幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい 作:仮面
毎日更新してたのが途切れてましたが生きてます。ちょっと仕事が忙しかっただけです。働きマンでした。
「病院って暇だなー」
「そうだね」
人生で初めて入院というものを味わい、病室のベッドでダラダラしている俺と高見。初めて病院で一夜を過ごしたけどやばいな。夜の病院マジで怖い。
皆は今頃テスト二日目だろうなー。詩織は今朝退院して家に帰った。今日は学校に行かなくていいらしい。そりゃそうだよね、てか多分警察の所行ってるだろうし。
「今の時間誰かにラインしようにも皆学校だしね」
「それな。……誰か隠れて電源付けてねえかな、鬼電してやろうぜ」
「……テスト中に鳴ったらカンニング類似行為でアウトじゃなかった?」
馬鹿野郎。だから面白いんだろうが。
一応昨日の夜にかけて姉ちゃん、理恵さん、そんで高見の家族が面会に来た。理恵さん泣いてた。俺あの人が悪酔いして泣いてるところしか見たこと無かったからびっくりした。泣きながら「ありがとう」と「ごめん」を繰り返してた。理恵さんが謝ることじゃねーのにな。その後詩織を思いっきり抱きしめてたな。
姉ちゃんは……うん。まあ取り敢えず姉ちゃんだった。
「晴人、お前なんであたしの弟なのにあんなに喧嘩弱いの?」
「姉ちゃんはなんで俺の姉ちゃんなのにあんなに喧嘩強いの?」
ごくせんのレベルだぞあれ。見てて怖かったもんな。
「まあでも詩織ちゃん守れたんだしその根性は認めてあげる。はいこれ暇つぶしになりそうなもの」
「あ、それ素直に助かる」
袋を渡された。中には音楽プレーヤーと漫画数冊。……と、これはどういうことだクソ姉貴。
「おいクソ姉貴。どう考えてもこれは女が持ってきたらダメなやつだろ」
最後に見えたのはどう見ても成人向けDVD。所謂AV。しかもコスプレナースもの。どこで見つけてきたのか問い質したいし入院してる時にこれ渡すの悪意の塊だろ。
「それ二個前の彼氏の私物。一回一緒に観た」
「変に生々しいこと言うのやめてもらっていいですか」
中身は俺にしか見えてないけど話の内容は詩織にも高見にも聞こえてんだぞクソ姉貴。
「え?ハル、何入ってたの?」
「エロビデオ」
「えっ……ぇえっ!?お姉ちゃんそんなの観てたの?か、彼氏と?」
「あれ?詩織ちゃんは彼氏と観たことないの?」
「な、無いよっ!普通は無いよ!?」
「あらぁ、ウブ〜♡キスした?ねっとりした方の」
「タチ悪すぎじゃね?俺の隣のベッド誰だと思ってんの」
この姉貴性格悪すぎる……。いや、前に「あたしの詩織ちゃんがー!」みたいなこと言ってたし意地悪気分で復讐してるのか?これ?というかそれは復讐というのか?あてつけというものでは?
「そうだ、詩織ちゃんの彼氏君。この子泣かせたら二度とバスケットが出来ない身体にするからね、覚悟しろよ」
「え?あ……はい。すみません」
ほら、めっちゃビビってるじゃん。あのチンピラをボッコボコにしてたあとだから冗談に聞こえないんだって、マジで。
「うーん、でも確かにイケメンじゃん!詩織ちゃん、誘惑する時は胸元のボタン一個だけ空けて、「酔っちゃった……」って言って肩に頭乗せて腕絡ませて、おっぱいをほんのちょっとだけぷにって押し付けたら……」
「お姉ちゃん!?やめて!恥ずかしいから!あと私まだ未成年!!」
この姉貴、セクハラする為に来たのか?
酔って顔が紅潮して、腕絡めて胸を押し付ける詩織の姿を想像してちょびっとだけゲイボルグが反応した。隣の高見も絶妙に変な顔してるから多分反応してる。良かった、こいつも正常男子。
高見の両親は、なんか良い人そうだった。真面目そうなお父さんと、美人なお母さん、って感じ。こいつがイケメンなのはお母さんの遺伝子を受け継いでるらしい。顔めっちゃ似てた。
「……そういえばさ、神崎」
「んだよ、今コバにラインしようと思ってたのに」
「やめなよ、カンニングになったらどうするのさ……その、お姉さんは来てたけど。両親は?」
あー。そういや来てないなぁ。普通息子が入院したら来るもんな。そりゃ何故?って思うわな。
「どっか忘れたけど県外で仕事してる。仕事人間だから俺ら放ったらかし」
「……なんか、悪いこと聞いたね。ごめん」
「慣れっこ」
そう、慣れっこ。
いつの間にかずっと一緒に居るのは姉ちゃんだけになって。母ちゃんや父ちゃんよりも詩織や理恵さんの方が一瞬に居るようになって。
遠くの家族より近くの他人、とはよく言ったもんだと思う。正直詩織の方が母ちゃんより家族、って感じするもんな。
「昨日、お前が寝てからスマホに電話はかかってきてたんだよ。ちょっとだけ喋った。大丈夫か、見舞いいくからね、って言われたけどいつ来るか、本当に来るかわかんね」
「なんというか、苦労してるね」
ちょっと意外な答えが返ってきた。割と、「姉ちゃんと二人で暮らしてる」って言ったらいいなー、とかそういうの憧れるー、とかそう言われることが殆どだ。石黒とかそうだったしな。
今、こうやって病院にいるから余計にそう思われてるだけかもしれんが、ちょっと意外な答えだった。
変な奴。
「……寝るわ、暇だし」
老人みたいな生活してるな、俺ら。
〜〜〜
結局昼ご飯の時間までガッツリ寝てたらしい。目が覚めたら看護師さんが俺の机にご飯を運んでくれていた。ちょうど今起こすところだったとかなんとか。病人食なぁ。不味くはないけどパンチが欲しい。
「看護師さん、これ塩マシマシとか出来ない?」
「だーめ。生活習慣病になるよ」
だよねー。姉ちゃんもどうせなら塩とかお見舞いに持ってきてくれたらいいのに。なんだよ、見舞いの品がコスプレナースものAVって。しかもDVDプレイヤー無いから観れねえし。いやあっても観ないけどさ。
もそもそと栄養満点、味付け控えめの食事をとる。あー、姉ちゃんの飯が食いてえ。濃い味が食べたい。アスパラベーコンとか食べたい。
「あ、そういえばお母様がお見舞いに来てるわよ、晴人くん」
急に看護師さんに言われた。
……え?
「母ちゃんが?なんで?」
「なんでって……そりゃあ息子が入院してるんだから当然でしょ?」
……そりゃそうだけど。昨日も電話で行く、とは聞いてたけど。
思ったより早かった。ちょっとびっくり。
「良かったな、神崎。ちゃんと来てくれたって」
「……複雑」
何喋ったらいいか解らん。ごめん、入院したー、とか軽いノリで言えばいいのか?神妙な顔付きで心配かけてごめん、とか言えばいいのか?昨日どんな感じで喋ったっけか。
「ほら、お見えになったわよ。お邪魔にならないように私はドロンするわ」
看護師さんが扉の方を指さしてからそそくさと出ていった。入れ違いに部屋に入ってくる、久々に見る昔はずっと一緒だった人。
神崎美和。俺と姉ちゃんの母ちゃんだ。
「晴人、あんた……」
ベッドの上の俺を見てなんともまあ、ぐしゃぐしゃみたいな顔をした。
「……久しぶり。悪い、心配かけて」
「馬鹿!そんなになってるって思わないじゃない!」
怒られた。
この歳になって、母親に怒られるって、なんか新鮮だ。
母ちゃんは口では怒ってたけど、顔が泣きそうになってた。なんなんだよ、本当に。
「詩織ちゃんをしっかり助けたのはよくやった!けどね、私はあんたにそんなボロボロになって欲しくないの!」
無茶言うなよ。
アンタら両親が仕事ばっかしてるから、姉ちゃんだってボロボロなんだぜ?
もう少し帰ってきてくれたっていいじゃねえか。急に来て、いきなり怒られたって困る。
「……ごめん」
何故か、謝ることしか出来なかった。
「……お母さんもごめんね。仕事でもう出なきゃいけなくて。晴人の一番好きな果物、買ってきたから。後で食べて」
そう言うと紙袋をベッドの脇に置いて、そして俺を思い切り抱き締めた。痛いです。
「……痛い」
「ごめん、怪我してんだもんね。……また電話するわ」
「おう。……あざす」
嵐のようだった。そのまま母ちゃんは部屋を出て行った。
紙袋の中にはみかんが幾つか入っていた。
みかんが一番好きなのは姉ちゃんだっての。俺が一番好きなのは桃。
「なあ、高見」
「何?」
「母ちゃんに怒られるって、どんな気持ち?」
「うーん……難しいな」
この歳でも、子どもっていうのは親に怒られるもんなんだろうか。
「……多分だけど、一生誰かに怒られるんじゃないかな。その中でも、お母さんって、普通は生まれた時からずっとお母さんだから。怒られるのは普通だし……怒られちゃったな、位に考えるのでいいんじゃないの?」
よくわからないけどね、と一言付け加えた高見。
そうか。怒られることは普通だし、そんな非日常的な事でもない。
「そっかー。怒られちまったなぁ」
母ちゃんと、「普通」のことが出来た。
そう考えるなら、これだけ怪我しても何か得があったのかもしれない。
そして高見は変わってるけどなんというか、自分の考えみたいなものは持ってるしすごくズレた奴でもない、という事も解った。
「嬉しそうだね」
「怒られて嬉しいわけないだろ」
「それもそうか。……ちょっと寝るね」
「おう」
隣で高見がもぞもぞと身体を動かし、暫くすると寝息が聴こえてきた。
……音楽でも聴くか。姉ちゃんが持ってきてくれた音楽プレーヤーとイヤホンを取り出し、ランダム再生のボタンを押した。
流れてきたのはSoundHorizonの11文字の伝言。……こんな時に母親の愛、みたいな曲を流すなよな。
〜〜〜
うとうとしながらずっと音楽を聴いていた。多分、一時間以上は聴いている。なんだかんだで音楽をずっと聴いている、っていうのは暇つぶしになる。
もう今は多分学校も終わって、次のテストに向けて皆勉強している頃だろう。俺らもちょっと位は勉強しないとなぁ……。
扉が開いた。看護師さんか?それとも誰か見舞いに来た?
「玲音、神崎」
「……えっ、杉山先生」
まさかの、見舞いに来たのは体育教師の杉山先生だった。結構ベテランの先生で、女子人気が高い。割とノリが良いけど怒るとめちゃくちゃ怖い、みたいな「The 体育教師」みたいな先生。……あ、そういえばバスケ部の顧問だっけ。
「玲音は寝てるのか?」
「そうっすね」
俺はこの先生、あまり得意ではなかったりする。なんというか、体育教師って独特の雰囲気があって、怖くて苦手なんだよね。特にこの人、生活指導の担当だったりするし。
「おい、玲音!起きろ!」
「ひゃいっ!?え、杉山先生!?何で!?」
「見舞いに来たんだよ」
どう考えても今のを見て見舞いとは思えないんだが。
「色々と言いたいことがあってな。……世間体、というものがある。日高を護る為、とは言えど人様に暴力を振るってしまった君達に、学校は厳重注意という処置を取る事になった。君達は退院したら、校長室で厳重注意を受けることになる」
大人の世界なんぞ見せたくないんだが、と続けた杉山先生。なんで向こうが悪いのに俺らが怒られなきゃなんねえんだよ、って言いたいが、それこそ世間体を学校が気にしなきゃならんのだろう。
あー、嫌になるね。わざわざそれ言いに来たのかよ、この先生は。
「……だが、俺は君達に厳重注意という処罰は不適切だと思っている。……これからな、社会に出たとしても、こういう理不尽はあると思うんだ。だからこそ言うぞ。……お前ら、二人ともよくやった。そして助けてやれなくて、本当にすまなかった。子どものお前らが入院する程体を張って、俺達大人は、教師は警察から話を聞いてやっと動けたんだ。後で厳重注意は受けるだろうがお前らは間違っていない。俺がこんなこと言ったらそれこそ厳重注意では済まされないが……その時の校長先生の話なんぞクソ喰らえ程度に考えろ」
校長先生だって本意ではないのだから。
あー。なんというか。
俺の学校、校舎はボロいし歴史だけ積み重なったよくわからん学校だけど。
教師は良い人が揃ってるんだなぁ。
杉山先生はビックリするくらい、本当にビックリするくらい深く頭を下げていた。高見がびっくりしつつ、でも頭はあげてほしくて、でも言われたことが心に刺さりすぎて、どうしたらいいのかわからなくなってフリーズしてる。そりゃあ、お前顧問だもんな。
「退院したら胸を張れ。君達二人は我が校の誇りだと俺は思う。そして君達が不当に虐げられるようなことがあったら、次こそ俺が、先生が絶対守ってやる。……高見、練習の復帰は無理しない程度に少しずつでいい。まずは万全にしろ。……二人のテスト日程、その他諸々を纏めたプリントだ、あとこれは皆川先生からの見舞いの品。早く治して帰ってこいよ」
皆川ちゃん、鳩サブレーとか普通に嬉しいぞ。甘い物食べたかったんだよ。母ちゃんがくれたみかん酸っぱかったし。
「えっと、」
「その」
「「ありがとうございました!」」
高見とハモってしまった。杉山先生の体育の授業、高三では受けられるかな。
早く退院して、皆川ちゃんにもお礼言わなきゃな。テスト中だし忙しいんだろうな、それなのに見舞いの品は杉山先生に預けてくれて……いい先生だ。
「おい、高見」
「何?」
「……退院したらバスケ教えてくれ」
「現代文教えてくれたら、いいよ」
解る。山月記、難しいよな。
テストでは良い点、取れるといいな。
次から夏休み編となります。
ぶっちゃけこんなに沢山の方に読んで貰えると思ってなかったので一学期から戦々恐々してました。
これからも適度にお付き合いください( ̄▽ ̄)