Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
光陰矢の如しとはよく言ったもので、前回から半年近くも間が開いてしまいました。
それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。
昔ながらの家屋が立ち並ぶ深山町の閑静な路地を、一台の小ぶりなクラシックカーが、その風景に溶け込むかのようにゆったりと、しかし軽快に走る。
燃料噴射装置の技術向上と排ガス規制の強化によって、古き良き時代の残滓となりはしたものの、己が機械である事を強く主張するかのような音と、アクセルを踏み込んだ時の感触は、未だ多くの愛好家を魅了して止まない事を、自身がハンドルを握る事によって実感している最中なのですが、やはりバイクと共に風を裂くように走る方が、私の性に合っています。
普段、冬木の街を
惜しむらくは、彼女のような
ですが案に相違して、イリヤさんにはこういったコンパクトサイズの車は珍しいらしく、お城の片隅で見かけたメルセデス・ベンツ300SLしか運転した事が無いから、今度はこれも自分で運転してみたいと仰ってました。彼女の体格なら、ミニぐらいが丁度良いでしょうね。
ちなみに、
それはそうとして……………
「それで、ドライブデートを御所望………という訳ではなさそうですが、御用件は?」
ルームミラー越しに、後部座席に座る赤い外套を纏った青年、アーチャーに尋ねる。
彼の立派な体躯を収めるには、後部座席を占有しても尚、目に見えて窮屈なようですが、逆に助手席に座られたら、ギアチェンジにも支障が出そうなくらい圧迫されそうなので、この際
「敵サーヴァントが強襲を仕掛けてきたともなれば、迎え撃つのは当然だろう?ましてや
「それは失礼しました。ですが、それが私の仕業だと、
セイバーたちを待っている間に、アーチャーが先に霊体化したままこちらを見ている事は分かっていました。そして、密かに後部座席に乗り込んでいる事も。
「勿論だとも。だが、自分のマスターを護る為にも、
つまり彼は、もしも私に害意があったならセイバーと戦わせ、あわよくば漁夫の利を得るつもりだったのでしょう。それを卑怯だなどとは微塵も思いません。私も同じ立場であれば、同じ戦術を用いていましたから。
「この車は借り物ですから、
シート越しに剣気を感じる。
「五十九年式のモーリス・ミニ・マイナー、しかも消耗品以外はほぼオリジナルのままともなれば希少価値も高いだろうが、戦禍で焼失した貴重な文化財が今まで存在しなかった訳では無いだろう?」
サーヴァントは召喚の際に、聖杯から現代の知識を与えられますが、それも
であれば、近代から現代の
「………真意も何も、セイバーに言った通り、としか言いようがないのですが」
「彼女は清冽な騎士だからな。良くも悪くも
今の状況は自業自得、身から出た錆なのは承知の上ではありますが、こうも強硬な姿勢を取ってくるとは、正直予想外でした。
しかし、彼の言葉の裏には“
例えば
「腹の探り合いも結構ですが、抗議よりも重要な事があるとお見受けしますが?」
とは言え、彼の真名が明らかでない以上、その意図を詳らかにする事は叶わず、この会話を続けて、彼の性格、人となりを見定め、そちらの情報を補完した方が良いでしょう。車を出したついでに、ホームセンターで日用品をいくらか買い足したかったのですが。
「そうか、なら言わせてもらおう。君たちは間桐桜の件から手を引くべきだ。先日の一件以来、私のマスターは君たちに不信感を募らせている。このままでは盟約の破棄、ともすれば
「平和主義云々はさて置くとして、遠坂さんに要らぬ疑念を抱かせた事は、不徳の致すところですし、マスターもそれを認めておいでです。今は様子見と仰っていましたが………正直なところ、ご存知の通りの
背後から殺気と共に凶器を突き付けておいて“平和主義”を唱えるのも、彼らしい皮肉の籠った
しかしながら、御一門の組織力を以てしても、それを構成する要素の大半は人であるが故に、手の届く範囲は有限なのは人の世の常。どうしても優先順位を付けざるを得ない以上、必然的に後回しになった遠坂さんとの関係修復の一助を、この件をこれ以上放置するのは得策ではない、と言外に告げに来たアーチャーに縋るより他無いのです。
「繰り返しになるが、答えは変わらん。それに、これ以上
しかし、彼の回答は変わりませんでした。
確かに彼の言う事は正論以外の何物でもありません。
ですが、こうも正論をぶつけられると、こちらに非が在るのは判っていても、少々癪に障りますね。
これでは彼の不遜な物言いで、遠坂さんの火に油を注ぐリスクが高いと言うのは想像に難くありません。
とは言え、そう簡単に彼の
「それに私としては、君にこそあの男に翻意を促して欲しいのだがね。イリヤスフィールからもある程度の情報を得ているのだろう?
「貴方がその情報をどう知り得たかは敢えて問いませんが、間桐さんの命を縮める事に、貴方は随分と積極的ですね?」
「これも繰り返しになるが、少数の犠牲の上で、多数が平穏を享受している以上、どちらを救い、どちらを切り捨てるか。誰も彼も救おうなどと、夢見がちな理想論しか吐かない“正義の味方”等と言う愚か者でもない限り、答えは明白だと思うのだがね」
「…………
「ああ、君は
我知らず吐き捨てた言葉から、どこか見透かしたかのような問いを投げかけてくる。
彼の言う通り、あの乱は“略奪”そのものでした。
たとえかの覇者が、路傍に転がる石を除けただけと言おうとも、その歩みの中で地を這う虫を踏んだだけだと言おうとも、そこに私たちは、それぞれが一個の命として確かに生きていたのです。
「それは否定しません。ですが……………」
己が野心の為に、伝来の土地を、尊厳を、命を、郷の全てを奪い尽くし蹂躙した忌むべき略奪。今彼女に差し迫ろうとする危機は、かつての自分に降りかかった危機と同種であり、今の彼女の境遇とを重ね合わせている自覚はあります。
しかし……………。
「私はマスターほど甘くありませんよ?」
具体的に“何が”彼女を脅威足らしめているのか定かではないが、英霊として、或いは
その
「……………まったく、セイバー同様、
背後に突きつけられた殺気が、溜息と共に僅かに緩んだ。
便宜上、“使い魔”に分類されるサーヴァントとは言え、
「それは痛み入ります。ですが、マスターのそう言ったところも、私は好ましく思っていますよ。ただ、いくつになっても
ポジティブな感情もネガティブな感情も、いずれも本能と直結し、意志を持つ生物の心に必ず内在するモノであれば、如何なる英霊であろうとも、その根幹が“意志を持った生物”である限り、その軛から逃れる術は皆無に等しく、またそれを制御する事は困難を極めます。
そして怒りや嫉妬、恐怖と言ったネガティブな感情は、それらを無意識に抑え込む防塞を突き破り、表出させる人間の本性を容易に曝け出させる引き金となるのです。
しかし、私が彼の内面を探っているのと同じように、彼もまた今後敵対する可能性のある私の内面を探っている以上、一呼吸おいてから、内心とは真逆の表情をルームミラー越しの彼に向ける。
「まるで何と言うか………そう、
「あら?これは話した事ありませんでしたか?マスターの母君のご遺言で、私が幼少のマスターをご養育していたのですよ」
「成程。それは、君のように長く現界しているサーヴァントならではの体験だな。では
ああ、いけません。
彼からすれば“安い挑発を含んだ軽口”程度なのでしょうが、私に対しては“死命を決する悪手”以外の何物でもありません。
マスターと遠坂さんが盟約を結んでいなければ、
「ご期待に添える結果になるかは保証致しかねますけど、微力を尽くしましょう。それと、私からも一つ忠告を」
「うん?」
「マスターを守護し奉る為なら、百千の死屍を積み上げる事に躊躇も呵責も持ち合わせていません。たとえその中に、遠坂さんだけでなく、衛宮君や間桐さんが含まれていたとしても」
内心と同じ表情を、彼が私に向けた以上のモノを付加して、ルームミラー越しの彼に向ける。
たとえ戯れでも“私のマスターを殺す”等との言を許容出来よう筈もありません。
そう、これは“忠告”と言う生易しいオブラートを
“貴方が私のマスターを殺す前に、私が貴方のマスター共々殺す”と言う。
「……………これは
己の失策を悟った彼は、
「温厚で慈悲深いだけではなく、想像以上に冷酷且つ無慈悲にもなれる。どうやら百地三太夫丹波と言う英霊の本質を、些か見誤っていたようだ」
「…………貴方の主観でそう捉えたのであれば、それも私の一側面でしょうけど、私の本質に迫りたいのであれば、“
かつて、伊賀の地に一人の女がいた。
盆地を切り拓き、その礎となった先人たちの歴史。
己を産み育てた山野の風景。
無邪気に駆ける郷の子、それを宝物のように見守る人たち。
そんなありふれたごく日常の光景、そこに息づく人々の何気ない営みを“護りたい”と願い、己が行動原理としたのは、豪家の娘として生を受け、
かの覇者による変革の波が迫りつつあったあの時代。
しかし“支配階級による統治”と言う本質が変わる事無く、単に首を挿げ替えただけだと思い知らされたあの時代。
古くから封建領主の支配に抗い、長く民衆による自治を旨としてきた伊賀の民は、その波による
しかし、衆寡敵せず焦土と化した郷の大地、蹂躙の限りを尽くされた人々の累々と横たわる死屍。この世の地獄とも言うべき光景に、無念と絶望が全身から気力を奪い去り、膝を屈しそうになりはしたが、その内に燃え上がった怨讐の炎は、魂さえも
「守護者に成り損ねた、か………だが守護者など、
覇道の為、護る為、私怨を晴らす為、如何な大義名分を振りかざそうとも、他者を蹂躙するその本質には変わりなく、それを行う者を形容する言葉など、ただの修飾でしかない。
随分と
「掃除屋、ですか…………それ、しっくり来ました。今度から使わせてもらいますね」
「………やれやれ、どうも慣れない事はするものではないな。どう足掻いても敵うべくも無い相手となれば、今日の所はこれで退いた方が賢明なようだ。では、戦場で君たちと相対しない事を願っているよ」
ルームミラー越しに向ける私の反応は、彼自身も予想外だったのでしょう。それと同時に、駆け引きでは劣勢と見るや、直ちに捲土重来を期する判断を下せた彼は、過程よりも結果を重視した“仕事人”タイプなのでしょう。その
そしてセイバーと同様に、
アーチャーが霊体化して、僅かばかりの気配も掻き消えた車内に、小気味のいいエンジン音だけが響く。
今までのアーチャーとの会話を反芻するに、彼は歴史に名を残して座に招かれた英霊ではなく、今を生きる魔術師の極々一部でさえ固有名詞以上を知らず、座に刻まれた英霊のみが知り得る存在、
人類史を継続させる為の無銘の刃。
排斥すべき“悪”を断罪する執行者。
この仮説を確定とするにはまだ情報が足りませんが、彼自身が
それとも……………………
ACコラボ来ますね…………!
ティアマトも実装されますね…………!(ここ重要)
仕事の繁忙期もそろそろ落ち着きそうですが、ツーリングには丁度いい天気になりそうですし、はてさて…………?
さて、次回は……
・曇りのち晴れでせう
・ふわっふわやぞ!
・なべてこの世はいとヤバし
・中かき回しちゃらめぇっ!
・やるっきゃないと
・先生おこ
・栞さん本気出す
・来なかったらどうしようかと不安になっていたところだ
・グレートビッグベンロンドンスター
以上の予定です。