※思い付きを書き連ねただけの一発ネタ。
最近よくある流行りのアレで、異世界転生することになった主人公。
テンプレ通りに転生特典を貰えることになったのだが、その内容は『レベリング』であった。
『レベリング』――想像がつきそうでつかないその詳細を知らせられぬまま転生させられる主人公。
そして始まったのは……ひたすら休まず行われる、デスマーチレベリングだった!?
休憩なし!睡眠なし!食事は戦闘しながら!催したなら垂れ流してね!
異世界に転生してからの一週間……心身を削って行われたレベリングによって、異世界においても上位に位置する力を手に入れた主人公。
これは、そんな主人公が織り成す、痛快勧善懲悪冒険譚である―――
ここ、どこだ?
暗くてよく見えないな……洞穴か何かの中?
でもかろうじて周りのようすは見える……あ、壁にカンテラ付いてる。これのおかげか。
えーっと他にあるのは、水と食料、それに……おぉ、武器!
よくある西洋風の鉄剣だな。日本男児としては日本刀が欲しかったところだけど、まぁ、贅沢は言うまい。
とかなんとか探索してたら、突然すぐ傍の地面が光だした。
なんだなんだと近づいてみた自分の目に飛び込んできたのは……ドアップで写った人の頭蓋骨だった。
「わっふぅ!?」
驚きのあまりすっとんきょうな声をあげながら後ずさる。
すると、その頭蓋骨の全体像が見えてきた。武器なし防具なしついでに衣服もなしのただの骸骨だった。
神経も無ければ筋肉も無く皮すら存在しない身で何故か立ち上がる骸骨。
そいつはそのままこちらへ向かってゆっくりと歩いてきて……
「う、うわぁ!?」
咄嗟に振るった鉄剣が当たって砕け散った。
……まぁ、考えてみればただのカルシウムなんだし、鉄の塊ぶつけられたらそりゃ砕けるよね。
テレレテッテッテー!
『名称未設定』のレベルが上昇しました!
お、なんかシステムアナウンスっぽい声が頭に響いてきた。
名称未設定……そういえば神様、転移するに当たって名前の変更もできるよって言ってたな。前の名前設定しても良いし、新しく名前考えても良いってことかな?
そっちは後でじっくり考えるとして、重要なのはもう一個、レベルアップだ。
と、色々考えてたらまた地面が光って、今度は服を来た骸骨が表れた。
服着ただけで他は何の変わりもなかっので、また鉄剣を叩きつけて倒す。
テレレテッテッテー!
またレベルアップ。
何となくわかってきたぞ。
神様が言ってたレベリングの加護っていうのは、ここで思う存分モンスターを倒しまくって、レベルを十分に上げてから異世界を楽しめって事だろう。
そうと分かれば話は早い。存分にレベリングをさせてもらおうじゃないか!
―― 一時間経過 ――
テレレテッテッテー!
また、あのレベルアップ音が鳴り響く。
もうレベル10くらいにはなっただろうか?
そのせいか、段々とレベルアップに必要な戦闘回数も増えていた。最初の方は一回戦えばレベルが上がっていたのに、今では5、6回は戦わないとレベルが上がらなくなっている。
こっちのレベルの上昇に合わせて、敵の方も徐々に強くなっているが、取得経験値の上昇率よりも必要経験値の上昇率の方が大きいらしい。まぁ、大抵のゲームではそうだったから、馴染み深いと言えば馴染み深い仕様だけれど。
ちなみに、最初は丸裸(全力)の人型が相手だったけど、今では中身が空洞の全身鎧が相手だ。
なんとなくだけど、『今の自分でギリギリ確実に勝てる相手』くらいの難易度の敵が出てきているような気がする。
それはともかくもして……いい加減疲れた。
レベリングするのは良いんだけど、一切休憩なしってどういうこと?
すぐ側にある水と食料に手をつける暇すらないんだけど。
……っていうかちょっとトイレいきたくなってきた。漏らす前に休憩時間がくれば良いんだけど。
―― 三時間経過 ――
おいどういうことだ神様ゴルァ!?
倒したとおもったら地面が光るの繰り返しで全く休む暇ないんだけど!?
そろそろマジで本当に漏らすから!お願いだから休憩時間を下さい!
―― 半日経過 ――
新たに出てきた空っぽ鎧を切り裂く。
テレレテッテッテー!
もはや聞き飽きたレベルアップ音。多分、レベル20には達した。
地面が光っている間に、水が入っているらしい水筒を素早く手に取る。
その辺りでモンスターの出現プロセスが終了し、完全に実体化する。
襲いかかってくるちょっと豪華になった――具体的には、何もなかった頭の部分に角のような装飾が生えていた――空っぽ鎧の攻撃を片手で捌きながら、ごくごくと水筒の中身を呷る。
飲めるだけ飲んだところで、水筒を放り投げて剣を両手で持ち、空っぽ角鎧を切り捨てる。
そろそろ腹も減ってきた。同じ要領で食料の方も食べてしまおうか。
そんなに水や食料を摂って、ご不浄の方は大丈夫なのかって?
……うん、アレだ。
人間、一回やらかすと躊躇がなくなるよね。
―― 一日経過 ――
目標をセンターに入れて斬撃……
目標をセンターに入れて斬撃……
目標をセンターに入れて斬撃……
段々とこの作業にもなれてきた。
本当ならもう疲れ果てて動けなくなっている所だろうが、レベルが上がり身体能力もそれに比例して上がっているおかげか、まだ力尽きることはない。
しかし其れにしても疲れにくすぎる気がする。異世界の基準なんてわからないからただの感覚だけど。
もしかしたら、レベルが上がる度に全回復でもしているのだろうか?
HP的なものについてはレベルアップの度にMAXまで戻っている――と考えると、ここまで休みなく戦えるのもわかる気がする。
だが、眠気だけは如何ともしがたい。
現代日本人らしく、数日の徹夜くらいならなんとかなる身体はしているが、かといってそれが辛くないかと言われればそれはNOだ。
いい加減そろそろ一眠りしたいのだが……
そう言えば、いつの間にか武器が変わっている。
元はただの鉄剣だったのに、今では立派な日本刀に変化していた。
どうやらこの武器、ただの武器ではなく僕の思念を読み取って変形する機能を持った魔法の武器であるようだ。
強く念じればその形に武器が変化するようで、他にも槍にしたり斧にしたり鎚にしたり……鎖鎌辺りまでは変化してくれたが、銃にはならなかった。そこまで万能ではないらしい。
最初の方は変化しなかったところを見るに、変化の多様性は自分のレベルにも関わっているのだろうか? これからのレベリングを終えた後なら、アサルトライフルやなんなら対空ミサイル辺りになってくれたりするのかもしれない。夢が広がるな。
しかし便利なのはむしろ防具の方だった。こちらも同じような仕様になっているようで、思い通りに変化するだけでなく、傷や汚れまで自動的に修復される。
おかげで心おきなく漏ら……いや、なんでもない。戦いに集中しよう。
―― 一週間経過 ――
「グゥゥゥウウウオオオオオ!!!」
ほとんど真っ暗な洞窟のなかに、大きなうなり声が響き渡る。
表れたのは真っ赤なドラゴン。
カンテラの光が届かないせいで、まともに見えるのはその巨体のなかでも足元に当たる部分だけだった。
一寸先も見えない闇の奥、ぎらりと鋭い眼光が光った気がした。
その瞬間、直感にしたがってドラゴンの背後へと回り込むべく全力で駆け抜ける。
その背後を、灼熱の炎が焼き払った。
チリチリとした熱気を背中に感じながらも、振り返ることはせず更に走る。
風切り音。即座に飛び上がり、と同時に飛び上がった自分の直ぐ下を長大な尾っぽが通過していく。
その体積と質量から考えれば、アレを受けるのは電車と正面衝突するに等しい。レベルアップを重ねて頑丈になったこの体をもってしても、容易く受け止めることはできないだろう。
そうして粗方攻撃を避けきったところで、ぐっと足に力を込めてタイミングを待つ。
火炎放射にともないちらりと見えたドラゴンの全体像から、目的の位置を予想。ぐるりとドラゴンがこちらに向き直る動きに合わせ――全力で、跳躍。
レベルアップの恩恵か、はたまたただ運が良かったのか――飛び上がった先にある、巨大なドラゴンの顎を見事捉えることに成功した。
「おぉッッッ!!!」
跳び上がった勢いそのままに、目の前の顎に蹴りをいれる。
ドラゴンだろうが人間だろうが、頭と顎が繋がっているという構造は同じ。
ならば必然、顎を揺らせば脳も揺れるという因果関係もまた、同様であろう。
「グォ……!?」
顎への跳び蹴りを決められ、ドラゴンは頭を抑えてグラグラと揺れる。
それは、今の自分にとっては、致命的なまでの隙であった。
ドラゴンの顎を蹴り飛ばしても止まらなかった体は、そのまま上昇を続け……着地ならぬ、着天。
眼下に晒されているのは、呆れるほどに無防備な――ドラゴンの、
「だらぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
列泊の気合いを込めて、渾身の一閃。
鱗を絶ち、皮を裂き、肉を食い破る感覚と共に、これを両断。
テレレテッテッテー!「名称未設定」のレベルが上昇しました!
気の抜けるようなシステムボイス。
直後、ドラゴンの巨体が地へと落ちる轟音が、洞穴の中に鳴り響いた。
◆
一人の少女が、土が剥き出しになった禿山の傍を歩いていた。
美しい金髪の髪が太陽の光を照り返し、鋭く尖った耳が風を捉えてピコピコと揺れる。
「あら……?」
その少女は、突如妙な気配を感じた。
その源を探るべく歩いて行った先には――
一人の青年が、ぐったりと地に倒れ伏していた。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄り、その安否を確認する。
規則正しい寝息を立てており、特に大きな傷があるようには見受けられない。
大事なさそうであるという事が分かってホッと息を吐く。
「あの、もし? ……もしもし?」
ゆさゆさと、やや強めに揺すっても、全く起きる気配がない。
まるで、何日間も休むことなく戦った果てに、ようやく眠りに就いたかのように。
「……仕方がありません。皆さんと合流して、一先ず街まで送り届けましょう」
――少女は知らない。その背に負った少年が、どれほどの力を秘めた存在なのか。
――その少年に関わったために、大きな運命の流れに、自身もまた巻き込まれる未来を。
――物語の幕が、上がる。
※ません