Fate/stay night 異聞 ~観察者白狐~   作:Prometheus.jp

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前回以降、お気に入り登録ありがとうございます。

今回はあまりお待たせすることなく投稿できました。

さて、今回は原作シーンの視点を変えて再解釈といった感じで書いております。

それでは、今回も拙作にお付き合いいただけましたら幸いです。


#078 爛壊する日常

 まるで雲の上を歩いているかのような感覚だった。

 ぼんやりとした頭で、なんとなく自分は歩いていると自覚は出来るのだけど、足の裏は地面を捉えている感覚は無い。

 

 視界も何となく朧気だ。

 どこを見ているわけでもないのに、中心から外れた場所ほど、元々世界がそうであったかのように輪郭が歪んでいる。

 

 いや………………。

 世界は元より歪んでいる………。

 

 日に日に五感が失われていく恐怖に震え、日に日に自分が怪物になっていく恐怖に震え、“どうして私だけが?”という思いばかり膨らんでいく。

 

 どうして私だけが、痛い思いをしなくてはいけないの?

 

 どうして私だけが、怖い思いをしなくてはいけないの?

 

 どうして私だけが、失わなければいけないの?

 

 どうして私だけが…………

 

 どうして……………

 

 どウして…………………

 

 どウしテ…………………………

 

 それは世界が歪んでいるからよ。

 

 自分の中から声が聞こえる。

 

 甘い果実を差し出して、“一緒に食べよう”と誘惑してくるかのような声。

 

 その果実は食べてはいけない。と、いつもなら必死に身を縮こまらせていたのに、今だけは恍惚として手を伸ばしてしまいそうになる。

 

 世界はどうしようもなく歪んでて、ドロドロに(ただ)れて、グチャグチャに腐っているクセに、みんな薄っぺらい仮面を貼り付けるだけで、すました顔を振りまいて生きているわ。

 

 そんな奴らが大手を振って歩いているから、()()()()()損な役回りを押し付けられる。

 

 私は悪くない。

 

 何も悪いことなんてしていないのに、みんな私を、()()()()、虐めて、蔑んで、見下して、したり顔でのうのうと生きているのよ。

 

 そうだ。私は何も悪いことなんてしていないのに、()()()()()()()()、新しい家で酷い目にあって、なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないの?

 

 みんな自分たちの汚いモノを見たくないから、目を逸らしたいから、私たちを()()()()()()()()()()()()()

 

 誰も助けてなんてくれない。

 あの人だって、結局私たちに酷いことしたじゃない。

 

 そうだ。あんなに優しくしてくれていたあの人が、ついさっき私にしたことを思い出すと、ひどく裏切られた気持ちになる。

 

 そうよ。あの人が優しくしてたなんてウソ。

 ぜーんぶ、私たちを油断させるためのお芝居。

 だって、実際あの人は私たちをずっと見張ってたでしょ?

 

 そうだ。だからあの人は、あんなにも早く私を見つけて…………。

 

 でも、あの人も今はボロボロ。私たちがやっつけて、尻尾を巻いて逃げちゃったんだから。

 ついでにあの人のマスター(あのおとこ)もクタクタで、もう私たちを止めようだなんて思う人たちはいない。というか、あの男でも私たちに勝てっこないわ。

 だから…………私は、私たちは、今なら好きなようにしていいのよ。

 どうする?美味しそうなあの人を食べ損ねちゃったから、今ならおなかいっぱい食べられるわよ。

 

 まるで放課後に寄り道を提案する同級生のように、()()誘ってくる。

 

 でも、目が眩むほどにおなかが減って、情けない音を立てているかのような感覚があるのは確かで………………

 

 あぁ…………

 

 それも………良いね…………………。

 

「何してんだよ………桜…………」

 

 背後から耳障りな音が聞こえる。

 振り返ると、そこには尊大と陰湿を捏ね上げた泥人形のようなモノが立っていた。

 

()()()、入院してるんじゃなかったのか………?なんでこんなところをうろうろしてんだよ………?」

 

 蟲蔵の穴のようなモノから、不快な音を吐き出してソレは近づいてくる。

 一瞬、私は身を縮こまらせた。

 コレにされた酷いこと、痛いこと、そんな記憶が堰を切ったように脳裏に流れ込んでくる。

 

 また酷いことをされる。

 また痛いことをされる。

 

 そんな吐き気を催す記憶が私の身を縮こまらせる。

 

 また酷いことをされる。

 また痛いことをされる。

 

「なに黙りこくってんだよ………!答えろよ桜ぁっ!!」

 

 コレはいつもそうだ。

 こうやって、中身は空っぽのくせに、音だけ大きい太鼓みたいに、たちまち癇癪を起して私に痛いことをしてくる。

 

「嫌っ………!」

 

 延ばされた手を思わず弾く。

 アレは一瞬驚くような表情を浮かべるけど、すぐさま私を睨みつけてくる。

 

 コレはいつもそうだ。

 そうやって、私を自分の思い通りにしようとしてくる。

 私が泣いて拒絶しても、無理やり押さえつけて酷いことをしてくる。

 

 私を弱いと思っているから。

 私を愚かだと思っているから。

 だからコレは、調子に乗って私を好き放題しようとしてくるし、そうしてきた。

 

 だけど…………

 

 もう、コレの好きにはさせない。

 

「……………………………え?」

 

 呆けた顔で、アレが自分のお腹を見る。

 

 あぁ…………なんて温かいのだろう……………。

 

 柔らかな感触と熱が、私の手首まで包み込む。

 

 驚きが恐怖に変わる。

 恐怖が痛みに変わる。

 プライドをへし折られた絶望と、死への恐怖がぐちゃぐちゃに混ざり合ったアレの表情は、思わず吹き出してしまいそうになるほど滑稽だった。

 

「や……やめ…………っ!」

 

 涙と涎をこぼしながら、情けない声で懇願してくる様はさらに滑稽で、思わず口角が吊り上がる。

 

「何ですか?いつも私が『止めて』って言っても止めなかったじゃないですか」

 

 コレはいつも、私を殴って、無理やりに押さえつけて、どんなにお願いしても、どんなに拒絶しても、汚いモノを私の中にねじ込んできていた。

 

 だったら…………

 

「自分がしてきたことを、今更自分がされたって、文句は言えませんよね?兄さん」

 

 耳元で甘く囁くように諭すと、小さく、しかし甲高い悲鳴を上げて、私の嗜虐心を更に掻き立てる。

 

 小指と薬指に長いモノが絡まる。

 親指の腹で、袋のようなモノをなぞる。

 中指と人差し指に、何か柔らかい大きな塊が触れる。

 

 グチャグチャと、血と中身と空気を混ぜる度に、“兄”とかいうモノが情けない音を漏らす。

 

 なんて情けない様だろう。

 あんなにも高圧的だったアレが、中身と同じくらいその顔をグチャグチャにして、何度も消え入りそうな声で懇願してくる。

 

 と、同時に怒りがこみあげてきた。

 こんなのに、私は今まで怯えていたのか。

 こんなのに、私は許しを請うていたのか。

 

 なんて情けない。

 俯くだけで何もしてこなかった自分が情けない。

 なんで早くこうしなかったのか。

 

 だけど、そんなことはもうどうでもいい。

 もう、こんなのに怯える必要なんて無い。

 もう、こんなのに許しを請う必要なんて無い。

 

 コレの中に私が肘まで入って、ハンバーグのタネを捏ねるみたいに、中身が原形を留めなくなるまでかき回してやればいい。

 成形された中身を見せつけられたら、コレはどんな顔をするのだろうか?

 ソレを無理矢理口の中にねじ込まれたら、コレはどんな顔をするのだろうか?

 そう考えると、背筋がゾクゾクと震え、下腹部には甘い疼きが走る。

 

「サクラっ!」

 

「————————————‼」

 

 ずっと黙って私の傍にいたライダーが声を上げる。

 

 硬い音が響くのと、音につられて()()顔を上げるのはほぼ同時だった。

 

 視界に飛び込んできたのは、たまにしか姿を見せなかった彼女の長い髪と、雨のように降ってきた赤い男の人。

 

 この人も、()()()に酷いことをする人だ。

 だからライダーは、私たちとその人との間に割って入ってきたのだ。

 

 そう直感すると、おなかの底から煮立ったスープのようなモノがこみあげてくる。

 

退()け、ライダー」

 

 どうして私だけ……

 

「下がってください、サクラ」

 

 私はただ穏やかに生きたいだけなのに………

 

「ソレはもう元には戻らん」

 

 どうして私だけ……

 

「なのに、己のマスターが怪物になり果てるのを、黙って見ていたのか貴様は」

 

 私は何も悪いことなんてしていないのに………

 

「私はただマスターを、サクラを守るだけです」

 

 どうして私だけ……

 

「厄災を振りまくだけの怪物になってでもか……!」

 

 どうして………………!

 

()()()()()()()理解できないでしょう」

 

 でも……………!

 

「フン、(まが)いなりにも、人理に刻まれた英霊のセリフとは思えんな……!」

 

 私に、私たちに、酷いことをする人たちは………………

 

「では、貴方を斃すだけです」

 

 みんな…………

 

「愚かな………!」

 

 ()()()()()()()()()…………………!!!

 

 バラバラに刻んであげる。

 グツグツ煮える鍋に入れてあげる。

 グルグルとスープと一緒にかき混ぜてあげる。

 

 そう考えるだけで、またおなかがくうくうなってくる。

 

 ライダーと赤い人が出す硬い音はとても耳障りで、私の中をかき回すような気持ち悪さに、だんだんとイラついてきた。

 

 あぁ……もう…………うるさい………。

 

 食事は静かに食べるものだって、きちんと躾けられなかったのかな?

 

 ……………いけない、この人は()()()()()()()()()()()()

 

 獲れたてのおさかなさんみたいに、ピチピチとまな板の上で暴れているだけにすぎないんだった。

 

 だから、捌かなきゃ(ころさなきゃ)お料理を始められない。

 

『文句なしだ。もう洋食じゃ、桜には敵わないな』

 

 えぇ、私の将来の目標は、先輩の味を超えることで、もうすぐ射程距離だったりするんですよ。

 

『あんまり、うちにばかりかまけてると、好きなことする時間も無くなるぞ』

 

 大丈夫ですよ先輩。

 私の趣味は、弓とお料理だけですから。

 ですから気にしないでください。

 私、お料理するのが嬉しいし、上手くなるのが楽しいんです。

 

 覚悟しててくださいね。

 今に、先輩に『参った』って言ってもらうんですから。

 

 平穏な日常。

 平穏な食卓。

 

 暖かで、時々にぎやかな、あの日常(ばしょ)に、私は帰りたいだけなんだ。

 

 誰にも私を止めさせない。

 誰にも私たちを殺させない。

 

 邪魔な人たちは、みんなみんな食べちゃえばいい。

 

 ねえ先輩?

 

 私、悪い子ですか?

 

 ええ……………私、実はとっても悪い子なんですよ?

 

 ずっと良い子の仮面を着けてたんですよ。

 

 世界(みんな)だって、そうしてるじゃないですか。

 

 だから、私だってそうして良いんです。

 

 私だけダメだなんて言う人は、ペロリと食べちゃえばいいんですから。

 

「桜………………?」

 

 離れているのに、すべての雑音をかき消すかのように、その声が耳に飛び込んでくる。

 

 なんで…………?

 

「な……なぁ、そこにいるの………慎二………だよな………?」

 

 どうして……………?

 

「なんで慎二が血まみれに………それに、桜だって…………」

 

 ここに………いる…んです……か………………?

 

「………先………輩……………」

 

 赤い人とライダーの姿が視界から外れると、その向こうには彼がいた。

 

「何やってるのよ…………桜…………!」

 

「……リン、アレは()()()()()()()()()()()………?」

 

 喉が焼けるように熱い。

 舌がうまく動かない。

 胸がきしむように苦しい。

 手足が最初から無かったかのように動かない。

 全ての音が遠くのラジオのように聞こえるのに、心臓の音だけがはっきりと大きく早く聞こえる。

まるで首を絞められ、喘いでいた時と同じように。

 

 彼の傍にいたのは、彼のサーヴァントと…………あの人だ………!

 

「なんで、ライダーがここに………?慎二のサーヴァントだったはずじゃ………あ、いや、そうじゃなくて、なんで慎二じゃなくて桜を………?」

 

 どうして………?

 

「…………そう。そういう事だったのね…………」

 

 どうして貴女がそこにいるの………?

 

「どういう事だよ……⁉遠坂………」

 

 どうしてこうなってしまったの………?

 

「詳しい説明はあと。衛宮君、セイバーを借りていい?」

 

 彼にだけは見られたくなかった。

 

「私からもお願いしますシロウ。今のライダーは、狂戦士(バーサーカー)やシオリと同等、いえ、それ以上のようです」

 

 彼にだけは知られたくなかった。

 

「簡単に結論だけ話すわ。ライダーのマスターは、いえ————」

 

 ……ダメ……!

 それ以上は…………!

 

「ライダーの()()()()()()()()()()()()

 

 私の中でナニかがひび割れた。

 

 彼が“信じられない”と聞こえてきそうな視線を私に向ける。

 やめて………

 私を……そんな目で…………見ないで……………!

 

「廃れた今の間桐家において、最もマスターに相応しい人間は、間桐の正統な後継者であり、今代の魔術師である貴女だものね、桜」

 

 どうして、バラしてしまうの………?

 どうして、彼に教えてしまうの………?

 どうして貴女は…………

 

 私から奪おうとするの…………?

 

 あの人に対する怒りはある。

 だけど………

 それよりも………

 

 彼に、先輩に、こんな私を見られてしまったことの方が、どんな痛みよりも痛く、足の力が抜けて、無様にへたり込んでしまう。

 

「桜っ!」

 

「たわけっ‼この状況が分からんのか貴様!!!」

 

 駆け寄ろうとする彼を、赤い人が大声で制止する。

 だけどそれさえも、私にはどこか遠くの音に聞こえる。

 

「お前のマスターは暴走しかかっている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 やめて………

 見ないで………

 お願い………

 違う………

 だって………

 イヤ………

 

「貴方がサクラを殺そうとする以上、私は貴方を殺すだけです」

 

 やめて……お願い……見ないで……

 違う……イヤ……だって……

 こんなこと……私だって……

 なんで……帰りたい……

 先輩……私は……

 

「なるほど。ではお互い、気兼ねをする必要は無いわけだ……!」

 

 やめて、お願い、見ないで、イヤ、違う、だって、私だって、なんで、こんなこと、先輩、帰りたい、私は、だって先輩イヤだって見ないで私はイヤなんでお願い帰りたい見ないでこんなことなんで見ないで私はやめて見ないでお願い先輩帰りたい見ないでお願い私だって先輩私は見ないで私だって先輩こんなこと私だって私はお願いなんでかえりたいなんでせんぱいちがういやわたしはかえりたいやめてこんなことちがうわたしはみないでなんでわたしだってかエりたイヤめテワたしハナんでこんなコとみないでイヤワたシだってわたシはミないでこンなことやメテわたしだっテやめてわタしだっテヤめてわタしはカエりタ———————

 

「桜………お前…………本当に、マスターだったのか……………」

 

 あ……………

 

 何よりも、ハッキリと、彼の言葉は耳に刺さった。

 

 ひび割れてたナニかが、お皿を落とした時のように割れ、グズグズに爛れたナニかが噴き出してくる。

 

 泥のように全身にまとわりつき、どんなに藻掻いても、ズブズブと沈んでいくみたいな感覚。

 

 彼に知られてしまった……

 

「あ……………は……………」

 

 私はもうあの頃の私に戻れない……

 

「あはは…………………」

 

 私の中のナニかが、プツリと音を立てて切れた。

 

「はははは…………」

 

 私はもう………

 

「はははははははははは…………」

 

 あの日常(ばしょ)に帰れないんだ……………

 

「あははははははははははははははははははははははははははっっっっ!!!!!!」

 

 そんな私を()()()()()

 

 先輩でも、あの人でも、その周りの人たちでもない声で。

 

「桜……………?」

 

 誰?

 

「………桜は……もう………………」

 

 誰なの?

 

「シロウ!アーチャーに加勢します!」

 

 やめて………。

 

「セイバーの助力はありがたいが……これは手強い………!」

 

 私を…………

 

「二人がかりですか。それでも、サクラを守るだけです」

 

 嗤わないで…………!

 

「桜はもう、冬木の管理者として放っておけない状態よ………!」

 

 誰とも違う嗤いが止まない。

 

「な———放っておけないって、遠坂お前、桜をどうする気だ⁉」

 

 誰も私を嗤ってなんていない。

 

「私には、ああなった魔術師を止める方法は一つしかない。だけど、アーチャーなら、何か他の方法があるのかもしれない。その前にライダーを何とかしなきゃいけないけどね………」

 

 それでもはっきりと聞こえる嗤い声。

 

「貴方たちの力は判りました」

 

 その嗤い声は…………

 

「残念ですが、今の貴方たちでは私を倒せない」

 

 私自身だった。

 

「なに………?」

 

 私はもう帰れない。

 

「貴方たちでは勝てない、と言ったのです」

 

 日常にも………

 

「貴方たちが宝具を使わない以上、ここで終わりです」

 

 先輩にとっての「良い後輩」にも…………

 

「世迷言を……!」

 

 だから…………

 

「なぜなら……………」

 

 もう、そんな惨めな自分を嗤うしかないのだ…………

 

「私は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ズンッと、何か重いものが体中にのしかかる。

 

「くっ…………!」

 

「これは…………!」

 

「うそ、石化の………魔眼………⁉」

 

「あ………がっ…………!」

 

 だめ………ライダー…………

 私は、こんなことがしたくて呼んだんじゃ…………

 

 なんで、止めようとするの?

 あの人たちは、私たちに酷いことしようとしてるのよ?

 

 それに————

 

 コレは貴女が望んでいる事でしょう?

 

「石化の魔眼………ライダー、貴様の真名は………」

 

「ギリシャ神話の女怪『メドゥーサ』………厄介ね………」

 

 私たちに酷いことをする人たちは食べちゃえばいい。

 私たちを見下す人たちは食べちゃえばいい。

 私たちを否定する人たちは食べちゃえばいい。

 

 そして、邪魔な人たちをみんな食べたら…………彼を虫かごに閉じ込めて、私たちが守ってあげればいい。

 

 逃げられないように、手足を捥いであげましょう。

 声が出せないように、喉を潰してあげましょう。

 

 私たちがいなきゃ、なーんにも出来なくて、虫さんのように這いつくばって、情けなく生きる彼を、私たちが守ってあげるの。

 

 どう?とても素敵な事じゃない?

 

 ああ……それは………………良いかもしれない。

 

 そうすれば、彼は危ないことに飛び込むなんてしなくなる。

 私たちが守ってあげれば、彼に危ない目にあわせようとする人たちは近づいてこなくなる。

 私が、私たちだけが、彼の世界になる。

 

 なんて………

 なんて素敵な事だろう。

 

 想像するだけで、下腹部が疼いてくる………。

 

 …………ええ、とても……良いことだわ。

 

 じゃあ、まずは彼を危ないことに巻き込んでるあの人から食べちゃいましょう。前菜には丁度良いわ。

 それから、あの人と一緒の赤い人。

 そして、彼と一緒にいるあの人。

 

 なんて心惹かれる誘惑だろう。

 我慢なんてする必要ない。

 だって、とてもお腹が空いたんだもの。

 こんなに美味しそうな人たちを目の前にして、我慢なんてできるわけがない。

 

 それじゃぁ……………

 

 いただきます。

 

「遠坂っ‼」

 

「え?」

 

 あぁ………

 ()()()………

 また、私は忘れてしまっていた………。

 

 彼は()()()()()なんだ。

 あの人が危ないと思ったから、彼が飛び出した。そういう人なんだ。

 

「シロウっ!」

 

 なんで………

 

「いや…………」

 

 なんで私は、それを忘れてしまっていたのだろう。

 

 どうして私は……………!

 

 建物が崩れるように、彼が倒れこむ。

 

 私は、また彼を…………

 

「いやあぁぁぁぁっっっっっっ!!!」

 

 もう嫌だ。

 もう私なんて消えてしまえばいい。

 もう私なんか誰も…………

 

 でも…………

 

 私は……………………




今回は壊れた桜の一人称視点ということで、ほぼ勢いで書き上げました。
どうしても、手癖で文学的に書いてしまうところもありましたが、その日分の更新が終わる度にChatGPTに投げて直した方が良さそうな点を出したり、強調した方が良い点を出したりして完成にこぎつけました。

改めてにはなりますが、拙作ではAIを利用しての本文生成は行っておりません。
AIではどうしても画一的な表現にしかならず、拙作のスタイルには合わないと判断したので、校正や資料集め、アイデア出しが、現状でAI利用の効果を最大化する使い方だと思っています。


さて、次回は……

・やるっきゃないと

・先生おこ

・栞さん本気出す

・来なかったらどうしようかと不安になっていたところだ

・グレートビッグベンロンドンスター
以上の予定です。
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