東方古転録(凍結)   作:玖珂凌駕

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九話 防衛戦

「はぁはぁ、数が多すぎるぜ」

 

「そう………ね」

始めは優勢に戦えていたがやはり多勢に無勢、二人は疲労が見え始め、段々と敵を捌けなくなり徐々に後退をしていった。

それからも戦い続けたが、妖怪の進軍を止める事は出来ず、今では門の前まで来ており、防戦一方だった。

敵の数は五十万の四割近くも残っていた。

「万事休すって感じだな」

 

「でも、諦める訳にはいかないわ」

それを聞いた翼はそうだな、と思い気合いを入れ直した。

それからは迫り来る妖怪を一匹ずつ確実に倒していくのだった。

 

 

 

そして、時間軸を戻して凌駕の方は………

「よっと」

城壁の上に昇り終えていた。

何故なら、登った方が時間がかなり短縮出来るからだ。

「んじゃ、さっさと向かいますか」

そう言うと凌駕は、今出せる七割の速さで走り出した。

そのため、凌駕が通った後には暴風が起こり、足で踏んだ所には窪みが出来ていた。

流石に街中だと、これだけの速さを出す事は出来ないからな。

数分後、南門が見えてきて戦ってる二人の姿も見る事が出来た。

が、凌駕が見た二人は疲弊しており、防ぐのでやっとの様だった。

それを見た凌駕は刀を抜き、その場から全力で前方に跳んだ。

そして空中で刀を構え、刀に霊力を載せた。

「雷閃流特式『雷斬りー雷閃ー』!」

俺が刀を振ると幾つかの斬撃が敵の方へと翔んでいった。

この技は霊力を斬撃として放つもので、目に見える鎌鼬と思って貰えると分かりやすいだろう。

そして、俺が放った技は門に近い妖怪から当たっていき、俺は二人の前に着地した。

「来るのが遅かったな、凌駕」

 

「そのぶん、きちんと働くさ」

二人の方を見るとかなり疲弊している様で、俺はその後にこう告げた。

「二人は少し休んでな。あとは俺がやる」

二人も了承したので、俺は敵の方へと目を向けて刀を下段に構え、体勢を低くした。

「雷閃流『雷斬りー稲妻ー』!」

そう言った後、いつの間にか敵のド真ん中におり、通ったと思われる道筋には沢山の妖怪が倒れていた。

この技は走りながら敵を倒す単純なものだが、速さが尋常ではなく、例えるなら稲妻が起きる並みの速さだろう。

妖怪達は何が起きたのか分からず、此方を警戒していた。

俺は一度刀を振り、妖怪達に剣先を向けた。

「さぁ、妖怪ども。何処からでも掛かってきな」

この言葉を聞いた妖怪達は奇声を上げて此方に向かって襲ってきた。

俺は襲ってきた妖怪達を一匹ずつ倒していった。

そして、10分ほど経った頃、流石に少し疲れてきたがまだまだ妖怪の数は残っていた。

(コイツ等はどう見ても下級妖怪だ。下級妖怪は知能が低く、集団行動はしない。けど、コイツ等は集団で襲ってきた。誰かコイツ等を纏めている奴がいるのか)

少し考えてたせいか、後ろから襲ってきた妖怪に気付かず、気付いた時には回避は間に合わないので、防御の体勢をとった。

しかし、妖怪の攻撃は俺には届かず、背後からの攻撃で地に倒れた。

「油断大敵ですよ、凌駕さん」

そこには休んでいる筈の二人が立っていた。

「もう良いのか」

 

「あぁ。全快とは言えないがコイツ等を倒せるぐらいは回復した」

 

「そうか。んじゃ、さっさと妖怪どもを倒すとするか」

俺がそう言うと同時に妖怪達に攻撃を始めた。

三人が揃ったことで妖怪達は次々と倒され、あっという間に数は全体の一割となった。

あと一息、といった時に前方から大きな岩が飛んできた。

俺はそれを十字に斬った。

その瞬間、岩を斬って出来た隙間から角が生えた妖怪が此方に向かって殴り掛かってきた。

俺は突然の事だったので回避が間に合わず、刀と左腕で攻撃を受け止めた。

「ぐっ」

が、威力が強すぎて受け止めきれず、後方へ飛ばされた。

「凌駕さん!?」

「凌駕!」

二人はそう叫ぶと同時に此方に向かってきた。

「大丈夫か」

 

「あぁ、なんとかな」

心配してきた翼の言葉にそう答えた。

(アイツの攻撃、かなりヤバイな。左腕は痺れて当分、使い物にならないな。それにアイツから感じる妖力は俺の霊力より尋常じゃないな。二人を逃がすなら今しかないな)

そう思った俺は二人に声を掛けた。

「俺が時間を稼ぐから二人はロケットの所へ行ってくれ」

 

「それだと凌駕さんが………」

俺は依姫の言葉を遮る様に話し始めた。

「心配するな。少し時間を稼いだら、すぐに追い付くさ。それに俺には奥の手があるから」

何か言おうとした依姫だったが、翼が彼女の肩に手を置いた。

依姫も悟ったらしく、これ以上は止めようとはしなかった。

「絶対に戻ってきてよ」

 

「あぁ、分かってる」

これを聞いた依姫は先に門の方へと向かっていった。

翼は俺の肩に手を置き、耳元で死ぬんじゃないぜ、と言ってきたのであぁ、後の事は任せたと答えた。

そして、翼も門の方へと向かっていった。

俺はそれを確認した後、角が生えた妖怪の方へと目を向けた。

「律儀に待ってくれるとはな」

 

「な~に、あんたとサシで戦って見たいと思っただけさ。ただ、コイツ等は行かせるさ」

妖怪達は角が生えた妖怪の合図と共に門の方へ向かおうとした。

俺は妖怪達を止めようとしたら奴が動いてくると思い、能力を使うことにした。

能力発動と小さな声で呟くと妖怪達を取り囲む様に結界が張られた。

「へぇ~、対したものだね。これは少し予想外だったね」

 

「まずは下級妖怪を倒すとするか」

俺はそう言うと、今まで抑えていた力を解放し、能力を使った。

そして一瞬で残っていた妖怪を全て倒した。

ただ、能力の使用で俺の体はかなりの負担が掛かっていた。

「さぁ、妖怪あとはあんただけだ」

 

「これがあんたの全力か。さっきまでとは大違いさね」

 

「ご託は良い。さっさと始めようぜ」

こうして、凌駕と角が生えた妖怪との一騎討ちが始まろうとした。


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