るだろう。
しかし…………
小箱から取り出した白い
現状においては
そして、
むしろ、この
であれば…………
「別の駒で動きを封じるのだろう?」
突如、横合いから投げかけられる言葉と共に、双方の間、
視線を上げたその先には、豪奢な黄金色の髪を湛えた赤い瞳の
「この
「客……だと?」
このような時間に訪れる客など、脱落したマスターの一人が、監督役である自分に保護を求めに来たか、聖杯戦争に巻き込まれた一般人の救護を求めて、その場にいたマスターがやって来たぐらいしか考えられなかったが、美丈夫はその客が何者であるかは口にしなかった。
そんな彼の態度を訝しみつつ、言峰綺礼は思考を中断して礼拝堂へと足を向けた。
礼拝堂へ足を踏み入れると、祭壇の前には一つの影があり、その視線は上方に向け、祭壇の最奥に掲げられた十字架を見つめている。
祭壇の上に在る明かり窓から差し込む仄かな月明かりが、彼の到着を待ちわびていたかのように、その影の輪郭を露わにした。
「こんな夜分に教会を訪れるとは、何か急用でもあるのかね?少年」
祭壇の前に佇む影、いや少年に問う。
ゆっくりと、祭壇の前の少年に向けて歩みを進める彼ではあるが、百九十センチを超す長躯から降ろされる視線は、見る者によっては得も言われぬ威圧感を感じ、同時に嫌悪感を伴わせるものではあるのだが、少年は恐れる訳でもなく、泰然自若として十字架から神父へと視線を移す。
「その制服……君は穂群原学園の生徒か……迷える者に救いの道を示すのが教会の役割だが…………このような時世だ。悪い事は言わん、学校からも夜間外出は禁じられているのだろう?今日のところは帰って、また明日出直してくると良い」
かの学園で、魔術に関わりのある者は彼の知る限り三人。関りがあると思われる者は二人。合計で五人だが、目の前の少年はその中に含まれていない。
であれば、聖杯戦争の監督役としてではなく、教会の神父として接するより他なく、彼としては可能な限り優しく、少年に帰宅を促した。
ここでようやく少年は口を開き、夜分の来訪の目的を告げた。
その声色は見た目通りの少年のそれであったが、声音は見た目とは異なる年嵩の落ち着きを纏っていた。
「…………馬鹿な…………」
少年の語る言葉は、世迷い言と一蹴するには現状と符合し過ぎていた。
故に彼は“監督役の職分”に於いて、目の前の少年を
目の前に起きた奇跡を前に、己の内なる本性が昂り、しかし粛清の実行を押し留めた。
紛れもなく少年は少年の姿であり、そうと言われなければ、目の前に奇跡が顕現されている等と信じられる筈もない。
しかしそれは、厳然とした揺ぎ無き事実。
戸惑いと感情の昂りを鉄面皮の奥に仕舞いこみ、彼は少年の話に耳を傾ける。
「………
我知らず呟く彼に、少年もまた口角を僅かに上げることで肯定した。
教会の一室に在るソファに身を沈める男が一人。
先程、神父に来客を告げた黄金色の髪の美丈夫である。
「………中々に興じさせるではないか………」
彼は少年の本質を一目で看破していた。
その上での感想を端的に口にする。
「案ずるな綺礼。この
この場に居ない、しかし今頃はその鉄面皮の奥で愕然としているであろう神父に、慰めの言葉を悦楽と共に与えつつ、その手に持つ
盤に置かれた
無論、
そして彼は、一つの
この駒の存在を知らない者は「そこに何かが在るかもしれない」と考える。
この駒の存在を知る者は「それが何のために在るのか」と考える。
その駒の存在を識る者は「それが成ったら何が在るのか」と考える。
その駒の存在価値を見抜いていた彼は、その
否、むしろ盤上から自主的に降りるよう促すほど、
その時この駒は、
詰まる所、誰も彼もが、この
彼としては若干の不快はあるものの、それを上回る愉悦が、この盤上にその駒が在る事を許容した。
「然しもの
酷薄な笑みを浮かべながら、彼は盤上の
FGOは四章の配信が開始されましたね。
やっぱりペペ姐さんは良いキャラですね。
拙作をお読みいただいている皆様は、四本目の空想樹は伐採済みでしょうか?
私は1.5部と並行しながら、ちまちま進めております。
ちなみに、先日「屍山血河舞台 下総国」をクリアしました。
残すは「セイレム」だけです。
さて、次回は……
・栞さんのお墓参り
・士郎がアレしてエライ事になる
以上の予定です。