幻想郷野球録   作:地雷一等兵

7 / 10

パワプロで東方キャラを再現してて、東方キャラで野球、そんな二次創作を書きたいなーと思い至って書きました。

では本編をどうぞ↓


本編 第1節
第1イニング


 

 

夜の幻想郷、完全に日が落ちきった夜の空間の中にある大きな人工の明かり。

大きく描かれたダイヤモンドと緑の映える芝、そんなグラウンドの中心に紅魔館の主、レミリア・スカーレットは立っていた。

いつものナイトキャップは野球帽に、いつものドレスから野球のユニフォームに着替えた彼女は周りよりも一回り高いマウンドの上で打席に立つ蓬莱山輝夜を睨み付けている。

一方でそんな鋭い眼光に晒されている輝夜は普段と変わらない不敵な笑みを浮かべてバットを構える。

 

最終回の裏、ツーアウトで、ランナーはセカンドに3番の上白沢慧音。

1打で同点、ホームランが出ればサヨナラ勝ちの場面だ。

緊張の糸が張り積めるこの状況でレミリアの恋女房であるキャッチャーの紅美鈴はミットを叩いて鳴らし、マウンド上のレミリアへと笑いかける。

 

「大丈夫ですよ、お嬢様、いつも通りなら大ジョーブですっ!」

 

ニカっと爽やかに歯を見せて笑う美鈴にレミリアは優しい笑みを浮かべてプレートにセットする。

もはやランナーなど見えていない、眼中にないと言わんばかりにレミリアはゆっくりと腕を掲げその小さな体を目一杯使って投球モーションに入る。

一対一の真剣勝負というレミリアの意思を感じ取った輝夜はニコリと笑い、バットをキツく握り締めた。

 

(さぁ輝夜…、打てるものなら打ってみなさい!)

 

(面白いわね。なら、打ち砕かせてもらうわ…!)

 

マウンドと打席の二人はお互い笑みを浮かべている。それは普段浮かべるような柔和なものではなく、好戦的な獣のそれだ。

レミリアは幼く見える小さな体を、そのバネを全て限界まで使う。ギリギリとムチのように腕をしならせて放たれた豪速球。

それは美鈴の構えるミットへと吸い込まれるように飛んでいく。

豪と音を立ててミットへと放たれたボールに輝夜は躊躇いなく踏み込んでバットを叩きつける。

カッという耳に心地の良い音が響いたかと思えば、その次の瞬間にはスパンッという乾いた音が球場に響き渡った。

 

「ストライーッ!」

 

レミリアの放ったストレートは輝夜のバットを掠め軌道をほぼ変えることなく美鈴のミットに納まった。

 

(ここに来てまだ球威が上がるのね…、ますます面白いわ。)

 

(打たせない。打たせるものか!)

 

輝夜は1度打席を外し、バットのヘッドでスパイク裏の土を落とす。そうして頭の中を切り替えてからもう1度打席に立ちバットを構えた。

飄々とした態度を崩さない輝夜をレミリアは変わらず見続けて手の中のボールを弄る。

そして大きく息を吐き出してからまた投球モーションに移った。

セカンドランナーの慧音も二人の勝負に邪魔をするまいと二塁ベースの上で腕を組んでいる。

 

「ぁぁあああああっ──だぁあッ!!」

 

雄叫びを上げながら小さな体を目一杯に使ったフォームでまたレミリアはボールを投げる。

またもや豪と音を立てながらミットへと突き進むボール、しかしそれはコースの甘い絶好球だった。

 

(ここだッ!)

 

ザッと鋭い踏み込みから繰り出されるコンパクトながらも力強いスイングがレミリアのボールに襲いかかる。

観客の誰もがホームランだと思った瞬間、輝夜のバットは空を切った。

 

「ッ!?」

 

「ストライーッ! ツーッ!!」

 

完全に仕留めたと思った輝夜は手応えのなさと審判の声に慌てて後ろを見る。そこには股下にミットを構え、ボールを体で止めた美鈴の姿があった。

 

(ッ…変化球…?!)

 

驚愕の表情で輝夜はレミリアへと振り向く。するとレミリアはそんな輝夜の顔を見てしてやったりと言った顔になる。

 

「や、ら、れ、た~。」

 

「フフン、バカみたいにストレート1本勝負なんてするわけないでしょ。」

 

したり顔を浮かべながらレミリアは美鈴からボールを受けとる。

輝夜は気を紛らわせるように打席の土を整えてバットを構え直す。そんな彼女にレミリアはボールを突き出した。

 

「……予告ストレートってこと?」

 

「えぇ、その方が面白いでしょ?」

 

怪訝な顔を浮かべる輝夜にレミリアは笑い掛ける。

そんな屈託のない彼女の笑顔をみて輝夜はなるほどと納得したように口の端で笑みを浮かべ、キツくバットを握り締めた。

 

「さぁ行くわよ。」

 

「かかって来なさいな。」

 

ゆったりと振りかぶり、レミリアは投球モーションを開始する。

しなやかで強靭な体、その内側に包まれた強いバネを全て使い大きく踏み込んで、それこそ比喩でもなんでもなく全ての力を十全に使ってレミリアはボールを放つ。

空気を切り裂くようにして放たれたレミリアのストレートは真っ直ぐにど真ん中に構えられた美鈴のミット目掛けて飛ぶ。

 

「ッ───!!」

 

そんなストレートにも気圧されずに輝夜はバットを振る。当てに行くなどというせせこましい真似はしない。それこそがレミリアへの最大の敬意だと考えたからだ。

 

 

 

 

ズパァン──と乾いた、大きな音が球場全体に響き渡る。

その音は輝夜の三振、そして紅魔館の勝利を意味していた。

 

「ストライーッ!バッターアウッ!! ゲームセット!!」

 

審判による試合終了を告げる声、その声にグラウンド上の紅魔館ナインは一斉にマウンドにいるレミリアへと詰め掛けた。

 

「「「せーの、わーしょいっ!」」」

 

レミリアのもとに詰め掛けたナイン達は疲労困憊な彼女の体を寝かせると一斉に上空へと放り投げる。

突然行われた胴上げに慌てふためくレミリアからは先ほどまでの、マウンド上で見せた威厳ある風格は微塵もなくなっていた。

 

 

「………。」

 

「輝夜…。」

 

打席の中で呆然とマウンドを見つめながら立ち尽くす輝夜に二塁ベースから帰って来た慧音が話し掛ける。

慧音に話し掛けられ、やっと我に帰った輝夜はポツリと小さく話し始めた。

 

「負けたのねぇ、私…。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「…これは本当に悔しいわね。……博麗の巫女に負けたとき以来の悔しさだわ…。」

 

そう呟きながらギリリと彼女は右手のバットを握る。そんな悔しがる彼女を見て慧音はふむと息を吐いて輝夜の肩に手を置いた。

 

「なにまだ来年があるさ。それまで特訓して、今度はこっちが勝てば良いだろう?」

 

「……そうね。また妹紅にバッティングピッチャー頼まなきゃね。」

 

輝夜はそう言って慧音に笑い掛けると高々と胴上げされて半べそかいているレミリアの方に駆け寄る。

そんな輝夜の行動につられて、チーム永遠亭のメンバーも、そして観客席でこの試合を見ていた面々も柵を乗り越えてマウンドに集まる紅魔館ナインへと詰め寄った。

 

 

 

 

ここは幻想郷、スペルカードルールの他に、野球が娯楽として普及した世界である。

 

 

 

 

 

 




チーム紹介

チーム紅魔館(通称スカーレットデビルズ)
 
1 二 小悪魔(こあ)
2 遊 十六夜咲夜
3 捕 紅美鈴
4 中 フランドール・スカーレット
5 投 レミリア・スカーレット
6 三 チルノ
7 右 ルーミア
8 左 大妖精
9 一 パチュリー・ノーレッジ
 
魔球とも称される豪速球を持ち味にする先発完投型のエースレミリアを始め、鉄壁の二遊間や豪打の紅美鈴・フランドールのクリーンナップなど、全体的に高い水準で纏まったチーム。
毎年のように優勝争いに絡んでくる。


チーム永遠亭(通称ムーンラビッツ)
 
1 二 因幡てゐ
2 遊 鈴仙・優曇華院・イナバ
3 三 上白沢慧音
4 一 蓬莱山輝夜
5 中 藤原妹紅
6 左 レイセン
7 右 青蘭
8 捕 鈴瑚
9 投 八意永琳
 
高確率でビックイニングを作り出す上位打線と6番レイセンから始まる小技と大技を組み合わせた下位打線による乱打戦のぶつかり合いで試合をぐちゃぐちゃにして勝ちを拾うチーム。
先発八意から妹紅への継投策を活かして相手を押さえるのも特色の1つ。


ではまた次回にお会いしましょうノシ
あと感想などありましたらよろしくお願いします。

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