Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
ついに六章が配信されましたね。
しかも、ボリュームが多いから前後半に分けて配信され、更に前半部分は全体の三割だとか………('-';
さて、今回はギリギリ二か月と開ける事無く更新出来ました。
いつもだったら、更新からUAは右下がりで一月も経つと一日当たり2~3件がざらでしたが、前回以降はUAがそれなりに維持されている様子を見て、執筆のモチベーションを維持してきました。
それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。
————成程、君が*****か。素晴らしい………!いや、羨ましい!確かに噂通りの化け物だ!————
目の前の金髪の青年は、初めて会った彼の事を明け透けに“化け物”と言った。
何という無知。
何という無謀。
人ならざる膂力を垣間見て、その生い立ちを知り、彼を“化け物”と揶揄する者も、恐れ戦く者もいた。
その多くを彼は捨て置いた。
己には理解不能なモノを恐れるのは人間として、生物として正しい反応である事を彼は知っていたからだ。
しかし、彼を貶める為にその言葉を吐く者には容赦がなかった。
目の前の傲岸不遜な青年もまた、そいつらと同じなのだろうと握る拳に力を籠めるも、青年は自らに降りかかろうとする厄災に気付く事無く言葉を更に紡ぐ。
————だが安心して欲しい。俺といる間、君は化け物じゃなくなるよ。つまり英雄。いや、この未来の王を護りし大英雄となるんだ!————
まるで子供のように夢を語り破顔する青年に、彼は呆気にとられ、そしていつしか口元を緩めていた。
自らの運命に翻弄されて疲弊した彼の心に、
ミュケナイの王女アルクメネとオリュンポスの主神ゼウスの間に生まれ、後に“ヘラの栄光”を意味する名を遺し、死後に一柱の神として崇められたギリシャ神話に名高き半神半人の大英雄。
それが“ヘラクレス“。
第五次聖杯戦争に於いて、
人類史に並ぶ者無き万夫不当の大英雄は、数千年の時を経て新たな“難行”に挑まんとしていた。
だが、この難行は誰かから与えられたモノではない。
女神ヘラに吹き込まれた狂気に呑まれ、我が子と双子の弟の子を炎に投げ込んで殺してしまった事への贖罪なのか、理性無き獣と化しても尚、一人の儚い少女を護ると言うその魂の奥底に刻み込まれた意思は些かも色褪せる事は無い。
彼が自らに定め、自らに課した難行は、彼を語る上で欠かす事の出来ない逸話を上回る困難である事に間違いないだろう。
その彼の前に立つ敵は三人。
一人は触れるだけで全身を千切る事さえ出来そうな、しかし己の肉体に頼らず、その頭蓋に満たした知恵を以て立つ老人。
一人は宛らネメアの獅子の如き強靭な革鎧を身に纏い、ケリュネイアの鹿の如き俊敏な異郷の戦士。
そしてもう一人は……………
「
「あの
「なんですって…………!クッ……………アイツ………私を散々コケにしてくれたアイツは、いつかこの手で八つ裂きにしてやるわ……………!」
憤怒に顔を歪めるその女性を彼は知っている。
かつて彼を冒険の旅へと
コルキス王アイエテスと最初の妻エイデュイアとの間に生まれ、女神ヘカテに魔術の教えを受けた王女メディアこそ、
英雄たちの到来と、女神アフロディーテの呪いによってその運命を大きく狂わされ、その人生は今尚ギリシャ神話に於ける悲劇の最たるモノと語られる。
同じ船に乗り、寝食を共にした期間は僅かでしかなかったが、後年伝え聞いた
しかし数千年の長き時を経て、ヒッタイトよりも更に東の果ての地で二人は再会した。
共に人類史に刻まれた英雄の影法師として。
“護る者”と“奪う者”と言う対極に立つ者として。
「落ち着け
「あの
「
「………それで
苦り切った表情を浮かべて呟く
あの黒い影に飲み込まれた夜の事は、
己の肉体に向けられた脅威は、己の肉体で、磨き上げられた技で防ぐ事は出来る。しかし精神や魂と言った己に内包されるものに向けられた脅威に対して、それを完全に防ぐ手段を人類は未だ発明していない。
仮初めの肉体に傷一つ付ける事無く、布に水を浸み込ませるかの如く霊核を侵食し、ついには
魔術世界に於いてさえ発生原理や蓋然性を証明する理論は無く、しかしその存在だけは市井に流布する都市伝説の如く実しやかに囁かれる現象。それが“
そして神代の英雄である
イリヤスフィールが
「だがヤツの逃げ足だけは一級品だ。俺たちも追った方が良いんじゃねえのか?」
朝比奈栞こと
純粋な戦士故に、敵前逃亡を厭わない思考を嫌悪する
「既にお主らでさえ手玉に取られた上に、おめおめと逃げられたというのにか?」
「萎びた魔術師風情が言ってくれるじゃない…………!」
「狩りってのは、ただ獲物を追い立てれば良いってもんじゃねえよ爺さん」
「………ふむ。ならばお主らも向かうがいい」
老人は僅かに思考を巡らせた後、
この場から去ろうとする彼らを掣肘する者はこの場には居ない。
唯一それを成し得たであろう
但し数秒前までは。
「!!!」
その手応えは、
しかし、消し飛んだ筈の
「自己再生⁉いいえ、これはもう時間の巻き戻しに近い蘇生の呪い…………!」
「▄▅▇▅█▆█▄▄▅▃▅▂▅▂▄▃▄—————ッ!!」
神々がその英知を結集させて彫り上げた彫像の如き体躯が蘇り、英雄は再び立ち上がった。
「呵々!素晴らしい………!よもや己が逸話を、そのような形で宝具に昇華させよったとは…………!」
ギリシャ神話に曰く、アポロン神の神託により仕える事となったミュケナイ王エウリュステウスより与えられた十の勤め。
しかし、その内の二つは己の力によるものではない事を理由に達成と認められず、結果として十二の過酷な勤めを果たす事となり、その功績を以て不死身の肉体を与えられたとされる、ヘラクレスの代名詞とも言うべき逸話。
後世に“ヘラクレスの十二の偉業”と語られ、それが転じた宝具“
蘇生魔術を重ね掛けする事により十一の代替生命を有し、生前に成し遂げた偉業と同数の十二回の致命傷を与えなければ斃す事が出来ないと言う破格の宝具である。
「面白れぇ。神代の英雄ってのは、そう来なくっちゃな…………!」
生前の
故に、生前強者との戦いが日常であった
生前では得る事の出来なかった強敵との邂逅。そして魂がひりつくような戦いに。
「
先程
だが、
「なにっ…………………!!!!」
だが、流れ去る
「
「油断はしない事ね
「チッ………!どうやら、一度受けた攻撃は無効化するようだな。なんにせよ厄介な宝具だぜ…………!」
だが形在るものはやがて朽ち果て、命在るものはやがて尽き果てるのが摂理であれば、如何に半神半人の大英雄と言えど、摂理の埒外に立つ者ではないのもまた事実である。
ただその有限の
全弾命中し炸裂するも
次いで先端が月を模った意匠の錫杖を現出させ、それを与えた女神に捧げるかのように天高く掲げた後に、再び
一条の稲光の直撃を受けてさえ肉体の崩壊と絶命は必至であるが、それが三度続けて
だがその雷霆を以てして
「じゃあ、これならどうかしら………?
「成程ね…………。これは思った以上に厄介だわ」
「テメェ一人で納得してねえで、どういう事か説明しやがれ」
ぞんざいな口の利き方をする
「
最初に
しかし物理的な威力では劣るものの、“
「たとえ対軍宝具や対城宝具、いいえ、世界を滅ぼせるような威力を持った宝具だとしても、それがBランク以下なら
過日、
分解された
「では、お主ら
「癪だけど、宝具も含めてあと二つと言ったところね。
「…………いや、あと一つだけだ」
結果としてAランク相当の攻撃手段を多数に持たない限り、この単純な減算結果を覆す術は無く、
ただ一人を除いては。
「では、
「チッ…………!結局はそうなるか…………!」
如何に破壊と殺戮の別側面を表出させられようとも、
故に
「仕方が無いわね。でも、決死の覚悟なんて望まないで頂戴。私はあくまで聖杯で叶えたい願いがあるから手を貸しているだけ。私が与えられるのは僅かな時間だけよ」
「わかっておる。ほれ、そろそろ
「ったく………!
老人は
普段であれば、そのような老魔術師の言いなりになる謂れなど無く、
だがそう出来ないのは、
「█▆▅▂▃▄▇▄▆██▇▄▆▆▃▂▃▂▁—————ッッッッ!!!!」
大英雄は二度の死から目覚めた。
異郷の戦士への憤怒は無い。
友の妻だった者への憐憫は無い。
それが誰であろうとも、目の前に立ちはだかる敵を殲滅する。唯それのみ。
かつて炎に投げ入れた幼子が、
それが我が子であった事を知った時、悲しみと絶望のあまり獣の咆哮の如く慟哭した。
贖罪の為に神託を伺い、苦難の路を選び、そして歩んだ。
テリマコス、クレオンティアデス、デイコオン。
不甲斐ない父を赦せなどとは言わぬ。
女神ヘラに狂気を吹き込まれたからだなどと弁解もせぬ。
そして力を貸してくれ……………!
大神ゼウスよ、オリュンポスの神々よ、照覧あれ!
我が乗り越えし十二の難行に比べれば細やかなれど、白く儚い少女を護る
駆ける。駆ける。駆ける。
破壊と死の暴風と化した大英雄は、敵対者からの苛烈な責め苦に怯む事無く駆ける。
吼える。吼える。吼える。
かつて討伐した獣にも劣らぬ咆哮は、大地を裂き大気を割る。
エリュマントスの猪にも劣らぬ
神代の魔術、取り分けて女神ヘカテより直々に授けられた
「
空中に浮揚した
残り九つ。
「
それら一つ一つが円弧を描き、線を描き、やがて十二の魔法陣が全て繋がると、複雑な文様の巨大な魔法陣を形成した。
そして、魔法陣の中から現れた炎を纏う二輪の戦車に
それは“有翼の竜”。
魔獣にして幻獣とも神獣とも呼ばれる幻想種の頂点に立ち、伝承によっては自然現象そのものとされる存在。
神秘が満ちた神代に於いてさえ、その存在は人間の手に届かぬモノであり、ましてや牛馬の如く人間程度の存在に使役される手合いではない。
だが
ギリシャ神話に於ける秘宝の一つ“
“金羊の皮を地に放ると竜を召喚できる”とされていて、金羊の皮を
但し、
生前、父であるコルキス王から金羊の皮を奪い、親族殺しの罪を犯したメディアには最早正当な継承権など在る筈も無く、仮に本物の金羊の皮が手元にあったとしても、彼女には魔術的触媒として使う事は出来ても、竜種召喚の触媒として使う事が出来ないのだ。
故に、今この戦車を牽く竜は、所謂“コルキスの竜”ではない。
しかし、メディアと竜にまつわる逸話はこれだけではない。
コルキスを去ったメディアは、紆余曲折を経て夫と共にコリントスで幸福な日々を送っていたが、破局は突如として訪れた。
コリントス王クレオンに気に入られた夫は、メディアを捨て王女グライアと再婚したが、夫の忘恩と不誠実に激怒したメディアは、王女をクレオン王共々殺害し、祖父である太陽神ヘリオスより授かった有翼の竜の戦車に乗ってアテナイに逃れたと言う。
その有翼の竜戦車こそ
「
肉無き骨の竜が甲高い咆哮をあげ、蘇生し終えた
牛馬が牽く戦車であれば、
だがそこは不完全であっても竜種とでも言うべきか、
残り七つ。
「こちらの手は出し尽くしたわ!
「フン……………全
蘇生も終わりきらない
因果逆転の魔槍ゲイ・ボルクの素材となった紅海の海獣“クリード”の骨格を具象化し、鋭い爪や無数の棘を鎧のように纏ったその姿、
「█▇▆▆▇▃▆▄▅▆▅▃█▆▅▂▃▄▂▃————ッッッ!!!!」
「グゥルアァァァァァッッッッッッ!!!!!」
かつて十二の難行を乗り越えて不死身の肉体を得た大英雄の身体を、獰猛な獣が宛ら獲物に喰らいつくかのように切り裂き、引き千切り、抉り取る。
互いに足を止め、ただひたすらに相手の息の根を止める為に、己の肉体を削り、己の命を削る。
互いに退く事無く戦い続けるその様は、ケルトの戦士が名誉を賭けた一騎討ちを約し、不退転を誓った決闘法“
具象化された海獣の鎧を半分以上失い、肩で息をする
たとえその先に、己の敗北以外に無いとしても退く事は無い。
それがケルトの戦士の矜持。
何者にも侵し難い、貴き一本の柱。
(…………ここまでか……………だがまぁ……………本懐だ…………!)
粉微塵になろうとも蘇生する大英雄を前に、
むしろ
たとえ負けて座に還ったとしても、胸を張って「俺はあのヘラクレスを五度斃した!」と豪語できるだろう。
残り二つ。
「………………フン。冬の娘め、まんまと逃げ果せたようだな……………」
苦々しい老人の呟きは、しかし
幾度も蘇生した
最初の内こそはその触手を引き千切り、拘束から逃れようとした
神話に曰く、ヘラクレスの最後はヒュドラの毒にも等しいソレに侵され、全身が焼けただれ、苦しみ抜いた末に自らを焼いたと言う。
神話の残滓を内包し仮初めの肉体に覆われた
「………………
それは
かつての同胞に向ける
ベースとしているHFではセイバーがオルタ化していますが、拙作ではランサーとキャスターがオルタ化しました。
クー・フーリン(オルタ)は見た目はFGOのと全く同じですが、性格は槍寄りにして、クラスも混乱を避ける為にランサークラスのままにしてあります。
そして、投げボルクは本来B++なのですが、ご都合主義的にルーンで瞬間的にAランクにしてバーサーカーをフッ飛ばしています。
そしてメディア(オルタ)は拙作のオリジナルで、キャス子(”きゃすこ”で打ったら、普通に”キャス狐”が変換候補に挙がると言う新発見)がどの頃のメディアで現界したのか明確になっていないのですが、キャス子オルタはバツイチ子持ちになって
こちらもクラス適正としてはアヴェンジャーなのですが、槍オルタ同様にキャスターのままにしています。
さて、次回は……
・密着!救急救命センター24時
・楽しいロンドン♪
・図書館では、うわっ何をする!くぁwせdrftgyふじこlp
・バイバイ
・ふわっふわやぞ!
以上の予定です。