おいでませ北郷亭   作:成宮

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友人からタイトル詐欺と指摘された
そろそろタグを付けなけらばならないと思う今日このごろ


つまり別れは唐突に

 自暴自棄、そんな言葉が今の関羽の様子を見るとしっくりとくる。ヤケになったようにうまいうまいと飯をかき込む姿は、彼女に恋する男性が見たらよほどの猛者でない限りドン引きする光景だろう。幸いなことにここに男性は一人しかおらず、他の女性陣も程度はあれ似たような状況だ。

 『さよなら張飛ちゃん、借金返してね関羽さん』と銘打った宴会を開きどんちゃん騒ぎをしたはいいが、よくよく考えると普段とさほど変わった様子ではない気がひしひしとする。怪我人のくせに騒ぎたい放題である馬岱を筆頭に、てんちょ幸せにしてくれーと叫ぶ徐晃、とりあえずうまいもんくわせろーと喚く張飛、静かに確実にそして大量に皿を平らげていく三国の怪物呂布。追加でもうどーにでもなれーと瞳に涙を浮かべながら笑顔という器用な真似をしている関羽である。

 どうしようもない。

 一人料理を作る機械とかしていた一刀はぼんやりと空を見上げた。日はほぼ沈み、効率的な明かりのないこの世界ではそろそろ料理を作ることがしんどくなってきた。つまりいい加減お開きにして解放されたい。何しろ尋常な量ではないのだ、主に二名のせいで。

 ちなみにこの宴会の出資者は関羽である。借金膨らむ膨らむ、関羽の胸のごとく。

 

「おっと、そろそろ薪がないな」

 

 本来節約してしかるべき資源であるが、外には呂布と張飛のよって大量に作られた薪が文字通り山のように残っている。これを邑にまで売りに行けばそれなりの金額になりそうではあるが、全く気づいていないようなので黙っていようと思う。そもそも邑にそこまでの蓄えがあるかが定かではないが。

 ドンチャン騒ぎをしている皆をよそに、万が一の火事防止用に小屋からある程度離して無造作に置かれている薪をいくつか手に取る。乾燥具合も良く、使いやすい手頃な大きさをのものをいくつか拾っていく。

 

 外からでも聞こえる騒がしい声に、及川とかと一緒にバカ騒ぎしていた頃を思い出す。あの頃のことを思えばこんなことになるなんて誰が予想しただろうか。及川なんかは羨ましがるだろうか、あいつなら喜んでこちらに来ることが容易に想像できて思わず笑ってしまった。

 

 

 それがいけなかったのだろうか。背後でとんと何かが柔らかく落ちた音を聞いても気にも留めなかった。

 慢心していたのだろうか。周りには、徐晃をはじめとする三国きっての英傑。そんな状況で手を出すようなバカはいないだろうという思い込み。

 油断していたのだろうか。既に何度も体験している状況、なんの問題もなく、いつも通り簡単に抜け出せるだろうというあってはならない余裕。

 

 

 首に衝撃。

 

 ゆっくりと斜めに崩れていく視界、止めようにも全く動かない身体。ヤバっと口から発音することもできず、一刀の意識はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 僅かに発せられた殺気に反応したのは二人。

 徐晃と呂布は咄嗟に床に置かれた皿を盾にし、馬岱と張飛を狙った外部からの攻撃を防いだ。突如として響いた音にすぐさま壁の影まで飛び込んだ関羽と張飛もさすがといったところであった。

 

「な、なになにどうしたの?!」

 

 一人状況が理解できていない馬岱は、床に落ちた投げナイフのようなのもを見てすぐさま徐晃の背後に隠れる。

 

「おおっ、助かったのだ」

 

「いい」

 

「すまない、油断していた」

 

 関羽と張飛は互いに背を向け死角を補うと、両手に皿を構えすぐにでも投げつけれるように体勢作った呂布に礼を言う。だが呂布の視線の先は張飛ではなく、刃物の飛んできた先を見据えていた。

 

 僅かな間が空く。

 

 すぐさま第二波が来るかと思われた為に守勢をとったが、襲撃者からのリアクションがない。耐え切れなくなったのか、呂布が飛び出すために足に力を入れた瞬間、まさに狙ったように何かが部屋の中に飛んでくる。

 

「なにっ?!」

 

今度飛んできたものは刃物ではなかった。否むしろ刃物よりも厄介なもの、それは火のついたボールのようなものであった。

 

「くそっ、鈴々すぐに火をってああっ!」

 

 言い切る前に張飛が蛇矛片手に飛び出していた。そして視界にチラリと見えた影を追う。後を追うように呂布も方天画戟を手に無言で飛び出す。

 

「てんちょ!」

 

 張飛たちが飛び出した逆から必死な叫び声、徐晃は既にここにはおらず、裏口の方から外へ出て一刀を探し始めていた。だが叫びは止まらず返事が来ている様子もない。

 

「ちっ、馬岱殿。外は三人に任せ我々は火の始末をするぞ」

 

「・・・そーだね。足でまといはここでおとなしくみんなが帰ってくるのを待つよ」

 

「・・・落ち込まなくていい。あの僅かな殺気に気づいた二人が異常だ」

 

 そういった関羽にもそれなりに悔しさがあった。自分を最強だと自惚れるわけではないが、こうやすやすと目の前に格上が現れると自信をなくしてしまう。精進しなければならない、とこのことをしっかりと受け止める。だが今はひとまずやることをやらなければいけない。

 

「まだ手練の仲間がいるかもしれん。戻ってきたらここがなくなっていたなんてことはないようにしなくてはな」

 

「だね。申し訳ないけど蒲公英は一回休みってことで」

 

「いざという時は任せて。これ以上遅れは取らない」

 

「きゃー格好良い。・・・翠ねーさまだったらけが人の蒲公英でも『立てこらぁ!』とか怒鳴ってくるんだろうなぁ・・・」

 

「・・・お大事にな」

 

「うん、ありがと」

 

 馬岱の言葉に少し同情、そして自分はそうならないようにと戒めに。劉備のもとに帰還した際に『鬼』から『やや鬼』と少しだけ優しくなったような気がする関羽であった。

 

 

 そして少しだけ和やかなムードになっていた中とは裏腹に、外では激しい追いかけっこが行われていた。

 

「くぅ、まてーなのだ!」

 

「・・・」

 

 覆面の主は張飛の叫びを気にもとめず森の中を危なげもなく駆け抜ける。張飛は時折投げられる飛礫を時には躱し、時には弾き、距離を詰めようにも見失わないので精一杯であった。

 

「うぐぐ、せいせいーどーどー戦え、なのだぁ!」

 

「・・・」

 

 張飛の叫びに返事するかのように急所を狙った飛礫が飛来する。こうして追いつきそうで追いつけない鬼ごっこは、張飛がブチ切れるまで続いていく。当の張飛本人は囮を掴まされているのだとは微塵も思うことなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「背後、徐々に距離を詰められています」

 

 深い森の中で勢いを落とさず冷静に周泰は報告した。背後、姿は見えないが恐ろしい気配がまっすぐこちらに向かってくる、それも二つ。離れていても感じるこの圧力に、冷や汗が流れる。正面切ってでは勝てない、だが得意の隠密で逃げに徹すれば、勝てずとも負けない相手ではない。そう自分に言い聞かせることしかできなかった。

 

「ちっ、丁奉に釣られなかったか」

 

 苛立ったように返事をしたのは甘寧。脇に気絶した一刀を抱えつつも周泰と同程度のスピードを保持し続ける。今回の指揮を任されていた甘寧は現状を踏まえ様々なことが脳裏に浮かぶ。

 

 黄巾の乱にて北郷亭の所在が発覚した際に、1番血眼になって捜索していたのは実は周瑜であった。いかに袁術から上手く独立するか、ただ保護したのでは袁術に掠め取られてしまうのは明白。孫呉に忠誠を誓わせ配下にすること、そして袁術にバレぬよう皇帝へ献上しその立場から孫呉を優位な立場へ押し上げさせる。それが周瑜の立てたシナリオだった。そのためには密やかに北郷を保護しなければならない。どこの陣営にも捕まらず脱出できたという情報は幸運であった。即座に情報収集、隠密に優れた『甘寧』『周泰』『丁奉』の三名を派遣、孫策自身はなに食わぬ顔で領地に戻り、あとの命運は三人に託された。

 そしてその作戦の現場指揮をとることになった甘寧の責任は重い。何しろこの一手で孫呉の未来が大きく変わってくるのだから。ゆえにできることならば使いたくなかった手をいくつも使う羽目になった。そして今、自身と周泰にもそれを強いなければならない。

 

 甘寧は手で合図して、大樹の陰に周泰に移動先を指示する。立ち止まると北郷を下ろし、大きく深呼吸した。

 

「あの、思春?こんなところで立ち止まっては・・・」

 

「よく聞け、明命」

 

 心配そうに声をかけてきた周泰を遮り、甘寧は告げる。

 

「今度は私が囮となる。明命、貴様はこの男を抱えて逃げろ」

 

「そんな、囮なら私がなります!」

 

「ダメだ、ほぼ確実に戦闘になるだろう。明命では時間稼ぎにもならない」

 

「そんなことは!」

 

「それに私はこの男を抱えて逃げていたせいでそれほど体力に余裕があるわけではない。ならば残って足止めするなら私のほうが適任だ」

 

「でも!」

 

 熱くなる周泰の姿とは対照的に、甘寧は氷のように冷静に言葉を紡ぐ。周泰もそれが最善であることくらいわかっている。だが心優しい彼女には耐え難いことであった。それならばいっそ自分が犠牲になるほうがよほどいい、そう思えてしまうほど。

 

「今回の作戦の指揮官は私だ。命令には従ってもらう。そんな顔をするな、私だってこんなところで死ぬつもりは毛頭ない。それに孫呉が袁術から独立する最後の機会かも知れないのだ。雪蓮様たちの悲願を、こんなところで終わらせるわけにはいかない。だから、あとは頼む」

 

 そういって甘寧は周泰から背を向け歩き出した。周泰は、はいっと答えた。唇をギュッと噛む、でなければ叫んでしまいそうだったから。

 未だに気絶している北郷を背負う。体格的に甘寧のように小脇に抱えるのは難しかった。できる限り追いかけにくいルートを、入り組んだルートを、綿密に調べ上げた逃走ルートを走る。背後から追って来る気配が消えた。甘寧の足止めが成功したのだろう。戻り甘寧を助けに行きたい、その気持ちを振り払うように走り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背後を追いかけていたのは呂布と徐晃ではなく、呂布と張遼であった。呂布の捜索に当たっていた張遼は突如として現れた強大な気配を確認に来たところ、戦場にいるかのごとしの呂布と遭遇、ひとまず言葉足らずの呂布を追いかけいた。

 

「なぁ恋、どないしたんや」

 

「・・・連れ去られた」

 

「誰がや?!」

 

「・・・一刀」

 

「ホンマに誰や!?」

 

 呂布がここまで必死な姿は見たことがなかった。強さと、しかし同時に危うさを兼ね備えていた呂布を黙って行かせるほど、張遼は薄情ではない。森の中を突き進む呂布を追うため一緒にいた部下に指示を出す。

 

「くっそ、早すぎや。おいお前ら、うちは恋を追いかける。あと、頼むで」

 

「了解しました」

 

 副官に告げ、愛馬から飛び降りる。ぎりぎり獣道といっていいところでは馬では駆け抜けることができない。そんなところを当然のようにスピードを落とさず駆け抜ける呂布の身体能力には舌を巻く思いだ。

 

「まぁだからって、うちにできないはずはないんやけどな」

 

 呂布が無理やり切り開いて出来た道をついて行く。卑怯?んなわけあるかい。そうでもしないと見失ってしまうかもしれない、万が一を考えたらここでそんな面倒なことになってしまってはかなわない。今は意地よりも利をとる。合理的な張遼らしい考え方であった。

 

「恋!」

 

「んっ」

 

 視界に一瞬だけ入った黒い影。同時に飛来する何かを弾き飛ばす。

 

「なんや不意打ちかい」

 

 姿は見えないが濃密な殺気が漂う。真正面からの一騎打ちを好む張遼にとってやりづらい相手だ。ここは呂布と背を合わせ死角をなくして一旦体勢を立て直そう。

 

「ってちょ恋?!」

 

 呂布が既に影を補足、一閃抜き放っていた。その圧倒的な膂力から放たれた攻撃に影は大きく吹き飛ばされる。だが敵も空中で体勢を立て直し、こちらに刃物を投擲するというという離れ業をする。当然防御のために呂布の足は止まり、そのわずかな時間で敵は周囲に身を隠す。

 深い森の中、遮蔽物の多いこの場所では圧倒的に敵の有利だ。こちらの武器は戟と大刀、当然ある程度広くなければ振るうことすらできず、威力自体も大して発揮できない。

 

「あーめんどっちいわ。ちくちくと、正面からかかってこんかいこのマヌケェ!」

 

 沈黙。

 挑発してみたもののそれに乗る気配もなく、こちらにびびったわけでもない。きちんと自分の特長を理解してて、常に相手よりも有利に状況を運ぶ。それに気配の絶ち方が抜群にうまい。こんなに怒ってる呂布が足を止めて待つ状況なんて珍しい、それほどの手練。

 

―――なかなかのやるやないか。どこの誰か知らんけど結構楽しめそうやん。 

 

 黄巾の乱という茶番劇、拍子抜けしてたところに迷子探しと、立て続けにやりたくもない面倒事をやらされてきた張遼は豪快に笑みを浮かべていた。

 

「恋!逃がすんやないで、ひっさびさの獲物や!」

 

「うん。でも霞、殺しちゃ、めっ」

 

「さっきの恋の一閃のほうが真っ二つにする気満々やったやん!」

 

「だいじょうぶ。次から気をつける」

 

「絶対無理やんその顔!」

 

 先程よりかは少しだけ切羽詰まった様子が抜けた呂布。張遼が合流したことで落ち着きを取り戻していた。

 

―――あー、うちの分残るかなぁ・・・

 

 苦労性は辛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 希望は裏切られるもの、合流予定地点付近まで来て周泰はあることに気がついた。先程から一定の距離を保ち追跡されてる。甘寧の決死の足止めはうまくいかなかったのか、最悪の想像がよぎる。が、その想像を振り払い先のことを考えた。このまま人一人背負って逃げ続けることができるかどうか。

 答えは否、大人を一人抱えながら行ける距離などたかがしれている。護衛もなし、しかも相手は誘拐、起きれば抵抗される。

 

 そんな状況の中、周泰の中に浮かんだアイディアは三つ。

 

 一つはこの追手を撃退すること。相手の力量は並以上、こちらは人を背負い走り続けたため予想範囲内であっても削られた体力でどこまでできるか。圧倒的不利は否めないがここで減らすことができればこのあとの道程はかなり安全なものになる、ハイリスクハイリターンである案。

 

 二つ目はこのまま逃亡を続けること。相手が運良く見失ってくれることを祈る、また甘寧や丁奉、他の仲間が応援に駆けつけるのを待つ。運の要素が多分に含まれるが状況の変化に柔軟に対応できる無難な対応。だが体力を消費し続けるのは迎撃するという最後の手段さえも使えなくなる。

 

 三つ目は合流地点に北郷一刀を隠すこと。この場には後から仲間が集まるし、振り切ってから戻ってきてもいい。だがうまく追っ手を釣れなければ不審に思い、発見されてしまうだろう。目を覚まし逃亡される恐れもある。こちらはさらに不確定要素が大きいが裏をかくという意味では有効的な手である。

 

 そして周泰が選んだものは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況を整理しよう。私と馬岱は襲撃者の残した後始末をしてこの場に残った。それ以降は特に何も起きなかったから、とっくに引き上げたのだろう」

 

 小屋の中姿勢を正した関羽が報告を始める。それ以降皆が口を閉ざす中、呂布の隣に座っていた新顔がため息をついたあと、手を挙げた。

 

「張遼や。恋が落ち込んどるからウチが代わりに報告するで。追跡するも足止めされて見失ってもうた。更には足止め役まで逃がしてもうてる、素性もさっぱりや」

 

 すまん、と頭を下げる。無論それを責めるものはこの場にはいない。

 

「さーせん。私もまんまと囮に引っかかったっす。途中まではてんちょの姿もあったんですけど、気づいたときにはいつの間にかいなくなっててそのまま逃げられました」

 

 あさっての方向を向きながら、珍しくいらいらを隠そうともせず徐晃が告げる。関羽は初めて見るその徐晃の様子に少し驚いた。初めて会った時のような人を小馬鹿にしたような態度、余裕が感じられない。それほどまでに一刀という男のことが大切だったのだろう。もし桃香様が誘拐されたら、と少し考えいてもたってもいられなくなりそうであった。

 

「なぁ。こないなこと言いたかないけど、その一刀って男の安否はどうなん?途中で姿見なくなったっちゅーことは最悪殺されてるかもしれへんで?」

 

「その心配はあんまりしなくて大丈夫っす」

 

 徐晃の返事に張遼は首をかしげた。

 

「てんちょを殺す利点って現状あまりないんっすよね。むしろそんなことしでかしたら袁紹と曹操が黙ってないっす。たぶん地の果てまでも追い詰められる展開が容易に想像できます」

 

「よーわからんけど、らしいで恋。だから元気だし」

 

 少しばかり冷静になった徐晃が説明するものの、北郷一刀がどういった存在か理解していない面々は首をかしげる。張遼に肩を叩かれ、落ち込んでいた呂布は顔を上げてじっと徐晃を見つめた。

 

「そっす。それにてんちょが誘拐されるのなんて今に始まったことじゃないですし。心配するだけ無駄っていうか、気にしたら負けっすよ」

 

 徐晃はそう自分にも言い聞かせるように呂布に説いた。実際はそこまで楽観できる状況ではないのだが、それをいって不用意に巻き込むのもはばかれた。このように意図せず誘拐されたのは徐晃が知る限り初めてだといっていい。その証拠にいつもの調子ならばきちんと調理器材などを持って誘拐されるからだ。今回は荷物が全てこの場にある。つまりそんな暇もなく無理やり連れて行かれたのだ。

 

「今に始まったことじゃないとは。慣れてる、というのであれば確かに安心できる要素かも知らないな」

 

 徐晃の内心に気づくことなく関羽が同意した。ぶっちゃけその理論はおかしいのだが真面目な顔して頷いてる分突っ込みづらい。そういえばこの人てんちょに借金があるんだった、と思い出す。案外亡き者になっていることを期待していたりするかもという疑念が湧いてくる。そんな自分に少し嫌気がさし、そういえばと先程から思っていた疑問を口にした。

 

「そいえば張飛ちゃんは?」

 

 保護者である関羽に視線を向けると、露骨に目を逸らされた。切羽詰った様子はなく、気まずそうな表情から緊急事態にはなっていないだろうとは思う。

 

「鈴々はだな、まぁ、その」

 

「歯切れが悪いっすけど、怪我でもしたんっすか?」

 

「いや、違う。わからないんだ」

 

「わからない?」

 

「ああ。飛び出したあと帰ってこない。戦闘態勢になった鈴々ならばよほどのことがない限り遅れは取らないだろう。が、勢いよくここと飛び出して敵を倒したもしくは逃げられたとしてここに戻って来れるかと言われれば、おそらく無理だと思う」

 

「ああ、なるほど」

 

 つまりまた迷子になったというわけだ。せっかく見つけたのにこのような事態になるとは、拳を握り締めている関羽が痛々しい事この上ない。

 

「すまん。私はまた鈴々を連れ戻すために探さねばならない。それに今日のこの状況、桃香様のことが心配になってきた。悪いが手助けはできない」

 

 関羽は律儀に頭を下げた。それに引き続き張遼が謝りの言葉を口にする。

 

「うちと恋もすまん。いい加減恋は戻らんと支障をきたすで、どうしても連れ帰らんとあかんのや。情報収集と帰り道と領内で見つけたら保護するくらいしかできへんわ」

 

「いえ、こちらの問題ですし。それだけしていただくだけでも充分助かるっす」

 

 今回は相手もわからないため絞り込むことができないため、情報待ちになるだろう。少しでも範囲を潰してくれるだけありがたいことだ。

 

「闇雲に探してもどうしようもないっすから。私も蒲公英ちゃんを送り届けてから本格的に探すことにするっす」

 

「蒲公英足でまといみたいでごめんねー。うちの領内でも叔母さまに頼んで探してみるよ」

 

 話にひと段落つくと、皆各々この場を去った。徐晃も馬岱とともに西涼に向かう。どうせてんちょのことだ、すぐに噂になるような派手な動きをすることだろう。今までどおりそうであることを願い情報を待つ。だがその願い虚しくその情報がもたらされるのはかなり先の話であることを徐晃は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう、恋殿~、いったいねねを置いてどこにいってしまわれたんですか~。ほらセキトも恋殿を探すのです!ってちょ、セキト。どこいくのですか?!むむむ、もしやそちらに恋殿が?!ま、待つのですセキト」

 

「はぁはぁ、セキトもねねを置いていくなです!まったく、よくよく考えればこんな草むらに恋殿がいるわけがないのです。ほらセキト、さっさと戻りますよ」

 

「あいたぁ?!なにか足にひっか・・・うきゃぁ!」

 

「むむむ、死んでるわけじゃなさそうです。これは寝ている、いや気絶しているのです。縛られて、一体どこの誰なのでしょうか。まったく、セキトも見つけるならこんな男じゃなく恋殿を探して欲しいのです。とりあえず解いて・・・あつっ!す、すごい熱なのです!」

 

「セキト!高順のやつを呼んでくるのです!このままじゃこの男、命に関わるかも知れないのです!」

 

 

 

 その日、一人の男がこっそりと保護された。

 

 




ここまで読んでいただいてありがとうございます

完全に愚痴ですが、書き終えたあとに没にして書き直すのって精神的にきついっすね
回りくどいとだれるのでその辺をもう少ししっかりと練ってから書かないからこんなに時間が
かかるわけです 本当に申し訳ない

あとキャラの使い捨て感が半端なくてすみません 特に周泰と甘寧


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