高宮一樹(二十一歳、独身、大学三階生になったばかり)は青いドレスに
黒髪の女性から破滅へのいざなう道を打ち砕き、世界を変えることのできる
二つのものを受け取った。

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アームズ・ウォー

「いらっしゃいませ~」

自動ドアから入ってきたお客にそのセリフを言いながら商品棚を整理し、

不足している商品を詰め込む作業をしていく俺――――高宮一樹(二十一歳、独身)は残り五分の

アルバイトをしていた。

店内には若いカップルが一組、そしていつも某週刊誌を立ち読みする学生、

そしていつもいつも新聞を立ち読みして帰っていく初老の老人がいた。

そして店内には結構な音量であるラジオが放送されている。

『さあ、今回のアームズウォーは凄いぞ! チームスターとチームパイルが―――――』

ラジオを聴きながらもその内容をほとんどスルーさせ、俺は今日のバイトの

ノルマを終わらせ、今働いている同僚に挨拶をした後スタッフルームに入り、

帰りの支度をする。

もちろん、スタッフルームでもラジオの放送は聞こえる。

その放送から遠ざかるように俺は荷物を持って、店から出て家路へとつく。

アームズ……俺が幼稚園に入ったくらいに世界に売り出されたロングラン大ヒットを

続けているバーチャル玩具だ。

必要な物は市販されているデータが入ったUSBメモリとそのデータを読み込ませ、

自らの身体にあたかも本当に装備しているかのように見せることのできるスマートホンの

形をした専用機器―――――アームフォンだけ。

USBを専用機器に挿入し、対戦相手を認識させると両者のアームフォンが

空間に干渉する電波か何かを飛ばして特殊なフィールドを作ってその中で

闘う新感覚のゲーム……らしいが俺には何が面白いのかが分からない。

周りの奴らは熱狂的にハマり、今まで普通にあった公園というものはこの街からは

ほとんど消え去り、アームズウォー専用の場所がこの街にいくつも存在するようになった。

その結果、スポーツをする子供たちが減少し、今の世代の子供たちが大人になる頃には

競技人口が激減するとかなんとか……らしい。

そんなことを考えているとかなりの人数の大きな声が聞こえ、そちらのほうを見てみると

大学生らしき男性数名とその周りにいる女性十人ほどが熱狂の声を上げていた。

その中心にはやはり、装備を纏った二人が戦っていた。

俺は思う。大学生にもなって……いや、あんな非現実的な物で遊んで

何が楽しいのかと。

「破滅へ近づいている」

そんな声が聞こえ、声がした方向……つまり顔を上に向けるとアパートの

螺旋階段に青いドレスを着た美しい女性がいた。

その女性は顔に悲哀を滲ませながら熱狂の声を上げているグループの方を

ジッと見ていた。

そして、すでに気づいていたのか俺へとその視線を向けた。

「おいっ!」

すると突然、女性は結構な高さのある螺旋階段からヒョイッと飛び降りるが

地面に落ちるその速度は普通ならば考えられないくらいにゆっくりだった。

そして、そのゆっくりさを保ったまま地面へと降り立った。

「あの力は破滅へと導く力」

そう言い、黒く美しい髪を靡かせながら女性はゆっくりと俺へと近づいてくる。

「力を使えば使うほど破滅へと手繰り寄せられ、最後は破滅を具現化した

姿へと変わり、全てを破滅へと導く。貴方はそれに対抗出来る」

そう言い、女性が俺の手を握ったかと思えば俺の手の中に青いUSBメモリと

メモリの差し込み口があるスマートフォンの形をしたアームフォンがあった。

「お、おい……いない」

こんなものはいらないと女性に返そうとして顔を上げるが近くにいた女性は

既にどこかへと姿を消していた。

周りを見渡して見るがその姿を見つけることはできなかった。

とりあえず、貰った二つをカバンの中にしまって再び歩き始めた。

五分ほど歩いたところでようやく俺が住んでいるアパートにたどり着いた。

鍵を開けて中に入り、リビングに入ると見慣れた光景が一気に入ってきた。

床の至る所に高く積み上げられた大量の紙、様々な種類の計算機がテーブルの上に

適当に置かれ、その周辺には大量の数式が書かれた計算用紙が散乱していた。

こう見えて俺はれっきとした大学生。出身地と大学のある場所があまりにも

遠かったのでこうして大学から徒歩十分のところにアパートを借りている。

いらない計算用紙などを丸めてゴミ箱に捨てて、テーブルの上を綺麗にして

ついさっき受け取った二つをテーブルの上に置いた。

青色のUSBメモリに傍から見ればスマートフォンにも見えるアームフォン。

「なんで俺、こんなの受け取ったんだか」

大ヒットしているアームズなんかに興味も欠片も湧かないが……これ持ってても

仕方がないしな。明日にでも近所の子供にあげるか。

二つのものを適当な場所に置き、テレビをつけるとまたアームズの新商品が

出たからその紹介番組……。

チャンネルを次々と変えていくがどのチャンネルも偶然かは知らないが

アームズのことばかり放送しており、唯一放送していなかったのが某民放だけだった。

そのままボーっと寝転がってニュースを見ているとポケットの中に入れていた

スマホがぶるぶる震えているのに気付き、画面を見てみると大学の友達からの

電話だった。

「もしもし」

『あ、一樹か?』

「そうだけど。研究の課題なら」

『あ~それなんだけどさ。俺、ゼミはたまにしか行かないわ』

……まあ、ゼミは別に出席点を取っているわけでもなく教員が出席を取っているわけでも

ないから出席しなくても良いっちゃ良いんだが……そうなると結構、内容で

かなり遅れることになる。

『いや~なんかさ。友達に薦められたアームズって奴? めっちゃ面白くてよ!

なんか毎日毎日、ゼミ行ってるのがばからしくなって。よかったらお前も』

「そんな子供の遊びに付きあう気はない。将来必要なのはアームズじゃなくて

知恵だろ。とにかくお前がゼミに来ないのは分かった。じゃあな」

そう言い、通話を切ってスマホを床に置いた。

……これで何人目だよ。アームズにハマったからゼミにはいかないから

その日にやった講義のノートを見せろとか言ってくる奴とかゼミに毎日、

来なくなる奴とか。

アームズが将来役に立つのかよ。それだったらよっぽどエクセルのやり方とか

パワーポイントのやり方とかを覚えた方がよっぽど将来に役立つ。

「ま、良いや。寝よ」

今日は晩飯を食う気もせず、そのままシャワーだけを浴びてベッドに横になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、今日は朝九時から夕方の四時半までゼミ、その一時間後にバイトに行くという

予定だったのだが担当教員が急遽、はずせない用事が入ったらしく今日のゼミは

休講となってしまった。

そんなわけで急に午前中が暇になってしまったので俺はここに来て三年ほど、

周囲をよく探索していなかったので探索することにした。

とはいってもそんなに面白いことがあるわけでもなく、結局俺はアームズウォーが

行われる広い場所のベンチに座っていた。

幸運なことにこの場所では今は行われていない。

「ん?」

ふと、後ろに引っ張られる感覚を抱き、後ろを振り返った。

「……これは」

そこにあったのは人一人が通ることのできる高さの穴だった。

「うぉ!」

ジッと見つめていた時に抵抗が出来ないほどの力で一気に穴の中にまで引き摺り込まれ、

顔から地面に落ちてしまった。

痛む鼻を押さえながら顔を上げてみるとそこは現代のこの国ではありそうもない

鬱蒼とした森だった。

突然のことに頭の理解速度が追い付かず、その場で立ち尽くしていると

後ろからガサっと雑草を踏んだような音が聞こえ、振り返ってみると

そこには芋虫に両手両足をつけたような見たこともない生物がいた。

『ガカガカガカ』

な、なんだこいつ……何かの幼虫にしてはでかすぎだろ。

『ガッ!』

「うわっ!」

突然、体に痛みが走ったと同時に俺の身体が地面から浮き、そのまま浮遊感を

数秒間感じた後、背中に何かでうちつけたような痛みが走った。

痛みを発する箇所に手を置こうとして腕を動かしたとき、何か冷たいものに当たった。

顔を少し動かして腕の近くを見てみると先日、青いドレスを着た女性から貰った

青色のメモリとアームフォンが落ちてあった。

確かこれは家に置きっ放しにしてたはず……なんでここに。

『ウゴァ!』

「っ!」

怪物の声が聞こえ、二つを握って慌てて起き上がってその場から飛び退くと

怪物が地面に落ちてきた。

突然のことに呼吸が速くなっていくのを感じながら俺は手に握られている

メモリとアームフォンに目を落とした。

……この場から生きて帰還するにはこれを使うしかないのか!

「くそ!」

子供の遊びと思っていたものを使うことに一定の抵抗感を感じながらも俺はアームフォンを

右手首に付けるとアームフォンからベルトのようなものが排出され、自動で俺の手首に

巻きついた。

直後、俺の目の前に空中投影されたデジタルの画面が現れた。

『ギャース!』

「うぉ!」

『アームズ・オン!』

怪物が俺に突っ込んできたのを見て、適当に画面に触れるとアームフォンから音声が鳴り響き、

さらに画面が砕け散ったかと思えば、その破片が怪物に突き刺さり、次々と爆発し、

怪物を軽く吹き飛ばした。

「は、派手な割には何も変わってねえじゃねえか!」

一度だけ友人がしているのを見たことがあるがその時は軽鎧(ライトアーマー)が

両腕と両足に展開されていたのに俺には何も変化がない。

『ウゴァ!』

「っっ!」

怪物の声が聞こえた瞬間、勝手に体が動き、俺めがけて飛んできた怪物に

回し蹴りを加え、蹴り飛ばした。

さらに怪物が地面に落ちていく様子がまるでスローモーションを見ているかのような

ゆっくりとしたものだった。

俺は何も考えずに体が動くままに走り出すと怪物が地面に落ちる前に追いつき、

もう一発強く殴ってやると吹き飛んで、近くの大木に衝突した。

ど、どうなってんだ……スローモーションに見えたり元に戻ったり……ん?

その時、何かを感じ後ろを振り返ると先日、俺に二つのものを渡した青いドレスに

黒髪の女性が立っていた。

「貴方は資格を得た。破滅へと誘う道を打ち砕き、世界を変える資格を」

『ギャァ!』

怪物の声が聞こえ、女性を護る形で立ちはだかった。

「世界を変える気なんざさらさらないが……この場を生きて帰れるなら俺は」

そう言うと女性は何も言わず、俺のポケットに手を入れてそこに入っていた

青色のメモリを取り出し、アームフォンの差し込み口にさした。

『チェンジ・アクア!』

そんな音声が響いたかと思えば突然、アームフォンから大量の水が噴き出し、

俺の手元で水の球体となって現れた。

何も考えず、そこに手を突っ込むと水が俺の腕にまとわりつき、怪物に

腕を向けると纏わりついた水からいくつかの小さな水球が飛びだし、怪物に

向かって発射され、怪物はいくつかの爆発を上げて軽く吹き飛んだ。

「……またいない……まぁ、良い。止めといくか」

そう呟くと再び水が形を変え、俺の手にまとわりつきながらも一本の

サーベルのように変化した。

「はぁ!」

『ギャッ!』

怪物めがけて腕を突き出すと水のサーベルが伸長し、怪物の腹部に突き刺さった。

『フィニッシュ・オン・ストライク! アクア・バイスト!』

音声が発された直後、突き刺さったサーベルが沸騰したかのようにぶくぶくと

泡を吐き始め、その直後にいきなりサーベルの部分がその太さを倍増させて、

怪物を真っ二つに切り裂いた。

『ギャァァァァ!』

そのまま怪物は断末魔を上げて真っ二つの状態で爆発を起こし、消え去った。

『バック・スタイル』

そんな音声が響き、まとわりついていた水が消え去ってメモリと手首に装着されている

アームフォンだけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、高宮一樹(二十一歳、独身)は破滅へと誘う道を打ち砕き、

世界を変える資格を得た。




なんか最近、妙に短編のお話が思いつく。
最初はこれもなろうと一緒に出そうかと思いましたがなんかなろうには
合わない作風っぽく感じたのでここだけしか出さないです。
ガイム面白いよ~。

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