茜色に染まる沼津の空と海をフルスクリーンで映し出す車窓。陽光に照らされ四人の影だけが流れてゆくこの静かな車両に響くのは、ガタゴト揺れる電車の音と一息の溜め息だけ。
普段地元の海に馴れ親しんでいるはずの俺も、この美しい景色には思わず溜め息を漏らしてしまう。
……この溜め息が景色に心を奪われたが故の感嘆の溜め息なのか、もしくはこの重苦しい空気に耐え兼ね吐き出されてしまった息なのか、我が事ながら定かではないけれど。
舐めていた。
それが、今日という日に彼女らに強く抱かされた感情。俺も、そしてこいつらも。
スクールアイドルなど、所詮はたかが高校生のごっこ遊びだと思っていた。それは雪ノ下の言葉でもあるし、俺も心の底ではそう思っていたのだろう。
──しかしなんだかんだ言って、このメンバーならば……、こいつらならば……、意外と簡単にトップまで登り詰められるのではないだろうか?
雪ノ下と由比ヶ浜が一色に落とされたあの瞬間、何気なく頭に浮かんだそんな楽観的な思考。これこそが、俺がスクールアイドルというものを舐めていた決定的な証明。
去年の文化祭で見た雪ノ下達のあのステージ。あれを見た俺は、なんの根拠もなしにどこか楽観視していた。突然の事態にも関わらず、臆せずあれだけの凄いステージが出来た二人に一色も加わるのだ。こいつらなら、スクールアイドルくらい余裕でやれちゃうんじゃない? なんて。
しかし実際に目の当たりにしたスクールアイドルのパフォーマンスは、なんというか……あのような急造で突貫工事な、学芸会に毛が生えたレベルのモノとは言葉通りレベルが違っていた。よく知りもしない癖に、ただのイメージだけで「こいつらなら意外と簡単にトップまで登り詰められるのではないだろうか?」などという結論を簡単に出してしまっていた自分が酷く気持ち悪い。
高海が語ったスクールアイドルへの想い。Aqoursが魅せた数々のパフォーマンス。そのどれもこれもが、スクールアイドルというものに対して俺達の考えが甘過ぎたのだという事実を如実に教えてくれた。
彼女のスクールアイドルへの想いも彼女達のパフォーマンスも、決してたかが高校生のただの遊びの範疇ではなかったのだから。
もちろん芸能を食い扶持としているプロの芸とはどこか違っていた。洗練されている部分もあれば、まだまだ荒削りな部分もある。そういった完璧ではない未完成感、そして真っ直ぐな一生懸命さが、逆に人を惹き付ける何かを持っていたのかもしれないが。
とにかく、彼女達の中にはアマチュアだからとか、まだ学生のお遊びだからなどという甘えは無かった。ただ真摯にひた向きにステージに向き合っていたあの姿は、間違いなくれっきとしたエンターテイナーのそれだったのだ。
それに初めて気が付いたのは、ドナドナよろしく仲良く連行された屋上でのダンスレッスン。思っていたよりずっとキレキレでずっと格好良くて、そしてずっと真剣だった。
それでも彼女達が見せるダンスを素直に感心していた俺達ではあるが、一色だけは一人浮かない顔をしていたっけ。言葉には出さなかったが、あの時の表情はその心情を雄弁に語っていた。え……? こんなに凄いの? こんなにガチなの? ……と。
その後のランニングにも驚かされた。というか、まさかスクールアイドル活動で走り込みまでするとか全然思ってなかったし。このまま斧で木を切り倒したり素手で崖を登りはじめちゃったりするのかと思っちゃったまである。
スクールアイドルなんて、容姿に優れてる女子高生がちょっと歌えてちょっと踊れればそれなりに人気になっちゃうでしょ? なんて高を括っていたのも今は昔。もともと運動神経や体力が特別優れているわけではない平凡な男子とはいえ、男の俺でも途中でバテそうになってしまったのだから、普段運動などしていない由比ヶ浜や一色が付いていけるわけがない。雪ノ下に至っては…………うん、もうちょっと頑張りましょう。
そしてそこで聞かされた高海の想い。俺の口からこの言葉を発するのは些かはばかられるが、高海のスクールアイドルへの想いは間違いなく本物だった。
本物の定義など人さまざま。十人十色千差万別、とても不確定でとても曖昧模糊な言葉ではあるけれど、高海の中での本物は、間違いなくスクールアイドルだと定義してしまってもよいだろう。
そんな数々の思い違いの末に目撃したAqoursのステージ。
一言で言うなら圧巻。初めて生で観たスクールアイドルのステージは、まさに圧巻だった。
もちろん事前にPV等で彼女達のステージは復習しておいた。どんな歌を、どんなダンスをするのかくらいは先に知っておこうと。
しかし、スマホやPCの小さな画面で観るのと、目の前の生きたステージを鑑賞するのとではまるで次元が違ったのだ。音も、声も、迫力も、演者達から溢れ出す情熱も。
たった四人の観客でこれなのだ。これに数百人数千人の歓声と人いきれが加わったとしたら、現状でさえ心奪われてしまった俺達は一体どうなってしまう事だろう。
そんな昂揚感のなか終幕を迎えたあの瞬間……、俺は、俺達は、一発でAqoursのファンになってしまった。Aqoursに心臓を鷲掴みにされてしまった。
それなのに……、それでもゼロ。
……もちろんAqoursがそのイベントで好成績を納められなかった事は知っていた。ラブライブのサイトには、入賞者の順位までしか記載されていなかったから。
入賞出来なかったグループが何位だったのか何ポイント獲得したのかも記されていなかったそのイベント。しかし、手前味噌というわけではないが、自分達が教えを請う事になっていたグループにはいくらかの贔屓目が働いてしまっていたのだろう。Aqoursは紙一重で入賞出来なかったに違いない、寸での所で惜しくも入賞を逃しただけに違いない、と。
だって、モニター越しに観た彼女達のパフォーマンスは、他のどのグループとも遜色なく見えたのだから。
しかしそれでも最下位。それでもゼロ。
その事実は、ほんの軽い気持ちでスクールアイドルやってみた☆ 程度の気持ちしかなかった一色と、そんな一色に誘われて軽い気持ちで引き受けてしまった雪ノ下達の心を根元からぽっきり折るには十分だった。
『予備予選も通過出来ない事態になっちゃったら出ても恥かくだけですし』
あの日、一色が口にした言葉。
今にして思えば本当に舐めた話だ。舐めるにもほどがある。それを口にした一色も、それを聞いてなんの疑問も抱かなかった俺達も。
……八千くらい存在するグループの中で予備予選を勝ち上がれるのなんて、いったい何組あるというのか。実はとんでもない話だったのだ。予備予選を通過できるという事は。
……そんなことも分からない程度の簡単な気持ちで手を出していい世界ではなかった。舐めていた三人がそんな現実を目の当たりにしてしまえば、心が折れるのも当然の結果だろう。
中でも一色の落ち込みようはなかなかに激しいようで、いつも憎まれ口ばかり叩いてケラケラ笑っている小憎たらしくて可愛くない後輩が、今は見る影もないほど意気消沈していた。小旅行気分で意気揚々と乗り込んできた往路がまるで遠い昔の出来事であったかのように、星の浦女学院をあとにしてからは、あれだけ楽しみにしていた観光やら海遊びには一切見向きもせず、そのまま復路についたほどであった。
……まぁ、静かだしゆっくり出来るし、なによりも観光とかしないで早く帰れるし、これはこれでいいかと思わなくなくもなくもない。
しかし、静かでゆっくり出来ると心安らぐは同義ではない。いくら静かでゆっくり出来たからといっても、それが居心地の悪いものであれば心は安らぐどころかモヤモヤするばかり。
……まぁ、なんていうの? 一応可愛い後輩でもあるわけだし、そんな唯一の後輩にいつまでもしょげている姿を見せ付けられていても、あんまり面白くないじゃないですかー? いつまでもこれじゃ辛気臭くてめんどくさいし、こいつの肩の荷を下ろしてやりたいと思ってしまうのも自然の摂理というもの。
だからこれから俺がするのは、別に一色の凹みっぷりを心配しているわけではなく、このモヤモヤを晴らしたいという自分本位の行動だ。あ、あんたの事なんて心配してないんだからねッ!
どうせ軽い気持ちで始めたスクールアイドル話だ。軽い気持ちならば、辞める決意をするのもまた軽い。
凄かったな。でも結構大変そうだし、お前らにはちょっと向かないんじゃねぇの? とでも言ってやれば、こいつが背負い込んでしまった肩の荷も下りようというもの。
だって、今こいつの肩にのしかかっている重い重い荷の正体は──
「……あー、なんだ。……なぁ、一色」
「……うっさいです。先輩がなに言おうとしてるのかが見え見え過ぎてガチでムカつくんですけど」
「さ、さーせん」
おうふっ! 超怒られちゃった!
肘起きに肘をつき、唇をツンととんがらせたまま流れゆく海をただぼーっと見つめていただけの一色さん。そんな彼女に意を決して恐る恐る声を掛けたというのに、あまりの不機嫌さに敢えなく撃沈してしまいました。その無惨な姿、戦場に到着する事なく沈没した戦艦大和の如し。
「……解ってます。はっきり言って舐めてました。スクールアイドルがあんなに凄いなんて、ホント計算外ですよ」
「……」
──一色の肩の荷。それは、スクールアイドルを舐めていた事により、軽い気持ちで誘ってしまった由比ヶ浜と雪ノ下への申し訳なさ。
確かに一番衝撃を受けていたのは彼女ではあるが、一色の目にも間違いなく映った事だろう。自分と同じように、見るからに雪ノ下と由比ヶ浜の表情も陰っていったのを。本物のスクールアイドルの現実を知ってしまった故の不安なのか竦みなのか、なんにせよ二人も確実にスクールアイドルをやる事に及び腰になっている。
しかし言い出しっぺ故、自分から言い出せずにいたのだ。いざ実物を見たら無理そうだったんで、結成するの辞めときます? なんて無責任な言葉を、我が儘に巻き込んでしまった大事な姉貴分であり、大好きな友達の二人に向けて口にするのを。
まぁ一色がここまで凹んでいるのは、その重荷とはまた別の負の感情があるからなのだが。しかしその感情は俺がどうこう出来るものではなく、一色自身が向き合わなくてはならないもの。
だからせめて、一応先輩として荷物だけでも下ろしやすくさせてやろうと思ったのだ。おちゃらけた空気を醸し出して「やめとけば? あんなもん、見てるくらいが丁度いいだろ」とでも言ってやれば、もともと軽い気持ちだった一色も「ですよねー、てへ☆」と、荷を下ろしやすくなるだろうと。
でもそんな浅い思惑はあえなく撃沈。イライラしている女の子からすれば俺などに慰められるのは、一色の言葉を借りるのならばさぞやガチでムカつくのだろう。
……んー、これはどうしたもんかにゃー?
「……なんちゅーかさ、スゴかったよね、Aqoursのみんな。なんか、ちょー格好よくてちょー歌うまくて……、とにかく、なんかスゴかった」
「そうね」
しかし、後輩の凹み具合を心配していたのはどうやら俺だけではなかったようで、ずっと押し黙っていた一色がようやく口を開いたのを好機と捉えたらしい由比ヶ浜と雪ノ下が、可愛い後輩を思いやるかのように自身の気持ちを吐露しはじめるのだ。……あなたばかりが気に病む必要はない。舐めていたのはあなただけではなく私達もだよ? と。
そして俺には決して出来ない事も。俺には触れられない一色の負の感情にさえも優しく踏み込むのだ、頼りになるこいつらは。
「……いろはちゃんだけじゃないよ。あたしだって甘くみてたよ? 恥ずかしいのは、いろはちゃんだけじゃない」
「……私も、スクールアイドルというものを軽く見ていたことは否めないわ。今ではなにも知らない癖に素人のごっこ遊びなどと言ってしまった自分を恥じているもの」
恥ずかしいのは一色だけじゃない、か。
一色の表情の陰り。それはAqoursというスクールアイドルを見て目を輝かす度、反比例するように色濃くなっていった。
ダンスが終わったあともランニングでバテたあとも暗そうにはしていたが、ステージを見たあとの一色の陰りは、それはもう痛々しい程だった。
一色がずっと抱いていた負の感情、あの時の一色の痛々しいまでの暗さは、Aqoursに対する悔しさ。──いや、違う。あれは悔しさなどではない。
悔しいという感情は、嫉妬の念をぶつける相手に負けない努力をしたと自負出来る者のみが言葉にしていい感情。なんの努力もしていない人間が努力している人間に悔しさを抱くなど烏滸がましいにもほどにある。まだなにもしていない……なんの努力もしていない一色のあの表情を、悔しいという言葉で片付けてはいけないのだ。
余談であるが、生まれてこのかた特に努力もせずぐうたらに生きてきた俺は、誰に対しても悔しいという感情を持ったことがない。誰にも悔しさを味わわされた事のない俺は、逆説的に敗北知らずの絶対的勝利者といえる。やだ! 俺ってば絶対無敵じゃね? 負けを知りたい。
そして一色いろはという人間は決して馬鹿ではない。むしろ聡い女の子だ。あの時の自身の感情を悔しいで片付けてしまってはいけない事など疾うに理解していることだろう。
あれは言うなれば羞恥。自らを恥じる羞恥心。なにも知らないのに、イメージだけで軽く見ていた自分への羞恥。そして彼女達の一生懸命さと凄さを目の当たりにしてしまった時、自分の無力さと小ささを知ってしまった羞恥。
この後輩は、自らが招いてしまった過ちをずっと恥じていたのだ。わたし達なら余裕! と周りに吹聴すればするほど、いざ負けが確定してしまった時ほど気まずいことはないのだから。ダサいと、格好悪いと蔑まれてしまいそうで。
だからこいつはずっと凹んでいたのだ。これからどうすればいいのか解らずに。どう言えば雪ノ下達にこれ以上格好悪い自分を見せずに済ませられるのかが解らずに。
しかし優しい先輩達には、可愛い後輩の重荷などまるっとお見通しだったようだ。だからこいつらは優しく踏み込んだ。恥ずかしいのは自分達もなんだよ、と。あなただけじゃないんだよ、と。
「……うー、雪乃せんぱーい、結衣せんぱーい、わたし超ハズいですよー……! もう! なんですかあれ! あんなの聞いてないですよ! わたし予備予選も通過できなかったら恥かくだけとか大見得きっちゃったじゃないですかー! あー、もう、ばっかじゃないのわたし!」
あまりにも重い荷物をやっと下ろす事ができた後輩は、ようやく溜りに溜まった気持ちを吐き出す事ができたらしい。うわーんと、凄い勢いで二人の先輩に抱きつきながら。
うむ。ゆるゆりゆるゆりよきかなよきかな。しかしこの中において八幡くんの疎外感の半端なさよ……
──確かに一色にとってのこいつらは大事な姉貴分で大事な友達だ。しかし、いつの間にかこいつらにとっても一色は大事な妹分でもあり大好きな友達になっていたのだ。一色が彼女らを気遣うように、彼女らもまた一色を気遣う。なんとも微笑ましくなる光景に、思わず口元を緩めそうになってしまった。
端から見るとゆるゆりシーンを覗き見してニヤけてる変態感が凄くてヤバい。
そして、一度負の感情を吐き出せてしまえば、それからは今まで言いたくてもなかなか言い出しづらかった気持ちを口にするのも容易になるというもの。
本当はずっと素直に感想を言い合いたかったのだろう三人の口は、まるで錆付いていた歯車に良質の潤滑油でも差したかのように、見る見る内に軽く滑らかに回ってゆくのだった。
「それにしてもAqoursのライブ、マジでヤバくなかったですかー? わたし、実はライブ中とかめっちゃ鳥肌立っちゃっててー」
「わかるー! あたしも鳥肌超スゴかったし!」
「ふふ、奇遇ね、私もよ。それに、トレーニングとはまた違ったあのダンスの迫力。あれだけのパフォーマンスをこなす以上、確かにかなりの体力が必要になるはずよね」
「ですよねー。あそこまでになるにはいつもあんな特訓しなきゃならないとか、普通に無理くないですかー?」
「クッ……、そうね。悔しいけれど、体力だけは彼女達に勝てる気がしないわ」
「それとあれあれ!」
「あー、ですです。あれはマジで──」
「あの時は本当に私も──」
おーおー、これはまた随分と溜まりまくっていたようですねぇ。なにがそんなに楽しいんだか男の俺にはよく分からないけれど、本当に女子って友達とのお喋りが大好きだよね。
あ、俺の場合男だからじゃなくて友達居ないから分からないんだったわ(白目)
こうして、女三人寄ると姦しいという言葉通り、この三人が開催するAqoursの、スクールアイドルの感想会は、どこまでも花を咲かせていくのだった。
そして先ほど『悔しいという言葉は』などと偉そうに解説していた俺ではありますが、ゆきのんに関しては何事に対しても努力して敵を叩き潰す事を生業としている大の負けず嫌いさんなので、好きなだけ悔しがってくれて構いませんから!
× × ×
「……千歌ちゃんさぁ、自分は普通だって、自分は輝けてないって、なにが自分達の輝きなのか分からないって言ってたじゃん? でもさ、そんなこと全然なかったよね」
それからも、いつ散り始めるのかもわからない満開の花がしばらく咲き続けたわけだが、由比ヶ浜が不意に発したこの言葉によって、三人の声も表情も、とても姦しいとは言えないような穏やかな物へと変化していった。
「ええ、私の目には、とても輝いていたように見えたわ」
「ですよねー……」
最初は一色を気遣うよう苦笑混じりに話し始めた由比ヶ浜と雪ノ下。そこへようやく素直に認める事が出来るようになった一色も加わり、華やかに花咲いていった女の子達だけの姦しい女子会。
っべー、思わず女の子達だけの女子会とか言っちゃったけど、俺の記憶が確かならこの場には男子が一人居なかったっけ?
ねぇ男子ー! 真面目に仕事しなよー!
そんな姦しくもどこか安らぐ彼女達の騒がしい女子会も、どうやら終幕の刻を迎える時間らしい。
由比ヶ浜の発言により、騒がしかった彼女達の盛り上がりは静けさを迎え入れた。Aqoursの練習を、語りを、ライブを脳裏に思い浮かべながら。
「だよね、なんでそんなこと言うのかわかんないくらい輝いてたよね、千歌ちゃんもみんなも」
「そうね。本当に……」
「もうホント眩しいくらいでした。ああ、これがスクールアイドルなんだーって思っちゃいましたもん。すっごい素敵でしたよね……。なんでアレで輝けてないとか思うんだろ……」
と不思議そうに続ける一色の言葉に、ここまで黙りを決め込んで楽しそうな女子会をただじっと見つめていただけの俺が(完全に変態)、つい会話に混ざりにいってしまうのも無理からぬこと。
だってそれは、高海の独白を聞いている時からずっと感じていたことだから。
「……輝いている事に気付いてないのは自分達ばかり、って事なのかもな」
輝きで闇夜を彩る蛍は、生命の営みの為に我こそはと力強く輝きを放ち続ける。しかし周りのたくさんの輝きに埋もれてしまい、自分がどれほどの輝きを放っているのかわからないだろう。
高海達はそれと同じ。周りから見たら、自分達がどれほど輝いて見えているのかがわからないだけなのだ。
「……そうね。そうかもしれないわね」
「おう。だがいつかスクールアイドルにかける真剣さとかひた向きさとか想いの強さとか、あいつらのどれもこれもひとつひとつが輝いていたんだとわかる日もくんだろ。なにせあんだけ輝いてんだから」
それがいつの日になるかはわからないけれど、しかしあいつらなら必ず気付くだろう。あれだけ眩しいくらい光ってたら、たくさんの光の中のたった一匹の蛍にだって、自分の光の強さに気付けるはずだから。
「え、なんすかね……」
しかし未だ自分達の輝きに気付かないAqoursの連中と違い、俺は早くもそこで気付いたのだ。今の自分がどれほど輝いているのかを。……こいつらの、とびきり痛い視線によって……
「せ、せんぱい、なに急にクサイこと言っちゃってんですか……。き、聞いてるこっちが恥ずかしいんですけど」
「ヒ、ヒッキーどうしちゃったの!? なんかいいこと言っちゃってるし……!」
「だ、大丈夫比企谷くん? 昔の病が再発しかかっているのかしら」
「あ」
やだ! 俺ってばこいつらとAqoursの熱にほだされて、余りにもらしくないこと口走っちゃった! ちょっと? 君ら引きすぎだよ?
なにが「どれもこれもひとつひとつが輝いていたんだとわかる日もくんだろ」だよバカじゃねぇの? なに熱く語っちゃってんの? なにキラキラ輝いちゃってんの? ふぇぇ……は、恥ずかしいよぅ!
……今夜は久し振りに毛布先輩のお世話になる事が決定しました。
あと雪ノ下、昔の病ってなんだよ。現在の材木座と同じ病気ですねわかります。そういやAqoursにも現在進行形で重い病に犯されてる子いたよね。厨二患ってるスクールアイドルって大丈夫なのん? 奥が深いぜラブライブ界。
善子ちゃんと材木座のカラミとか、想像しただけで変な汗が出てきそうだね!
× × ×
なんだかとても嫌〜な視線をひしひし感じながらも、電車は一路、愛する千葉へとひた走る。早く帰りたい。
まさかたった一日の小旅行でここまで故郷が恋しくなるとはね。さすがは千葉。もう二度と千葉から出ないんだからね!
あまりにも居心地が悪く、そっぽを向きつつげほんごほんと喉を鳴らしても、にまにまっとした六つの生暖かい視線からは逃れられそうにもない。
やめてよぅ……そろそろ八幡死んでまうよぅ……!
……おのれいろはす! 心優しき先輩が心配してやってたというのに、なんでお前が一番ニヤニヤしてんだよ。先輩、柄にもなくAqoursのみなさんに影響されて熱くなっちゃったんですかねー? なんか無駄に可愛……キモくてちょーウケますよねー、とか二人にこしょこしょ耳打ちしてんの丸聞こえだからね? ぜ、全然影響なんてされてないから! そんなに簡単な男の子じゃないんだからね!
あと言い直した無駄にカワってなんだよ。無駄に皮が余ってるとかそういう下ネタハラスメントですかね。言っておくが俺は皮被り(自主規制)
しかしまぁ、この俺が自らを犠牲にしてまで空気を和ませてあげたのだと考えたら、こんな恥辱など安いものである。なんという心の広さか。どうですかみなさん、この見事な道化っぷりを楽しんでいただけましたか? (白目)
ピエロは笑われてナンボの商売なんですよ!
しかしいくら笑い者になるのが慣れているとはいえ、さすがにこのままでは俺の身が保たないのもまた事実。
「……あー、なんだ、一色」
だから俺は全力で話をすり替える。ここまで機嫌が直ったのならもう大丈夫だろうと、先ほど怒られてしまった話題をぶり返して、全力でこの居心地の悪い空気をすり替えてやるのだ。
まだ耳は赤いかもしれないけれど、なんか背中とかぐっしょりしてるかもしれないけれど、それでも心の広い大人な俺は、か弱きリトルデーモンを責めたりせずに全速前進ヨーソローでこの空気をぶっ壊してやるぜ。やっぱり影響されまくってるじゃねーか。
「なんですかー? 今度はどんな熱クサい名言が待ってるんですかねー」
「おいテメー、マジぶっ殺すぞ」
みなさんこんにちは。心の超狭いクソガキなどうも俺です。
「げふんげふん。……で? 結局どうすんだよスクールアイドル。こうして現実知って調子に乗ってたもんが見事に打ちのめされて惨めに敗走してきたわけだし、ここは思い切ってやめとくか?」
「うわぁ、言い方がクズ人間のソレですね……」
ふはははは! 本当はもう少しソフトに言ってやるつもりだったのだが気が変わった。仕返しに全力で傷口を抉って塩を塗り付けたったぜ。いつまでも人を小馬鹿にするお前が悪い。俺は悪くない。
みなさんこんにちは。心の超狭いクソガキな以下略。
勇者の会心の一撃(現実→腐った死体の痛恨の一撃)により大ダメージを受けた一色は、しらっと冷めた視線で俺を上目遣いで見下す。上目なのに見下すとはこれいかに。
どちらかというと大ダメージを受けているのは勇者(腐った死体)側の模様です。
「……ほんっと、素直じゃないですよねー」
しかしすぐさまふっと表情を和らげた一色は、誰にも聞こえないくらい小さな声で、ぽしょりとそう呟くのだった。生憎、並みの人間よりも何割り増しに耳聡い俺の高性能な鼓膜は揺らしてしまったのだけれど。
ばっか、俺とか超素直なんですが? 素直すぎるから人の輪に入れずぼっち人生を謳歌してきたまである。
「その答えはさっき言いましたよね? うっさい、先輩がなに言おうとしてるのか見え見え過ぎてガチでムカつく、キモッ、って」
「なんかさっきよりも刺が鋭くなってませんかね……」
「そんなことはどうだっていーんです。重要なのはうっさいってトコなんですから。要は余計なお世話だってことです」
「……あー、そうかよ。そりゃ悪うございやしたね」
結局、機嫌が悪かろうと直ろうと、俺がスクールアイドルに関してあれこれ意見するのは気に食わない様子の一色。
まぁ気持ちは解らんでもないが、なんで気に食わないのにそんなに温かい笑顔のまま俺を見つめてるのかがよく解らん。
──すると一色は、彼女の台詞と表情の不一致さを訝しんでいる俺の疑問を解く答え合わせをしてくれるのだ。呆れたように、ぷっと噴き出して。
「冷めてるようで実は結構熱くて優しい先輩のことだから、どうせわたしがスクールアイドルやるのやめようかなとか思ってるんだと思ったんですよね? でも言い出しっぺだからそれを口に出すのを躊躇っている可愛い可愛い後輩の為にも、俺から話を持ちかけて言い出しやすくしてやるか。みたいな? 偉そうにしたり顔で」
「……っ」
……なんだよ。ただ、俺などにあれこれ意見されるのが気に食わないだけなのかと思ってたら、俺の考えとか全部お見通しだったのかよ。
やだ! これじゃまるで捻くれてるけど優しい先輩☆ みたいじゃないですか。くっそ、顔が熱いっつの。
「……偉そうなしたり顔はしてねぇよ。あと全然可愛くないし」
「いやいや、わたしとか超可愛いじゃないですかー? せめてそこくらいは素直になってもいいんですよ?」
「はいはい、可愛い可愛い」
「うっわ超適当ー! ……ま、今はそんな事はどうだっていいんです」
どうだっていいんなら可愛いとか言わすんじゃねぇよ。いくら照れ隠しとはいえ、妹でもない女の子に可愛いとか言うの、適当を装ってても実は超ドッキドキだったんだからね!
「なにが余計なお世話なのかと言うとですね──」
すると一色は、先程まで見せていた呆れ顔でも優しい微笑みでもない、今日浦女に辿り着いてから一度も見せることのなかった笑顔を浮かべて胸を張る。いつもの、とても一色らしい勝ち気で小悪魔な笑顔で。
「先輩がどんなに気を遣おうと、それに意味がないから余計なお世話なんですよ。だってわたし、スクールアイドル結成をやめるつもりなんて更々無いですから。それは、Aqoursと会う前からも、Aqoursと会って打ちのめされて凹んでる最中だってずっと変わりませんでした」
「……そうなの?」
「ですです。てゆーか、先輩方はわたしがAqoursを見てスクールアイドルやるのが嫌になったとか心配してたっぽいですけどー、それ、大きな勘違いですからね? なんなら打ちのめされて逆にヤル気が出ちゃったまである」
「……マジで?」
え? あんだけ凹んでたのに? あんだけ暗かったのに? もしかしていろはすってドMなのん? 攻められるのが大好きなのん? この子すげぇSっぽいんですけど。
「マジです」
SかMかはこの際横に置いておくとして、こくんと力強く頷く後輩の目を見てひしひしと伝わってくる。ただの強がりでもやけくそでもなく、こいつが本気でそう言っているのだと。
「……わたし、確かにAqoursを見て恥ずかしいなって思っちゃいました。恥ずかしくて、最後の方は千歌ちゃん達と碌に顔も合わせられなかったです。……でもですね、確かに恥ずかしかったんですけど、実は恥ずかしいだけじゃなかったんですよ、わたしが凹んでたのって」
「……」
「わたし、羨ましいなって思っちゃったんです。羨ましくて羨ましくて、軽く嫉妬しちゃったんです。千歌ちゃんに。Aqoursに」
「は? 嫉妬?」
……まさかここで一色の口から嫉妬という言葉が出てくるとは思っていなかった。あまりにも予想外すぎて、頭上には疑問符が八万個くらい浮いているのではないだろうか。八幡だけに。
悔しいとか恥ずかしいならまぁわかる。しかし嫉妬とは? こんなに歌えて、こんなに踊れて、こんなに格好良くて羨ましくて?
……確かにそういった気持ちになる事もあるだろう。しかし、Aqoursは今はまだゼロなのだ。まだラブライブのステージにすら届いていないただの新人グループなのだ。
ラブライブのステージに立てて、ラブライブファンからちやほやされているトップグループに嫉妬するならまだわかる。しかしそこにまだ立ててさえいないAqoursに嫉妬という概念を抱くものなのだろうか。
「わたし、本物が欲しいんです」
「あん? ………………なっ!?」
え? こいついきなりなんてこと言い出すの? おうふっ……、今ので雪ノ下と由比ヶ浜が凄い勢いでこっち向いちゃったよ……!
「先輩に言われた本物が欲しいって言葉で、わたしも本物が欲しくなりました。でも、あれ以来ずっとずっと探してるけど、なかなか見つからないんです、わたしの本物。ま、そんなに簡単に見つからないものだから欲しくなっちゃうんでしょうけどね」
おいちょっと待て。なんでそんな真剣な顔で優しく語っちゃってんだよ。それ語弊があるから! あなた、一色さんにもそんなこと言ったの……? ヒッキー……? って顔して鋭くガン見してる二人に気付いて! 違うからね? 今のは血迷って君らに口走っちゃった黒歴史No.1の失言を一色が聞いちゃっただけだからね!?
しかし、部活メイト達からの凍える瞳に真っ青になっている俺のいたいけな心境など露知らず、無情にも自身の胸の内を語り続ける女の子。
もしも許されるのであれば、その艶やかでぷるんとした唇を力ずくで塞いでやりたい。だが、いかんせんそんな事をしてしまったが最後、セクハラですと通報されて静岡県警に引き渡されるのがオチ。悲しいかな俺がこの独白を止める事は適わないのである。
それに──
「……でも、千歌ちゃん達にとってはスクールアイドルが、ラブライブが間違いなく本物だったじゃないですか。手に入るかどうかはわからないですけど、それでもあの人達には間違いなく本物が見えてるんですもん。本物を見つけてるんですもん。……そりゃ、羨ましくなっちゃいますよ」
──それに、自分の胸の内を他人に赤裸々に語るというのは、どれほど勇気がいることだろうか。それこそ、さっきの高海のように。
真剣な後輩がここまで自分を曝け出しているのを、俺には止めることなど出来るはずがない。
だから俺は下手に口を挟まず、彼女の言葉を聞こうと思う。フッ、これが自己犠牲ってやつか(白目)
「……だから、羨ましくなっちゃったから、わたしもこの人達に負けたくないって思っちゃったんです。千歌ちゃんと違って、わたしにとっての本物がスクールアイドルだとは思いません。けど、本物に向かって真っ直ぐ走ってる千歌ちゃん達の熱意ってのを間近で見る事が出来たら、もしかしたらわたしにも見つかるかなー? って。わたしの本物」
「……」
──ああ、そうか。俺はまた一色いろはという少女を見誤っていたのか。
一色と出会った時、俺はこいつとは無理だと感じた。薄っぺらそうで嘘臭くて全てが偽物っぽくて。俺は何も知らないこいつの事を、第一印象だけでそうレッテル付けした。
しかしいざ一色いろはという少女をほんの少し知ってみると、意外と真面目で真っ直ぐで頑張り屋で、本物が欲しいなどという荒唐無稽な戯言に心を動かされるような、意外にも熱い女の子だった。
そして今回もまたやってしまった。軽い気持ちで始めようとしたスクールアイドルだから、気持ちが折られれば簡単にやめると思っていた。恥をかいたから気まずいだけかと思っていた。格好悪い自分を雪ノ下達に見せたくなくて不機嫌になっているだけかと思っていた。
しかしこいつはただ恥ずかしかっただけではなかった。こいつは……一色は羨ましかったのだ。ずっと欲していた本物という物を目の当たりにして、ただ羨ましくてただ眩しくて嫉妬して、暗くしょげてしまうな自分の心にただ真っ直ぐな女の子だったのだ。
人間観察が趣味で、人を見る目に長けていると自負しているつもりになっているどうしようもない俺は、この小憎たらしい後輩にまた教えられてしまったらしい。まだまだだね! と。
そしてこの小憎たらしい後輩は、俺に向けて……俺達に向けてばちこーん☆ ととびきりのウインクをかますのだった。
「だからわたしスクールアイドルやりますから。雪乃先輩と結衣先輩がやらなかったとしても、わたしはやりますよ? 絶対に輝いてやります。てか元々そのつもりでしたしねー。雪乃先輩達に断られても二人でやるつもりでしたからっ」
「いろはちゃんがやるならあたしもやるよ! ……そりゃちょっと楽しそうだなって思ってたけど、でも最初はいろはちゃんにお願いされたから付き合いで参加しようって思ってただけだったの。でもさ、Aqours見てあたしも燃えてきたんだよ? あたしもこんな風にみんなと一緒に全力で楽しみたいなって、輝きたいなって、そう思った。いろはちゃんがやらないんならあたしもやらないけど、いろはちゃんがやるならあたしもやる。一緒に楽しも!」
「私も右に同じという事でいいかしら。あの人達を見て燃えてきたというのも同意見ね。だって、なにもせずにこのまま尻尾を巻いて逃げ出すだけなんて悔しいもの。一度やると言った以上、そんな惨めな敗走は許されないわ。甘い気持ちを捨てた私が本気を出せば、Aqoursなど、ラブライブなどどうという事もないのだと、ステージで一番輝くのは私なのだと証明しなくてはね。……以前からいつまでも体力が無い事を言い訳にしていられないと思っていたの。一色さん? この機会を利用させてもらうわね」
そしてそんな後輩ウインクに応えるように、頼りになる二人の先輩も笑顔で立ち上がる。物理的ではなく、スクールアイドルへの挑戦という意味でのスタンドアップだ。
俺は、スクールアイドルやってみた! と最初に言い出した時とはわけが違う、本気でスクールアイドルをやってみようと決意した三人の不敵で無敵な笑顔を眺めつつ、にやけそうになる口元に必死で力を込める。
──これが、『輝いている事に気付いてないのは自分達ばかり』の法則なのかと思い馳せながら。
「よし! そうと決まったら、早速千歌ちゃんに電話しよっと」
「おい、電車ん中で電話するとかマナー違反もいいとこだろ」
今こいつらは自分で気付いてないだろう。スクールアイドルに向けて本気で立ち上がった自分達が、いかにキラキラと輝いているのかということを。
「は? 先輩はバカなんですかね。マナー違反というのは、周りの人に迷惑をかけるからマナー違反なんじゃないですか。わたし達以外この車両に誰も乗ってないのに、誰に迷惑がかかるっていうんですかー? つまりこれはマナー違反にはあたりません」
「……屁理屈だけは一人前だな。誰に似ちゃったんだよ……ったく。そうまでして急いで電話するとか、高海になに言うつもりなんだか」
そりゃ高海達に比べたら、スクールアイドルに向ける情熱は全然足りない。足りる日が来るのかわからない。高海達にも、ラブライブにも手が届かないかもしれない。
「そんなの決まってるじゃないですかー? ……さっきは凹んじゃって言えなかったんで、いま言うんですよ。…………宣戦布告を!」
……情熱も足りないし届かないかもしれないけれど、でもこれだけは胸を張って言える。今こいつらから溢れ出ている輝きは、決してAqoursにも引けを取っていないほど眩しいのだと。
っべー! またこいつらの熱にほだされて、例の持病が再発しかかっちゃったわー!
……また腹を抱えてケラケラと笑い者にされるのは真っ平だから絶対に口には出さないけれど、……俺には、お前らがとても輝いて見える。
やだ! 八幡クッサ!
──こうして我が総武高校に“本物”のスクールアイドルが誕生することとなった。
もちろん全てがすんなり行く事などあるはずもなく、問題山積七転八倒踏んだり蹴ったり色々あったが、まさかあれだけスクールアイドルを舐めていたこいつらがあそこまでの輝きを放つ存在になれるとは、一体誰が想像出来ただろうか。
そう。総武高校創立以来初のスクールアイドルとなった一色達は、これから数ヶ月の後にちょっとしたプチ奇跡を起こす事となる。この初邂逅以来、たまにこっちから赴いたり向こうから遊びにきたりと、時に相談し、時に学び、時に練習を共にするAqoursと切磋琢磨し成長し合う事となる我が総武高スクールアイドルグループの物語は、ここから次なるステップへと全速前進ヨーソローで強く輝きを増していくのだ。
……でもその近くて遠い未来の輝きの物語は、また別のお話という事で☆
「あ、もしもし千歌ちゃん!? ……あのね、わたし、わたし達さ──」
了
おまけ
「……ところで一色」
「はい? なんですか?」
「危うくさらっと流すとこだったが、お前さっき、雪ノ下達に断られても“二人で”やるつもりだったとか言ってなかったか?」
「……え? ……そ、そんなこと言ってないですけどー……?」
「いやお前なんでいま目ぇ逸らしたの? それ絶対嘘だよね?」
「……」
「……なぁ、雪ノ下と由比ヶ浜無しなのに二人ってどういう事だ。雪ノ下達抜いたらお前一人のはずだろうが」
「……〜♪」
「口笛ヘタか。全然音鳴ってないし唐突すぎだし、むしろ突っ込んで欲しくてわざとやってんだろ。これだけ巻き込んどいて隠し事したままでいられると思ってんのか。おい吐け」
「ぐぬぬ、……チッ、あーもうめんどくさい! はいはい、言いますよ言えばいいんですよね! ……あーあ、だからウザくて知られたくなかったのに。しくったなぁ……。……実はですね、もう一人メンバーが居るんですよ。雪乃先輩達に話通す随分前から決まってたんですー! でも先輩に知られると絶対反対してきて死ぬほどウザそうだからって、全部本決まりになるまで黙っとこうって二人で決めてたんですよ!」
「おいちょっと待て。俺が反対するから二人で決めてたとか、なにそれ嫌な予感しかしないんですが。……え、なに、お、お前、もしかしてもう一人のメンバーって……」
「……………こ、小町ちゃんです☆ てへ」
「おいふざけんな小町にスクールアイドルなんてやらせるわけねぇだろ」
「……うわ、予想以上にめんどくさそうですよこのシスコン……。いいじゃないですか、可愛い妹のアイドル姿が見られるんですよ? 変態……じゃなかった、先輩にとっては超ラッキーじゃないですか」
「おい、俺はシスコンでもなければ変態でもないぞ。ただ世界一妹が可愛いと思ってるだけだ」
「うわぁ……」
「それに俺クラスの妹好きを舐めるなよ? 確かに小町のアイドル姿とか間違いなく可愛いだろうが、会場に沸いてくる野郎共の目にレーザーポインターを当てるのお仕事が忙しくて、ステージの上の小町なんておちおち見てられないから」
「うわぁ……」
「ヒッキー……」
「比企谷くん……」
おしまい
ありがとうございました!これにて無事完結となります(^^)
まぁどう見てもここまでがプロローグで「ここからが本番だろ!これからいろはす達がラブライブ目指して奮闘したりAqoursと遊んだり函館旅行したり善子ちゃんと材木座がサバトするのが本編じゃねぇの!?」とお思いの方も、ほんのわずかながらいらっしゃるかもしれません(苦笑)
とはいえこのお話は元々ここまでを1話完結短編として投稿する予定の作品だったのと、それをやると永遠に終わりそうにもない上確実にエタっちゃう未来しか見えないので(エタっちゃうのかよ)、ここまでで一応の完結ということでよろしくです(^ω^;)
それではありがとうございました!
さ、次はなにを書きましょうかねぇ(´ω`)
※ここからは私の個人的なクロスオーバー感になりますので、興味のない人は読まなくてもだいじょぶです☆
さて、というわけでこれにて初のクロスオーバーも完結と相成ったわけですが、一番最初に申し上げた通り、こんな感じのが私の中での「クロスってこういうもんなんじゃないのかなー?」となります。
クロスって、お互いの作品にお互いのファンが居ますから、どちらかの作品をメインに扱って、クロス先作品から色々なものを奪ったりクロス先作品をヘイトに利用したりどちらか一方のヨイショに使ったりとかしてはいけないと思うんですよねー。(この作品でも俺ガイル側がAqoursを若干持ち上げていましたが、それはあくまでもスクールアイドルに真剣に取り組んでいるスクールアイドルの先輩への敬意という事で、ここからはライバルとして切磋琢磨していく事でしょう)
そのため内容としては八幡の活躍とか一切無い地味で面白みのない作品になってしまいましたが、設定をねじ曲げてまでどちらか一方の主人公Tuee!をやってどちらか一方のファンを嫌な気持ちにさせてしまうくらいなら(その方達が巡り巡って俺ガイルアンチになられたら元も子もないですし)、クロスオーバーには簡単に手を出さない方がよいのではないでしょうか?片方の原作しか知らない読者さんが試しに読んでみて、知らなかった方の原作にも興味を持てたり好意的になれたり出来る作品こそがクロスオーバーという二次創作なのでは?
なんて思ってます。
だって我が身になったら、俺ガイル世界が他の原作主人公に蹂躙されたら嫌な思いしますもん。
あくまでも個人的な趣向ですけどね。
まぁ好き嫌いありますんで、誰しもが知らなかった方の原作に好意的になれるとは限りませんが、少なくとも相手の原作ファンが嫌がるようなことは極力してはいけない気がします。
さすがに男と喋ってるだけで憤慨してしまう程の生粋のラブライバー様にまでは気を遣えませんでしたが(苦笑)
なので出来れば俺ガイルを知らなかった、興味がなかったラブライブファンの方に読んでいただき、どう感じたのかをお聞きしてみたいなぁ…なんて思いながらこの作品を書いていたのですが、残念ながらやはりラブライブファンには需要がないようで…(白目)
でももしもそういう方に読んでいただけて、感想はいただけずとも俺ガイルを好意的な目で見ていただけたならとても幸いです♪