Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
「ぐだぐだファイナル」イベも良い感じで片付き、ストーリーも全てクリアしたので、推し鯖の育成に本腰を入れ始めたのですが、毒針と羽と牙が圧倒的に足りない……( ;∀;)
ちなみに私は、効率よりも推しに全リソースを傾ける派です('-'*
聖杯も推しにしか突っ込んでいません('-'*
さて、今回はオリキャラしか出てきませんが、色々と今後への布石と言っていいかと思います。
それでは今回もお付き合いください。
#037 手向けし花に君を思う
遠くに見える山の稜線を縁取るように、空が白く色づき始める早暁。
夜も明けきらぬ内の冬木の街は大地も大気も冷たかったが、ここ数年の温暖化の影響か、凍てつく程でもなく、大気を震わす咆哮をあげる
目的地へと向かう高速道路は、他の車は疎らにしか走っていなく、最近は
もっとだ!もっと
久し振りの高速走行を
いや、これは私自身の心の声を、この仔の声と置き換えたに過ぎない。
馬に乗り、西へ東へと駆けた頃以上の疾走感が強烈な刺激となり、私の霊核奥深くまで魅了して止まず、抗い難い欲求に身を委ねてスロットルを開くと、この仔もまた待ち侘びていたのだろう。心の声に応えるように、更に疾く翔んだ。
目的地に着いた頃には日も既に昇りきり、春も近かろうと言う陽気が辺りを包み、葉の落ちきった木の枝に留まる雀が忙しなく鳴いていた。
ここは冬木から高速道路を三時間程走った先に在る古い寺。その山門へと至る石段の前。
基本的にサーヴァントは、
そして、この古寺のある土地は朝比奈家の管理地であり、元々私はこの地の霊脈に繋ぎ止められることで現界し続けていた事もあって、戦闘はともかく、実体化したまま歩き回る分には支障ない。
マスターから預かった鮮やかな青色のサイネリアの花束をサイドケースから取り出し、種々の手荷物を入れたトートバッグを肩に掛けて山門へと至る石段を登る。
柳洞寺の石段に比べれば緩やかで短いそれを登り切り、本堂に参拝してから境内の一角に在る霊園を目指す。
霊園の入り口には水桶と柄杓が置かれていて、その脇の大きな岩塊を四角く切り出した水鉢から、地下水が滾々と湧き出ている。
霊園の奥に在る朝比奈家代々の墓の前を一礼してから通り過ぎ、それらに比べれば慎ましやかな墓石の前に立つ。
その墓石には「
朝比奈一門の中に在って、宗家と深く血の交わりがあった久世家は、代々
しかし近代化が進み、それに伴い神秘が薄れるのと比例して、久世家の魔術回路は徐々に衰退し、現在に至ってはお世辞にも“魔術師”とは呼べない程にまで零落していて、宗家に次ぐと言われた家格も、今では藤堂家に取って代わられている。
それでも多くの子女を、宗家を始めとした一門の家に輿入れさせ、代々の宗主の半数近くは久世家の母胎から産まれた事もあり、往事程ではないにしろ、今も尚、一門から相応の礼節をもって遇されている。
手入れの行き届いた墓石が綺麗に掃除されているのは、彼女の遺族が今日の命日に合わせて手入れをしたのだろう。線香の燃え滓も、供花の一片も墓石の前には残っていない。
水桶に汲んだ水を柄杓に取って打ち水をして清め、花立に花束を、水鉢に水を入れ、最後に線香をあげて合掌する。
「……………………お久しぶりですね、
長い
故人の俗名は
今も存命であれば、マスターの三歳上の、龍くんや
そして、マスターの奥方だった女性。
いや、彼女が逝去した当時、マスターは未成年で、法的には結婚できる年齢では無かったから、杓子定規で物を言えば「婚約者」と言う立場になる。
だからこそ、彼女の遺骨は“朝比奈家”ではなく、実家の“久世家”の墓に納められたのだ。
彼女が亡くなって以来、マスターは新たに奥方を娶る事は無かった。
それは、彼女に対する様々な想いもあったのだが、彼女の死は、マスターの体質に依るところだったが故に、
当代の異母弟の長子が、次代の宗主候補筆頭として推されたのは、そういう事情が背景にあったからだ。
マスターの体質とは即ち、先代の宗主による魔術実験によって備わった、常人の数十倍、数百倍に及ぶ魔術回路の数。それから生成される人間離れした魔力は母体を殺し、乳飲み子だったマスターの命すら蝕もうとしていた。
そして、魔術師の体液、血液や精液のような生命に係わるものは魔力を含んでおり、当然マスターの体液にも相応の魔力が含まれていて、マスターの強力過ぎる魔力を含んだそれは、並の人間には猛毒と同義だった。
魔道の家系に在る者であればそれは常識の範疇であり、当然母体となる彼女に保護回路となるべき術式を施して然るべきだったが、先代はそれを
しかし、人の心とは数式や論理だけでは測り知ることが出来ない性質を持つ以上、若い二人の熱情は、先代の思いとは裏腹に燃え上がり、密かに睦み合い、独自の術式を施した末、彼女はマスターの子を身籠った。
既成事実を口実として、先代の断を覆そうとした若い二人ではあったが、破綻と悲劇は突如として、いや、
「怖い……怖いよ…………栞さん……………。このままだと…………アイツが………
大量の吐瀉物と血に塗れ、自らに死が迫っている恐怖より、自らの死がマスターに与える影響に慄然とし、人前では決して流す事の無かった涙を見せながら、彼女はその短い生涯に幕を下ろした。
あの時の涙を思い出す度に、胸の奥が締め付けられ、死の間際に立たされた人とは思えない程の力で握られた二の腕に、錯覚とは思えない痛みが蘇る。
二人を間近で見守ってきたからこそ、共に支え合い、共に寄り添って、これからの道を共に歩んで欲しかった………。
そんな二人を私は支え、死が二人を別つまで守ってあげたかった…………。
運命とは、なんと無情なのか。
天命とは、なんと残酷なのか。
因縁とは、なんと無慈悲なのか。
こうなる事を定めた者がいるのなら、たとえそれが神仏の眷属であろうとも、切り刻み、引き裂いてやりたかった。
………………いや……………
朝比奈家第四十七代宗主
先代の宗主であり、マスターでもあったあの人もまた、マスターにとって、彼女にとって
胸の内に沸き起こる激情に突き動かされ、マスターと彼女の無念を晴らさんが為、彼女のせめてもの供養の為、私は
「…………それは瑛賢の命令か?
文机で書き物をしていた先代は、その姿勢のまま視線をこちらに向ける事無く、背中越しに問いを投げてきた。
「いえ、私の独断です」
「フン…………激情でその慧眼を曇らせるとは、お前程の者が愚かな……………分を
正論だ。
この人は常に正論しか口にしない。
一切の虚飾を排し、事の本質を一目で掴み取り口にする。
だが、他人にはこの人が見抜いた本質を理解出来難い。
理解出来難いが故に、その怜悧な言葉の刃に恐れ、怯え、また憎悪し、頑なに耳を塞ぐようになる。
この人もまた、
「………
その命令は、先代にしては珍しく意味も目的も曖昧だった。
書き物が終わった先代は、それを折りたたみ、包み紙に入れて文机の引き出しに入れる。
反問に口を開こうとした刹那、外が何やら騒がしくなり、荒々しい足音がこの部屋に近づいて来る気配があった。
「
振り向いて居住まいを正す先代の表情は、今まで見たことが無い程に穏やかで、全てを悟り、受け入れていた。
そういう目をしていた…………。
「
それが、私の見たかつてのマスター、朝比奈叡逹の最後の姿だった………。
「……栞さん?」
カツンと石畳を踏み鳴らす音に気付き視線を向けると、そこには細身で長身の女性が一人立っていた。
「来てくださったんですね、栞さん」
「元気にしてましたか?
開いているか否かも分からないほどの糸目で微笑む彼女の名は
「
辺りを見渡してマスターの姿を探す彼女は、マスターが来ていない事を知ると、安堵に胸を撫で下ろす。
マスターはこの義妹に対し、
それは彼女も理解していて、同時に
それが逆にマスターを責め苛み「せめて義妹だけは」と、贖罪なのか、或いは一種の代償行動なのか、宗主の立場としては聊か彼女とその実家を重用し過ぎるきらいがあった。
そして、それが逆に彼女にとって僅かに苦痛でもあり、お互いに対する思いやりが齟齬をきたしているというのは皮肉な結果だ。
「…………サイネリア………姉さんが好きだった花ですね……。栞さんが選んでくれたんですか?」
「いいえ、マスターが選ばれたんです」
「………そうですか………義兄さんが………」
義兄の今も尚変わらぬ心遣いに口元を緩め、自身もまた亡き姉が好きだった花を
「………義兄さんは………やはり、聖杯戦争が終わってからいらっしゃるので?」
長い礼拝の後、視線を墓石に向けたままポツリと呟く。
「……ええ」
「そうですか………今は宗家にとっても大事な時期ですしね………主人も無事に帰って来てくれれば良いのですが………あの人は、私や義兄さんと違って武芸に精通しているわけではないですし………」
「その点は大丈夫ですよ。龍くんには、美彌ちゃんと一緒に後方支援に回ってもらってますし、
これは嘘偽りの無い事実だ。
但し、その為に払われる犠牲の中には、
聖杯戦争の勃発が近い事を知ったマスターは、
もちろん私は異議を唱えたのだが、マスターは頑として撤回しようとせず、それでも尚、異議を唱える私の説得を諦めたマスターはついに「龍徳にまで何かあったら、死んでも巴恵に逢わせる顔が無い」と口にした。
そして、命令の意図がそうである以上、私の口からそれを覆す言葉が出てくる筈も無かった。
「その時はよろしくお願いします栞さん。でも、義兄さんもちゃんと連れ帰って来てくださいね。どうせ義兄さんの事だから「俺を捨て石にしてでも、龍徳を巴恵の許に返せ」って命令したんでしょう?」
「………巴恵ちゃんには敵いませんね………」
彼女の指摘に、私は力なく笑うしかなかった。
彼女は子供の頃から
その糸のように細い眼の奥に在る瞳には、真実を映し出す鏡でもあるのかとさえ思える程に。
「ふふ、義兄さんを捨て石になんかしたら、今度は私が姉さんに逢わせる顔が無くなっちゃいます」
腰まで伸びた長い黒髪をなびかせて、悪戯っぽく微笑む。
珠希ちゃんが亡くなった頃、彼女はまだ小学生だった。
年の離れた姉が本当に大好きで、いつもその後ろをついて歩いていた。
そんな彼女が、姉の死の原因がマスターの体質に因る事であるという現実を知り、その小さな胸に去来する思いは何物であったのか………。
姉を死に追いやった義兄を恨んだのか、義兄をそのような体にした先代を憎んだのか、それとも自身には覆せる筈もない事象として達観したか、その思いの内を、彼女は未だ口にする事は無い。
しかし…………
「栞さんはいつも笑っていてくれるでしょ?あれ見てると、私安心するんだ。だから私も、いつも笑うようにしたの」
珠希ちゃんの死、そしてその後に起きた悲劇に私の気持ちは昏く沈みこんでいたが、子供たちの前ではそれを表に出さないようにしてきた。
しかし、彼女は生来の勘の鋭さによって見抜いていた。
「ありがとう、巴恵ちゃん。私も………しっかりしなくちゃね………」
その小さな体を抱きしめる私の手に、小さな肩が小刻みに震えているのが伝わって来た。
「巴恵ちゃんは、今日ロンドンに発つんですか?」
「ええ、夕方の便で。義兄さんには、我儘を言ってごめんなさいって伝えておいてくれますか?」
マスターが時計塔の法政科から依頼された件の受諾条件として、マスターの仮の姿である“白狐”が封印指定の魔術師とされた発令経緯の調査を依頼していた。
そして法政科、場合によっては魔術協会と折衝する為に、
マスター自身は、出国の延期をするぐらいなら、別の方を宗主代理として向かわせるつもりだった。
生命の危機が傍らに寄り添うには、戦場のように目に見えない分、権謀術数渦巻く時計塔の方がその危険が大きい故に、彼女の安全と道理を考えればマスターの判断は正しいと言える。
しかし、義理とは言え宗主の妹と言う立場、
「ええ、マスターにはちゃんと伝えておきます。気をつけて行ってきてくださいね」
「はい、栞さんも気を……付け……………」
「…………巴恵ちゃん?」
何の前触れもなく彼女の言葉は途切れ、茫然自失の体で立ち尽くす彼女の様子に、只ならぬ空気が胸中を駆け抜ける。
彼女のこの状態を私は
これは彼女の、久世家の
「…………つきより……こぼれ………いづ……るかご………あま……て………らす……しる………べに………しょくを………うが…………つ………」
「巴恵ちゃん!」
肩を掴んで揺さぶってみるも、見開かれた眼は全く焦点が合っていなく虚ろで、譫言のように呟く彼女の言葉は、間違いなく彼女の口から彼女の声で発せられているが、
忌々し気に、そして口惜しそうに、先代はこの彼女の状態をそう説明していた。
久世家は
時代と共に衰退した久世家の魔術回路は、しかし“先祖返り”と言うべきか、“隔世遺伝”と言うべきか、はたまた“突然変異”と言うべきか、生来に備わった彼女の魔術回路の数と、それから生み出される魔力は、十分に“魔術師”と呼ぶに相応しいものになっていた。
自然に増える事は無いとされている魔術回路が、なぜ彼女にそれだけ備わったのか。
失伝したとされる久世家の降霊術が、なぜ今になって彼女が
「巴恵ちゃん!しっかりしてください!」
頬を何度か叩くと、彼女の瞳から失われた光が元に戻り、ようやく取り戻した焦点が私を捉えた。
「……栞……さん?………私……一体………もしかして………また………!」
顔面蒼白になり怯える彼女に、私は無言で頷いた。
彼女の口から下された託宣は、身近な者の凶事も、その地と人心に大きな傷跡を今尚残す災害も、今まで一度も
神がかり的な、いや、正に“神が取り憑いている”と言っても過言ではない彼女の託宣は、その内容が
いつだったか「久世の末娘は、
「栞さん……私………」
「大丈夫。巴恵ちゃんは何も悪くありませんよ。それに、神託の類は誰も口にしなければ実現しないと言われていますしね」
怖い夢を見て夜中に泣き出した子供の頃のように怯え、縋りつく彼女を、虚実混ぜ合わせて安心させようとした。
しかし彼女の勘の鋭さは、今は負の方向に作用するだろう。
それでも、自分よりも頭半分ほど背が高い彼女の細身を抱きしめて、頭を撫でる事を止める理由にはなり得なかった。
———つきよりこぼれいづるかご———
———あまてらすしるべにしょくをうがつ———
“つき”とは月なのか。
“あまてらすしるべ”とは“
そうであれば“しょくをうがつ”とは“蝕を穿つ”と読めなくもなく、日食や月食の事を指しているのか。
確かに五月には日本で皆既月食、十月には部分日食が観測されると国立天文台からも発表されている。
日食や月食は“日蝕”“月蝕”とも表記され、陰陽道や神道に於いて“蝕”は“穢れ”とされており、かつては穢れの光を浴びぬよう屋内に籠ったと伝えられている。
“月より零れ出る「かご」天照らす標に蝕を穿つ”
「かご」とは何を指すのか………。
読み通り「籠」だとしても、全くの意味不明になる。
同じく読み通りの「加護」だとしても、神仏の加護が不浄や災いを呼び起こすと言うのも考えにくい。
第一、これはお告げの類であって、
多少の比喩や隠喩はあったにせよ、過去に下された託宣は、ある程度具体的であり、ここまで抽象的ではなかった。
いや………違う。
私が“抽象的”と思い込んでいるだけで、何かを見落として思考の迷路に囚われているのかもしれない。
そして思考を巡らせると、不図して思い当たる節があった。
詠み人の名は忘れたが「影」を「かご」と詠んだ一首が万葉集に在った。
であれば“月より零れ出る影、天照らす標に蝕を穿つ”と読む事が出来、日食や月食に因って起きる天変地異、或いはその頃に凶事なり災害が起きると言うのか………。
違う。
まだ何かが足りない。
まだ何かを見落としている。
“月”とは本当に月の事なのか?
“天照らす標”とは本当に太陽の事なのか?
この推測は「日食や月食を指す」と言う結果ありきで導き出されたもの。
そもそもの前提条件が正しいならば、このような
「栞さん………」
「………はい」
「栞さんまで、
彼女の涙に濡れた呟きに、今度は私に天啓の様な閃きが迸る。
ああ…………。
何という事だ…………。
そう考えれば、
「………ええ、巴恵ちゃんのお孫さんを見ないうちは、座に帰ってなんていられませんよ………」
託宣の意味するところを
そろそろFGOでは、毎年恒例の水着イベが始まっていい頃だと思いますが、顔触れ次第ではちょっと多めに課金して回してみようかと考えています。
今年こそ星5水着沖田実装か?それとも社長絵枠は、新参で旬のラクシュミーか景虎と言う線もアリか?
後者なら、ネタとしては何かと美味しいのですが………。
ちなみに、栞さんが水着鯖で実装されたらライダークラスだな。等と益体もない妄想をしていたか否かと言えば、勿論していない筈もありません('-'*
さて、次回は……
・士郎がアレしてエライ事になる
・ある意味フラグクラッシャー
・やっぱりアンタか
・営利誘拐未遂事案発生
以上の予定です。