平成ライダーの小説はじゃんじゃん増えているのに、シンさんや昭和ライダーの小説は全然増えない。これじゃあ、シンさんや昭和ライダーに人気が無いみたいじゃないか。

……ならば、増やす他あるまい。

そんな訳で始まりますは『怪人バッタ男』のIFの物語。読者アンケートを元に怪人バッタ男の小説を書くと言う「コイツは臭ぇーーーー!! 地雷の臭いがプンプンするぜぇーーーーッ!!」って感じの、『怪人バッタ男』シリーズ二周年特別(アホ)企画ですので、気楽に面白おかしく読んでいただければ幸いです。

ちなみに、怪人バッタ男に行って欲しい世界は随時募集していますので、要望がありましたら活動報告のアンケートにお願いします。

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アンケートの中から取り敢えずアニメ化している作品を選んで視聴し、幾つか試しに書いた結果、満足のいく出来になったのがこのお話。他の作品だと割と重い話になる為、ライトに書けなくなってしまう事が原因だと思われますが、他の作品も完成し次第投稿していこう思うので、どうか気長にお待ち下さい。

ちなみに作者はよくTUTAYAでDVDを借りるのですが、その理由は大きく分けて二つ。一つは単純にGEOよりもTUTAYAの方がアニメや特撮のDVDの数が多い事。二つ目はセルフレジのお陰で何を借りても小っ恥ずかしい思いをしないで済む事が上げられます。

何はともあれ、『怪人バッタ男』の二周年記念を気楽にお楽しみ下さい。


怪人が変身!? にせプリキュア(?)大暴れ

キュアブラックこと美墨なぎさは、その光景に思わず何時もの口癖をこぼした。

 

「ありえなーーーい……」

 

彼女にとって何かにつけて言う事ではあるのだが、今回のソレは「信じられない」と言う意味よりも「信じたくない」と言う意味の方が多分に含まれていた。

 

―-そう。彼女は目の前で起こった事が信じられないし、信じたくないのである。

 

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

そんな彼女の目の前では、明らかに世界観が異なると言うか、そもそも存在する世界を間違えているとしか思えない見た目をした二人のバッタの怪人が、巨大な熊とソレに跨っているモヒカン男を相手に大暴れしているのだ。

 

「………」

 

どうしてこうなったんだっけと、なぎさはコレまでの経緯を、現実逃避をするかの如く回想する。

 

事の発端は河童山瓢箪池で、ケータイになれるナマモノ兼リア充。もとい、リア獣であるメップルが落とした「プリズムホーピッシュ」とか言う物を探すべく、自分と同じくプリキュアになってしまった、キュアホワイトこと雪城ほのかと共にソレを探しに来たのがそもそもの始まりだった。

 

「そう言えば美墨さん。最近、この辺りで妖怪が出るって噂があるんですが、ご存じですか?」

 

「ああ、知ってる。知ってる。でも、アタシはカッパが出るって聞いたケド……」

 

「……ハッ!? 何か感じるメポ!! とてつもなく、強大な力を持つ何かがコッチに向かってくるメポ!!」

 

「またまた~。前もそんな事言って、出てきたのは変なヤツだったじゃ~ん」

 

「でも、今回は山の中ですから、熊とかだったりして……」

 

「ありえる~」

 

「「あっはっはっはっは……は?」」

 

何気ない雑談を交わして談笑する二人が何となく川を見てみると、何たることぞ。小熊が流木に捕まり川に流されているではないか!

小熊のピンチを放っておけなかったなぎさは、自分が泳げないにも関わらず小熊を助けようとしたが、その結果川に落ちて小熊共々なぎさ自身もピンチに陥ってしまう。

 

「美墨さ~ん! もしかして、泳げないの~!?」

 

「私、トンカチなの~!」

 

「それを言うなら、カナヅチでしょ~!?」

 

「誰か助けてぇ~~~~~~~~~!!」

 

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「「!?」」

 

誰でも良いから助けてくれ。そう思って叫んだなぎさの前に、森の中から全身が緑色でグロテスクな恐ろしい姿をした妖怪が絶叫と共に飛び出し、なぎさに向かって猛スピードで向かってきた。

その姿はぶっちゃけ、今まで戦ってきたザケンナーが可愛く見えるレベルであり、それを見た瞬間、なぎさは冗談抜きで人生初の走馬燈を見た。陸からその光景を見ていたほのかは、なぎさが妖怪に食われてしまうと本気で思った。

 

「DRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

しかし、危険はなぎさだけではなく、ほのかにも迫っていた。彼女の後ろから全身が真っ黒な妖怪が襲いかかり、彼女を羽交い締めにするとそのまま空を飛んだ。

 

「いやぁああああああああああああああ!! 食べないでぇえええええええええええ!!」

 

「命だけは!! 命だけはお助けをぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

そして、妖怪達に捕獲された彼女達は命乞いを開始した。目の前の妖怪に命乞いが通じるか定かでは無いが、二人ともやらないよりはマシだと言わんばかりに全力で助命を訴えている。

 

しかし、妖怪達はそんな彼女達には目もくれず、むしろ小熊の方に注意を向けていた。

 

――まさか、小熊を喰うつもりか!?

 

そう思い至った二人だったが、その直後に母熊と思われる大きな熊が現われ、助けた小熊が母熊へ駆寄った後、熊の親子が森の中へ帰って行くのを妖怪達は静かに見届けていた。

 

「ふぅ……危ない所であったな!」

 

「「喋ったッ!?」」

 

そして、まさかの日本語による意思疎通が可能と言う事実に、驚愕する女子中学生二人。さっきまでは訳の分からない叫び声しか上げていなかったので、てっきり喋れないと思っていた事もあり、その驚きはとても大きい。

 

「あ、あんた達! あたし達をどうするつもり!?」

 

「どうするつもりだと!? あの母熊の進行方向上にお前達が居るのを見かけて、お前達が母熊とバッタリ遭遇しないように先回りして助けただけだ!! 貴様等などに用は無い!!」

 

「は……? 助け……?」

 

「この時期の雌熊は子育ての時期に入っていて、かなり敏感になっているのでな。危ないから我々でパトロールをしていたのだ」

 

「!! それじゃあ、最近この付近で妖怪が出るっていうのは!?」

 

「我々の事だな!!」

 

「アンタ等、一体何者よ!?」

 

「私は『暗黒結社ゴルゴム』のイナゴ怪人!! そして、此方におわすのはゴルゴムの首領、怪人バッタ男だッ!!」

 

「『暗黒結社ゴルゴム』って何よそれ!!」

 

「聞いて分からんのか! 人類の自由と平和の為に日夜活動する正義の軍団だ!!」

 

「分かるかぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

妖怪ことイナゴ怪人の言葉は、なぎさの情報処理能力のキャパを容易くオーバーし、臨界点を突破したなぎさは盛大に絶叫した。そんな二人を見て逆に冷静になったのか、ほのかは怪人バッタ男に話しかけてみることにした。

 

「あの、すみません。私達、此処に探し物があってきたんですけど、何か心当たりはありませんか? こんな感じの物なんですけど……」

 

「どれどれ……。ぬぅ、悪いが見た事も無いな……」

 

「そうですか……」

 

「しかし、女の子二人がこの山で下手に探し回るのは危険だ。良ければ一緒に探すが、どうだろうか?」

 

「え!? え、ええ、それではお願いできますか?」

 

「うむ、任せろ」

 

「え゛ッ゛!?」

 

かくして、妖怪ならぬ怪人二人が仲間に加わり、「プリズムホーピッシュ」を探すこととなった。彼等の言い分では神経質になっている熊の親子が住んでいるため危ないとの事だが、傍目から見て彼等の方が熊よりも遙かに危険な存在に見えるのは内緒だ。まあ、確かに彼等が傍に居れば危険は無いのかも知れないが……。

 

しかし、目的地である瓢箪池に到着した途端、招かれざる者が四人の前に現われた。それこそが、現在進行形で怪人二人が戦っている巨大な熊とモヒカン男であり、モヒカン男がドツクゾーンの新しい刺客である事を彼女達は察していた。

 

「!! ちょっと待って美墨さん! あの額の傷って……」

 

「!! そうだ、熊ちゃんのお母さん!!」

 

そして、身体的な特徴から巨大な熊が、実は川に流されていた小熊の母親がザケンナーにされたものだと気付いた二人。このままでは、下手をすると怪人達にお母さん熊を殺されてしまうと思い、プリキュアへの変身を決意する二人に、メップルとミップルもそれに同意した。

 

しかし、此処で彼等の想像を遙かに超える事態が起こることとなる。

 

「二人とも、変身するメポ!」

 

「うむッ!! 行くぞ、イナゴ怪人!!」

 

「応ッ!!」

 

「「変身ッ!!」」

 

「「「「……へ?」」」」

 

何でそこでお前達が答えるんだと、二人と二匹が思ったのも束の間。ザケンナー達と戦っていた怪人二人がおもむろに距離を取ると、イナゴ怪人は無数の蝗に覆われ、怪人バッタ男は緑色の光に包まれる。

 

そして、それらが収まった時、彼等の姿は一変していた。

 

「創世王、シャドームーン!!」

 

「世紀王、ブラックサン!!」

 

「「ふたりはプリキュアッ!!」」

 

「環境破壊が進んだクライシス帝国の住人達よッ!!」

 

「とっとと怪魔界に帰るが良いッ!!」

 

「ぐぬぬぅう~~~~~~~ッ!!」

 

「「……うん?」」

 

「「……はあッ!?」」

 

先程までの生々しい怪物的な見た目から、何処かヒーローチックなメカニカルな姿に変身し、自分達とよく似た奇妙な名乗り口上を上げる怪人達に開いた口が塞がず、なぎさとほのかはプリキュアへの変身の機会を完全に逃してしまった。

 

どう見ても目の前の怪人達はプリキュアでは無いし、こんなプリキュアぶっちゃけありえない。ついでに言えば相手はドツクゾーンの住人であって、決してクライシス帝国の住人ではない。……まあ、名乗った後でお互いに顔を見合わせているあたり、初めて変身した時の自分達と同じような現象が起こっていると予想する事は出来るが。

 

しかし、彼等の対戦相手であるモヒカン男はツッコミを入れる事も無く、更には目の前の怪人達を完全にプリキュアだと思っているのか、熊のザケンナーと共に怪人達に襲いかかっていた。

このままでは母熊がヤバイと思ったなぎさとほのかは、今度こそプリキュアに変身しようとするが、ソレよりも早く自称プリキュアの怪人達が動いていた。

 

「シャドーフラッシュッ!!」

 

「!? ザ、ザケンナーーーーーーーーーーーー!?」

 

「今だッ! キングストーンフラッシュッ!!」

 

「ザケンナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「うがぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

最初に銀色の怪人が緑色の光をベルトから放ったと思うと、巨大な熊のザケンナーが普通の熊とお化けの様な怪物……つまりは何かに取り憑く前のザケンナーとに分離され、その直後に黒い怪人がベルトから赤いレーザーを発射してザケンナーを攻撃。ザケンナーはモヒカン男を巻き込みながら空の彼方に吹っ飛んでいき、断末魔の悲鳴を上げて空中で大爆発を起こした。

 

「「………」」

 

「す、凄いメポ~」

 

「カッコイイ、ミポ~」

 

有無を言わせず、初手必殺技による瞬殺。どう考えてもザケンナー達の方が可哀想に見える戦いっぷりとその結末に、なぎさとほのかはやり過ぎだろうと思わずにはいられなかった。しかし、妖精と言う名のナマモノ達は彼等の戦いがツボに入ったらしく、夕焼けに照らされる怪人達の背中を見て感動している。

 

「間違いないメポ。あれは、伝説の戦士プリキュアよりも前に悪と戦っていたと言う、幻の戦士……プリキュアのオリジンに間違いないメポ!」

 

「……ねえ、雪城さん。アレってプリキュアだと思う?」

 

「……まあ、色は私達と同じ、いや似ていると……思います。多分」

 

「二人とも! あの二人に弟子入りしてプリキュアの勉強をするメポ!」

 

「絶対になぎさやほのかのお手本になるミポ!」

 

「「………」」

 

いや、それは無理だろと二人は思った。今までの自分達の戦いが可愛い系、キュート系、萌え萌え系だとするなら、さっきまでの特撮としか思えない戦闘を繰り広げていたあの怪人達の戦いは実写系、リアル系、ギリギリ系だ。それがどうすれば自分達のお手本になると言うのか。てゆーか、真似をしろと言われたって出来る様な事ではない。

 

「……むっ? おい、お前達の探し物はもしかしてコレか?」

 

「! は、はい! そ、それです!」

 

「あの……所で、さっきのプリキュアって言うのは?」

 

「うむ。我々は『仮面ライダー』の筈なのだが……あの時は何故か『プリキュア』と言わなければならない様な気がしてな」

 

「うむ。何故かあんな台詞が自然と口から出たな……」

 

「そ、そうですか……」

 

そして、瓦礫の中からあっさりと見つかった「プリズムホーピッシュ」を受け取り、彼女達はそそくさとその場を立ち去っていった。

 

しかし、彼女達は知らなかった。彼女達の後ろにやたらと大きなバッタが飛んでいた事を……。

 

 

○○○

 

 

翌日。なぎさは何時にも増して疲労困憊と言った表情で通学路を歩いていた。

 

「ありえな~い……」

 

しかし、その疲労の原因は昨日の事では無い。昨日はお目当ての物を見つけてくたくたになって自宅に帰ると、夕食を食べた後でお風呂に入ってから直ぐにベッドに入って眠ったお陰で、疲れはスッキリと取れて気分も爽快。

今日は何だか良い事がありそうだ……と思っていた矢先、朝食に嫌いなタマネギのサラダが出ていた事で思わずテンションが下がる。

 

「……ま! 残せばいっか!」

 

そんなけしからん考えの基、タマネギを皿からのけた次の瞬間、予想だにしない存在がなぎさの前に現われたのだ。

 

「貴様ぁ!! そんな事では立派なプリキュアになれないぞ!!」

 

「!? い、イナゴ怪人!?」

 

「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

何故、河童山にいる筈のコイツが我が家に居るのか? そもそも何でアタシの家を知っているのかと驚愕するなぎさに、初めてイナゴ怪人を見て絶叫する母と弟。

そんなほのぼのとした家庭の朝を混乱と恐怖のどん底に叩き落としたイナゴ怪人はなぎさに詰め寄ると、皿に残しているタマネギを親の敵の様に睨んでいた。

 

「この私が教えてやろう! 日本全国の幼女と大きなお友達の味方。そして、食べ物の好き嫌い無く食べる正義の味方……プリキュアの生き様というモノをなッ!!」

 

そう言い放つと、タマネギのサラダを一心不乱に素手で貪り食らうイナゴ怪人。しかも、それだけでは飽き足らず、冷蔵庫の野菜室に手を伸ばすと、中にあるタマネギやピーマンを生のままで美味そうに、かつ見せつける様に丸かじりする。

いや、確かに好き嫌いなく食べるのは良い事であり、正義の味方ならば当たり前の事なのだが、その光景はどうしても「プリキュアとはここまで過酷な事をしなければなれないモノなのか」と。そして「ここまでしないと、やっていけない様なモノなのか」と言う感想しか思いつかない。

 

そして、最終的に野菜室の中身が空になり、腰が抜けた母が警察に通報した所で、イナゴ怪人は姿を消した。

 

かくして、安全圏だと思っていた自宅がイナゴ怪人に強襲されて、もはや安心できる場所は無いと確信してしまったなぎさは、朝から非常に憂鬱な気分になってしまったのである。

 

しかし、そう考えるともう一人のプリキュアである、相方の方はどうであろうか?

 

やはり、自分と同じく自宅を怪人バッタ男に襲撃され、トンデモない事になっているのではないかと推理するが、その考えは実に受け入れがたい形で否定される事となる。

 

「ほら、到着したぞ」

 

「ありがとうございます。あ、美墨さん。おはようございます」

 

「……お、おはよう雪城さん。その人は?」

 

「怪人バッタ男さんです」

 

「……はあ!?」

 

付き合いは浅いものの、ほのかが嘘をつくような人間では無い事をなぎさは知っている。しかし、そんな彼女を思わず疑って掛かる程に、目の前の人物があの怪人バッタ男と同一人物であると言う言葉を、なぎさは信じる事が出来なかった。

ほのかをバイクに乗せてきた男はどう見ても人間。それもメロンの様に高貴なイケメン(笑)とくれば、それも仕方の無い事だろう。

 

「ああ、彼は人間の姿になる事が出来るんだそうでして。それにバイクの免許も持ってるんですよ?」

 

「……ちょっと待って。それじゃあ、もしかしてイナゴ怪人もイケメンだったりするわけ?」

 

「いや、アイツはミュータントバッタの集合体で完全な怪人だから、人間になる事は出来ないぞ」

 

何だソレは。何で自分の所にやってきたのが完全なバッタの化物で、どうして相方の方はイケメンになれるんだ。いや、正体は怪人バッタ男なのだろうが、少なくとも人間の姿になれてそれがイケメンとくれば、ソッチの方が明らかに、そして遙かにマシだ。しかも、バイクの後ろに乗せて貰って登校するとか、ちょっと……いや、かなり羨ましい。

 

「……ありえな~い」

 

やはり、持っている人は持っているんだと言う人生の不条理と理不尽を知り、なぎさはまた一つ大人になった。

 

 

●●●

 

 

ひょんな事からこの世界に蔓延る人知を超えた悪党の存在を知り、何やら関係のありそうな女子中学生二人をストーキング……もとい、追跡する事で彼女達の自宅を突き止め、詳しい話を聞くことにした俺達。

個人的には彼女達よりも、事情に詳しそうな存在である謎生物とコンタクトが取れればそれで良かったのだが、俺が行った方は謎生物に加えてその飼い主とでも言うべき少女とも話をする事が出来た。

 

少女の名前は雪城ほのか。所謂リケジョであり、中々に優秀な頭脳を持った女子中学生だ。

 

そして、どう言う訳か謎生物ことメップルからは、俺達がプリキュアのオリジンだと勘違いされているらしい。どう考えても違うのに。

 

そして、プリキュアであるほのかちゃんが、今度自分と同じプリキュアであるなぎさちゃんのラクロスの試合があるとの事で「一緒に観戦しないか」と誘われ、ホイホイと彼女の誘いに乗ったのだが……。

 

「キングストーン! キングストーンを寄こせぇえええええええ!!」

 

間の悪いことに、その途中で山で暴れていたモヒカンのゴリラが、今度は町で暴れているのに遭遇してしまった。しかも、コイツ等はプリズムストーンを探している筈なのに、何故かプリズムストーンではなくキングストーンを寄こせと叫んでいる。

ちなみにキングストーンとは、イナゴ怪人が変身に用いる強化服に内蔵された核電池の材料……つまりは、核物質の事だったりする。

 

いずれにしても、人類の自由と平和の為に、それを脅かす悪は必ず倒さなければならない。即座にイナゴ怪人を呼び出し、俺も怪人バッタ男に変身すると、暴れ回るモヒカンを人気の無い場所に誘導する。

 

そして、俺達が戦いの舞台として選んだのは、選手も観客もいないスタジアム。此処ならば多少暴れても大丈夫だろう。

 

「いくぞ、イナゴ怪人!」

 

「うむッ!!」

 

「「変身ッ!!」」

 

そして、俺が銀色の外骨格に身を包み、イナゴ怪人が強化服を装着すると、またもや先日のように口から自然と名乗り口上が飛び出してきた。

 

「創世王、シャドームーンッ!!」

 

「世紀王、ブラックサンッ!!」

 

「「ふたりはプリキュ「何だね君たちは」……ア?」」

 

「ここは立ち入り禁止でしょう? 君達は此処で何をしているのかね?」

 

名乗り口上が中断されて怪訝に思って振り返ってみると、誰も居ないと思っていたスタジアムに何時の間にか一般人の中年男性が入り込んでいた。身なりからして、結構エライ人のようだ。

どうにか説得してこの場から避難させようと思った矢先、ゴリラ語しか話していなかったモヒカンが、天に向かって明瞭な日本語で高らかに叫んだ。

 

「ザケンナーよ! 闇の力の恐ろしさを、思い知らせてやれぇえええ!!」

 

「ザケンナーッ!!」

 

そして、天空から迫る怪物に憑依され、依代となった中年男性の姿が怪人のそれに代わっていく……が、完全に怪人化した直後に、怪人ことザケンナーは思いも寄らぬ事を口走った。

 

「お前等いい加減にしろぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「「!?」」

 

「俺だって、人一倍努力してるんだよ! 誰よりも早く登校して、最後に帰ってるのはこの俺だああああああああ!! 乱れた掃除道具の後片付けは、いっつも俺がやってるんだよぉおおおおお!! 教師になって一度も欠かした事は無いんだぞ!! 脱いだ靴くらい、ちゃんと下駄箱に入れろぉおおおおおおおお!!」

 

「「………」」

 

「昨日だってそうだ! 渡り廊下を土足で走り回ったのは、誰だぁあああああああああああああ!! 拭くのにすんごい時間掛かったんだからああああああああ!! それなのに、それなのにッ!! 皆勝手な事ばかり言いやがってぇえええええええええええええ!!」

 

何だ、善人じゃないか。ザケンナーの元となった中年男性が心の内に秘めていただろう苦悩が吐露される毎に、思わず複眼から涙が出てきそうになる。

 

「生徒は言う事を聞かない!! 妻には嫌みを言われる!! 俺だって、俺だってぇえええええええええッ!! 俺だって校長になりたいんだよぉおおおおおおおおおおおおおお!! あっ、あああ……あ!?」

 

教師だったらしい中年男性が人生の理不尽を嘆き、不条理に涙する姿を見て、俺達は大人しく彼の話を聞いていたのだが、モヒカンはそんな彼はニヤニヤしながら見ており、その事に気付いた彼は、今度はモヒカンに絡み始めた。

 

「それが人の話を聞く態度か!! おおんッ!?」

 

「……ムゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「あああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

モヒカンの態度にイラッときたのか、自分の体を改造したモヒカンに堂々と文句を言ってのける彼の行動に感動を覚えたが、モヒカンはそんな彼を拳の一撃で吹っ飛ばす。

 

報われぬ毎日を過ごしてきただろう真面目な教師が、傍若無人なモヒカンによって瓦礫に埋もれる姿を見て、俺の心に怒りの炎が勢いよく燃え上がった!

 

「貴様ぁ、何と言う事を!! 日本全国の働くお父さんに代わって、お仕置きをしてやるぜぇえええええええええええええええええッ!! 行くぞ、ブラックサンッ!!」

 

「応ッ!!」

 

ブラックサンと共に空中高くジャンプすると、高密度のエネルギーがそれぞれの右足に集約され、熱く激しく発光する。

 

「シャドーキィイイイイイイイイイイイイクッ!!」

 

「ライダーキィイイイイイイイイイイイイクッ!!」

 

「ぬがぁああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」

 

緑色と赤色の光を纏った渾身の跳び蹴りが物の見事にモヒカンに炸裂し、吹っ飛んだ先でモヒカンは大爆発を起こした。しかし、ほのかちゃんから聞いていたプリズムストーンが見当たらないので、恐らく逃げたのだろう。

 

「それより、試合を観戦しなくて大丈夫なのか? 此処は私に任せて行った方が良いのではないか?」

 

「……そうだな。ちょっと行ってくる」

 

かくして、怪人化の解けた中年男性の介抱をイナゴ怪人に任せ、少し遅れてほのかちゃんと合流する事ができたのだが……ハッキリ言って物凄く居心地が悪い。まさか一般席ではなく、ほのかちゃんの通っている女子校の応援席で一緒に観戦する事になるとは思ってもいなかったのだ。

 

「所で隣の彼はほのかちゃんの彼氏か? モテるねぇ……」

 

「あ、い、いえ。違います。彼とは幼馴染みで、私にとってお兄ちゃんみたいな人です」

 

……なるほど。つまり、コイツが俺に向ける熱い視線は、妹を取られまいとする兄のソレと言う事か。まあ、気持ちは分からんでもないが。

 

ちなみに試合は主になぎさちゃんの活躍によって、なぎさちゃん達の勝利に終わった。しかし、相手チームの選手の体格がラクロス部にしてはやけに良くて、ラグビー部か女子プロレス部の選手にしか見えないのは、俺だけではない筈だ。




キャラクタァ~紹介&解説

怪人バッタ男/創世王シャドームーン
 ぶっちゃけ、ジャアクキングよりもラスボスっぽい、キュアホワイト・オリジン。獣の如く山で生活しつつ、ヒーローとして細々と活動していた。例によって妖怪が出るなんて噂の元凶となったりするのはお約束。そして、世の働くお父さんの味方。怪人の状態でも喋れるのは気にするな。ネットムービーでは普通に喋ってるんだから。

イナゴ怪人/世紀王ブラックサン
 ぶっちゃけ、何から何までが迷惑以外の何物でも無い、キュアブラック・オリジン。ブラックサンとしての姿は『強化服』を纏った姿であり、シャドームーンとは異なる存在であると言える。核エネルギーを攻撃に使っている? 何のことやら……。ちなみに、プリキュアが増えるとコイツ等が増える事になる。

美墨なぎさ/キュアブラック
 プリキュアの黒い方。BLACKにはならない。正直な話、中学生である自分にとって、明らかに学業に支障が出る時間も戦ってくれる怪人達の事は有難いと思っているが、イナゴ怪人に関しては普段の行動が原因で素直に感謝する事ができない。

雪城ほのか/キュアホワイト
 プリキュアの白い方。メズールにはならない。リケジョである彼女としては、怪人バッタ男は結構話せる相手である為、思いのほか友好的な関係を築くことが出来ている。まあ、キャラ的にイナゴ怪人が相手でも、そこそこ上手くやれそうではあるが。

ゲキドラーゴ
 ぶっちゃけ、『北斗の拳』のザコみたいな見た目をしている敵幹部。ちなみに初登場時から彼はずっとシャドームーンとブラックサンの二人としか交戦しておらず、必然的に本来のプリキュアの二人が変身する所も見ていない事に加えて、本人がかなりの脳筋である為、怪人達をプリキュアだと完全に勘違いしている。

米槻教頭
 ベローネ学院の隠れた苦労人。生徒からの人気は低いが、彼がいなければベローネ学院は崩壊してしまうに違いない。この後、ザケンナーによる怪人化が解かれて目覚めた時、彼の手には健康ランドの回数券(10枚つづり)が握られていたとか……。



プリキュアの世界
 時系列的には、お互いをまだ名前ではなく名字で呼び合っていた時期。このあと、要らぬ世話から喧嘩して仲直りして名前で呼び合うようになる。そして、ミップルがプリズムホーピッシュを落とさなければ、怪人達が彼女達を関わり合いになる事は無かったし、モヒカンが変な勘違いをする事も無かっただろう。

バッタモン二人の変身口上
 なぎさとほのかが初めてプリキュアになった時と同様に、バッタモンである怪人バッタ男とイナゴ怪人もまた、自然と変身口上が口に出る謎の影響を受けている。そもそも“仮面ライダーが存在しない世界”なので、人類の自由と平和を守る戦士として『プリキュア』を名乗らなければならない……と言う、プリキュア世界の強制力が働いたと見る事も出来るかも知れない。



後書き

はい。そんな訳で、アンケートからの小説第一弾は『プリキュアの世界』でした。ちなみに書いて思ったのは、「人類の敵としか思えない陣営に主人公が属しているタイプの世界」は、主人公陣営のアンチになる傾向が強い為か、かなり書きにくいと感じましたね。『ハイスクールD×D』とか。

これからも、短編という形で投稿していこうと思いますので、要望がありましたら活動報告にお願いします。

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