フランになりました。   作:天道詩音

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レミリア視点です。
ストーリーの最終話です。


フランになりました。

 

 紅魔館は幻想郷へ侵攻する計画が進んでいく。西洋の妖怪の全てに声を掛けていき、集まった妖怪と共に侵攻して、幻想郷での紅魔館の地位を確立させる計画。

 紅魔館は未だにこの国の恐れを集めているので、力が衰えていくことは無いけど、辺りの妖怪達は力を失っていき少しずつ姿を消していっている。

 紅魔館が今後も恐れを集めることができるかが分からなくなってきた。人間達の技術の進歩が著しく、弱い妖怪達は人間達の武器によって淘汰されていっている。

 私達を人間達が淘汰する日も遠くは無いのかも知れないわね。

 

 紅魔館を幻想郷に転移させるのは急務だけど、今は紅魔館の従者達を各地へ飛ばして、共に侵攻する妖怪達を集めている最中で、旗印の私にできることは今は無く、政務も美鈴に任せた事で、完全に時間が空いたので本当に時間を使いたかった事に使うことにする。

 

 フランの記憶を戻す魔法を完成させる為に時間を使う。

 

 今までパチュリーと研究していたけど、大きな時間が取れないまま今になってしまったけど、フランの記憶を戻すためにこの時間を使おう。

 フランと会うのも寝る時だけにする。本当に、非常に残念だけど、これもフランの為なのだから仕方ないわ!

 

 朝にフランよりも早く起きて、パチュリーの元に向かう。部屋の外で控えていた咲夜にフランの事は任せる。

 咲夜はフランに仕えてからよくやっているから、安心して任せることができる。時を止める能力もフランを護るために有用な能力で、私が駆けつけるまでの時間稼ぎができるので、何かあれば私の元へ時間を止めて駆けつけるように言い付けている。まあ、戦闘力も高いので大抵の相手なら咲夜だけで済むわね。

 

「おはよう咲夜。フランの事をよろしく頼むわ」

「お嬢様おはようございます。お任せください」

 

 パチュリーの部屋に向かう途中、執務室に居る美鈴に会いに行く。執務室の扉を開けると美鈴が書類を捌いていた。美鈴もちゃんと仕事してるわね。まあ、仕事はちゃんとするけど、主の私をからかうのは大きな減点よ!それさえ無ければ文句無いんだけどねー。取りあえず挨拶をしましょうか。

 

「美鈴おはよう! ちゃんと仕事しないとだめよ!」

「お嬢様おはようございます。大切なお嬢様の為にも全力で取り組んでいきますよ」

「そう。少しくらいなら休憩してもいいわよ! がんばってね!」

「ありがとうございます。優しいお嬢様。それではお嬢様もよろしくお願いします」

「ええ! いってくるわ!」

 

 美鈴にもお願いされちゃったし、私もがんばらなきゃね。フランの為に皆が動いてくれているのだから、必ず魔法を完成させないと。

 

 パチェの部屋に入ると、魔道書を読みながら魔方陣に文字を書いているパチェの姿があった。もう研究してくれているのね。熱心に研究をしてくれるパチェには本当に感謝しているわ。

 

「パチェおはよう。今日もありがとうね」

「レミィおはよう。これも魔道を極めるためよ。気にしないでいいわ」

「それでも感謝しているの! ありがとうパチェ!」

「…………そう。それより研究をしましょう」

 

 パチェはが魔法の為だけじゃなくて、フランの為に研究してくれているのはもちろん分かっている。ありがとうね。一緒にフランの記憶を取り戻しましょう!

 

 記憶を取り戻す魔法の研究を進めていく。

 東洋に居るさとり妖怪の能力を参考にして、記憶を想起させて思い出させる魔法を作成する予定だ。

 さとり妖怪は心を読み取る能力を持っていて、心を読んで強く印象に残っている記憶を読み取ることができる。そして、その記憶を想起させてトラウマを植えつけるらしい。

 フランにトラウマを植えつけるつもりは一切無いけど、この想起を利用する方針が最適だと分かったので、これで記憶を呼び覚ます事に決まった。

 魔法の手順としてはさとり妖怪と同じように、一に心を読み取って、二で記憶を読み取り、三で記憶を想起させて、四でそれを記憶に刻み込むことで記憶を取り戻させる。

 それに合わせて、私もその記憶を追体験する事で、記憶が戻らなかった場合でも、フランに何があったのかは知ることができる保険を用意した。

 

 一つ一つ確実に手順の研究を進めていく。

 一の手順は、心を読ませる魔法薬をパチェが完成させていたので、確認のために私が薬を飲んで試してみると、考えていることが全てパチェに筒抜けになった。私が喋らなくてもパチェと会話ができる。せっかくなのでありったけの感謝をパチェに伝えたけど、相変わらずの素っ気ない感じだった。なので、パチェの心を読んでみたいから魔法薬を飲んでみてって言ったのだけど、絶対ダメと断られてしまった。なんでよー!

 

 二から先の手順は、吸血鬼の変化と変化強化の魔法薬を使って、私が擬似的にさとり妖怪となることで解消させる事にした。変化強化の魔法薬を使うことで、姿しか変えられなかった変化が、性質まで変えられるようになって、一定時間別の妖怪になれるようになった。

 

 擬似的にさとり妖怪になっても、心は読めなかったので、心を読ませる魔法薬に助けられた。

 心を読ませる状態の対象に触れる事で記憶の読み取り、想起、刻み込みができることが、パチェで試してみて分かった。パチェから読み取った記憶は私と初めて会った時の記憶だった。一番印象に残っている記憶がそれだったのは、親友として嬉しかった。

 

 フランの記憶を追体験する手段としての魔法は私が作製した。魔方陣の上にフランに寝て貰って、私がフランに触れながら一緒に眠る事で、魔法が発動する。

 

「パチェ! ついに完成したわ!」

「そうね。レミィの念願だったフランの記憶を戻すことがやっとできるわね」

「そうね………百年くらい掛かっちゃったけど、これで思い出してくれるかな?」

「私達の魔法に失敗は無いわ。必ず思い出すわよ」

「ありがとう! パチェ大好きよ!」

「………そう」

 パチェの自信ある言葉で安心させられた。パチェが親友な事に本当に感謝しているわ。ありがとうね!

 

「これからフランに記憶を戻すことができるようになった事を伝えて、フランが記憶を戻したいかどうかを聞いてくるわ。記憶を戻すかどうかはフランに決めて貰うの。フランの記憶だから、フランが決断しないといけない事だから」

「そうね。魔法の準備はしておくわ。いってらっしゃい」

「ええ、いってくるわ!」

 どんな決断をしても、フランの決めた事を尊重するからね。過去の思い出が無くても、これからいくらでも作れるのだから。待っていてね、フラン!

 

 

 フランの居る部屋に戻ると、フランはジョウロを持っているから花に水を与えていたみたい。

 

「フラン帰ったわよ。咲夜もありがとうね」

「あ、お姉ちゃんおかえりー!」

「お嬢様、お帰りなさいませ」

 フランは笑顔で出迎えてくれた。咲夜のおかげで寂しそうな感じは無いわね。

 

「フランに聞きたいことがあるの。いいかしら?」

「うん! なんでも聞いて!」

 フランの傍に行き、目をしっかり合わせて問いかける。

 

「フランの記憶を直す魔法が完成したのよ。どうして記憶を失ったか、記憶を失った時に何があったかが分かるの……辛い記憶になるかも知れないけど、フランは思い出したい?」

 フランは目を瞑って考えている。私はどちらでもいいのよ。フランが居ればそれで充分なのだから。

 フランが目を開けて、私を見つめる。聞かせてくれるかしら、フランの決断を。

 

「私は記憶を取り戻したいな。辛い記憶があったとしても、全部思い出して……私がフランドールだってちゃんと言えるようになりたいの!」

 

 ………あなたはフランドールよと簡単には言えないわね。もちろん私はフランはフランだと思っているけど、記憶が無いフランにはそう言えないのね……でも、大丈夫よ。

 

「なら、行きましょう! フランはフランだと言えるように、記憶を取り戻しに!」

「うん。行くよ! 咲夜、行ってくるね?」

「……かしこまりました。何時までもお帰りをお待ちしております」

「ありがとう! いってくるね!」

 

 フランと一緒にパチェの元へ向かう。手を繋いで、廊下を歩いて行く。思えば、フランを地下室から救出してから、百年になるのよね。たくさんの思い出ができた。

 フランと一緒に居て、フランに友達ができたのを一緒に喜んで、フランとお花見をしたり、フランとずっと一緒に居て、一緒に思い出を作ってきた。

 これからも一緒に居るために、記憶を取り戻した今日も楽しい思い出にするために、一緒に行きましょう!

 

 

「パチェ戻ったわ。フランはベッドに横になってね」

「ええ、お帰り。準備はできているわ。フランも安心しなさい。私とレミィで作った魔法に失敗は無いわ」

「……ありがとう! よろしくね!」

 ベッドで横になったフランの手を握る。フランに心を読ませる魔法薬を飲んで貰う。フランが考えていることが読めるようになった。

 

「お姉ちゃんも一緒に記憶を見るから安心してね」

 心の中で、これからどうなるんだろうって心配しているので、頭を撫でてあげる。私は変化強化の魔法薬を飲んで、さとり妖怪に変化する。姿形は変わってないけど、フランに触れると先ほどの記憶が読み取れたので、変化は成功したみたい。

 

「フラン。今からどうするか説明するわ。フランには眠って貰って、レミィの記憶を想起させる能力で、フランの無くした記憶を呼び覚まして、夢としてその記憶をもう一度経験することで、その記憶を刻み込ませるの。レミィも一緒に記憶を経験するから、フランの記憶を共有できるわ。説明は以上よ。魔法の制御は私がするから、安心して任せなさい」

「パチュリーもお姉ちゃんもありがとう。じゃあ眠るね」

 パチェが渡した睡眠薬をフランが飲んで、フランは眠りについた。

 では、フランの記憶を取り戻しに行きましょう!

 

 眠ったフランの手を握り、私も横になって目を瞑る。

 パチェが魔法を発動させたのを確認し、私もフランの記憶を想起させる。

 

 私の意識がフランの夢の中に入ってくような感覚を感じて、目を開けると、お母様がフランを抱いて居る姿が目に入った。

 

 これがフランの始まりの記憶なのね。私は傍観者としてフランの記憶を観ていくのね。フランがお母様に撫でられているのが見える。

 

 フランは様々な事を経験していった。まだ赤ちゃんのフランは、私と一緒に遊んだり、お母様に絵本を読んで貰ったり、私とお母様とフランでお風呂に入ったりと、その時にフランは楽しいって心から思っているのが感じられてうれしく思った。

 

 記憶の中のフランが言葉を覚えたので、心の中の言葉が聞こえてくるようになった。

 

『おねーさまとあそびたいな』

『かーさまもあそぼうよ』

 まだ小さなフランは遊びたい盛りでこの頃は毎日一緒に遊んでいたなと思い出した。

 

『れーばていん! かっこいい!』

 必殺技も考えて、フランに教えていつか二人で一緒に使おうって約束したね。

 

『おかーさましなないで!』

 フランが必死にお母様を助けようとしている思いが聞こえてくる。それでも助けられなくて、お母様を失った悲しみが痛いほど伝わってきた。

 

『おねーさまはいなくならないよね? だいじょうぶだよね? おねがい……ずっといっしょにいて』

 フランは私がお母様みたいに居なくなるんじゃないかと心配して、私が見えないとずっと探していた。ごめんなさい。

 

『なんでとじこめるの? おねーさまどこ?』

 フランが地下室に閉じ込められて、開かない扉を必死に叩いて壊そうとしている。私を探して泣いている。

 

『おねーさまにあいたいよ……おねーさまなんできてくれないの?』

 閉じ込められてからフランはずっと一人で私を待っている。いつまで経っても私はやってこない。ごめんなさい。

 

『おねーさまはわたしのことをきらいになったの? だから来てくれないの? ごめんなさい……おねーさまの言うことをなんでも聞くからゆるして……』

 フランが閉じ込められてから何年も経った。それでもまだ私を待ってくれている。でも私は来ない。

 

『おねーさまはもう来ない』

『でもおねーさまに会いたいよ』

『でももう来ないなら……忘れちゃおう』

『おねーさまとの思い出も、私の今までの記憶も全部壊しちゃえばいいの』

『全部壊せば……もうさみしくないよね……もうおねーさまを待っていなくていいよね……さようなら』

『……………………』

 

 ごめんなさい。一人で寂しかったわよね。何も出来なかった私のせいでフランは記憶を壊してしまったのね。

 

 

 ああ、全部私のせいだ。

 

「ちがうよ!」

 記憶の世界から弾き出されて、目を開けるとフランが私を抱きしめていた。

 

「私が弱かったから、全部捨てちゃった私が悪いの。お姉さまが頑張っていたのは、今の私は知っているよ」

「フラン……記憶が……」

「全部思い出したから言えるよ。お姉さまは悪くないの。だからありがとうね」

「でも私は……」

「今ここに居られるのも、お姉さまのおかげだよ。だからありがとう!」

「ああ……フラン……ありがとう……」

 フランに強く抱きしめられて、泣いてしまう。フランが全部思い出してくれた。思い出してくれてありがとう。それとごめんなさい。

 

 

「そんなに泣かないでお姉さま……もう記憶が戻って、これからもずっと一緒に居られるんだから」

「ええ、ずっと一緒に居るわ!」

 もう絶対に離れないわ。何があっても一緒に居るから!

 

「それにこれで、私は私だってちゃんと言えるよ! フランドールでしたって!」

「そうね! あなたはフランドールよ!」

 

「怖かったの。本当に私はフランドールなのかって。何も覚えて無くて、私が誰かも分からなくて、それでもお姉さまに救われて、すごい幸せで、でも私が、もしフランドールじゃなかったとしたら、この幸せも無くなっちゃうのかなって思ってた。でももうだいじょうぶだよね?」

「もちろんよ!」

 そんな事を思っていたなんて、ずっと一緒に居たのに知らなかった。記憶を失った苦悩を。でももう大丈夫!

 

 

「今日から改めて、私はフランになりましたってちゃんと言えるよね! フランでしたって言えるよね!」

 

「ええ、あなたは私の大切なたった一人の妹……フランよ!」




 
 
 読んでいただきありがとうございました。

 プロット無しで始めたこのSSですが、フランの設定とこの終着点だけは決めて、書き始めました。
 記憶を失ったフランが記憶を取り戻して、自分がフランだと言えるまでの話を書こうと決めて、書いていきました。
 最初の予定では6話で終える予定でしたが、過去を掘り下げて書いていくと、思うより長くなって、出る予定の無かったメイドなども出てきて更に話が長くなっていきました。
 それでもフランと紅魔館メンバーの交流も掛けて、楽しかったです。

 原作に書かれてない部分を、独自設定で書いていったので、それはおかしいって部分もあったと思います。

 この後も、エピローグと後日談、原作開始後の話を書いていく予定ですが、今後は不定期更新になります。
 隔日投稿で書いていくと、時間が足らなくなって文章が乱雑になってしまいました。

 最後になりますが、感想や評価などいただけると、嬉しいです。
 質問や、こうしたら読みやすくなる、直した方がいいところなどがあれば教えて欲しいです。
 改めて、読んでいただきありがとうございました!

登場人物紹介
フラン
お姉さまと呼べました。
フランになりました。
レミリア
フランの記憶を戻しました。
喜びと罪悪感がごちゃ混ぜになって泣いてしまいました。
パチュリー
心を読ませる魔法薬は、自分用でした。
伝えられない気持ちを伝えるのには、心を読ませればいいと。
結局、恥ずかしくなって自分では使えませんでしたが、フランの記憶を戻すために活用できて満足です。
咲夜
レミリアからの評価も高いです。
フランの帰りを待っています。
美鈴
レミリアのツンツンした態度が可愛くて、相変わらずからかっています。
仕事はなんでもこなします。




 以下は、このSSの反省点です。今後に生かしたいです!
 一話の出来が微妙だと、先を読んでくれる方が減るって改めて思いました。次回書くなら一話で読者を引き込めるような小説を書いていきたいです。
 フランがだいたい部屋にしか居なかったので、寝たり、遊んだりと単調になっていたのが、微妙でした。もう少し、動きのある感じにできればよかったなと思いました。
 フランの内面が完全に子供なので、他の子とイチャイチャさせるにしても、子供の範疇でしか動かせなかったのが、微妙だったのではと思いました。
 戦闘シーンは初めて書きましたが、戦いを文字に起こすのが難しいなと思いました。これは他の方の作品を読んで勉強し直します!
 プロットは必要ですね。次の話を書く前に毎回、何を書くかを考えながら書いていたので、時間が掛かるときはかなりかかりました。

 こんなところでしょうか。ありがとうございました!
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