幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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朝起きたら評価バーに色付いててランキング載ってました。びっくりした。ありがとうございます。

とりあえずお礼が言いたくて、明日投げるはずのお話をもう投稿しちゃえー!ってやっちゃいました。


サボりたい。

「煙草なんか吸ってると動けなくなるぞ」

 

 校舎の裏で煙草を吸ってるのを見かけたから声を掛けた。別に仲良くもないけど。

 高見の顔をまじまじと見たことなんか無かったから、どんな顔してるかとか朧気にしか知らなくて。近くで見ると本当にイケメンだった。煙草吸ってる姿も絵になるくらいに。いやダメだけどね。

 

「よく知らない人にそんなの言われる筋合い、無くない?」

 

 高見はフッと鼻で笑って肺の中に煙を入れる。

 よく知らないだと?俺が勝手に意識してるみたいでめっちゃ惨めじゃねえか。夢の中でなら俺はお前と1on1やってたんだぞ?負けたけど。

 

「三井ですらグレてる時も煙草は吸ってなかったんだぜ?」

 

「だから何」

 

 なんか俺、まるで相手にされてなくね?

 だが俺は神崎晴人。諦めの悪い男。

 無理にでも俺と対等の位置までずり下ろしてやる。ここで自分がこいつの位置まで昇ろうとしない辺りが俺のアイデンティティ。

 

「それ、顧問にチクるぞ」

 

 そしてずり下ろしてやる!と息巻いてやることがチクリという器の小ささもアイデンティティ。

 

「やってみれば?」

 

 そう言って高見は俺の方へずんずん歩いてくる。お、おう。なんだよ、やんのか?言っとくけど俺はお前より身長が五センチ位低いからな?金的パンチに気を付けろよ?

 

 殴られた。

 

「痛ったぁ!?めっちゃ痛……」

 

 蹴られた。

 スポーツやってる奴って筋肉あるからさ、めっちゃ痛い。あっ、顔はやめて!痛い!顔はやめて!これ以上不細工になったらどうするの?

 あ、口の中切れた。血の味がする。

 ボッコボコにされて、最後は後頭部掴まれて地面とフレンチキスさせられた。頭がぼーっとする。全身が痛い。なんか感覚が鈍い。

 

「玲音君!ここにいたんだ」

 

 聴覚だけ、嫌になるほど鋭敏だった。誰の声かなんて、見えてなくても解る。

 

「もう、また煙草?バレても知らないよ」

 

「今バレたんだよ。だから黙らせた」

 

「え?……あ、ハルじゃん。元気?」

 

 元気に見えるのかこの状態が。立てねえ。身体を動かせねえ。口からは空気しか漏れてこねえ。

 

「……ねえ、玲音君。私もう限界」

 

「そんなに?……こいついるけど、いいの?」

 

「いいの。早く触ってよ」

 

「詩織ちゃん、悪い女だよね」

 

 聴覚だけはずっと鋭敏。見えないし動けない。口の中は鉄まみれで空気が漏れ出ている。でも耳だけはずっと、いつもより鮮明に聴こえている。

 

 くっそ惨め。死にたい。

 あー。なんなんだろ、ホント。

 

 

 

 

「いつまで寝てんの、晴人!?もう七時半だけど!?」

 

「ひゃいっ!?」

 

 目が覚めた。あれ?目覚まし時計鳴ってなくね?

 目の前には姉ちゃん。余りにも起きなかったから起こしに来てくれたのかな。

 

「……おはよ」

 

「おそよう。なんかうなされて目覚まし叩き落としてたみたいよ」

 

 むくりと起き上がって地面を見たら電池が飛び出した目覚まし時計が落ちていた。……そっか、夢か。

 高見が悪い奴だったら良かったのにな、そしたら俺が頑張って守ってやれるのにー!とか昨日思ってたけど前言撤回。ボコボコにされそうなのでそんなことなくていいです。

 惨めだわ。

 

 夢の中で高見と詩織がやってたことが、夢の中では音しか聞こえなかったけど、なんかすごく鮮明に残ってて。幼馴染でそんな想像してる自分がすげえ嫌で。

 でも、やってるんだろうな。いや、まだやってないにしても、そのうちやるんだろうな。

 

「死にたい」

 

「あんた何の夢見てたの……?」

 

 そんでもって一番死にたいのはそんな夢を見てたのにも関わらず立ち上がってる俺のロンギヌスだよ。罪悪感とか、惨めさとかどこにに行ったんだって感じ。頭の中で大塚明夫さんボイスで「ロンギーヌース!」って聴こえてくる。まあ俺は穴があっても貫けないんだけどね。童貞だし。

 

「……てか姉ちゃんは仕事の準備しなくていいの」

 

「あたし今日休みなんだよね」

 

 姉ちゃんの休みの日は不定期だから土日休みって訳でもない。普通に平日が休みの時もある。今日がそうらしい。逆に土日に働いてる時も多い。

 

「あんた起きてこないからパン二枚とも食べたんだよ?太るじゃん」

 

「……悪かった。何かまだある?」

 

「昨日の残りのもやし炒め」

 

「それ食うわ。もうちょいしたら降りる」

 

「あいよ。チンしとく」

 

「ありがと」

 

 布団に隠れてて俺の魔剣を見られることは無かった。良かった。昨日見られたけど。

 昨日風呂入った後の記憶がイマイチ無い。ちゃんとライン返信したっけ?俺。ふと気になったからスマホを開く。

「こちらこそ」という最高に短くて要件オンリーの文をちゃんと返してた。既読付いてる。なんかパンダが目を輝かせてるスタンプが来てた。

 

「……あー。なんか今日学校行きたくねぇ」

 

 昨日、詩織と「また明日、学校で」とか言ったけど、多分今日は俺は詩織と話すことは無いだろう。それも別に詩織が悪いわけじゃない。基本的に俺が悪いのだ。

 ロンギヌスが収まった。朝ご飯食べよ。

 

 姉ちゃんはなんだかんだで俺に甘いと思う。

 

 カレー然り、お味噌汁然り、作り置き出来る食べ物は大体二日目が一番美味いと相場が決まってる。

 一階に降りてもやし炒めと白ご飯をかきこんでいると、もやし炒めもその例には漏れないらしいということを実感した。なんか昨日より美味しい気がする。

 

「あんたが今考えてること当ててあげようか」

 

「何」

 

「学校行きたくねぇ」

 

「エスパーかよ」

 

 なんで当てられるんだホントに。世の中の姉ちゃん皆そうなのか?

 

「カラオケ行こっか」

 

「は?」

 

 いきなり何を言い出すんだこの姉貴は。俺学校あるんだけど。姉ちゃんは休みかもしれないけどさ。

 

「あたしが高二の頃ってあんたまだ小学生だから秘密にしてたけどさ、あたしがあんたくらいの頃は学校行きたくない日はサボってカラオケとか行ってたんだよね」

 

「え、マジで」

 

 いややりそうではあるけどね。マジでか。俺が小学生の頃ってまだ母ちゃん家に居たよな?堂々とサボってたのかよ。

 

「行きたくないもん無理に行く必要無くない?義務教育じゃないし仕事じゃないんだから。今だけだよ、サボりが出来るのは」

 

 イケないことを教え込まれている気がする。でも実際今日は凄まじく学校に行きたくない。

 このイライラを歌って解消出来るなら、そうしたい。

 

「昼間フリータイム、予約しとくから」

 

「……うっす」

 

 今日、俺は初めて学校をサボった。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 学校をサボってカラオケに来ているので、学生証なんかを受付で見せる訳にもいかず。俺は大人料金で姉ちゃんと二人で昼間フリータイムで歌い通すことになった。

 元々歌うことは嫌いじゃない。中学生の頃はギターをほんのちょっとだけかじったりもしたし。

 

 開始一時間はとにかく叫ぶような曲を歌った。なんかもう社会に反抗してやるー!って位叫び散らした。歌詞もそんな感じのやつを選んだ。

 

「globe歌いたい。マークやってよ」

 

「あいよ」

 

 姉ちゃんも俺も、歌うジャンルは特に決まってない。JPOPも歌うしアニソンも歌うし、ボカロもロックもヘビメタも歌う。二人でデュエットもやる。globe歌う時は、姉ちゃんがKEIKOで俺がマーク・パンサー。ラップは苦手だけど全力でやる。

 姉ちゃんが入れた曲はAnytime smokin cigarette。夢の中で煙草吸ってた高見を思い出す。今となっては煙草は百円玉二個じゃ買えなくなったなぁ。

 

 ムシャクシャした気持ちは思春期のせい。こうやってアホみたいに叫んでると楽しいのも思春期のせい。青春狂騒曲を入れた。サンボマスターの曲は歌ってて気持ちいい。叫び散らせるし、なんか今の気分に合ってる。

 

「それ聴いてるとNARUTO読み返したくなるよね」

 

「あー、わかる」

 

 中忍試験とかやってる辺りが一番ワクワクしたよね。ロック・リーと我愛羅のバトルとか。

 ロック・リーを見てると「俺も努力しないとな」とか思ってたけど、今の俺は果たしてどうか。

 

「ヘビメタ入れていい?」

 

「どうぞ」

 

 姉ちゃんがGargoyleの完全な毒を要求するを入れた。うわ、あの曲歌いづらいだろ。

 完璧に歌い切ってた。うわー、すげー。喉痛そう。

 母ちゃんの影響で聴いたけど、その辺のヘビメタは周りの人誰も知らないから、姉ちゃんも俺も友達とカラオケ行く時は滅多に歌わない。家族で行く時だけ。

 

「どんどん行こう。次何入れる?」

 

「サンホラ入れようぜ」

 

「おっけー。じゃあその次少女病で」

 

 女の方がオタクの数は多い気がする。というか擬態してるオタクが多い気がする。うちの姉ちゃんもこんなナリしてかなりのオタ趣味をお持ちである。絶対クラスのビッチ集団にも一人くらいうたプリクラスタとかいると思う。

 二人で聖戦のイベリアを三曲歌い切る。俺がシャイターンとサァディ先生、姉ちゃんがライラと流浪三姉妹。侵略する者される者は二人でする側とされる側に分かれる。

 

「こういうの歌ってるとさ、厨二病は不治の病だって思うよな」

 

「わかる。いつまで経ってもこういうのかっこいいもんね」

 

 ちなみに俺等姉弟は進撃の巨人からリンホラに入ってサンホラにハマった人である。

 

 そんなゴリッゴリ歌いまくってたら二時間で疲れた。飯休憩を挟むことにする。最近のカラオケ飯は割と美味しい。

 

「久々にカラオケでヘビメタとかサンホラ歌った気がする」

 

「姉ちゃんの友達にローランいなさそうだもんな」

 

「バンギャはいるからヴィジュアル系の曲は歌ったりするけどね」

 

「ヴィジュアル系とかABCしか知らねえ」

 

 そのABCもかなりマイルドなヴィジュアル系らしいから俺のそっち方面の知識はほぼ無いに等しい。あ、5D'sのエンディング歌ってたグループもヴィジュアル系なのかな。

 

「何かさ」

 

「何?」

 

「楽しい」

 

 最近あんま感じてなかった気がする。楽しい。

 昔って、小さい頃って何してても楽しかったんだよなー。極論、「うんこ」って一言言うだけで死ぬほど楽しかった。

 変に歳取って、変に気取るようになると心の底から「やばい超楽しい」みたいな感覚が磨り減っていく気がする。

 今日初めて学校サボって、それでカラオケ来て、叫び散らす。背徳感と高揚感。楽しい。

 

 成程、校舎の裏で煙草吸うのも似たような感覚なのかもしれない。いや校舎の裏で煙草吸ってるやつなんて今どき居るのかどうかは知らんけど。少なくとも俺の夢の中には居た。

 

「あんたはさ、全力で遊ぶくせに楽しんでないんだよね。遊び方がヘタクソ」

 

 昨日のティックトック、送られてきてたから観たんだけど、結構やっぱり全力でやってたんだよな。でもなんかそれでも思い返して楽しかったか、って言われたらそうでも無かった気がする。

 

「あんたがモテないのってそこにもあるんじゃないの?心ここに在らず、みたいな」

 

「じゃあどこにあるんだよ」

 

「そんなもんあたしが知ってるわけ無いでしょ。自分で探せバカ」

 

 心ここに在らず。

 多分一番一緒にいる時間が長い姉ちゃんだから、言ってることは間違ってないんだろうな。

 

 スマホが鳴った。詩織からラインが来てた。

 

『どうしたの?』

 

 そっか、今昼休みの時間なのか。

 皆学校にいて、俺だけカラオケにいる。

 ちょっと優越感。

 

「人生初のサボり」

 

 送信した。すぐに既読が付く。

 

『心配した私がバカだった』

 

『お姉ちゃんも一緒?』

 

「うん」

 

『卑怯だぞ笑』

 

「お前もサボればいいじゃん笑」

 

『そんな度胸ない笑』

 

 なんか、昨日の夜なんであんな惨めだったかわからなくなってきた。俺って単純。

 スマホが鳴った。今度は織田からだった。

 

『サボり?』

 

 なんでこいついきなり俺がサボってること認定してんの?

 

「お前と一緒にするな」

 

『ごめん』

 

『風邪?』

 

「サボり」

 

『死ね(笑)』

 

 俺が休んだだけでなんでこんなライン送って来るんだ。というかサボっただけで殺されるの?魔女裁判過ぎない?

 ラインが鳴った。今度はコバかよ。

 

『風邪か?来週来た時にノート見せてやる』

 

 持つべきものは友達だと思いました。なんだ、こいつ良い奴じゃん。ごめん、風邪じゃなくてサボりなんだよね。

 

「サンキュ。別に風邪とかじゃないから大丈夫」

 

『そか。お大事に』

 

 なんかお辞儀してるスタンプが送られてきた。

 なんか優越感。

 

「ワールドイズマインでも歌うか」

 

「あんたがそれ歌うの普通にキモイんだけど」

 

 傷付いた。優越感とか無かった。





これで書き溜めていた分全部消費したので、少し更新ペースは落ちます。でもこれだけ伸びると思ってなかったので頑張りたい。

宜しければ今後ともお付き合いください。
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