Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
そして長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
リアルがアホみたいに忙しい上に、執筆自体も難産だったのでいつも以上に間が開いてしまいましたが、どうにか年内に投稿する事が叶いました。
エタってません!エタってませんから!
拙作は意地でも完結させるつもりですので、長い目でお付き合いいただけましたら幸いです。
#066 With irritation.
空は澄みきっていて、絵に描いたような冬晴れの朝。
だけど私の心中は、それとは逆に雷雲が立ち込める空のように苛立ちが渦巻いていた。
勿論、そんな事を表情に一欠片も出す事はしない。
常に余裕を持って優雅たれ。それが我が家の家訓。私が私である為の、拠って立つところの柱の一つ。
それでも、憤る気持ちは胸の奥から今も湧きあがってきていて、それを必死に隠す事に朝から苦労し通しだった。
それと言うのも、昨夜アインツベルンの森で見かけた光景が原因だ。
一人の魔術師として、一人のマスターとして、そして冬木の
だけど、臓硯が従えているあの黒い影はとても厄介で、私と衛宮君との共闘関係による戦力では手に余る。
だからこそ戦力の補強として、アインツベルンのマスターであるイリヤスフィールとそのサーヴァントである
正直、上手くいくかは五分五分。いや、もっと低いかもしれないと思っていた。
あの子にしてみれば、私たちと臓硯が潰し合ってくれれば、残って疲弊した方を叩けばそれだけで済む話だ。わざわざ私たちと手を組む旨味は薄い。
だけど、実際に黒い影を目にした事と、臓硯の屋敷を家探しした事、そしてあの人たちの話を盗み聞きした事で導き出した仮説が、あの子がこちらに加わらざるを得ないと決断させる武器になると言う目論みがあった。
共闘関係にある
その武器を内心に携えて、私たちは夜のアインツベルンの森に踏み込んだのだけど、結論から言うと、その計画は実行に移す前に頓挫した。
臓硯があの影を引き連れて、アインツベルン城に攻め込む可能性は当然有ると思っていた。
僅差で先手を打たれた事は面白くなかったけど、それは一晩経っても引きずるようなモノじゃない。
『どうやら、あの忍者がイリヤスフィールを連れ去った………いや、救出したと見るべきか。兎も角、彼女はあの忍者の手の中に在って、
アインツベルン城の方角から突如鳴り響いた轟音と迸る閃光に、あの子と臓硯の間で戦端が開かれたのだと判断した私は、逸る衛宮君を抑えつつアーチャーに先行偵察をさせたところ、三騎のサーヴァントを同時に相手取りながらも、イリヤスフィールを抱えて森の中に逃走した
まただ…………
また…………!
またあの人たちが暗躍していると悟った時には、私の中に在る感情のスイッチが入った。
(好き放題やってくれてるじゃない……………!)
あの人たちが何の目的であの子を助け出したのか、その意図は解らない。
だけど、あの子を助けると言う行為は、聖杯戦争に於いてあの子と敵対関係にある私との盟約を反故にする意図があると糾弾されかねない行為だ。
それはあの人たちだって判っているだろう。それでも尚そんな真似をしてくれるのだから、頭に来ない訳がない。
(朝比奈と手切れになるのも、時間の問題ね…………)
それは既定路線だったけど、正直未だ躊躇いはあった。
理想的な状態であってさえ分が悪すぎる相手なのに、現状は全く理想に届いていない。と言う魔術師としての打算的な理由もあるけど、その躊躇いの大半が魔術師としてではなく、
「衛宮君。イリヤスフィールはもうあの城に居ないわ」
「まさかイリヤが………!」
「ううん、あの子は生きてる。確かに臓硯が襲ってきた事には間違いないけど、偵察に出たアーチャーによれば、あの子は栞さんに助け出されたわ」
「栞さんが?なんでさ?」
「それが解ったら苦労しないわ。兎も角、あの子を栞さんが助け出したとしたら、先生がそう命じたから。としか言いようが無いわね………!」
「………リン、その事ですが————」
「ゴメン、セイバー。あの子がもうあそこにいないのなら、これ以上私たちがここにいる理由も無いわ」
今回の目的は、臓硯に対抗する為の戦力補強。その交渉相手であるイリヤスフィールがアインツベルン城にいない今、この場に留まる理由は無い。セイバーが何か言いかけていたけど、その言葉を遮って私は撤退を提案した。
臓硯一味を今ここで倒す手段が有るなら、予定を変更する事も吝かじゃなかったけど、第一、そんなモノがあるのなら、そもそも私たちはここまで来ていない。
『そういう訳で撤退するわ。アーチャー、戻って来て』
『了解した、凛。だが、君たちは先に戻っていたまえ。私は
『………良いわ。でも、無茶はしないでね………!』
『無論だとも』
撤退を実行した数分後、私たちを追い抜くかのように夜空を切り裂いた流れ星は、
状況は刻々と変化している。
斃された筈の
その
そして、
アインツベルン城での戦闘を見てきたアーチャーからの報告は、状況が悪い方向へ真っ逆さまに落ちていると判断するには十分過ぎる情報だ。
どうしてこうも上手くいかないのか。歯噛みしたい状況ではあったけど、憂いていたって状況が好転する事は無い。事実は事実のまま受け入れ、今出来る事、今すべき事に最善を尽くすべきであり、その一つが、今後敵になる可能性の高い朝比奈のサーヴァント“
確固たる意志を抱き、朝から足を運んだのは新都にある冬木市立図書館。
首都圏から遠く離れた地方自治体が管理運営する図書館としては、上位に食い込めるのではないかと噂される規模の蔵書数を誇り、冬木市の知の収蔵庫としての役割を担っていると言っても過言ではない。
しかし、館内設備は一般的と言うか凡庸と言って良く、十年ほど前に移転計画が持ち上がっていたけど、新都の大火災を始めとする前回の聖杯戦争で引き起こされた災害からの復興を優先する為に、移転計画は一時凍結されているらしい。
館内は土曜日だからか人は多い。
ここ数日の聖杯戦争を起因とする事件や事故が頻発している状況に鑑み、夕方以降は自然発生的に人出が少なくなってはいるものの、昼はいつもと変わらず地域住民の憩いの場としての機能を今も果たし続けている。
「げっ…………遠坂……………!」
「あら生徒会長。入院されたと伺ったんですが、お元気そうで何よりです」
先日、学園で発生した
この彼、学園の生徒会長を務める柳洞一成もその一人なんだけど、彼は他の生徒とは違って入院した生徒の一人である。入院着に上着を羽織っただけの出で立ちを見るに、無為徒食にも等しい入院生活の内に抱え込んだ虚無感を紛らわす為に、入院している
「心にも無い事を言うなこの女狐!大体、なんで貴様が
「あら?私だって学生ですから、学園が休校中であるからと言って、遊び歩いていて良い訳無いじゃないですか。それと、館内ではお静かに」
彼とは同じ中学だった事もあって付き合い自体は長いのだけど、堅物で遊びの無い性格である一方、筋さえ通れば鷹揚さを見せるぐらいの器量を持っている。同年代の男子よりも一歩も二歩も成熟した人間性を持ち合わせているのは私も認めるところではあるのだけど、相性は極めて悪く犬猿の仲と言ってさえ良い。なにしろ彼は、
「ぐぬぬぬぬ………………。フン………!お前の言う事も確かだろうが、その手に持っている本は、日本史の授業では使いどころが無いではないか。一体何を企んでいる?」
売られたケンカは高値で買い取って、その上で完膚なきまでに叩き潰す。
書架に収まる無数の本の中から“これは”と手に取った本は、十数年ほど前に郷土史研究家によって編纂された
まだほんの数ページしか目を通していなかったのだけど、忍者についてと言うよりも、純粋に中世期の伊賀という土地の歴史を書き記したもののようで、だからこそフィクションには無い当時の逸話を探る手掛かりになるのではないかと思って読み進めていたところだ。
「ただの気紛れ。と言いたいところだけど、ちょっと忍者に興味が沸いてね。特に百地三太夫丹波について調べてたのよ」
「ふむ………百地三太夫、或いは百地
「へぇ、詳しいのね。じゃあ、詳しいついでに教えてちょうだい生徒会長。百地三太夫について詳しく書いてある本ってあるのかしら?」
「っ!えぇぃ!なぜ俺がそんな事をお前に教えてやらねばならんのだ⁉」
「いいからっ!」
苛立ちに声を荒げ、立ち去ろうとする彼の行く手を、書架に両手を突いて退路を阻む。
思わず声を張り上げてしまった為に、周囲の耳目を集める羽目にはなったけど、今はそんな事を気にしている場合ではない。たとえ「痴話ゲンカでござるか?」だの「まさか会長と遠坂さんが」などと、ひそひそ声で噂し合う雑音が聞こえてもだ………!
「……………お、おぅ…………。まあ、初めに言っておくが、石川五右衛門や霧隠才蔵の師であったなど、百地三太夫にまつわる殆どの風聞は、江戸時代以降の講談や読物の産物であって、実在の有無を含めて、伊賀の乱に於ける百地三太夫個人に関する史書の存在は確認されていないと言って良いだろう」
「はぁっ⁉」
私の気迫に只ならぬモノを感じ取った彼は観念して語り出したのだけど、言うに事を欠いて「そんなモノは無い」と初手から言い放ったのだ。この身も蓋もない言い様に、さっきよりも声を張り上げずにはいられなかった。
「落ち着け………!そもそも百地氏を始めとした“上忍“と呼ばれた伊賀忍者たちは、元々その地に土着していた豪族であって、伊賀の乱以前に徳川家に仕えて士分となった服部半蔵ならいざ知らず、その他は精々で、彼らの子孫がそうと知らずに何らかの
冷静になって考えてみると、彼の言う事は理に適っている。
現代に於いてそのような文書が残っているのは、当時の武士と言う支配階級の中でも権力闘争に生き残った者のモノが大半を占めていて、敗れた者の事を書き残す事は、後々の厄介事を避ける為に憚る風潮があった。歴史とは正に“勝者による勝者の為のモノ”と言ったところね。
その支配階級よりも下位にあった人たちの、ましてや当時最高の支配者に掃討された伊賀忍者について記した文書は極端に少なく、個人レベルとなれば尚更の事、細々と綴られた文書は、どのような形であれ価値ある史料として地元の研究者の元に蒐集されるのも道理といったところだ。
そう言った史料を編纂したこの本は、歴史研究家などの間で流通するのが常であって、こうして何の繋がりもない冬木に在る事自体に、彼が意外の念を禁じえないと語るのも納得出来る。
「とは言え、忍者そのものについて知りたいのであれば、
「ちょっと待って生徒会長。百地三太夫の史書が無いと言う事は、百地三太夫所縁の品も無いって事なのかしら?」
そこで一つの疑問に行き着く。
特定の個人を記した文書が無い可能性が高いと言う事は、個人を特定出来る品も無い可能性が高いのではないか?
歴史学的には大した問題ではない。
百地三太夫丹波という個人の逸話を知る手がかりでもない。
これはもっと、そう、根本的な、
「ふむ。伊賀の乱を生き延びたとの説もあるから断言は出来かねるが、寡聞にして聞いた事が無いな」
“存在しない”と決めつける事は出来ないけど、時計塔でさえ所有している
例外として、摂津源氏の祖である
何よコレ…………!
違和感を覚えていたけど、大した事じゃないと高を括ってたら、思わぬしっぺ返しを食らったじゃない…………!
「さあ、これで満足か?」
「いいえ、もう一つあるわ」
「まだあるのか…………」
あからさまにウンザリとする態度を隠そうとしない彼に、もう一つの疑問をぶつける。それが、かつて冬木に在ったと言う“忍者寺”と呼ばれた寺院の存在とその由来についてだ。
当時の忍者たちの拠点だったと言われるその寺が
「ああ、そのような異称を奉られたお寺はあったようだが、確か建立されたのは江戸時代中期の元禄年間と聞いた事がある。だが、実態は定かではないにしろ、諜報活動は隠密裏に行う事を旨とする以上、わざわざ忍者の存在を明るみにするような異称が知れ渡るのを放置するとも思えんのだがな」
案の定、想像以上の答えは出てこなかった事で、新たな疑問が苛立ちと共にやってきた。
答えが得られなかった事はまだ良い。
答えを求めに来て、別の問題に行き当たってしまった事も、百歩譲って良しとしよう。
だけど、
「………ああ、これは後年の創作の一つかもしれんが…………」
内心で自身への怒りに打ち震える私を他所に、ふと何かを思い出したのか、重々しく彼は口を開く。
「伊賀の乱の終盤、立て籠もる砦を寄せ手に包囲され、進退窮まった彼らが大将首を上げんと夜陰に乗じて襲撃を試みるも、運悪く雲に隠れていた月が露わになり、月明かりでその姿が露見した百地三太夫らは討ち取られたと言う。百地三太夫について俺が知っている事と言えば、まあこのぐらいだ」
あくまで創作の可能性である事を示唆されるも、その逸話は以前聞いた話と符合する事で、妙に合点がいった。
日中は“忍者とは闇に生きる者”と言う幻想が具現化した影響で、サーヴァントとしての能力に大幅な制限がかかってしまうと彼女は以前言っていたけど、どうやら“忍者として”と言うより、“百地三太夫丹波として”と言う相違はあるにせよ、概ね彼女の告白を裏付ける逸話であるに違いないだろう。
しかし、交渉の為に自らの弱点を晒したと言えなくは無いけど、それは“
それはさて置き、何かと反目しあう彼が、進んで自分の知り得る情報を、前提条件付きとは言え開示してくるなんてどういう風の吹きまわしなのか。どうしても何らかの見返りを求められるのではないかと考えてしまうのは、魔術師だからこそ生じる悪い癖のようなモノね。
「フン。貴様の企みの片棒を担がされるなど真っ平御免なのだが、どうやら違うようだったのでな。貴様のような女狐であろうと、何某かに
確かに、今の私は
彼ぐらいの人物であれば、それを看破する事だって造作もないだろう。
聖杯戦争という大事を前に、余計な事に執着していると言う事も十分理解している。
だけど、今はその“余計な事”を“余計な事”と軽んじる事は致命傷に繋がりかねない状況だ。
そう、どんなに私らしくないと見られようとも、今は雌伏すべき時なのだ。
「然りとて、まだまだ修行が足りぬ身故、これ以上貴様に対して慈悲の持ち合わせは無い」
「ええ、もう十分だわ。ありがとうね、柳洞君」
「なっ……………!」
これ以上ここにいても得るモノは無く、得られる見込みも薄い。
素直な謝意と
図書館で借りた本を片手に家路を急ぐ。
とは言えこの家路と言うのは、共闘関係にある衛宮君の家の事であって、元々の自宅の方じゃない。必要と思しき物は粗方持ち出してしまっているからだ。
冬の風が上気した頬を撫でる。
今の私は、本当にいつもの私じゃない。
冷静さを欠いている。
余裕を欠いている。
優雅さを欠いている。
以前ならこんな事は無かった。
以前なら“心のぜい肉”として、自分の中に納まる範囲内で、その無駄をそれなりに楽しんでさえいた。
だけど今は————
『どうやら、あまり期待した成果は上がらなかったようだな』
モヤモヤとした思考を吹き散らすかのようなタイミングで、アーチャーが念話で話しかけてきた。
意図したかどうかは分からないけど、危うく思考の沼に嵌りかけていたので、このタイミングで話しかけてくれた事は有難く、念話で拾われない程度に内心でアーチャーに感謝した。
『まあ、元々あればラッキーって程度で、期待はしてなかったけどね。でも、一つ引っかかってたモノがハッキリしたから、ある意味一番の収穫かもね』
『ほう?』
正直な話、思っていた以上の収穫はあったと思っている。
一つ目は、明るい場所ではその能力を彼女は十分に発揮出来ない可能性が在ると言う事。
二つ目は、一つ目を基に戦術を組み立てても、それをひっくり返せる切り札が存在する可能性が高いと言う事。
そして三つ目は————
『栞さんは、自分を特定する触媒が在ったから召喚されたって言ってたけど、特定の英霊を召喚出来る程の強い縁を持った
百地三太夫丹波に関する聖遺物の存在が、高確率で否定されたと言う事だ。
他のクラスなら、或いは多少の縁さえあれば、それが“
『確かに、彼女を召喚した場所自体、死後しばらくしてから建立されたのなら、百地三太夫丹波と言う英霊を召喚する触媒にはなり得んか』
だけど
『そう言う事。それにね、サーヴァントを触媒無しで召喚する際は、マスターとより近い性質の英霊が召喚される傾向にあるのだけど、
————
アラビア語で
そして聖杯戦争の原則に基づいて、その十九人の教主の誰かが
魔術世界に於いて“神秘はより強い神秘によって上書きされる”と言う絶対原則がある以上、
『つまり、彼女が本当に
アーチャーの皮肉めいた言い方に少しムッと来たけど、確かに謎は深まった。
だけど正体は判らないながらも、その表面の奥に“何かが在る”と認識している事は、何も知らずにいる事よりも何倍もマシだ。
改めて情報を検証する。
彼女は第二次聖杯戦争の時に召喚されたと言う事だけど、それが事実かどうか確かめる術は無い。
降霊術、特に召喚術に長けた朝比奈が、独自に英霊召喚を実現させた。と一瞬考えはしたけど、それを成立させるには冬木クラスの霊脈を持った土地が必要で、そんな霊脈を押さえているのはどれも魔術協会側の家系であり、それ以外の家系が押さえているなんて話は聞いた事が無い。
だから、その情報は間違いないと言って良いだろう。
この場合、クラスそのものを考える事に意味は無く、意を向けるべきはそれに付随するクラススキルだ。
それ自体欺瞞の可能性は有るけど、“騎乗”のスキルランクがAだと言う自己申告通りなら
全く差し障りの無い意思疎通が出来ている以上、
クラス特性の“狂化”はステータスを強化させるけど、その反面理性が失われるデメリットがある。イリヤスフィールの
陰陽道の術を使っていた事もあるから、
だけど、私が見たのは術符に魔力を流し込んで発動させる類の物だけで、実際に自身の魔力を用いて術式を成立させた場面に出くわしていない。第一、クラススキルである“陣地作成”や“道具作成”をしている場に居合わせていない。
あの人がセイバーに技量で上回る事が出来たと言う点から、実は
それに伊賀という土地は、山一つ越えた先にあの柳生新陰流で知られる柳生一族の郷があったと聞くから、生前に交流があって剣術の指導を受けていたかもしれない。
この場合、
最後に
どれも当て嵌まるようでいて、どれも決め手に欠ける。
聖杯戦争の初期の頃は、そのシステムが不完全な事もあってか、基本の七クラスに該当しない“
疑い出せばキリが無く、ある種の焦燥感に足を掴まれ、思考の沼にズブズブと引きずり込まれているかのような感覚に襲われる。
ここまでくると前提条件そのものが、彼女の真名が百地三太夫丹波だと言う事自体が嘘なのではないかとさえ思えてくる。
これは………完全に手詰まりね………………。
不意に心の奥底から浮かび上がってきた言葉を寸でのところで飲み込んだ。
まだだ…………
まだ私は
ここで負けてしまっては、何もかも奪われてしまう……………!
折れそうになる心を、誇りと義務感で必死に取り繕う。
誰が負けてやるかっての……………!
内心で弱音を吐いた自分を叱咤し、果てに在るであろう、しかし雲一つない空をキッと睨む。
栞さん……………貴女は一体、何者なの……………………?
心の中で問いかけるも、答える者は誰もいない。
空は澄みきっていて、しかし私の心中は、先程とは異なる雷雲が立ち込めていた。
拙作は二次創作ながらも、可能な限り原作設定に忠実たらんとしていますが、原作に理解の深い方なら、栞さんが二次のアサシン?という点にモヤッとしていたかと思います。
そのモヤッとがどう晴れていくか、今後の展開をお楽しみください。
さて、次回は……
・この顔にピンときたら
・バイバイ
・ふわっふわやぞ!
・なべてこの世はいとヤバし
・中かき回しちゃらめぇっ!
・やるっきゃないと
以上の予定です。