グラ・バルカス帝国、アニュンリール皇国と戦乱を超え、古の魔法帝国に備える世界に、精霊たちが迷い込む。

本作は『日本国召喚』と『戦闘妖精・雪風』の二次創作であり、クロスオーバー作品です。
多量の独自解釈が含まれます。『戦闘妖精・雪風』は原作準拠のつもりです。

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地球偵察ミッションのため、通路を飛び抜けた雪風とレイフ。
しかしその先は、彼らの知る場所ではなかった。




エモール王国のとある竜騎士。

彼は対魔帝連合軍への参加のため、相棒の風竜と共に海の上を飛んでいた。

 

『……む。』

 

相棒の風竜が、念話で彼に話しかけてくる。

 

「どうした?」

 

『前方から何かが飛んでくる。とてつもなく速い。これは……我らが使う光で何か言ってきているが、何を言っているのか全くわからん。まるで暗号だ。』

 

「それは……こちらから問いかけることはできないか?」

 

『語りかけること自体は可能だ。試してみよう』

 

 

 

黒い電子戦闘偵察機が通路を抜ける。

FRX-00 メイヴ、雪風。そしてレイフ。

 

キャノピーからフェアリイのものとは違う青い空が見える。

 

「桂城少尉、状態を確認しろ」

 

「システムオールグリーン、目視でも異常は見当たらない。索敵システムにも異常はないが、大佐機が見当たらない。レイフだけだ。」

 

「大佐機が見当たらない?あの様子なら、ほぼ同じタイミングで飛び込んだはずだ。」

 

「少しの差で間に合わなかったか、それとも、我々が地球とは別の空間に飛ばされたか。」

 

「後者は考えたくないな。地球用IFFを起動、人工衛星とのデータリンク開始。」

 

「了解。……これは。リンク接続できず。まるで人工衛星自体が存在しないみたいだ。」

 

零は機体をロールさせながら周囲を確認する。

 

「周囲に何もない。通路も、南極大陸もだ。」

 

「どうやら悪い予想が当たったらしい」

 

そこで警告音マルチディスプレイに〔UNKNOWN〕の表示。

 

「大尉、不明機だ。ヘッドオン。距離30000。こちらに向かってきているが、かなり遅い。レシプロ機並みだ。」

 

「敵機か。」

 

「IFF、反応ありだが不明、となっている。」

 

「どういうことだ?」

 

反応ありだが不明。これは妙だ。敵か、味方か、判断がつかない。

雪風は攻撃の意思を見せない。あれはジャムではないか、今乗っているのが雪風でないかのどちらかだろうか。

味方でなければ敵、それがフェアリイのやり方だが、射程の長いミサイルは既にない。

 

「このまますれ違って目視で確認し、敵意を見せたら反撃する。電子戦闘用意。」

 

「了解。」

 

零はスロットルレバーを前に倒し、アフターバーナーを点火させる。

雪風が加速、レイフもその後に続く。

 

 

 

『応答はない。不明騎、さらに加速した。恐ろしい速さだ。それに、光を放ってきている。とてつもない眩しさだ。我の光もかき消されている。』

 

 

 

雪風チームと不明機の距離はぐんぐんと縮み、ついには接近する。

高速ですれ違う。雪風は不明機を中心にロール。

 

「……驚いたな。大尉、今のを確認しましたか」

 

「確認した。ドラゴンのように見えたが」

 

「ぼくにもだ。ここがジャムの作った空間だとしたら、ジャムは人間のファンタジーでも読み始めたのか」

 

「さあな。知っていてもおかしくないとは思うが、わざわざこんな場所を作っておれたちを誘い込む目的がわからん。とにかくどこか、陸地を探すぞ。こんな海の上じゃ何もわからん。」

 

雪風はアフターバーナーを切り、巡行出力で飛行する。

 

 

しばらく飛行したところで、対地レーダーに反応があった。

艦艇だ。今までは古風な帆船や戦列艦ばかりだったが、今回のものはIFFに味方として識別される。その艦から通信が入った。

 

〔こちら、日本国海上自衛隊、護衛艦いずも。不明機へ、貴機の所属を請う〕

 

海上自衛隊だって?二人が同時に驚いた。自衛隊などという組織は、30年は前になくなっているはずだ。

 

「どうします、大尉?」

 

零は燃料計を確認する。かなりの時間飛んでいて、そろそろ心もとない。

 

「燃料がもうない。とりあえず応答する。」

 

「こちらはフェアリイ空軍、特殊戦、第五飛行戦隊、1番機、雪風だ。貴艦は”海上自衛隊”の所属で間違いないのか?日本海軍ではなく?」

 

〔本艦は海上自衛隊の所属で間違いないが……フェアリイとは、どこの国だ?〕

 

「フェアリイはフェアリイだろう。FAF、国連傘下の組織だ、日本も当然知っているはずだが?」

 

〔国連、地球なのか?そんな名は聞いたことがないが〕

 

FAFを、フェアリイを知らない。そして、自衛隊。どうやらこの日本は我々の知る日本とは異なるらしい。

ディスプレイには変わらず味方との表示がある。雪風は、少なくとも敵ではないと判断しているようだ。

 

「ここは、地球ではないのか?現在地を教えてくれ。」

 

〔地球ではないはずだ。現在地はグラメウス大陸、西の沖合40kmだ。〕

 

やはり地球ではないらしい。しかし、この日本は地球を知っている、地球の日本のようだ。どういうことだ?

 

「……こちらは燃料が心もとない。着艦の許可をくれ。」

 

「いいんですか?」

 

「この残燃料じゃ、着艦しなければどの道海水浴だ。そうなったら、もうどうしようもない。雪風も、あの艦を敵とは思っていないようだ。」

 

しばらくの待ち時間ののち、着艦の許可が出る。

 

「降りられるかな」

 

「問題ない」

 

雪風が速度を落としていずもに向かい、レイフもそれに続く。

甲板が空いているのを確認したのち、艦上空で翼を根本から立てて減速、垂直にすとんと降りる。

 

「すごい降り方だ、前代未聞ですよ。」

 

「前に地球に行ったとき、アドミラル56でやったことがある。」

 

艦から自衛隊の人間がぞろぞろと出てくるのを見ながら、零はヘルメットを外した。

 

 

 

「驚きましたね。本当に創作物の世界だ。」

 

二人はその後、艦の責任者と情報交換をした。

日本が地球に居た国家で、ここは転移してきた異世界であり、ワイバーンなどの生物や魔法が実在する。恐らくこの日本のいた地球と自分たちの世界は平行世界の類だろう。そんな非常識な内容を聞かされたが、ジャムの方が余程非常識なので少し驚くだけで済んだ。ワイバーンは物理的な生物種で、魔法は人間が使えるものだ。

 

日本側の責任者は、バックアップの代わりに古の魔法帝国との戦闘の協力を要請してきた。答えは一旦保留し、二人は雪風に戻ってきた。

給油はまだなされていない。

 

「さて、どうするか。」

 

給油がされなければどの道帰れないし、雪風の機能も停止する。しかし、相手はジャムではない。この世界についてもまだわからないことが多いままだ。自衛隊の行動理念やらもきちんとあるあたりを見るとジャムが用意した空間ではなさそうだが、そうなると帰る見込みも薄くなる。帰る手段が見つかるまでの間だとしても、長期間日本の一部となるというのは、雪風は認めないだろう。機密保持のために自爆しかねない。

 

そこで零は、雪風のディスプレイに表示が出ているのに気付いた。

ENGAGE。その表示が点滅している。同時にエンジンの音が弱まり、翼が畳まれ始める。

戦え、と言っているのか。それと同時に休止態勢。零には雪風の考えがわかった。

 

 

 

日本に協力することを決め、機銃弾と燃料、日本製のミサイルの補給を受けて雪風とレイフは飛んでいた。すでに魔帝復活のしるしは出ている。

迎撃地点には他にも多数の戦力がいた。

護衛艦、戦列艦、WWIクラスの艦、二次大戦時の日本艦に酷似した艦、近未来的な戦艦のような艦、ジェット戦闘機、複葉機、ワイバーン、風竜、やけに遅い直線翼のジェット機。

 

「すごい光景ですね。ここまで来ると壮観だ。」

 

「魔帝の戦力の情報からして、戦力になるのは実質自衛隊だけだ。他はいないよりはまし、帆船なんかは居ないほうがましだろう。衝突の危険がある。」

 

そこで警告音。正面から航空機。ジェット戦闘機の速度。

その機がミサイル発射。雪風と、データリンクしている他兵器が同時に敵と判定する。

 

「来たぞ。エンゲージ。」

 

雪風とレイフが加速。アフターバーナーを点火して高速で上昇、降下。

敵機ロックオン。敵機は回避機動を取らない。電子妨害で気づいていないのだろう。後ろから青い光を吹き出しながら、ミサイル発射後の退避機動を取っている。まっすぐ飛んでいるようなものだ。

ミサイルを使う必要もなかった。ガンで撃墜、飛び抜ける。レイフは無人機ならではの急旋回でさらに攻撃。後続の敵機から機銃弾や光弾が放たれるが、当たらない。ミサイルも速度で振り切って高速上昇。

 

周囲でも戦闘が始まっていた。護衛艦の砲撃と対空ミサイルが敵機を次々に落とし、放たれるミサイルを迎撃する。空ではあらゆる航空戦力が乱舞する。自衛隊機が敵機を撃墜。他は、集団で囲んで待ち伏せて撃墜している。上等だ。

 

そのまま戦闘は続く。数の優位に押されて残弾が危ういと見ると、敵機のすれすれを飛行して敵のミサイルで敵機を落とす。敵機は随分と減っていた。

 

そのとき、奇妙なものが現れる。ディスプレイに巨大な反応。艦艇クラスだが、ごく低速の航空機といえる速度で航空機の高度を飛んでいる。

戦域に侵入。メルセデス・ベンツのマークのようなものが空を飛んでいる。

砲やミサイルを撃ちまくり、機関砲CIWSのようなものをまき散らす。

 

「なんだ、あれは。」

 

「空中戦艦、といったところでしょうか。バンシーのようなものかな、いや、もっと使い勝手はよさそうだ。自由に動いている。」

 

雪風もミサイルを撃つ。レイフが突進してガン攻撃。敵艦表面の光る幕が波打つだけで、効いているようには見えない。

 

「くそ、硬さも艦艇並みか。」

 

護衛艦の砲撃も、損傷は与えているが軽微のように見える。

そこで、雪風のディスプレイにログが流れる。自衛隊機から通信。

 

〔貴機からハッキングを受けている。どういうことだ。〕

 

ハッキング?零には雪風の考えがわかった。

 

「それは支援要請だ!ファイアコントロールを明け渡すか、対艦ミサイルを発射しろ!」

 

一瞬の逡巡ののち、F-2が93式空対艦誘導弾を射つ。無誘導で発射。

雪風がそのコンピュータにインターセプト、敵艦へと誘導する。

16発の対艦ミサイルが敵艦へと突進、そのまま命中―――

 

大爆発。対艦ミサイルのものではない。

巨大な爆炎、衝撃。その感覚に、零は覚えがあった。

ディスプレイに新たなアイコンが現れる。最初から敵を示す表示。

JAM TYPE-2。

爆発の中に黒い影が見える。こちらへ旋回し、向かってくる。あの爆発は、ジャムの大型高速ミサイルだ。

 

〔なんだあれは!〕

 

味方機のどれともつかない通信。零は思わず口に出していた。

 

「あれは、ジャムだ!」




連載は未定


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