Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~   作:Prometheus.jp

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前回以降、多くの新たなお気に入り登録そして評価ありがとうございます。

正月休みのステイなホームのお陰なのか、いつもなら投稿してから徐々に少なくなっていくUAが、一日後に急増し、お気に入り登録数もグンと伸びる様を見て嬉しさと驚きのあまり、危うく漏らすところでした(ぉぃ

さて、今回はオリ鯖である謎のアサシンのお話です。

それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。


#056 interlude~虚構~

「しかしあれで良かったのかね?道士殿」

 

 テーブルの向かいに座る暗殺者(アサシン)が、食後の杏仁豆腐を頬張りながら徐に尋ねる。

 サーヴァントには食事は必要ないという話だったが、この暗殺者(アサシン)は少々特殊らしく、食事も睡眠も必要な上、サーヴァント特有の能力である()()()()()()()()()()()。だから今こうして、ホテルに併設されたレストランの個室で、香蘭(シャンラン)も交えて夕食を共にしている。無論、機密保持の為に()()()()()()()()、いつも同行していた(タオ)家の男の顔をしている。

 

()つ国にも骸から情報を読み取ったり、魂を呼び出したりして死人(しびと)から言を取る巫女の如き術がある事は承知した。故に、かの仁を亡き者にした上で、魂と肉体を切り離したのも至極当然と言える。()りとて、骸を線路なる場に放り捨てて自害に見せかけるなど面妖至極。此方(こなた)には()しかねる仕儀にて、道士殿の御存念は那辺に在りや。それを承りたい」

 

 暗殺者(アサシン)の不平は尤もで、遺体の処分は魔術に関係なく“見つからないようにする”のが定石であり、遺体が見つからなければ事件そのものも露見する事が無い。そうした手段は暗殺者(アサシン)のみならず、ボク自身にも心得がある。むしろその方が得手でもある。

 死霊魔術師が遺体を検分すれば、術式阻害が施された事で、その遺体の死因に魔術師が関わっているであろうと類推する事だって想像に容易い。

 しかし、敢えてボクは暗殺者(アサシン)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「例えばだ、宝物庫に宝が在るとする。その宝は、手に入れれば末代まで繁栄を約束されたも同然のものではあるが、敵の手に渡ればこちらの死命を制されるものでもある。しかしその宝を奪いに来た段で、自分では敵わない敵と鉢合わせて、十中八九、宝は敵の手に渡るとしよう。さて暗殺者(アサシン)、君ならこの状況をどう切り抜ける?」

 

「ふむ…………手に入れること能わざれば…………敵もまた手に入れられぬよう、宝物庫ごと焼き払う…………成程、合点がいった」

 

 引っかかっていた疑問が全て解けたらしく、暗殺者(アサシン)は烏龍茶を一息に飲み干してニヤリと笑った。

 

「当世に生きる(まじな)い師共の道理(ほうもつこ)。それに在る宝こそ()()。宝は秘めたるものであって、宝物庫ごと焼き払うなど正気の沙汰に非ず。と世の常の呪い師共ならそう考えるであろうが、道士殿はその裏をかいたわけか。ふふっ、なかなかどうして、道士殿も策士よな」

 

「策なモノか。こんなモノ、奇策どころか下策中の下策だ」

 

 謙遜でも何でもなく、これは苦し紛れの奇計だ。

 雇った殺し屋組織の失態(任せきりにしていたボク自身の失態でもあるが)のお陰で、魔術師を襲撃している事が公になり、監督役の神父やあの老人には、ボクが雇った連中によるものと言う事が知れていた。

 他にも気付いている者はいるかもしれないが、これ以上の被害を最小限に止めるべく策を講じる必要がある訳で、それが今回の“()()()()()()()()()()()()()()()()()()”策だった。

 

 “神秘の隠匿”は魔術師にとって定石であり常識だ。

 解釈を広げて“見つからないようにする”と言って良い。

 魔術師であれば“()()()()()()()()()”であり、それを軽んじる者は狂人と蔑まれ、蛇蝎の如く忌み嫌われ、そして闇に葬られるのが必定。

 

 しかしそれは()()()であり、()()()()()()()()でもある。

 これほど危険な物は無く、しかし歴史上の場面に於いては度々それが証明され、同時に人は同じ過ちを繰り返すものである事も証明してきた。

 そこに奇策、機略が入り込む余地がある。

 

 “魔術師ならばそのような事はしない”と言う常識の池に、“常識を意に介さない狂人の存在”と言う石を投げ入れればどうなるだろうか?

 無論水面は激しく波打ち、水面に映る“真実”と言う名の月が一時だけでも歪み、或いは見えなくなるだろう。

 

 業腹ではあるが、道家の暗殺機械である道香龍(タオ シャンロン)と言う人物像が、そのような狂人とは一線を画す者として映る事を期待した上での策であり、つまるところ肝心要の部分を他者に委ねなければいけない策であると言う時点で“苦し紛れの奇策”と言う自己評価は揺ぎ無いものである。

 

()(あら)ず、然に非ず。奇策も下策も、事を成しさえすれば是皆等しく大功の策よ」

 

「まあ、そう言う事にしておこう。そこでだ暗殺者(アサシン)。今後の方針だが、魔術師狩りは引き続き連中にやらせてくれ。ただし、()()()()()()()()()、そして()()使()()()()()()

 

「ほう?彼奴等(きゃつら)陰陽衆(あさひな)の目を向けさせるつもりか?しかし、それでは言峰殿の思し召しに沿わぬのではないか?その上で、道士殿は如何なさる?」

 

 問題は追捕(ついぶ)の手だ。連中が朝比奈の魔術師に手を出してしまった以上、その最たるは朝比奈である事には間違いない。

 朝比奈がただの武闘派魔術師の集団であると考えるのは短慮に過ぎる。あの宗主か、或いはその周りに、先入観や固定観念に囚われない知恵者が居たとしても、今回の策は時間稼ぎぐらいにはなる筈だ。逆説的に“時間稼ぎ”になるかならないかの博打みたいな策とも言えるが。

 

 そこでもう一手進めるべく、昨夜連中の首領を誅殺して、新たな首領に暗殺者(アサシン)を据えた連中を使う。

 ああいう手合いの束ねに心得があると自負する暗殺者(アサシン)のお手並み拝見と言う面も含んでいる事は確かで、これからは実行した者も同時に始末させる。

 

「先ず、()()()()()については、主に()()()()()()()()()()(てい)を装えば良い。但し、今までの雑なやり方も用いて構わないから緩急は付けろ。あの神父が何か言ってくるだろうが、こちらは知らぬ存ぜぬを決め込めばいいだけの話だ。要請が有れば、その“狂人狩り”に出たって良い。そしてボクの方は、()()()()()()()()()()適当に狩って、()()()()()()()()()

 

 出来れば二正面作戦は避けたいところだったが、偽装としての“狂人による魔術師狩り”と“道香龍によるライバルの蹴落とし”を同時に行う事で、ボクへの疑いの目を逸らすのが主目的だ。

 それによって幾人かの無辜の市民を巻き添えにする事にはなるが、魔術師という人種は、目的の為に他者の命など顧みる様な善良さなど持ち合わせてなどいない。

 

市井(しせい)に乱を起こすか。まあ、道士殿の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、当面はその方針で良かろうな」

 

 そのような悍ましく忌むべき思考に、自身もまた満遍なく支配されている事に吐き気を催すが、あと少しで聖杯が手に入る事を思えば、これもまたあと少しの辛抱だろう。

 

 そう、あと少し。

 その少しが長城の如く長く、華山の如く険しい道ではあるが、聖杯を手に入れさえすれば、今までの地獄の日々は安息の日々に置換される。

 

 あと少し……………。

 

 あと少し………………。

 

 

 

「ところで、昨夜朝比奈のサーヴァントとやり合ってみたという話だが、真名なり宝具なり、見当は付きそうか?」

 

 あの老人から、朝比奈は独自にサーヴァントを従えているという話を聞かされた時には、当然絶望的な気分になった。

 いずれ朝比奈を敵に回す事になるとしても、彼我の戦力差があり過ぎて、今のボクでは道端の蟻のように磨り潰される事間違いない。

 そこに強力なサーヴァントの存在と言う要素が加われば、その差を表す単語は“絶望”の二文字以外に無い。

 後々朝比奈のサーヴァントの対処をするにしても、今は最新の戦力分析を行う事こそが肝要だ。

 

乱波(らっぱ)素波(すっぱ)の類、当世では“忍者”と申したな。それに相違なかろう。女性(にょしょう)の忍者となれば、甲賀三郎(こうか さぶろう)(すえ)、甲斐の望月千代女(もちづき ちよめ)かと思うたが、あまりにも出来すぎておる故、これは除いてよかろう」

 

 女の忍者と言う点に於いて、唯一当てはまるのがその望月千代女と言う忍者らしい。

 しかし、サーヴァントは真名を秘する事が定石であり、女の身で忍者の術理を用いるサーヴァントの真名が望月千代女であれば、自ら真名を明かしているようなもので、暗殺者(アサシン)が真っ先に除外したのも当然であり、当時は“女”であっても、後の世に歴史が曲げられて“男”だったと記された者の一人と見るべきだろう。

 

「じゃあ質問の仕方を変えよう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「ふむ………下柘植(しもつげ)木猿(きさる)音羽(おとわ)城戸(きど)、新堂の小太郎などは術の達者で応分の逸話を残したが、衆生の信心も“さあばんと”の成り立ちに係わるとあらば“下忍”と称された者どもは除いてよかろう。であれば、頭領であった者か英雄豪傑の郎党、独り働きで名を遺した者となるが…………果心居士(かしんこじ)伊勢三郎義盛(いせ さぶろう よしもり)楯岡(たておか)道順(どうじゅん)加藤段蔵(かとう だんぞう)、風魔小太郎、服部半蔵、百地三太夫。こやつらが当てはまるが、後世の娯楽で忍者とされた者もおる。それらの名も所望かね?」

 

 サーヴァントはあらゆる時代に生きた英雄豪傑が、神話や伝説の中で為した功績から生まれた信仰を以て精霊の領域まで押し上げられた存在である。いわば人類史に刻まれた英霊と神秘の具現だ。

 実在した人物は勿論の事、後世の創作もまた人類史の中で成立した事象であるが故に、虚像から形作られた英霊が存在したとしても可笑しくはない。

 そして、忍者と言う存在については暗殺者(アサシン)の方が熟知しているので、情報の一つとして聞いておいて損は無いだろう。

 

「うむ、児雷也(じらいや)霧隠才蔵(きりがくれ さいぞう)、それに猿飛佐助(さるとび さすけ)………そうそう、石川五右衛門や松尾芭蕉も忍者ではないかと言う巷説(こうせつ)があるな」

 

「今の段階で絞り込みは可能か?」

 

「聖杯より賜った知識だけでは、今は雲を掴むが如き仕儀にて、これにてご容赦願いたい」

 

 しかし数日時間をくれるなら、可能な限り調べて大凡(おおよそ)の見当は付けると言うので、優先度は然程高く設定しなくて良いと言い含めて承諾した。

 

「それよりも、あの女性(にょしょう)は“さあばんと”としては此方よりも数段手練れ。真っ向から切り結んだとて、万が一にも勝ち目はあり申さん。ましてその“ますたあ”ですら、“らんさあ”の“さあばんと”と互角に渡り合った武辺者と言うではないか。くれぐれも道士殿と此方で陰陽衆(あさひな)の頭目を討とうなどと言うてくれるなよ?」

 

 ボク自身も武術の心得はあるが、あの宗主の実力には遠く及ばない。

 ごく最近までは“ただの噂”と鼻で笑っていたが、槍兵(ランサー)と互角に矛を交えたと言う話をあの神父から聞き、それが嘘偽りのない事実であると知るや、即座にその認識を改めた。

 しかし、朝比奈はボクたちの敵になるだろうが、必ずしもボクたちが倒さなくてはいけない訳じゃない。あの老人が朝比奈の牽制或いは無力化をボクに頼んできたのも同じ理由からだろう。

 

「ボクだって朝比奈と正面切って戦うのは得策じゃないと言う事ぐらい心得てるよ。まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()、それはそれで暗殺者(アサシン)()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「然り。マキリのご隠居の切り札、篤と拝察仕ろう」

 

 理想はあの老人と朝比奈の共倒れだが、これは夢想に過ぎる。精々で双方が程よく消耗してくれれば勿怪(もっけ)の幸いと言ったところ。

 ボクとしては、朝比奈の敵になり得る者に手を貸す素振りを見せて近づき、そいつを朝比奈にぶつけるよう仕向ける事が最善と思われ、当面その役割を担うのはあの老人だ。

 他者の命を食い潰して長年生き永らえて来たんだ。そろそろ他者にその命を食い潰されたとしても文句は無いだろうさ。

 

「さて、そろそろあの老人も動き出す頃合いだ。あの老人のみならず、他のマスターの動向も漏らさず注視してくれ。無論、魔術師狩りの采配も抜かりなくな」

 

「やれやれ“さあばんと”使いの荒い御仁よ。然りとて、戦働きは()()()()()()()()()()()()()故、それもまた是非も無し。か」

 

 自嘲気味に述懐しながら立ち上がるその姿は、見た目こそネズミのような卑しい顔をした道家の男そのものではあるが、中身がアレとは異なるからか、その姿すらも好漢のような印象を受けるから不思議なものだ。

 

「ごめんネ暗殺者(アサシン)

 

 ボクたちのやり取りを黙って見ていた香蘭が、暗殺者(アサシン)の漏らした不平に対して詫びる。

 サーヴァントは所詮“使い魔”であり、英雄自身の生前の人間性を模倣したに過ぎない。

 しかし、やはり人の姿をし、人の言葉で意思疎通が出来るのなら、人と同じように接するのが当然。と香蘭は思っているのだろう。

 

「おぉ……これはしたり。此方は兄君の差配に不服など御座らず。妹殿より斯様な言葉を賜るとは恐懼(きょうく)の極みにて、我が身の不徳をこそ詫びねばなりますまい。斯様な夕餉を馳走になったとあらば、応分の奉公をば相勤める所存にて。ささ、斯様に暗きお顔をなさらず、花の如き笑ったお顔を見せて(たも)れ」

 

 戦乱の渦中を生き抜いて来たと言う暗殺者(アサシン)には、そんな香蘭の人の好さに何か惹かれる物を感じたのだろう。引き合わせてから半日と経っていないのに、すっかり主君の姫君をあやすかのように応じている様を見ると、自然と口元が緩んでくる。

 

「じゃあ、明日も明後日も、毎日一緒にご飯食べようネ!」

 

「仰せの儀、承知仕った。それにしても、妹殿は“さあばんと”の扱い方の何たるかをよく心得ておいでのようだ。そうは思わぬか?道士殿」

 

 満面の笑みを浮かべる香蘭の申し様に暗殺者(アサシン)は恭しく頭を下げ、呵々大笑しながらボクの肩を軽く叩き個室を後にした。

 

 従順そうではあるが、その実、掴みどころのない奴。それが暗殺者(アサシン)に対してボクが抱いている印象だ。

 

 “空虚な(はこ)の如く、此方は己というものを持ち合わせてはおらぬ”と、暗殺者(アサシン)は自身を言い表していたが、それでは初めての中華料理を目にした時の驚きも、それらに舌鼓を打つ喜びも、香蘭が暗い顔をした時の狼狽も、それは暗殺者(アサシン)自身の感情の発露ではないのか?それとも、それは他の誰かの感情を匣の外側に貼り付けているだけなのか?それとも、実際には無いものを有るように見せかけているだけなのか?

 

 不安がある事は確かだ。

 それは勿論、お互いに出会ってから一日も経っていないのだから仕方がない。

 全ては時間が解決してくれる。と楽観視することも出来たが、突如目の前に現れて表したその恭順の意も、同じく虚構のものなのではないか。

 

 拭いきれない不安はある。

 しかし、今はそれを飲み込まなければいけない。

 停滞しかかっていた事態が動き出した事で、自分でも知らない内に神経質(ナーバス)になっているだけだ。

 冬木の街並みと、自身を隔てる窓ガラスに映る自身に、ボクはそう言い聞かせた。

 

 

 

 数時間後、そんなボクの不安を他所に、事態がまた一つ大きく動き出した事を知ったのは、急報を告げに現れた暗殺者(アサシン)自身からだった。




村正が遂に来ましたね。
年末SPで発表された時「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」と叫びました。

そして弊カルデアでも無事迎え入れる事が出来たのですが、まさかのピース不足で再臨が滞っています(-_-;)

スキルも中々良さそうなのですが、前回のクリイベでQPが上限に達しそうだったのでリンボルド卿をスキルマにしたのですが、村正に回す分の新金素材が全然足りなくなるという始末(;´Д`)
しかも、フリクエをどれだけ周回しても全然でないと言う………(;´Д`)

そうそう、年末SPと言えばカニファンが来ましたね。
早速円盤を予約しました('-'*

年末SPでは「すーぱー☆いんふぇくしょん」の背景は静止画でしたけど、円盤では出演鯖があの振り付けと、全員でうぉうお!うぉうお!うぉうお!いぇいいぇい!とやってくれるものと信じています。
いや、謎の猫の群れの中にメジェド様が紛れているかも?カニファンの時には背景がバーサーカーだったけど、今回はチェイテピラミッド姫路城か?

何にせよ発売が楽しみです('-'*

さて、次回は……
・りん凛りりん♪りんりりりり~ん♪

・ふわっふわやぞ!

・お説教タイムの始まりだ

・徘徊爺さん

・楽しいロンドン♪

以上の予定です。
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