ベル・ザ・グレート・バーバリアン   作:ドカちゃん

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ダンジョンの首狩り人

口腔から腐食性の毒液を滴らせた醜悪なる毒虫の群れ、群れ、群れ、群れ、群れ、群れ。

クラークは、この未知なる芋虫状のモンスターの大群を前に、歓喜半分、恐怖半分の状態で、興奮気味に逃げ回っていた。

 

 

 

ロキ・ファミリアの遠征に参加し、まさか新種のモンスターに遭遇するとはっ。

 

 

 

これならば、命を危険に晒した甲斐があるというもの。

 

だが、命を落とすまでの価値はないだろうなと、クラークは心中で呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ・ファミリアは、流石の精鋭揃いとあってか、一糸乱れることなく隊列を組み、毒虫を退治していった。

 

遠距離から魔法と矢で仕留めつつ、撃ち漏らして、キャンプに潜り込んできた毒虫は、槍などの長物で始末する。

だが、毒虫の数は余りにも多く、その数の力で、徐々にではあるが、冒険者達は押されているようだった。

 

「隊列を崩すでないぞっ」

 

 

大顎をキチキチと鳴らす、忌まわしい毒虫の脳天を槍で突き刺しながら、ガレスが号令を発する。

 

天井を覆い、ウゾウゾと蠢く芋虫の大群が、ボタボタと音を立て、蛆虫のごとく落ちてくる。

──まるで悪夢だ。

 

メンバーの中には、毒液を浴びせられてのたうち回る者、肩や背中を噛み付かれ、貪り食われそうになる者も出てきている。

 

なんとか、この状況を打破しなければならない。

 

ガレスはなんとか、フィン達へと伝令を走らせる方法を模索した。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、目に付く芋虫達を全て潰し終えたベルは、残りの魔物はいないか、探し回っていた。

 

そこで、ふと、遠くの方で何かが見えた。

 

芋虫の下半身と、人間の上半身を持った魔物だ。

 

 

「なるほど。奴が芋虫の親玉だな」

 

 

ベルは大地に散乱した毒液を使って、岩盤を加工し始めた。

岩盤の横面を腐食液で溶かし、岩肌で鋭く研いでいく。

 

そして巨大な石槍を作ると、ベルはその石槍を担ぎ、狂気じみた疾走を見せたのだ。

 

巨大芋虫の親玉目掛け、一直線に駆けるキンメリアのベル。

 

あれほどの大きさならば、魔石もさぞかし立派であろうと考えての行動だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズは、芋虫の女王というべき存在と相対した。

細身の剣を構え、間合いを取りながら、相手の出方をうかがう。

 

と、その刹那、竜巻の如く、激しい砂煙を上げながら、何かがこちらへ向かって突進してくるではないかっ。

 

 

 

その正体は、巨大な石槍を背負った屈強な肉体を持つ蛮人だった。

蛮人はあらん限りの声で叫んだ。

 

 

 

 

「死ぬがよいっッ!」

 

ドスッ

 

鈍い音が響いた。

 

 

石槍で女王芋虫の腹部を鋭く貫き通し、その五臓六腑をことごとくを撒き散らさせるベル。

 

 

 

 

ロキ・ファミリアの冒険者達が唖然とする中、引き抜いた石槍で、ベルが女王芋虫の頭部を叩き落とす。

ベルに一矢報いるが如く炸裂し、毒液を飛ばす女王芋虫の亡骸。

 

だが、少々の毒液を被っても、キンメリアのベルは平然としていた。

 

 

 

「やはり、この手に限るな」

 

 

口も鼻もない、女王芋虫の無貌の生首。

 

転がった女王芋虫の生首を引っ掴むと、ベルは次にカドモスの待つ泉へと向かおうとした。

 

だが、泉へと赴こうとする、ベルを何者かが呼び止めた。

 

 

「待ってっ」

 

後ろを振り返るベル。

 

「ん、お前はあの時の女ではないか?」

 

 

ベルは未だにアイズの名前を、知らずにいたのである。

 

「その首、どうするの?」

アイズが、女王芋虫の首を指さす。

 

「知れたこと。干し首にし、ヘスティアに捧げるのだ」

 

 

「干し首……」

 

「そうだ、干し首だ。なんだ、欲しいのか。ヘスティアが構わんなら譲ってやっても良いが」

 

「……いらない」

 

「そうか」

その時、冒険者たちの間から顔を突き出したクラークが叫んだ。

 

「ああ、ベルさんではないですかっ、お久しぶりですっ」

 

 

 

 

途端にロキ・ファミリアのメンバーがざわつき始める。

 

 

 

「あれがキンメリアのベル……」

「荒野の蛮人……」

 

「バベルの屠殺者……」

 

「血に飢えたケダモノ……」

 

ベルは何者も映さぬ、紅水晶のような冷たい瞳で、ロキ・ファミリアを見やった。

 

 

 

 

 

 

 

 

上質な葡萄で造られた火酒で、ベルは英気を養うと、炙った干し肉に食いついた。

 

「あなたは強い。何故そこまで強いの?」

 

アイズが真っ直ぐな視線をベルに投げかける。

 

「逆に聞くが、竜や虎がなぜ強いのか問われて、答えられると思うか」

 

 

顎を濡らした火酒を手で拭い、ベルがアイズを見やりながら、言葉を重ねる。

 

 

 

「竜や虎が強いのは、生まれた時から強いからだ」

 

 

「じゃあ、貴方は生まれた時から強かった?」

 

 

 

アイズの言葉に、ニヤリと笑うベル。

「そういうことだ。鋼と大地の神であるクロムは、人が生まれた時に敵を殺す意思と力を与える。

そしてこの俺は、クロムからその意思と力を吹き込まれて生まれた」

 

 

 

「へ、お前はヘスティア・ファミリアの眷属だろうがっ」

 

横槍を挟んでくるベート、だが、ベルはベートを鼻で笑ってあしらった。

「……クソ、一々気に入らねえ奴だな」

 

 

「お前、この女に惚れているな」

 

ベルがベートの図星を突いてやる。

途端にファミリアメンバーの笑い声が湧き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誤チェストにごわす。こりゃ、目当ての魔物じゃなか」

 

「またにごわすか」

 

「チェストする前に魔物の確認するは女々か?」

 

「名案にごつ」

 

「それよりもキンメリアのベルどんが、また手柄を立てたそうでごわんぞ」

「ベルどんは、オラリオ一のぼっけもんでごわす」

 

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