Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~   作:Prometheus.jp

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前回以降、お気に入り登録ありがとうございます。

それなりに時間はあったのですが、FGOのイベントやら戴冠戦やらその他もろもろ誘惑に負けて時間を溶かしてました。

次回ストーリーを書いていた途中で、今回のストーリーを入れなければ話が繋がらない事に気が付き、短いながらも急遽執筆しました。

それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。



#076 interlude~蛍火~

 ………

 

 ………………

 

 ………………………

 

 ………………………………

 

 ………………………………………

 

 彼女が追ってくる様子は無い。

 それどころか、私を()()()()()直後、まるで電池が切れたかのように倒れ伏した彼女は、いつの間にか自身に宛がわれた病室へと戻り、何事も無かったかのように眠りに就いている。

 

 手近に()()()()()()()()があるにもかかわらず、なぜわざわざ狩りに出るのかという点が疑問として残っている。

 

 だが…………

 

「……………………はぁっ……………!」

 

 いままで抑え込んできた緊張と共に、熱風のような息を大きく吐き出す。

 鼓動が早鐘の如く体内に鳴り響き、荒くなった息を思い通りに整えられないもどかしさを感じつつ、僅かに震える残された右手を見つめる。

 

 危なかった。

 本当に危なかった。

 事前に宝具を開帳していたが故に、首の皮一枚で死地から脱する事が出来た。

 センタービルの屋上にそびえ立つ通信塔に寄りかかり、高所特有の強風に身を晒して、オーバーヒート寸前の心身を冷却する。

 

(また、護れないところだった………)

 

 あのままあの影に食われていたらどうなっていたか、考えるだけでも身震いがする。

 ただ食われるだけならまだいい。だが、槍兵(ランサー)魔術師(キャスター)のように、臓硯の走狗に身を(やつ)し、マスターに危害を加える存在になったとしたら………。

 

 大きく(かぶり)を振り、忌々しい想像を振り払って、ようやく制御可能になってきた呼吸を整える。

 

「………ふふふ……………はははは……………………はははははははははははははっ!!!」

 

 緊張の糸が切れたのか、突如として狂ったように大笑した。

 

 ————(つき)より零れ()づる(かご)(あま)(かかや)(しるべ)に蝕を穿つ————

 

 私が斃されるという託宣は果たされなかった。

 それはつまり、運命に抗ったが故に掴み取った結果に他ならない。

 

 私はまだ戦える。

 今回の失態を挽回できる。

 次はこのような失態は犯さない。

 サーヴァントとして召喚されて以来、ここまで追い詰められたのは悠厳(ゆうげん)様と出会った時以来だ。

 

 否、今はあの時とは状況が違う。

 今は護るべき人がいる。

 そして、その人は未だ危地の中に在る。

 故に、私は今斃れるわけにはいかない。

 

 守護者にして、慈悲無き殺戮者。

 それが英霊百地三太夫丹波(ももち さんだゆう たんば)の在り方。

 

「…………今の私なら斃せると思いましたか?」

 

 ひとしきり笑った後、打って変わって静かに、明かりの届かない闇だまりに声を投げる。

 

「フンッ………貴様には散々煮え湯を飲まされたのでな。あわよくばと思ってはいたが、片腕を失っていようとも、今の私では貴様を殺すことは出来んようだ」

 

 暗闇に幽鬼の如く白い髑髏面が浮かび、全身を覆い隠す襤褸切れ(ぼろきれ)のような外套(マント)が風になびく。

 

 先日の戦闘で負った傷は、()()()()暗殺者(アサシン)をほぼ戦闘不能にできたようだ。

 それはつまるところ、暗殺者(アサシン)に対してのみだが、()()()()()()()()()()()()()()()と言って良い。

 如何にサーヴァントとはいえ、戦闘力を喪失したのなら、マスターであれば返り討ちに出来る事を知っている。

 

「では、アレから尻尾を巻いて逃げてきた私を嗤って、留飲を下げますか?」

 

「くだらん。むしろ、アレを相手に片腕だけで済まされるサーヴァントなど、どれほどもいないだろう。忍者の英霊、その気骨、むしろ称賛に値する」

 

 さすがにこんな安い挑発には乗りませんか。

 マスターでも対応可能なレベルに弱体化させたとはいえ、相手は腐っても暗殺者(アサシン)のサーヴァント。万が一の芽を摘むためにも、身動きが出来ない程度にもう少し痛めつけておきたかったのですが…………。

 

「お褒めいただき、恐縮ですが……………わざわざそれだけを伝えにいらしたので?」

 

 おもむろに立ち上がり、背負った忍者刀の柄に手をかけると、不意に浴びせられた殺気に、暗殺者(アサシン)が僅かにたじろぐ。

 

「少々気が立っていましてね、八つ当たりさせていただいても?」

 

「フッ。存外好戦的なのだな、貴様は」

 

 呆れるように吐き捨てると、暗殺者(アサシン)の気配は風に流されるように掻き消えた。

 

「……逃げましたか………」

 

 そう零すも、尻餅をつくように座り込み、深い安堵のため息を吐く。

 正直な話、今は消耗が激しく、ともすれば手負いの暗殺者(アサシン)にさえ苦戦するだろう。私を討ち取ろうと欲する者がいたなら、今は最高の時機だったに違いない。

 

 それでも無事だったのは、暗殺者(アサシン)()()()()と、私の虚勢(ハッタリ)が功を奏したに過ぎず、忍びらしい“勝ち方”に思わず口元が緩む。

 

「………………」

 

 吹く風はびょうびょうと強く、しかし眼下に広がる街灯りは普段よりも弱々しくとも吹き消される様子は無い。かと言って風に煽られて火勢が強まる様子も無い。

 

 それはまるで、蛍の光のよう。

 それはまるで、わずかに残った炭火のよう。

 それはまるで、生きんと欲する命の灯のよう。

 

 それらの蛍火(ほたるび)を護ったのだという刹那の満足感を覚え、身を横たえて休みたい衝動に駆られたその時、マスターからの念話が届いた。

 

『かなり消耗したようだな。いつから復帰出来る?』

 

『今すぐ、と言いたいところですが、明日の昼までかかりそうですね。そちらは?』

 

『同じく。今日はこれで店じまいだ。街の監視はサーシャに頼んでおいたさ。たっぷり嫌味は言われたがな』

 

 平時であればマスターの魔力を三割弱、緊急時でも七~八割使うところ、今回は九割以上を使ったのだ。私もそうだが、マスターの疲労もかなりのものだろう。

 

『コーヒー淹れてあるから、戻ってきてくれ』

 

『ふふ、コーヒーだけですか?』

 

『ミル・グレースのフィナンシェも買ってあるさ』

 

『こんな夜中に食べても太らないのは、サーヴァントの特権ですね。ああ、マスターはダメですよ?』

 

『わかってるよ………』

 

 そんな軽口をたたきながら帰路に就くも、先日来まとわりつく不安はより一層の重みを増して足を鈍らせているかのような錯覚を起こす。

 そして、その不安は日々輪郭を得て、今夜鮮明に形作られた。

 

 もはや猶予は無い。

 取るべき道は一つ。

 誰もがそう考え、私もその一人と認識している。

 

 今すぐ病院に取って返し、それを実行したくはある。

 (マスター)の意向に沿う事は、使い魔(サーヴァント)に求められる行動の一部だと解ってはいても、それでももどかしさを感じずにはいられない。

 

(マスター………彼女が化け物になり果ててでも、それでも救いたいと願うのですか?)

 

 内心の奥底から日々湧き上がりつつあった言葉を心中で呟きながら、マスターが待つ自宅への帰路を急いだ。

 

 意図的な反意により、マスターから見離される可能性の存在を認識しつつも。




皆さん各クラスの冠位鯖は決まっていますでしょうか?
それなりに鯖は所持していますが、基本的に「1枚引ければいい」スタンスなので、術クラスだけ決めかねている状態です。

ちなみに他のクラスは好きな鯖で全員Lv120で固めました。


では、次回もご期待いただけましたなら幸いです。


さて、次回は……
・これ以上新オリキャラ増やしてどうするんだ?

・中かき回しちゃらめぇっ!

・やるっきゃないと

・先生おこ

・栞さん本気出す

・来なかったらどうしようかと不安になっていたところだ

・グレートビッグベンロンドンスター
以上の予定です。
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