研鑽を積む日々、妖気の扱いを更に極め、妖気を紅い霧に変え、周囲を紅く染め、日の光さえ私には届かなくなった。
武術を学んだ。殴る、蹴るだけではなく、戦う技術を覚えた。たとえ妖気が使えなくても大抵の妖怪なら倒せる程に強くなった。
屋敷にあった魔道書の魔法は全て使えるようになり、火も風も水も土も思いのままに操れるようになった。
フランを救うために強くなる事に必死で、気づけば100年経っていた。
叔父には領地の鎮圧を任されていて、叔父は屋敷を襲撃してくる妖怪達との戦い以外は私に任せていた。人間達は銃と呼ばれる銀の弾を飛ばす武器を使っていた。かなりの速さで飛んでくるけど、それ以上に速く動ける私には届かない。
叔父にはまだ能力が使えないのかと言われ続けている。私が能力を使える事は誰にも教えていない。能力も使えない未熟者と言われ続けても、叔父を倒すその時まで言わないと誓った。
そして今日、門の前で中華服の妖怪と戦っていた叔父が腹に大きな傷を負って帰ってきたので、皮肉を言ってあげる。
「叔父さんお帰りなさい。ついに負けて戻ってきたのですか?」
「俺が負けるなんてあり得ないだろう。奴は中々強かったが、俺には及ばなかった」
恐らく、腹の傷は大きな穴になっていたのだろうけど、吸血鬼としても異常な程の回復力を持っているので、殆ど塞がってきているのだと思う。それでも戦い疲れたのか、多少の疲弊が見て取れた。
「なら私が負かしてあげるわ」
「ほう……遂に俺に挑むのか?」
叔父は妖気で剣を作り臨戦態勢に入った。
「フランが待っているの。今日で幽閉は終わりよ」
「能力も使えない半端者が……無駄に威勢がいいな。それが無駄なことだと気付かずに戦うとは……哀れだな」
「何を言っているの?まあいいわ……死になさい!」
私は妖気を圧縮して槍を形成し、投擲する。
「今日は気分が良い。遊んでやろう」
槍は叔父の胸に刺さる直前に剣で裂かれて、消え失せた。
それを合図に戦いが始まる。次は槍を十本形成し、同時に射出する。半分は切り裂かれ、半分は避けられた。
なら追尾するように変更。威力は減らし、更に数を増やす。百の槍を一斉掃射する。全てが叔父へ向かい三割は消されたが残りは全て命中し爆発を起こした。
煙の中から剣が飛んできて、何とか横に飛び、回避する。煙が晴れて、現れた叔父を見ると槍での傷は殆ど無かった。
「小手先の技は俺には効かん。本気で来い」
「……っ! ならこれでも喰らいなさい!」
爆炎の魔法と突風の魔法を組み合わせ、灼熱の熱波で前面を焼き尽くす。叔父は私へ一直線に突進してきて熱波を最小限で躱し、剣を振り下ろす。
直ぐさま槍を造って受け止めるが、押し負けて吹っ飛ばされ、壁に激突して止まった。衝撃で血を吐き、壁の破片が刺さって血だらけになった。
「つまらん……貴様本当に吸血鬼か? もういい、妹と同じく死ぬが良い」
「妹と同じく……? なに……言っているの?」
フランが死んでいる?何をあり得ない事を?私の能力はいつかフランと共に過ごせるとなっていた。それに能力はまだ発動している。フランが亡くなっていれば、能力は解除されるはずだから大丈夫だ。でも本当に?運命なんてあやふやな物を操る私の能力は本当に使えているの?
「俺の命令を無視して貴様の妹に食事を運んでいたメイドは殺した。百年も前にな」
「……は?」
「百年間何も食わずに生きれると思うのか? とうの昔に死んでいるだろう」
殺したメイドって誰?シーラの事?フランが百年間何も口にしていない?もう死んでいる?ふざけるな!
「ふざけるな! ふざけるな!! 巫山戯るな!!! 殺してやる!」
「ハッ……やってみろ!」
妖気を圧縮させ収束し真紅の槍を創造。能力を応用し、必中必殺の運命を付与、更にほぼ全ての妖気を槍に流し込み、運命を確定させる一撃を作製。
「なんだその力は?能力を使ったのか?面白い!」
「百年前から今日の為に能力を使い続けてきた…! お前を殺してフランと生きる! ……死ね!」
「隠していたか!やって見せろ!」
叔父は妖気を最大まで解放し剣を構えて迎え撃とうとしている。
「喰らえ! グングニル!!」
今までの恨みも怒りもフランへの想いも全てをこの槍に込め、全力で投擲する!槍は音速を超え、更に速度を上げて叔父へ向かう。
その槍は剣を振り下ろし切り裂かれる。
だけど、終わらない。
必中必殺の槍は切り裂かれた程度では止まらない。二分割された槍はどちらも叔父へ突き刺さり、全てを破壊するかの如く大爆発を引き起こした。
爆煙が晴れる。叔父は身体の大部分を失い、瀕死となっていた。
「俺を殺せるとはな……これで漸く死ねる」
「何を言っているの?」
「……教えるつもりは無い。さっさと終わらせろ」
「言われなくても殺すわ……さようなら」
残った妖気で真紅を槍を形成し、叔父に突き刺した。霧と化して消えていって、完全に消滅したようだ。
叔父は死んだ。早くフランの元へ行かないと!どうか生きていて……お願い!
フランの居る地下室へ向かい全速力で移動し、フランの元へ繋がる階段へたどり着く。
転がるように石段を降りていき、扉にぶつかって止まった。
「フラン! ……フラン! お願い……返事をして!」
祈るように呼びかけると小さく声が聞こえた。
「……だれ?」
間違えるはずが無い。フランの声だ……!
「ふ、フラン生きていてくれたの! あぁ、よかった……。今扉を開けるから待っていて!」
扉に手を当てると結界が音を立てて崩れていったので扉を開ける。そこには、あの頃よりも少し大きくなったフランの姿があった。光でまぶしそうに目を瞑っているフランにもう離さないと強く抱きしめた。
「フランごめんね! 遅くなってごめんなさい! ほんとうに生きててくれてよかった……」
フランが目を開けてこちらを見る。顔を見る限り元気そうに見えるけど、100年間飲まず食わずだとしたらどこかに不調があるかも知れないし、心配だ……。
「どこか痛いところは無い? 大丈夫?」
「う、うん……大丈夫だよ。あなたは血が付いているけど痛く無いの?」
『あなた』……その言葉で忘れていたかった記憶。フランが記憶喪失なのではと言われていた事を思い出す。間違いであって欲しいけど、お願い……覚えていて!
「だ、だいじょうぶよ。あ、あのね、フラン?」
「……なに?」
「わ……私が誰か分かるよね?」
いやだ……怖い……聞きたくない……。お姉ちゃんのことは覚えているよね……?
「……料理を運んでくれてた人?」
「ああ……違うの、私は……ッ!」
忘れられていた。思わず、強く強く抱きしめて、フランの目を真っ直ぐ目を見つめる。
「私はレミリア。あなたのお姉ちゃんよ」
「……お姉ちゃん?」
忘れていてもいい。フランが生きてさえいればそれで…。これからまた私とフランで一緒に生きていけるのだから……!
「これからはずっと一緒よ! もう離さないから……!」
亡くなったお母様に誓う。これから二人で一緒に生き続けると…!
改めて運命を操る程度の能力で『フランと共に生きていく』と願う。どうかずっと一緒に居られますように……!
「お姉ちゃん。私のお姉ちゃん…!」
「ええ!フランのお姉ちゃんよ!」
私の一番大切な妹が優しく笑ってくれた。
レミリア編はこれでお終いです。
レミリアから見て、フランに何があったのかが少し分かりました。
・フランは200年閉じ込められていた。
・後半100年間は食事を与えられていなかった。
・記憶を失っている?
まだ分かっていないところは後の展開で回収していきたいですね。
・フランの正体は?
・叔父が死にたい理由。
フランの正体が何なのか分かるキーになりそうなのはこの方々です!
パチュリー:魔法で解決!パチェフラありですね!
アリス:魔法で解決!金髪×金髪の美しさ!ありですね!
ゆかりん:ちょちょっと境界をいじって解決!ゆかフラもいいかも!
さとり:想起で解決!こいし・さとり・フランの戯れを見てみたい!
レミリア編の文章を調整しました。ちょっと固いかなと思いました。
人物紹介
レミリア
妹を第一に生きていたお姉ちゃん。
やっと妹に会えました。
会えた妹は記憶を失っていましたが、
今後はずっと妹と一緒ですよ!たぶん!
運命を操る程度の能力。
能力が及ぶ範囲において望んだ未来を掴み取る能力。一つの対象にしか使えない。
レミリアが望んだのは、
『フランと共に生きていく』
つまり能力を使い続ける限り、フランと共に生きる為の障害を排除する場合にしか使えないが、その障害に対しては強い効力がある。
例えば、障害になった叔父を倒す際には必中必殺の効果を付与できたのと、そもそもフランが死んでしまっては共に生きることは出来ないので、食事を取らなくても生きられたのはこの能力のお陰。
近い未来の改変は難しく、遠くなる程改変しやすいが、食事を貰えなくて直ぐ死ぬ未来のフランを助けられたのは、吸血鬼が元々数年程度なら何も食べなくても生きていける生き物で、その数年で飲食無しで生きられるようレミリアの能力が補助して適合出来たから。
レミリアは死ぬまでフランと共に生きると願うので、ある意味、レミリアの能力は『フランと共に生きる程度の能力』かもですね。
フラン
閉じ込められていたヒロイン?
主人公のレミリアに救い出してももらった。
その正体は何でしょう?
叔父
最強の吸血鬼らしい。
レミリアを自身を殺せるかも知れない存在と評価していた。
フランに食事を与えないで死なせる事で、レミリアが怒りで更に強くなるのではと行動に移した。
詳細はメイド視点で書くかもですね。