Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
今回は元々書きかけの最新話が長くなりそうだったので分割した後半部分でしたので早めに投稿する事が出来ました。
今回のFGOのイベントはボリューム的に少々物足りない?と言う声も耳にしますが、私個人の見解では、あれぐらいのボリュームの方が丁度良かったと思います。
周回に時間を食われる事も少なく、その空いた時間で久々にツーリングに行ってきました。
道中でお弁当を買って、よい景色を眺めながらそのお弁当を食べると言うピクニックツーリングはなかなかに乙なモノです。本格的な梅雨に入る前にまた行こうかなぁ………。
それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。
霧が立ちこむテラスに一個の影が立つ。
それは紛れも無く、あの時「自分の事は“
そのシオリがリズの傷ついた身体を支えている。
「…………キミ………は………………」
「遅くなりました。後は私にお任せください」
「……ウン…………ヨ…ロシ……ク……………」
だけどおかしい。
おじ様が従えていたサーヴァントはシオリ一騎のみ。
「朝比奈の方!私たちの事はどうか構わず、せめてお嬢様だけでも!」
「
肩越しに私たちを見るシオリの目線は、それでもゾウケンと
今までおじ様とシオリは、一度だけゾウケンと
お互いに敵視するようになってからの遭遇は今回が初めてであるなら、これは
「おのれ………
「……………首を洗って待て………だと?……………ふふふふふふ………これはまた……………」
あからさまな敵意と怒気を示したゾウケンに対し、肩を揺すって笑うシオリの態度は、恨み言を垂れ流すゾウケンを明らかに馬鹿にしていて、それに触発されたゾウケンの顔は、憤怒によって増々その顔に刻まれた皺を深くしていた。
「何が可笑しい………?」
「噴飯ものとは正にこの事。吾が主が
「………使い魔風情が小癪な物言いを…………」
「それで、貴方はどうしますか?
ゾウケンの怒りを柳に風と受け流すように、シオリは
同じ
主に似て憶病なサーヴァントね…………。
そんなに死ぬのが怖いなら、
「じゃあ、本気で相手になってもらおうじゃねえか……!」
そんな
「なっ………⁉」
躱す事も逃げる事も出来ない必殺の間合い。凶暴な戦士の牙に二人が噛み砕かれたと認識した瞬間、驚愕の声を上げたのは誰あろう
「ちっ!テメェッ!一体何を!…………クソッ!!」
苛立ちを隠す事無く穂先に刺さった円卓を振り払ったその瞬間、
しかし、シオリが隠し持っていた
「私を足蹴にしてくれた借りは返させてもらうわっ!!」
同じく霧の中から飛び出してきた
それらが手にするのは、剣であり、槍であり、斧であり、弓を持つ者さえいたけど、鎖の先に錘が付いた武器に持ち替えたシオリが、それを振り回す事によって、その悉くを打ち砕いた。
「逃がさないわよ………!」
嗜虐的に嗤う
重なり合う破砕音と立ち上る土煙は、ほんの少しの間だけ辺りの視界を奪ったけど、
「ふふふ………跡形もなくなったようね」
空中に浮揚してテラスを見下ろす
しかし、
それを追走する
「ハンッ!
腰の高さに槍を構え、フッと息を強く吐いたその時————
「▆█▆▄▄▅▃▃▃▅▇▇▇———————ッ!!!」
霧の中で機を窺っていたであろうバーサーカーが二人の間に割って入り、
そしてシオリはと言うと…………
「ぐぅっ!!」
至近で
戦闘の中で生じた一瞬の空隙を好機とし、私の命を奪おうと近寄った
「絶妙の潮時。流石は
「………………ククククク……………」
私の命を奪う目論見は頓挫し、動きを封じられてうなだれているかに思えた
何かただならない予感がして身構える私に、シオリは手だけで後ろに下がるよう合図したその直後————
「魂なぞ飴細工よ………。苦悶を
翻った黒い外套から現れたのは、
その異形を隠す為に、普段は折り畳まれていたであろうその右腕は、瞬く間にシオリの胸元に迫り——————
「さしずめ、その手で触れた相手の心臓の
不思議な事に椅子は元あった場所ではなく、まるでチェスの“
そしてそのシオリはと言うと、テラスの隅の手すりの上に瞬間移動したかのように立っている。
更に、私はいつの間にかそのシオリに抱きかかえられていた。
「またぞろクソッたれな術を使いやがる。それがテメェの宝具って訳か………!」
バーサーカーと対峙する
“相手を仕留めた”と言う手応えがありながらも、その実空振りに終わっていたと知れば、そのシオリの術の煩わしさは、相手にとって憤懣遣る方無い事間違いないだろう。
「…………成程、先日河原で覗き見ていたのは、やはり貴様だったか。しかも自らと手近なモノとの位置を変えるその術、貴様のソレは
「あ?どういう事だ⁉答えろ、黒虫野郎!」
「愚か者め、まだ気付かんか?我等
「察するに、貴様の目的はアインツベルンの娘の救出と並行した威力偵察。と言ったところか?」
「………もう少し貴方たちの情報を集めたかったところではありますけど…………そろそろ佳い頃合いですね」
「呵々々。空でも飛ばない限り、お主たちに逃げる術は無い。お主を
シオリは確かに強い。
だけど、そんなシオリでさえ
「
ゾウケンの言う通り、
だけど不敵に嗤うシオリの横顔は、そんなゾウケンの奸計に穴を穿つ一計が在ると確信させるものだった。
「バーサーカー!一時退くわ!戻りなさいっ!」
しかし、
たとえ
「バーサーカーは、時間を稼ぐ為に残るようです」
「………!」
シオリの述懐はとても容認できるようなモノじゃない。
だってバーサーカーは私のサーヴァント。
現界してから、今日までずっと私と共に居てくれた存在。私の傍に居てくれた存在。
そんなバーサーカーが、私一人だけを逃がす為に残るだなんて。私一人だけを置いて遠いところに行ってしまうだなんて、それじゃあ十年前と全く同じじゃない…………!
「…………ええ、吾等朝比奈の名に懸けて必ず………!」
静かに黒い巨体を揺らしてこちらを見るバーサーカーに対し、“私を護る”という唯一つの意思を共有し合う二人に、それ以上交わす言葉は不要である。と、シオリもまた静かに応える。
その応えに満足したのか、バーサーカーはまた静かに
「バーサーカー………いえ、ヘラクレス殿。御武運を…………!」
その大きな背中に投げられる激励に、バーサーカーは大木のような腕を横に伸ばし、親指を立てて応える。
その背中の後ろに在る守るべき者の存在は、たとえ理性を奪われていようとも、その魂の根底に刻み込まれた戦士としての矜持を奮い立たせるには十分だったのだろう。
「それでは今宵はこれにて…………
シオリが宣言した直後、四方八方から何か丸いモノが幾つも投げ込まれ、それが炸裂するや辺りには煙が立ち込める。
「ちっ!煙幕か!背を向けて逃げるとは、テメェには戦士の誇りはねぇのか⁉」
「生憎、忍びの誉れは
大きなバーサーカーの身体が遠ざかり、私を護ってくれたあの背中も、私を担いでくれたあの肩も、みるみる小さくなってゆき、その輪郭さえも滲んでゆく。
涙が止まらない。止まる筈も無い。たった数か月、初めの頃はバーサーカーが動く度に痛い思いをしたし、とても怖い思いもしたけど、それでも私の大切な、かけがえのないサーヴァント。漠然と、しかし明確にそのサーヴァントを失うのだと、もう二度と会う事は出来ないのだと思うと嗚咽が止まらなかった。
だけどバーサーカーは動かない。
…………そうだ…………あの時と同じだ……………。
冬の森で狼の群れから守ってくれた時、バーサーカーは狼たちにされるがまま、微動だにしなかった。
バーサーカーは私のサーヴァント。
私が“戦え”と命じない限り動かないのだ。
「うっ…………ぐっ…………………!やっちゃえ………やっちゃえ………やっちゃえ…………!やっちゃえぇぇぇぇっっっっ!!!!! バーサーカァァァァァッッッッッ!!!!!!」
今は泣いている場合じゃない…………!
私は力の限り、今までに出した事の無いぐらいの大きな声で、バーサーカーに
「█▇▆▇▆▅▅▇█▅▄▆▆▇▇▆▅▆▄▅▆█▆▄▅———————ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
私の叫びに応えるように、バーサーカーの雄叫びが森にこだまし、眠りに就いていた野鳥たちが一斉に飛び立った。
相手はサーヴァント三騎に加えて、
きっと絶望的な戦いになるだろうけど、バーサーカーが簡単に負けるだなんて思う訳がない。
だって、バーサーカーは強いんだから…………!
鬱蒼とした森の中を影が走る。
私を抱えたままのシオリは
「……………流石に
僅かな苦々しさを含んだ呟きを漏らすシオリに訊き返そうとした瞬間、彼女は急に身を捩り、驚きの声を上げるよりも早く、私たちがさっきまでいた空間を何かが切り裂いた。
「獲物に立て続けに逃げられては、私も立つ瀬がないのでな」
どこからともなく、しかし明瞭に
「それはご苦労な事です。ですが、貴方に同情してお役目を放棄する謂れはありませんが?」
「なに、それには及ばん。私は私のやり方で仕事を全うするのみよ」
泰然とした態度で応じるシオリに対し、
その間もシオリの足は止まる事無く、
城のテラスのように開けた場所ではなく、鬱蒼とした森の暗闇こそが
「結構。同じ間諜の英霊、同じ
そう言うとシオリは、私を更にぎゅっと強く目と耳を塞ぐように抱きしめた次の瞬間、それでも分かるいくつもの爆音が森の空気を震わせた。
「な、なんなの今の⁉」
「コンポジションC-4。俗に言う“プラスチック爆弾”をこの辺りに仕掛けておいたのです」
サーヴァントに傷を与えるには、魔術を始めとした神秘を纏っている必要があり、神秘の欠片も無い科学と化学の産物である現代兵器ではサーヴァントに傷一つ付ける事なんて出来る筈も無い。それこそ神秘を纏わせた棒切れの方がよっぽど効果的だ。
当然、同じサーヴァントであるシオリもそれは理解していて、
しかし————
「さすがに驚かされた」
「…………!」
横合いから急速に迫る
しかしその代償として、今までどんな攻撃を受けても止まらなかったシオリの足がついに止まり、樹上に立つ
「長く現界しているが故に、現代の武具の扱いにも通じていると言うのも思えば道理だが、実際に見るとこうも違うものなのだな」
「………貴方の至近で起爆させた筈ですが?」
「“風除けの加護”。砂漠を征く者には必須でな。生憎、あの程度の爆風で私の足は止まらんよ」
「では、貴方をここで斃す以外、貴方の足は止まらないと?」
「その娘を抱えていたとて、貴様にはそれも容易かろう?だが言った筈だ。私は私のやり方で仕事を全うする。とな」
背後から異様な気配が迫って来る。
これは間違いなく
「ククク………私では到底貴様に敵わん。しかし、やりようはあると言うものだ」
だからこそ、
「現状を鑑みれば、臓硯の採った策はコレが妥当でしょう。ですが…………臓硯にも貴方にも
「なに………?」
状況が悪化しても尚、不敵に笑うシオリに
「………一体…………何………が……………」
そして敗者となるべきシオリが、
「孫子に曰く“善く戦う者は不敗の地に立ちて敵の敗を失わざる也。故に、勝兵は先ず勝ちて
事前に十全の準備をして負けない態勢を整えてから戦いに臨み、勝機を見出したなら遅滞なく、拙速を以て攻める。
故に、勝敗とは戦う前に決しているようなモノなのだ。とシオリは言葉を繋ぐ。
「そして貴方自身の敗因は、
しかし勝利を確信した
シオリがどうやって
「………私を殺すか………」
「致命傷にならないよう手加減しましたが、臓硯程度の魔力では戦線復帰が叶う程の回復は見込めないでしょう。願わくば
倒れ伏す
おじ様の話では、
シオリが止めを刺さなかったのは、
だけど、あの子はもう
ああなってしまっては、
そんな私の憂いを他所に
バーサーカーの相手をするよりも先に、私たちを捕まえようと追ってきたのは僥倖でもあり、奇禍でもあった。
しかし、
「掛巻くも
振り返る事無く、シオリが何かの呪文を唱え始める。
あと五メートル。
いよいよ宝具を開帳するのか?と思ったけど、彼女が纏う雰囲気が、魔力が、宝具を開帳する時のソレとは異なって見える。
あと三メートル。
「結び固めし縁手繰りて、契り交しし絆伝いて、疾く疾くと天翔けて、吾が主
「マスターッ!!
ここにはいない筈のおじ様に向けて叫んだ次の瞬間、触れるか触れないかにまで迫っていた
音速か、それとも音速に近い速度が出ているのか、街の灯りが流星群のように流れてゆく。
しかしそれもやがてゆっくりと流れるようになり、やおら体勢を変えたシオリが、どこかの大きな建物の屋上へと着地した。
「ケガはなかったかい?イリヤちゃん」
「おじ様⁉」
そこに居たのは、白く古めかしい魔術礼装を身に纏った朝比奈のおじ様だった。
あぁ…………おじ様は本当に何度も私を救ってくれた…………。
キリツグを助けられなかった分の償いだ。と、おじ様は仰るかもしれないけど、それでもおじ様は約束を守ってくれた事に変わりない。
それが嬉しくて、私は思わずおじ様に飛びついてしまったのだけど、結果としておじ様を押し倒してしまった。これじゃあ
「ご、ごめんなさいおじ様………!」
「いやいや…………流石に
「シオリが詠唱していたアレの事?」
「そう。魔術による飛行術式“アンカーアトラクションアセンション”。通称“トーコトラベル”の応用………と言うか、そのものなんだけどね」
おじ様曰く、緊急離脱する為の手段として着目したけど、その“トーコトラベル”と呼ばれる術式の成功率は、考案者自身でさえ専用の礼装を用いても三割にも満たないらしく、その欠点を補うべく、おじ様がシオリを引っ張る、双方で同時に詠唱する等、用途を限定したり、マスターとサーヴァントの魔術的関係を利用したりして、ようやく成功率を五割程度にまで上げる事が出来たけど、実行速度や運用効率、そして成功率そのものにもまだまだ課題が残るらしく、セラやリズも同じように引っ張ろうとしたけど、こちらは成功しなかったらしい。
「お
やがて白衣を身に着けた二人の男女が駆け寄って来た。この二人は
「龍くん!一人は腕に
「
おじ様によく似た男性の医師が矢継ぎ早に指示を出し、シオリと女性の方がそれぞれに動き出す。
「おじ様、私たちは人間の医者にかかったって…………」
「君たちがアインツベルンのホムンクルスであるなら、
しかし、そう断言するおじ様の目に嘘偽りは無いように見えた。
アインツベルンの錬金術が易々と他所に流出したとは考えられない。
考えられないのだけど……………。
「それって……………
だけど例外は在り得る。
アハトのお爺様が一度だけ語り聞かせてくれた、過去の聖杯戦争の記録。
おじ様と初めて会って以来、ずっと抱き続けてきた
それが例外の産物であれば、おじ様たちが
「…………俺の魔術回路は、君たちアインツベルンのホムンクルスが持つ魔術回路と、元々の魔術回路を人為的に融合させたモノなんだよ」
僅かな逡巡の後、静かな口調で真実を打ち明けるおじ様の後ろで、シオリが泣き出しそうなほど悲痛な顔をしていた事に、私は興味本位で踏み込んではいけない領域に土足で踏み入ってしまったのだ。と、後ろめたい気持ちになった。
今まで小出しにしてきましたが、栞さんが大分本気を見せ始めました。先生と併せてガチでバトるのももうすぐの予定です。
さて、そんな栞さんが今回は兵法を用いた軍師っぽい顔を見せましたが、天正年間の百地丹波(百地三太夫)には忍者の頭領としての逸話は勿論、軍師としての逸話も在るのです。
その辺の詳しくは、今後の話に加えていこうと思います。
さて、次回は……
・いてまえバーサーカー
・密着!救急救命センター24時
・楽しいロンドン♪
・図書館では、うわっ何をする!くぁwせdrftgyふじこlp
・バイバイ
・ふわっふわやぞ!
以上の予定です。