Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~   作:Prometheus.jp

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前回以降、新たなお気に入り登録ありがとうございます。

「水着剣豪七色勝負」の復刻が来ましたね。
PUは既に前回全鯖出しているので、今回は見送って今年の夏の分に回したいと思います。
ほぼ今月いっぱいまでの開催と言う事で、今年もガッツリ稼がせてもらおうかと思って、周回に勤しむ前に短めながらも投稿出来ました。



それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。


#051 interlude~襲撃~

 車通りが少なくなった夜の街を、白銀色の猛禽(GSX1300R)が駆け抜ける。

 リアルタイムにもたらされる道程の道路情報を瞬時に分析し、目的地への最短、最速のルートを算出しているので、その飛翔を妨げるモノはいません。

 

 それは()()()()()()()()()()

 最初の内こそは、如何なる状況にも対処出来るようにと、要所に()()()()を配置するだけでしたが、今では冬木全域をカバーする為に、個々の能力を観る事だけに限定して配置しています。

 例えば、百のリソースを十に分割して十か所に配置するよりも、一や二に分割して五十から百か所に配置した方が効率の面で良いと判断したからなのですが、今回はそれが裏目に出てしまい、今こうしてバイクを走らせているところなのです。

 

 それと言うのも、衛宮君に原因があるのですが……………。

 

 まったく、衛宮君の軽率さには呆れます。

 今は聖杯戦争の最中で、その主戦場は夜だと言うのに、セイバーも連れずに夜道を出歩くなんて、自分から“殺してください”と言っているようなものです。

 

 ()()()()()()()()、こんな()()()()()()()()()()()()()で、その固定観念(じょうしき)に囚われた目で見れば、衛宮君の行動は「敵に一計あり」と誤認するかもしれません。

 

 そういう意味で衛宮君の行動は、孫子曰く「兵は詭道(きどう)なり」に則っていると言えるのでしょうが、利を以て動いているようにも、分合を以て変を為そうとしているようにも見えません。

 要するに、単なる考え無しの行動と断ぜざるを得ません。

 

 私もマスターの()()()()には度々肝を冷やす事はありましたが、それでも十分な修練を積んだ上で、自身の限界を計りながら、()()()()()()()()()()()()()()()でした。

 翻って、衛宮君の行動を見るに、セイバーの気苦労は如何許(いかばか)りのモノか、と同情を禁じ得ません。

 

 サーヴァントには、胃薬とか効かないんですよねぇ…………。

 今度、セイバーの愚痴でも聞いてあげる為に、一席設けましょうか。

 

 セイバーはアレでなかなかの健啖という話ですから、お腹に溜まり易いモノの方が良いですかねぇ。

 となれば、新都の「お好み焼き鍾馗」が良いかもしれません。最近ご無沙汰ですし、何やら「五重塔焼き」とか「世紀末覇者焼き」なんて変わったメニューも増えたそうですから、ついでにチェックするのも悪くないかもしれませんね。

 

 そんな事を考えながら冬木大橋に差し掛かろうとした頃、()()()()()が私を追い越して行くのを感じました。

 何者か?その気配の持ち主の進行方向に注視すると、私の目は騎兵(ライダー)の姿を捉えたではありませんか。

 

 彼女のマスターは、旭奈会(きょくないかい)病院の美彌(みや)ちゃんの張った結界の中。そこから動いていないと言う事は、病院に配置した私の目が今確認しました。

 彼女の行き先も目的も判然としないなら、二つ三つ、彼女に尾行を付けるとしましょう。

 幸い、彼女の敏捷性は高いものの、追いつけない速さではありません。彼女の目的が判明するまで、ここは静観を決め込むとしましょう。

 

 それに………………

 

 先程から、何者かが()()()()()()のですよねぇ。

 

 こんな時間にバイクを走らせている私を、物珍しく見物している一般人。ではありません。

 そもそも、工事中でもない橋のアーチ鋼の上から普通の人が見ていよう筈もありません。

 

 ならば使い魔の類とも考えましたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな感じの潜み方なのです。

 このような気配の消し方は暗殺者(アサシン)のそれに近いのですが、暗殺者(アサシン)が今、私の動向を監視する理由は思い当たりません。

 なにしろ、暗殺者(アサシン)のマスターの前には、()()()()()()()()()()()がいるのですから、いよいよの時にその命を奪う為に、間近に伏せていて然るべしと見るべきでしょう。

 

 はてさて、これは()()()()()()()()()()と言う事でしょうかねぇ…………。

 

 こちらは先を急ぐのに、()()()()()()()()()()()()けど、衛宮君を救援しに行くのに、この無粋な御仁を引き連れて推参する訳にもいきませんし、お望みとあらば、少しお相手して差し上げましょうか。

 

 マスターからは六割まで魔力を自由に使って良いと言われていますし、街の監視と騎兵(ライダー)の尾行に二割五分程使っている現状、残り三割五分で相手をする訳ですが、相手が暗殺者(アサシン)のサーヴァントと同等の何かと想定して………………

 

 十分制圧は可能ですね。

 勿論、短期決戦が前提条件である事は言うまでもありません。

 

 月が照っているとは言え、この百地三太夫丹波(ももち さんだゆう たんば)夜討(よう)ち同然の狼藉を働くとは推参至極。

 忍者の英霊たる吾が力、篤と味わわせて差し上げましょう。

 

 

 

 先ず立ち寄ったのは、深山町側の橋の袂に在るコンビニエンスストア。

 別にここで一息入れる為に缶コーヒーを買うと言う訳ではなく、戦闘で大事なGSX1300R(バイク)が傷つかないようにする為にここに置いておきます。

 

 多少の傷なら自分で直せるのですが、万が一カウルの交換となってしまうと、場合によっては購買部でのお給料一か月分は飛んでしまいます。タイヤの山が減ってそろそろ交換という時期に、これは痛い出費なのです。

 

「………さて………と……………!」

 

 缶コーヒーを一口呷り、コンビニ店員の目につかなくなったところで、一息に電柱の頂上に飛び上がり、月光にこの身を晒す。

 しかし、たまにはと思って買った事の無い銘柄の缶コーヒーを買ってはみたものの、これはあまり美味しくありませんね。マスターの淹れてくださるコーヒーには到底及びません。

 

御手前(おてまえ)何処(どこ)何方(どなた)かは存じませんが、斯様(かよう)な夜更けに逢引きを所望されるにしては、誘い方が少々無粋ではありませんか?」

 

 と、何も無い暗闇に問うてはみましたが、案の定反応はありません。

 あまり待ってあげるつもりは無いのですが、せめてもの口慰みに缶コーヒーを一口飲もうとした瞬間、石礫(いしつぶて)が一つ、缶コーヒーを弾き飛ばした。

 

「……………ふふ。なんとまあ、お可愛い御仁であらせられる事。お姿を見せぬ代わりに、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ジャケットのジッパーを中ほどまで開け、相手の淫欲を誘う仕草で()()()()()()()()

 今の投擲の軌道から射線を割り出し、何者かの位置を特定出来ました。

 しかし、相手も位置が特定される事は把握しているでしょう。そこに留まるような愚は犯さず、投げてからすぐに移動するのは狙撃の基本です。

 

 投擲位置からの距離、時間経過、そして身を隠し易い場所となれば……………

 

「そこっ!」

 

 先程までの視線とは全く違う方向に向き直り、棒手裏剣を一本投げつける。

 しかし、命中の手応えはありませんが、外れて背後のブロック塀に中った音もしません。

 相手は命中の寸前で受け止めたのでしょう。

 

 それこそが私の狙い。

 

 如何な達人でも、棒手裏剣を受け止める一瞬に意識がそこに向くのは必定。

 そして過度な警戒態勢から、奇襲を防いだ事によって生じた安堵、その弛緩の落差。その隙は、電柱の頂上から姿をくらませる為の時間を作るには十分でした。

 

 更に、棒手裏剣を投げた時の一声も、“()()()()()()()”と言う印象を植え付ける為のミスディレクションの一つであり、それは私の姿を見失った事によって、更に生じる刹那の困惑と言う隙を、より大きなモノへと変えてゆきます。

 

 一瞬にも満たない時間の積み重ねは、そして街灯も月明かりも届かぬ、家屋と家屋の合間、塀の上の闇だまりに潜む相手に肉薄するには十分です。

 相手の顔は見えませんが、それでも人型である事には間違いありませんでした。

 

 ジャケットの内ポケットに忍ばせていた十字手裏剣を左手で握り込み、横一文字にその眼を切り裂くべく腕を振るう。

 

 周囲の情報の大半は視覚からもたらされていて、相手の視覚を奪ってしまえば制圧は容易くなりますし、もしこの者が魔術を扱う者であれば、魔術に於いても“視る事”は重要な要素(ファクター)であり、何某かの魔眼を秘匿しているなら尚の事、視覚を奪っておくに()くはありません。

 

 しかしそう易々と思惑通りになる程、容易い相手ではありませんでした。

 指関節一つ分の刃しか出ていない十字手裏剣では、防御に差し出した左前腕の肉を少し切り裂いただけで、致命傷には至らない。

 

 そして腕を振った勢いそのまま、右回し膝蹴りを左前腕の上から打ち込み、片腕だけでも潰すつもりでしたが、敵もさるもの引っ搔くものと言いましょうか、自ら跳んで膝蹴りの衝撃を吸収されてしまいました。

 しかも抜け目の無い事に、私が投げた棒手裏剣を手近な街灯に投げつけ、数少ない光源を消す辺り、常に暗闇に身を潜める事を大事とする()()()()()()()()()()()()()()()

 

 いや、跳んだ姿勢のまま棒手裏剣を十メートル以上離れた街灯に命中させる技量は、生半(なまなか)な鍛錬で身に着くようなものではありません。

 

(まさか本当に忍者では………?)

 

 平成の世に於いて、正当な忍術は甲賀(こうか)(ばん)氏の術理を除いてほぼ失伝したと言っても良いのですが、それさえも地域の観光資源の一翼を担っているだけというのが現状です。

 

 しかし、先日セヴィニェ師を殺害した手段が、吾々(にんじゃ)の体術に近しいモノであった事から察するに、“暗殺術としての忍術”が密かに継承されていたとしても不思議ではありません。

 そしてそういう集団は、時の為政者の密かな庇護の下によってのみ、生き永らえる事が許されるものなのです。

 時代が幾百年移ろおうとも、陽の当る裏に影が出来るように、(まつりごと)の裏に影は変わらず在るようです。

 

 

 

 さて、私の膝蹴りを跳び躱した相手は、住宅街の道路に転げ出た訳ですが、幸か不幸か、月が雲に隠れて顔はやはり判別出来ません。

 殊の外、左腕にそれなりのダメージは与えられたようで、十字手裏剣で切り裂いた腕を押さえているようです。

 となれば、相手は攻めに転じるよりも、逃走を図るのが最適解なのですが、逃走を許すつもりは毛頭ありません。

 

 ゆっくりと塀の上を歩き、徐に手を挙げて合図をすると…………

 

「くっ………………!」

 

 ようやく()()()()()()()()()という事態に気付いたようですね。

 私が街中に放った目は、私の意志でそれらの気配を消したり発したりする事が出来ます。

 そして、この暗闘の場の周囲にも幾つかの目が元々配置して在って、それらをこの場に集めて包囲し、念の為に今の合図で各々に気配に差異を付けて発しさせました。

 

 その呻き声を聞くに、臓硯の暗殺者(アサシン)ではなく、凡そ十代から二十代前半の若者と言ったところでしょうか。

 本当に相手が忍者で、幼少期から鍛錬を行ってきたのであれば、本人の才能に因るところもあるでしょうが、それなりの使い手にはなっているでしょう。

 ですが、伊賀流忍者の頭領たるこの私を相手取るには、まだまだ未熟。

 

若衆(わかしゅ)にしては腕が立つようですが、()()()()()()()()()。貴方が何処の誰で、何故私を監視していたのか。可及的速やかに、かつ素直に話していただければ、手荒な真似はしませんよ」

 

 と言ってはみたものの、こういう手合いは、口を割る前に自決するか、意を請けただけの末端の者と言うのが相場ですから、自発的で有益な供述を得るのは望み薄です。

 “影縛り”で動けなくして聞き出そうにも、肝心の影が他の影の中に埋没している以上、それも叶いませんし、照明弾の持ち合わせも無ければ、あっても周りの住民が騒ぎ出すので使えません。

 

 そうなると、後は四肢の自由を奪い、歯を全部折って自決出来ないようにした後に拷問にかけるのが、残された手段と言うか唯一有効な手段なのですけど、今は先を急ぐので、手早く(なます)に斬ってから橋に吊るして、この者の雇い主なり所属する組織なりが何らかのリアクションを起こしてくれる事に期待しましょう。

 警察沙汰にはなるでしょうから、後で皐月(さつき)ちゃんには一言伝えておかなければいけませんね。

 

「生憎、先を急ぐ身ですので、貴方の事は後程、他の方に伺う事にしますね」

 

 後ろ襟から一尺六寸(約五十センチ)の忍者刀をゆっくりと抜き、()()()()()()最後通告を突きつける。

 本来ならこのような所作は必要なく、宛ら投影魔術のように出せるのですが、私がサーヴァントである事を知らない可能性を考慮して、このような小細工を弄したのです。

 

「では、さようなら」

 

 忍者刀を逆手に持って飛び掛かり、相手はなす術なく袈裟に斬られた。

 

 かと思いきや、手応えが全く無く、むしろ、今までそこにいた筈の相手が、霞か雲のように消え失せたのです。

 

(幻術の類…………ですか…………。しかし…………)

 

 近くの街灯が棒手裏剣で破壊されている事から、幻術を用いたのはその直後。

 相手が暗殺者(アサシン)クラスと同等の敏捷性を持っていたと想定して、今までの時間経過から算出した範囲内にも相手の気配は全く感じられない。

 

 しかしながら、暗殺者(アサシン)のそれに近い気配の消し方を習得していたとしても、暗殺者(アサシン)のサーヴァントである私にさえ気配を感じさせないレベルの気配遮断など、いくら専門教育を受けていたとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ましてや人型であった以上、唯の使い魔とも考えられません。

 

 であれば………………。

 

 脳裏に浮かんだ()()()()()()()を、頭を振って掃き散らす。

 

 そう考えなければ、()()()()()()()()()()事実の説明がつきませんが、今は結論どころか、推論を出す事すら性急と断じられる程にピースが足りていない。

 

 何者かの襲撃を受け、取り逃がした事自体はマスターに報告すべきですが………

 

 

 “第三の暗殺者(アサシン)のサーヴァント“

 

 

 そんな未確定以前に、今までの情報を統合しても在り得ない存在の可能性まで、マスターに報告すべきか否か。私にしては珍しく判断に迷うところではあります。

 

「一体、この聖杯戦争は何が起きていると言うのですか……………」

 

 胸中に過る言い知れない不安を、僅かに満たない月に向けて吐き出すも、答える者は存在せず、静寂が薄雲と共に揺蕩(たゆた)うだけでした。




今年のFGOフェスは、残念な事に中止となってしまいましたね。
用意されていたであろう大量のエクスカリバーは一体どこへ行くのか?
それが最大の疑問です('-'*



さて、次回は……

・クックック………

・ふわっふわやぞ!

・病室ではお静かに

・お宅訪問

以上の予定です。
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