僕の名前は里田 昇《さとだ のぼる》。どこにでもいる高校2年生だ。
僕は昔から普通の人からは見えないものが見えていた。それは俗に言う幽霊だったり妖怪だったり……、それこそいろんなものがみえていた。
小さい頃はそれがなんなのかよくわからず父さんや母さんに言っても何も見えないと言われていたので怖くて近寄らなかった。小学校高学年頃になってようやくそれらが幽霊や妖怪の類いだとわかった。
……まぁ、それでも近寄ろうとは思わなかったわけだが……
中学に入ってからはだんだんと見る数が減っていき、3年になる頃にはまったく見なくなった。
そんなだから僕は、子供の頃しかみえないものなのかな?、と最近まで思っていたわけだが……
数年姿を現さなかった妖怪が目の前で倒れていた。
散歩をしていたらそいつが倒れているのを見つけた。数年ぶりに姿を現したそいつはいわゆる河童?のような姿をしていた。ただひとつ違うのが、そいつはちゃんとした服を着ていたのだ。なぜ服を来ているのか、いや、そもそもこいつは本当に河童なのか? 本当はただ河童の仮装をしてるだけじゃないのか? そんな疑問が僕の頭の中に駆け巡るが、どちらにしてもこの人?が倒れているのはまちがいない……
とりあえず、声をかけてみることにした。
「えっと、大丈夫か?」
そうやって声をかけてみるもそいつはただうなっているだけ。仮に河童だとしたら何故こんな道のど真ん中で倒れているのだろうか。河童というものは普通川とか池とか、そういう水辺に住んでいるものではないのだろうか。河童じゃないにしてもそんな緑色をした格好でうろつくとか正気の沙汰ではないだろう。……じゃあやっぱり河童か? いや違う。こいつが河童かどうかではなく、今は目の前の状況をどうにかする方が先決だ。
とりあえず、河童は頭の皿が乾くとやばいらしかったはずなのでたまたま近くにあった自販機から水を買ってきた。これで頭の皿が潤えばいいのだが……。
僕は買ってきた水をゆっくりそいつにかけた。まんべんなく皿にかけたし大丈夫だろう。心なしか呼吸が穏やかになった気がする。ついでに近くの川に持っていこう。そうすれば、目を覚ました時に家?棲みか?に帰りやすくなるだろう。まぁ、もののついでだし目を覚ますまで見ていてやるか。
「ぅ……、うぅ…ん?」
数分後そいつは目を覚ました。ゆっくりと目を開け辺りを見回すように首を動かす。こちらを向いたその時、僕とバッチリ目があった。河童は僕を見つめ、だんだんと目を見開いていき、そして……
「ひぃっ! ご、ごめんなさいぃ!」
突然、悲鳴をあげた。
なんなんだ一体。人様の顔を見るなり悲鳴をあげやがって。こっちはお前を助けてやったんだぞ。確かに人よりは目付きが鋭いかもしれんが……、だからって悲鳴をあげることはないだろう! 僕だって目付きは気にしてるんだよ……。
とりあえず誤解を解こう。このままだったら危うく暴漢だ。まぁ、他のやつらに見えるかは知らないけど。
とりあえず誤解は解いた。あのまま帰られていたら他の妖怪達にボコボコにされるかも知れなかった……。一先ず安心だ。
「いや~、すみません。食べられるかと思いました。」
何を言ってるんだこいつは。お前みたいな気持ち悪いの食べるわけないだろう。そう思ったが、勿論口には出さない。そもそも何故、あんなところで倒れていたんだ。
「じ、実は……。」
聞いてみると、ただただ好奇心で出てきたらしい。服を着ていたのも、人間の真似をしていたとか。服は捨てられていたものをきていたのか。道理でちょっとぼろぼろだなと思ったんだ。
それで、興味本意で出てきたわいいが帰りで道に迷ってあそこで倒れたらしい。全く、バカな話である。そこに僕が通り掛からなかったら危うく死んでいたと言うのに。
「すみません……。」
まぁいい。もうこれで懲りて、迂闊に水の近くから離れないだろう。もう危険は犯さないようにと言い含めて別れを告げる。
「あの……、どうもありがとうございました!」
その言葉に軽く手を伏って返すと川の中に飛び込み、直ぐに見えなくなった。
家に戻る頃には、日もくれている頃だった。
今日は、とても不思議な体験をしたものだ。
思えば、何故急に妖怪等が見えるようになったのだろうか。帰るときも、うっすらと見える人影や空を飛ぶ人みたいなのも見えた。一昨日くらいに近所の神社にいってみたからだろうか。それぐらいしか原因が思い浮かばない。
まぁ、何でもいっか。別に見えたからといって何か変なことが起こるわけでもないし。
そう考え、いつも通りの生活へ戻り、眠りについた。
しかし、その翌日、あの散歩道で会った……、いや、倒れていたのは、昨日のあの河童だった。
半ば呆れつつも俺は、またそいつを昨日のように介抱してやるのだった。
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