フランになりました。   作:天道詩音

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パチュリー視点です。


魔法使いの夜。上

 紅茶とスコーンの用意を始める。今日は久しぶりにレミィが家に来る日だ。紅茶にはうるさいらしいけど、毎回美味しいと言われているから、私の紅茶は美味しいのかしら?魔法使いとして生を受けた私は食事を摂る必要が無いので、美味しいかどうかなんて余り興味が無いのだけれど、決められた温度と決められた時間で紅茶を入れれば同じ味になるのだから、そういった事は魔法の研究で同じような事をやっているから得意なのよね。

 さて、そろそろ着く時間だけどレミィは来るのかしら?レミィの種族は吸血鬼でこの周辺の街や村を全て支配している。私の住む村もレミィに税を納めているらしいけど、詳しくは知らないわ。魔道書を集める為に、魔法薬や試薬を売ってお金を稼いでいるけど、そこから少し引かれているって聞いたような?まあ、どうでもいいわね。

「パチェ-?居るかしら?遊びに来たわ」

「……今開けるわ」

 時間通りに来たわね。扉に開錠の魔法を使って扉を開けた。扉が開いてレミィが入ってきたけど、この小さな女の子がこの一帯の支配者だなんて誰も思わないわよね。

 

「パチェ久しぶり!半年ぶりね!」

「半年なんてあっという間よ?魔法の研究をしていたら気付いたらそれくらい経っているもの」

 私もレミィも何千年も生きられるのだから、時間なんて気にしないわよね。

「確かに魔法の勉強をしていた時はあっという間だったわね。でも今はフランと一緒に居れて毎日が楽しいの!一日一日を記憶に残したいって思ったら半年って結構長いものなのよ!」

 レミィの妹のフランドール。会ったことはないけどレミィが毎回その子の話をするから、親しくなった気さえしてきたわよ。

「そうなのね。取りあえず紅茶の用意は出来てるから、淹れるわね」

「ええ、ありがとう!パチェの紅茶は好きなのよ」

「……そう」

 こういった事を素面で言えるのが、レミィのずるいところね。ティーカップに紅茶を注ぎ、レミィの前に置いた。

 レミィが紅茶を美味しそうに飲むのを観ながら、私も飲むことにする。そんなに美味しい物かしら?まあ、レミィが美味しく飲んでいるならいいわ。

 

「やっぱり美味しいわ!ありがとう。そう言えば今日はパチェに頼み事があるのよ」

「頼み事なんて珍しいわね?面倒なのはいやよ?」

 久々の頼み事ね。前の頼み事はフランドールの記憶についてだったから、今回もフランドール絡みかしら?

 

「パチェの魔法の腕なら面倒じゃないと思うわよ?私があの屋敷の主になったのは少し前の事だけれど、せっかく主になったのだから屋敷に名前を付けたのよ!紅魔館と名付けたのだけれど、いいと思わない?」

「紅魔館ね……スカーレットでデビルなレミィの屋敷なのだから良いんじゃないかしら?」

 レミィのネーミングセンスが残念なのは最近気づいたのだけど、今回はまともだと思えた。誰かと考えたのかしら?

 

「そうよね!フランと考えたのだけれど、良いセンスよね!それで紅魔館って名付けたのだし、せっかくだから屋敷の全面を真っ赤に染めようと思うの!」

「……え?」

 全面真っ赤?目が痛くなりそうな屋敷ね。レミィのセンスはやはり絶望的よ。

 

「パチェの魔法で指定した場所に水を発生させる魔法が有ったわよね。その魔法を応用したら、赤色の塗料を混ぜた水を屋敷全面に塗って、真っ赤に出来ると思ったのだけどどうかしら?」

「出来るとは思うけど……赤で染めていいの?」

「当然よ!これで、お姉ちゃんのセンスをフランが褒めてくれるわね!」

 まだ会った事の無いフランドールに言いたいわ。姉を甘やかせすぎじゃないかしら?住んでいる家が真っ赤になるのよ?止めるべきじゃない?

 

「まあ……いいわ。それで対価には何を用意しているのかしら?何事も等価交換が原則よ」

「分かっているわ。パチェには紅魔館に引っ越して貰おうと思うのよ」

「……それが対価かしら?」

  魔法使いにとっては等価交換は絶対な物。いくらレミィでもそこは譲れないわ。まあ、まだ用意があるわよね。それだけでも私には十分過ぎる対価なのだけれどね。

 

「確か大きな部屋に引っ越したいって言っていたわよね?それと紅魔館の屋敷の魔道書は全て閲覧してもらって構わないわ」

「対価としては多くないかしら?他にも何かあるの?」

 魔法で屋敷を染めるだけで、屋敷の魔道書を全て閲覧できるのはちょっと多いわね。他にも頼みごとがありそうね。

 

「ええ、フランとお話してもらいたいの!パチェならフランと仲良くなっても安心できるわ!」

「姉バカね……私もフランドールとは一度話してみたいとは思っていたの。とりあえずこの家をレミィの屋敷に転移させるわ。この家には転移の魔法を組んでいるからレミィの屋敷に魔法陣を書けば転移できるわ」

 またフランドールね。フランドールについてはレミィの家に引っ越してから考えましょうか。レミィから話を聞くとかなり可愛いらしいけど、実際はどうなのかと興味は多少あるわね。

 

「準備がいいわね。では早速行きましょう!」

 飛行魔法を使ってレミィについて行く。最後に住んでいた村を一瞥した。生まれてからずっと魔法の研究だけをやっていて、誰ともちゃんとした交流をしてこなかった色の無い日々はあの日レミィが訪れた時に終わった。レミィに会ってから誰かと会話する楽しみを知って、レミィが来る日が楽しみになって、レミィと喋ると嬉しくて世界に色が付いたようだった。こんな恥ずかしい想いはレミィに直接伝えるなんてできないけど、本当に感謝しているのよ。

 

「パチェ、名残惜しいかしら?」

「別にどうでも良いわ。それよりも新しい魔道書を読みたいの」

 相変わらずの魔法バカねなんて笑いながらレミィは紅魔館に向かって飛んでいった。これからレミィの屋敷に住むなんて楽しみね。空高くまで飛ぶと、下には小さな火の灯りがぽつぽつと灯っている。前方に一際大きな灯りが見えた。あれが紅魔館ね。

 

「お嬢様、お帰りなさい。それと御友人でしょうか?」

 大きな門の前に着くと赤髪の長身の女性に迎えられた。

「パチェは今日から紅魔館の住人よ。パチェ、この子は美鈴。門番を任せているの」

「よろしく。パチュリー・ノーレッジよ」

「パチュリー様よろしくお願いします。お綺麗な方が屋敷に増えて嬉しいです。何かあれば気軽に声を掛けてくださいね」

「ええ、ありがとう」

「美鈴!あなたは口説かないと会話ができないのかしら!」

「口説いていませんよ?綺麗な女性を褒めるのは当然の事ですので」

「そう言うところよ!最近フランも美鈴の話ばかりしてくるのよ!従者としては自重しないといけないんじゃないかしら!」

 身長差から美鈴をレミィが下から覗き込むように怒っている。まあ、小さな子がじゃれているようにしか見えないわね。レミィを撫でて宥めている美鈴と目が合った。笑った後に、可愛いですよねと口を動かしたのが見てとれたので頷いておいた。

 

「レミィそろそろ案内して貰えないかしら?」

「はあ……行きましょうか?美鈴、また今度続き話しましょうね」

「お嬢様と話すのはいつも楽しみにしています。お待ちしていますよ」

「はいはい、では行きましょう」

 手をひらひらと振ってから背を向けたレミィについて行く。美鈴とは話が合いそうね。私も今度話に行こうかしら。

 

 長い廊下を歩いて進むと、掃除をしているメイドをよく見かける。こちらに気づく度に礼をされ、レミィがご苦労さまと言っての繰り返しを10回くらいしたところで目的地に着いたようだ。

 レミィが扉を開けて、一緒に入っていくと私の家が余裕で入るくらいの広い部屋に着いた。ここを更に拡張すれば大図書館が造れるわね。悪くないわ。

 

「良い広さね。それにホコリもなくて過ごしやすそう。ここの空間を弄って更に広げてもいいわよね?」

「ここはパチェの部屋なのだから好きにしていいわ!」

「ありがとう。なら早速だけど転移の魔法陣を書いていくわ。しばらく時間が掛かるわよ」

「あ、それならフランを呼んでくるわ!早くパチェのことを紹介してあげないと!行ってくるわねー」

 あっという間に行ってしまったわね。まあ魔法陣を書きましょう。白い線を引ける石を取り出して、床に大きく円を書いて、そこに文字を書き込んでいく。転移。対象。座標。距離。空間。

 必要な情報を正しく書かないと転移魔法は発動しないから、丁寧に書き続けていく。全ての情報が書き込めたので次の工程に入る。

 家の魔法陣とリンク完了。魔力を流し込んで空間と空間を繋げる。転移魔法を発動させる。魔法陣が光ると同時に見覚えのある家が目の前に現れた。成功ね。

 家の中に入って、紛失物が無いかを確認していく。何も無くなってなさそうね。

 一息つこうと椅子に座って、先ほど淹れた紅茶を飲む。冷めると美味しく無いわね。次は家具と魔道書を全部外に出さないと。魔法で浮かせて全て外に出していく。最後に座っている椅子も浮かせて座りながら外に出た。

 あとはもう一度家を転移させて、元に戻せば引っ越しはとりあえず終わりね。転移魔法を発動させて家を送り返した。二度手間だけど、家具一つ一つに転移魔法を組んでいくよりは家ごと転移させたほうが効率的よね。

 さて、次は空間の拡張を始めましょうか。これで思い描いていた大図書館を造れそうだわ。次の魔法陣を書き込んでいきましょう。

 

「戻ったわよー!もう転移は終わらせたのね。残念ね、転移魔法を観てみたかったのよ」

「……お、おじゃまします……」

 レミィの影に隠れて、半分だけ顔を出している女の子が見える。さらりと流れるような金色の髪も、不安そうに此方を覗く紅い目も、宝石が垂れ下がっている綺麗な羽も、構成さしている全てが可愛らしく見える。

 これだけ庇護欲を誘う子が妹だとレミィが溺愛するのも分かるわね。でもそれだけよ。

 

 私はレミィが好きなの。

 

 つまりフランドールとは敵のようなものね。簡単に仲良くなれるとは思わない事ね。

 ともかく、挨拶をしましょうか。

「パチュリー・ノーレッジよ。よろしく」

「ふ、フランドールです!よろしくね!」

 さあ、フランドールとの戦いを始めましょうか?私は手強いわよ。




キマシタワー!
パチェさんはレミィが好きなご様子です。
フランドールは果たしてパチェさんと仲良くなれるのでしょうか。
今まで紅魔館って名称は無く、色も普通の屋敷だった件。
レミィなら屋敷を紅に染めちゃいますよね!
長くなってしまったので、話を上下に分けます。すみません!
記念すべき10話目ですね!毎日投稿できるほどの時間は無いので隔日投稿になっていますが、これからも投稿していくのでよろしくお願いします!

登場人物紹介
パチェさん
始めてGLタグが機能した気がしますね。
レミィに御執心。
内面ではレミィラブですが、魔法使い特有の感情の希薄さから、外面にはそれが殆ど表れません。
レミィからはいつも冷静でクールな子だと思われている。
レミィからはフランドールの話ばかりされるので、フランドールに多少の嫉妬がありますね。

レミィ
パチェさんの内心には一切気づいてません。
結構モテます。妹の為に努力したり尽くしたりと、周りは頑張っている姿を沢山見ています。
レミィが主人公でフランはヒロインみたいな立ち位置になっている気が。。

美鈴
メイドからも人気な美鈴さん。
お気に入りはやはりレミィとフランですね。
今回も下から覗き込んで、ぷりぷりと怒っているレミィを見れてご満悦でした。
パチェさんとは気が合いそうだと思いました。

フランドール
今回の相手は厳しいですよフランちゃん!
フランは友達になれるのでしょうか?
詳細は次回ですね。
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