Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~ 作:Prometheus.jp
長い間、執筆に時間を割き辛い日々でしたが、事態はどうやら好転する兆しが見えてきており、もう少しペースが上がるかもしれません。
それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。
夕焼けが教室に入り込み、光と影をくっきりと分断する。
教室には誰もいない。
校庭では、運動部の人たちが部活動を終えて片づけを始めている。もう下校時刻が近いのだろう。
遠い日の記憶があの日と同じ彼の姿を求めるも、彼はそこにはいなかった。
彼はとっくに部活動そのものから身を引いているので、この時間は既に学校にはいない。今日はバイトがあるから遅くなるとのことだ。
半ば同居人のような、名目上の“保護者”である賑やかな人も、今日は職員会議で遅くなるらしい。
なので、今日は彼の家に行く必要もないのだけど、後で温めて食べられるようにだけしておくのもいいかもしれないと考える。
本心では、あの家に帰りたくない。だけど、それは許されない事だ。
どうあれ、私はあの家に帰らざるを得ないのだけど、このまま家に帰るつもりもなく、 ただ一人、自分の席で何をするでもなく校庭をぼんやりと眺め、時間が過ぎるのを待っている。
これはささやかな抵抗という、まったく意味のない行為。
何も得るモノもない。
何も状況が好転する事も無い。
嫌な事がほんの少しだけ先延ばしになるだけ。
それでも、そんな無意味な時間の方が良い。
状況を変えようとしたって、誰かが手を差し伸べてくれる事も無い。自分なんかじゃ変えられない。
ただ痛い思いをして、ただ嫌な思いをするだけ。
自分に出来る事なんて、ただ俯いて、ただ嵐が過ぎ去るのを我慢すればいいだけ。
私はあの人じゃない…………
私なんかが、あの人のようになんてなれるはずもない………
そんなつまらない、非力な自分が嫌いだ。
ふわふわと、ぐるぐると、今日も思考の螺旋を滑り落ちていく。
そんな時だった………。
「こんにちは」
その人は突然教室の入り口に現れた。
「間桐桜さん?初めまして。私、貴女の担任の妹の
地味な黒縁眼鏡をかけたその人は、最近クラスメイトの間でも話題に上がっている。
二学期になって今までの担任が産休に入り、その代わりとしてやってきた新しい担任の妹で、最近学園の購買部で働き始めたらしい。
美人でスタイルも良いこの人の評判は、クラスのみならず、弓道部でも話題になっている。部長に至っては、その身のこなしを見ただけで、かなり格闘技の心得があり、今の自分では敵わないとさえ言っていた。
教室には、私と彼女しかいない。
噂では、海外の大学に進学したのちに、どこかの国の中枢で働いていたらしく、実家がかなり裕福なこともあって、文字通り順風満帆の人生を送ってきたようだ。
そんな彼女が、何の用事があってこんな私に声をかけたのか、心当たりなんてこれっぽっちも無い。
日陰でうじうじと這いつくばって生きてきた私には、この人たちは別世界に生きているようなものだ。
彼女の事は周囲の噂話を小耳に挟んだ程度で、まったくの初対面なのに、彼女は気にする様子もなく、にこやかにゆっくりと歩み寄ってきた。
「……あ、あの………」
「どうされました?下校時間はもうすぐですのに」
空いている前の席に座って良いかと尋ねてきた彼女に、特に断る理由も、断れるはずも無く、短い返事だけで了承した。
彼女は回答を急かすでもなく、ただ黙って私の言葉を待っている。
こんな時間までいる理由を訊かれたとしても答えることはできない。
おじい様からは、
だから、私は言葉に詰まって押し黙る以外できなかったのだ。
「………いえね、兄さんがどうも間桐さんの様子がおかしいって言ってまして、デリケートな問題かもしれないから、同じ女性の私が話を聞いた方が良いって言うんですよ」
ゆっくりと彼女は口を開き、訪れた真相を告げる。
教室では仲のいい友達と呼べる人はいない。
こんな暗い性格の私なんて、私から見ても願い下げだ。
だから私は、教室ではいつも独りなのだけど、担任の目にはやはり特異に映ったらしい。
「兄さんの言ってることは解りますけど、そんな初対面の人間に悩みをホイホイ打ち明けられる訳ないじゃないですか。だから、間桐さんが何に悩んでいるのか、私からは聞きません。なので、ちょっとお話ししましょうか」
ため息をつきながら実兄への愚痴をこぼす彼女の様子は、控えめで温和な人という第一印象に反し、意外と明け透けにモノを言う人なのだろう。
だけど、話をすると言われても、それはそれで困る。
あの賑やかな人の影響もあって、最近では多少話せるようにはなってきたけど、基本的に私は暗くて話が上手ではない。それに、彼女と会話を交わすに足りる話題に事欠いている。
「………あ………あの………朝比奈先生って、どんなお兄さんだったのですか?」
別に担任に興味があるわけではない。当たり障りのない、私と彼女に共通する人物の事を訊く以外、話題になりそうな事が無いのだけど、そんな事でさえ、どうにかこうにか絞り出すのが精いっぱいだった。あとは、彼女が話題を広げてくれる事を望むだけ。
「そうですね………兄さんは長男で、私は末っ子なんですけど、年が離れてるから、両親がいない時なんかは親代わりもして、結構可愛がってくれてましたよ」
私にとって
今まで海外で働いていて、帰国して実家ではなく、実兄の家で暮らしているという話から、兄妹の仲が良さそうだという事に、まるで遠い世界の話だと思いながらも、軽く妬む気持ちが芽生えた。
どうして私だけ、と………
「…………間桐さん、この後時間あります?」
彼女は意外にも、
「え、ええ………まぁ、あまり遅くならなければ………」
「よかった!とっておきの場所があるんです!」
パン!と手を打ち鳴らし、彼女は満面の笑みを浮かべる。
そろそろ校舎の外を眺めるのにも飽きてきた頃に、彼女の申し出は正直ありがたかった。
今日はもう少し、家に帰るのが遅くなりそうだ。
彼女の後をついて来たのは教職員用の駐車場。
途中、何人かの生徒とすれ違い、彼女は軽く挨拶を交わしていた。ただの購買部の販売員なのに、人受けの良さは噂通りだったのだけど、驚くべきことに彼女はその生徒たち全員の顔と名前を憶えていたのだ。
「念のために、コレ穿いてくださいね。あと、ローファーじゃアレなのでコレも。ああ、靴とカバンも入れなきゃですね。えっと………じゃあ、このナップザックに靴をそのまま入れてもらって構いませんので」
まだ何台かの車が並ぶ中から、彼女は迷うことなく一台の車に足を向け、まるで自分の車のようにトランクを開けて取り出したのは、一本のデニムパンツと一足のローカットブーツ、それとシンプルだけど大きめのナップザック。
随分と準備が良いのは、元々
彼女が言うには、パンツもブーツもほぼ試着程度しかしていないほぼ新品らしいのだけど、スカートの下に穿いてみると、少しお尻が窮屈だ。やはりダイエットが必要なのかもしれない。
彼女に言われるがままに、靴を履き替え、髪をブレザーの中に入れると、今度は駐車場の横の駐輪場に向かう。
駐車場と打って変わって、ここには片手で数えられるほどの自転車とスクーターしか残っていないのだけど、隅の方に停められていた銀色の大きいバイクが異彩を放っていた。
立ち居振る舞いこそ
彼女に渡されたヘルメットをかぶると、視界は大きく狭まり、外界の音をいくらか遮断する。
丁度いい。このまま全身を包まれて、外部から一切を遮断したくなる。
ちゃんとヘルメットがかぶれているかを確認した彼女は軽くうなずき、ハンドルのスイッチを押す。
キュルキュルと目覚めを促す音を立てたのも束の間、ヘルメット越しにも伝わる野太い音が腹に響き、周囲を歩いていた何人かの生徒の耳目を集めた。
自転車でさえ二人乗りなんてした事も無いのに、こんなに大きいバイクで二人乗りは当然初めてだけど、か細く頼りなげに見えた踏み板は、存外にしっかりと私の足元を支える。
私たちを乗せたバイクはゆっくりと校門を出て、学園の前の坂を下っていく。それほどスピードは上がっていないにもかかわらず、まるでジェットコースターに乗っているかのように感じた私は、思わず彼女の腰をぐっと抱きかかえるように、そして半ば覆いかぶさるようにしがみついた。
それからどれほど走っただろうか。怖くて目を閉じたままだった私の手を、彼女はつんつんとその指先で突く。
恐る恐る顔を上げて目を開くと、彼女はなにやら指さしていたので、その指がさす方に視線を向ける。
「………わぁ…………」
思わず感嘆の声を漏らす。
見慣れたはずの冬木の街が、見渡す限り茜色に染まってとても綺麗だったのだ。
私たちが出発した学園は、もう既に小指の先ほどの大きさも無く、新都の中心にあるビル群も、まるで子供が色鉛筆を立てたかのように小さくなっていた。
新都の東にある丘の、さらに奥まで走ってきたのだろう。こんなところがあるなんて、彼女に連れてこられなければ知る事も無かった。
やがて私たちを乗せたバイクは、大きなカーブの先の広場のような場所に停車した。
簡素ではあるけど木製のベンチや自動販売機が置かれている。建てられている看板を読むと、ここは展望台らしい。
魅入られたかのように、私はその場に立ち尽くす。
とても綺麗だった。
ただただそれしか感想が出ない。
私にもっと語彙力があれば、この風景を表すにふさわしい言葉がもっと出ていただろう。
だけど、なぜか感情を大きく揺さぶられた私には、何の当たり障りも無い感想しか出てこないのだ。
「コーヒーでよかったですか?」
彼女の問いかけに、ハッとして振り返ると、両手に一本ずつ持った缶コーヒーの片方を差し出してくる。
「あ……ありがとうございます。いただきます………」
彼女がせっかく気を使ってくれたのに、ただ景色を眺めていた私はとても恥ずかしくなり、顔から火が出そうになってうつむいた。
「良い眺めでしょう?ここ、お気に入りなんですよ」
コーヒーを一口あおり、にこやかに語る彼女は、どこか得意げにも見える。よく仕事帰りに、時間を見つけてはここに来ているそうだ。
「綺麗………ですね………」
白日の下にさらされた地の色でもなく、暗闇に塗りつぶされた夜の色でもなく、その境目の、ほんの僅かな時間だけの色。
意識を向けなければ気づかない彩り。
誰にも気づかれることなく沈んでゆく彩り。
一瞬でも「私と同じだ」と思ってしまうなんて、身の程知らずも甚だしい。
私はこんなに綺麗じゃない。
だって、私はこんなにも汚れきっている。こんな夕日どころか、汚物まみれの下水のようなものだ。
空に輝く陽を見る事も許されず、ただ薄暗いドブにうずくまって虚ろな目で俯いているだけ。
誰にも気づかれることなく、朽ち果ててゆくだけ。
それが私にはお似合いなのだ。
「バイクの免許を取る時に、実技の課題で“一本橋”というのがあるのですよ」
おもむろに口を開いた彼女の言葉に、思わず顔を上げる。
「三十センチ幅くらいの板の上を、脱輪させないように既定の時間以上で渡る試験なんですけどね、最初はどうしても落ちないように下を見てしまうんですけど、これにはコツがあって、足元じゃなくて、自分の進むその先を見て運転すると、思ったより車体が安定するんですよ」
「はぁ…………」
別に私もバイクに乗ろうだなんて思ってもいないのに、彼女の言っている事の意味が全く理解できない。
理解できないからこそ、私は空返事を返すしかできないのだ。
「それって
ますます理解が追い付かない。
バイクと生きることが、どうして繋がっているのか、どうしてその発想に至るのか、順風満帆に育ってきたお嬢様だからこその、
「
「顔を………?」
そう言われても、私なんかにそんな事出来るわけがない。
私に出来る事なんて、今起きていることに流されて、目を瞑って、耳を塞いで、我慢するだけ。
自分の力で何かを変えるどころか、顔を上げて先を見る事さえ出来やしないのだ。
「でも……その顔さえも上げられなかったら………」
「他の誰かに食い散らかされて、後悔の中で野垂れ死にするだけですね」
穏やかに、しかしその言葉は、俯き続ける私の首を、気づかないうちにそのまま斬り落とすかのように鋭く、それでいてどこか熱がこもっているようにも聞こえる。
「これは誰にも言ってなかったんですけど、実は私、朝比奈家の養子のようなモノなんですよ」
突然の告白に、大きく目を見開いた。
それと同時に、知らない家に貰われて、この人は嫌な事も無かったのだろうと、またしても妬む気持ちが芽生える。
どうして私だけ、と…………。
「私の生家は、それはもう典型的な“女は子供を産み育てて家を守るモノ”って考えの家でしてね。知らない間に許嫁を決められて、家に押し込められるはずだったんですけど、そんなのは真っ平ゴメンって感じで、家出同然に出奔して、気づいたら朝比奈家に拾われて、いつの間にか朝比奈姓を名乗るようになってたんです」
「………その……後悔、とかは無かったんですか?」
「後悔………ですか。無いと言えばウソになりますね。でもあの時、父の言うとおりに、自分の意思を押し殺して、家同士で決めた相手と結婚していたとしても、それはそれで後悔していたでしょうね」
自嘲気味に遠くを見つめる彼女の横顔を見て、彼女に抱いていた印象は間違いだったと思い知り、恥ずかしくなった。
彼女は
どんな不条理にも、どんな理不尽にも、俯いてただ我慢するだけではなく、悩んで、抗って、彼女は自身の道を力強く歩いて来たのだ。
そして彼女は、目の前に浮かんでいる幸せをつかみ取ったのだろう。
だけどそんな事は………
「でも、そんな事が出来たのも、色々ひっくるめて、それなりに運があっただけでしかありませんから、誰にでもそう出来るなんて思ってません」
私の内側に蟠っているものを見透かしたかのように、彼女は言葉をつなげる。
私は彼女じゃない。
彼女も私じゃない。
だから、私なんかが今に抗ってみたところで、何も変わらない。より一層酷い目にあって、痛い思いをするだけだ。
誰にも気づかれることなく、ただ独りで…………。
「それでも、顔は上げていてください。じゃないと、
まるでダンスに誘うかのように、腕を伸ばす仕草をする彼女の手のひらは、真っ赤な夕焼けに染め上げられ、その強烈な色彩は、網膜から直接私の心の内に焼き付き、やがて言葉を失ったまま、その先にある微笑みに魅入られるように立ち尽くした。
「世の中どころか、自分の周りだって、自分独りだけで変えられる事なんて、たかが知れてます。でも、周りに手を貸してくれる人、支えてくれる人、共に歩む人がいれば、絶望的な状況に陥っていたとしても、案外何とかなるものなのです」
「……栞さんにも、そんな人がいたんですか……?」
「ええ。厳しくとも優しい母や、幼い頃からの友人たち、今なら朝比奈家の人たちがね」
誇らしげに語る彼女を見て思い返す。私にはそんな人がいるだろうか?と。
考えるまでもなく、そんな人はいない。
でも…………
私が俯いてばかりいるから、差し伸べられている手に気づいていないだけなのはないか?
その手の先にあるのは、夕日のように
そしてもう一人は………
だけど怖いのだ。
そこには誰もいないかもしれない。砂漠の真ん中に独り取り残されたように、見渡す限り何も無いかもしれない。
なけなしの勇気を振り絞って、まだ見ぬ希望をよすがに顔を上げたとしても、絶望で塗り潰されるかもしれない。
そう思ってしまうと、足がすくむ。
だから目を閉じ、耳を塞いで、自分の殻に閉じこもるのだ。
見えない未来よりも、目の前にある現実から目を背けるために。
まるで、巣立ちを拒むひな鳥のように。
「見ててください」
缶コーヒーを飲みほした彼女は、弄ぶように缶を振ると、そのままバスケットボールのロングシュートのように缶をゴミ箱に向けて投げ放つ。
くるくると回転しながら放物線を描く缶は、僅かに飛距離が足りず、ゴミ箱の手前側の縁に当たるも、新たな弧を描いてゴミ箱の中に吸い込まれていった。
「ぃよっしっ!」
今まで穏やかだった彼女の口から、想像もつかなかった快哉の声が漏れ、力強くガッツポーズを決めるその顔は、まるで悪戯が成功した少年のようでもある。
「今、あの空き缶が入るか否か、
彼女が外すなんて想像出来なかったけど、もし外してしまったなら、決まりの悪そうな顔をして拾いに行っただろう。そんな様を想像すると、ほんの少し口角が緩みそうになる。
「未来の事なんて、結果が出るまで誰にも判らないのです。その場に留まり、いつもの変わらない景色をずっと見続けるのも良いでしょう。でも間桐さん、貴女は私に連れ出されたとはいえ、いつもと違う選択をし、その未来の貴女は今、この夕暮れの景色を見ているのです。その結果の答えは、もう貴女の中にあるのではありませんか?」
彼女の問いに、心の中は頷いている。
こんなに近くにあったのに、この景色はいつもの私とは遠くにいた。
だけど、彼女の誘いに乗るという“選択”をした事で、この景色が近くにあったのだという事に気づかされた。
たとえ自分の汚さが際立たされて、一層卑屈な気持ちになったとしても、私の心は“選んで良かった”と言っている。
それだけこの景色の美しさ、自分の知らない新たな景色との出会い、何より自分のちっぽけな世界が広がった喜びにも似た感覚は、マイナスの気持ちを大きく踏み越えてプラスへと転じさせたのだ。
………ずっと………ずっと待っていた………。
私の手を引き、
————俯いていても悲しいことしか転がっていない————
————幸せは目の前に、手の届くところにフワフワと浮かんでいる————
随分と遠回りな言い回しだったけど、今目の前に、こうして私に手を差し伸べてくれる彼女がいる。
何もかもを見透かしたかのような目でありながらも、穏やかに、包み込むような優しい眼差しの彼女が。
それはまるで、遠い日の記憶にある、幼かった私の手を引くあの人のように。
それはまるで、“姉”のように。
なのに…………
なぜ貴女は、そんなにも怖い顔をしているの?
いえ………
貴女は、
だから、私にそんな敵意を向けてくるの?
貴女の腕を
彼女が実はサーヴァントだと知った時は、少なくない衝撃を受け、とても悲しくなった。
彼女が私に近づいて来たのは、
そしてそのマスターは、私の担任。
つまり、おじい様の敵。
やがて、私に酷い事をするであろう人たち。
事実、彼女が手にする金属の塊に開いた穴は、まるで私を吸い込むかのように口を開いている。
しかし、その穴は私を吸い込むどころか、逆に小さな爆発と共に、別の金属の塊を吐き出し、私の頭の半分を吹き飛ばした。
視界が赤黒く染まり、夜空と地面が逆転する。
それは彼女の独断なのか、それとも
ただ一つだけ間違いないのは、私はもうあの人の生徒ではいられない事だけだ。
なんて笑い話だろう。
結局は何も変わらない。
俯いていても………
顔を上げても………
悲しみの底に突き落とされて、ドロドロとした何かがまとわりつく。
あぁ………
貴女もそんな怯えた顔をするのね………。
なんて………なんて、嗜虐心を刺激する美味しそうな顔だろう。
私に酷い事をしてきた人たち。
私に酷い事をしようとする人たち。
ただ無様に、恐怖と、苦痛と、絶望に顔を歪ませる。そんな顔を想像するだけで…………
くうくうお腹がなりました。
最後にあのセリフが出てきて、一気に不穏な空気に包まれました。
はてさて、拙作ではあのシーンをどうアレンジするのか?
ご期待いただけましたなら幸いです。
さて、次回は……
・なべてこの世はいとヤバし
・中かき回しちゃらめぇっ!
・やるっきゃないと
・先生おこ
・栞さん本気出す
・来なかったらどうしようかと不安になっていたところだ
・グレートビッグベンロンドンスター
以上の予定です。