麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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326 十頁「何もしないで……」

 自分に害を与えるかもしれない存在に、害を与えることはしないと言質を取ったスマラは船内に戻って本を開いた。

 まだ体の調子は本調子とまでは行かないが、普通に動く分には問題ない。ならば読書だ。

 

 それから少し経って、サンジがスペシャルドリンクを持って来てくれた。

 スマラはお礼を言ってから喉に通す。昨日のお昼以来の飲み物だったせいか、いつもより美味しく感じる。

 スマラは一味に襲い掛かる厄介ごとなど気にしないで、読書を楽しんで過ごした。

 

 

 

 

 

 船内に居るからと言って、外の状況が分からないわけでもない。見聞色の覇気を少し展開すれば生物の反応が返ってくるし、外から聞こえてくる会話に耳を傾けると大体の状況は理解可能だ。

 なので、ウイスキーピークで集めた本(犯罪者なので本を貰っても罪悪感はない)を読んでいたスマラも次なる島にたどり着いた事が分かった。

 

 リトルガーデン、スマラも名前だけは知っている島。

 ジャングルが生い茂り、古代からの生態系がそのまま残っているとある探検記には書いてあったのを覚えている。そして、その名前の由来も勿論。

 

 サンジがキッチンに入って来るのがチラッと見えた。島を探検するルフィにお弁当を作っているそうだ。

 スマラも何かいるか?と聞かれたが、特に空腹感はないので丁重にお断りする。

 サンジが弁当を作り終えると、ルフィとアラバスタの王女ビビがカルガモを連れて船から降りたのを感じ取った。更にサンジとゾロも船を降り、船にはスマラとナミにウソップだけとなる。

 

 静かになった船でスマラは読書に集中しようとすると、船の近くに大きな反応を感じ取った。

 かなり強い。偉大なる航路でも中堅レベルの反応だ。

 偉大なる航路の中堅レベルと言ったら、この一味には早すぎるレベルだが、スマラには弱者なのは変わらない。別に放っておいても良かったが、船が壊される可能性が浮上してくるのでリュックサックの中に本をしまい込み外に出る。

 すると、巨大な人間が居た。巨人族だ。

 

「やっぱり巨人だったのね」

 

「す、スマラ助けて…」

 

「後生だから見捨てないで下さい」

 

 唯一船に残っていたナミとウソップは、初めて見る巨人に恐怖しか抱いていない。スマラを神様の様に泣きついてくる。

 説明は無し、でも敵意は見せない巨人にスマラはナミとウソップを引きはがしながら尋ねてみた。

 

「この島に居る巨人と言ったら赤鬼の方?それとも青鬼?」

 

「おぉ!!俺たちの事を知っているのか娘!!我こそがエルバフ最強の戦士ブロギーだ!ガハハハハハ!!!」

 

「赤鬼の方ね。それで、この船に一体何の用なのかしら?」

 

「酒はあるか?こんな島だからな、たまに来る者から貰うしかないのだ」

 

 如何やら敵対心はなさそうだ。しかし、要望はお酒。

 スマラはナミの方を向いて「お酒はあるのかしら?」と尋ねると、全力で頷いた。

 家主の承諾を取ったスマラはブロギーにあると答える。

 

「おぉ!!そうか。それは良かった。では、もてなすぞ客人」

 

「いいえ。私は結構よ。代わりに、この2人がついて行くそうよ。じゃ、あとよろしくね」

 

「……へぇ?ちょっとスマラ!!!」

 

 船の安全を確保したスマラはブロギーの誘いを断り、代わりにナミとウソップを生贄に捧げて船内に戻って行く。ナミとウソップがスマラに抗議しているが無視だ。巨人との交渉はしてあげたのだから、ゆっくりさせて欲しいものだ。

 スマラは船内に戻ると、また読書を再開する。ドスドスとブロギーの足音が遠ざかっていくのをBGMにしながら。

 

 

 

 

 

「たっだいま~~!!!ナミさん!!ってあれ?スマラさんしか居ねぇ」

 

 ジャングルの獣や木々がざわめく音をBGMに読書をしていたスマラの元に、うるさい者が帰って来た。狩り勝負に出ていたはずのサンジだ。

 サンジは船内にスマラしか残っていない事を不思議に思う。ナミとウソップが船から降りるはずが無いと分かっているからだ。

 取りあえずはと、サンジは冷蔵庫から冷えた飲み物を取り出し、作り置きしていたクッキーをスマラの前に持っていく。

 

「どうぞ、おやつです」

 

「…ありがと」

 

 本から目を逸らさずにお礼を言うスマラ。サンジはそれだけで幸せの表情を浮かべた。

 がしかし、現状報告は忘れていない。サンジはスマラの機嫌を損ねないように慎重に会話を始める。

 

「スマラさん、ナミさんとウソップが居ないみたいですが、何か知ってますか?」

 

「……この島に住んでいる人のもてなしを受けているんじゃないかしら?」

 

「もてなし?安全なんですか?」

 

「…敵意は感じなかったわ。大丈夫じゃないかしら」

 

「そうですね。いざとなったらウソップがナミさんの身代わりなれば…」

 

 スマラが慌てていない事から、サンジも取りあえず落ち着く。

 サンジはスマラの読書姿を眺めて顔をにやけさせながら、ただひたすら他のメンバーが帰って来るのを待つことにした。

 

 

 

 二時間か三時間ほど経った。冒険好きのルフィや方向音痴のゾロはともかく、まだ誰も帰って来ていない。

 狩ってきた恐竜を使った料理の支度をしていたサンジは、段々と不安になって来た。

 

 

「やっぱりナミさんかビビちゃんに何かあったんじゃ?」

 

「…………」

 

「だとしたら、俺はのんびりと料理の支度をしてる場合じゃねぇな」

 

「……………………」

 

「よし、探すか。スマラさんも一緒に来て下さると助かるんですが……」

 

 誰も帰って来ない事にしびれを切らしたサンジは、仲間を探しに出掛けることにした。スマラを連れて。

 サンジから「ついてきてほしい」と聞かれたスマラは、始め「何言っているのかしら?」と内心で首を傾げる。

 

「何故かしら?ジャングルの探索ならあなた一人でも問題はないでしょう」

 

「確かにそうですが……。心配なんですよ。こんな中に一人船に残すことが」

 

「……私はあなた達よりも遥かに強い自信があるわ」

 

「それでもですよ。強さは関係ない。ただ、俺の気持ち的問題です」

 

 それならどうして初めからこの船に残っていなかったのかしら?とスマラは言葉を飲み込む。そしてサンジの目をみる。

 表情は真剣そのもの。噓をついている様には見えない。

 スマラはため息をつくと、サンジの誘いに乗った。

 

「…分かったわ。ただし一時間だけね。それ以上は知らない。勝手に船に戻るわ」

 

「ありがとうございます。では、行きましょうか」

 

 サンジがスマラに手を差し出す。エスコートしてくれるらしい。

 が、他人の肌に触れるのは主に攻撃の時だけなスマラは、きっぱりと拒否。女性扱いをされて嬉しくないわけでもないが、何処か調子が狂う。今までスマラと接した人間は『バケモノ』扱い。家族ですら『道具』扱いだったから………。

 差し出した手を拒否されたサンジは、特にめげることもなくスマラの隣り並ぶ。そして、適当にジャングルの仲に進み始めた。

 サンジはスマラに仲間の探索は頼まない。見聞色の覇気と言う名前は知らなくても、そういった事が出来るとなんとなく気づいているが、そこまでは踏み込まない。これ以上頼み込むとスマラの機嫌が悪くなると分かっているからだ。

 

 

 

「お~いナ~~ミさ~ん!!ビ~~ビちゃ~ん!!」

 

 サンジの仲間を呼ぶ声がジャングルに木霊する。返事はグルルルルと言う唸り声だけ。

 前方にサーベルタイガーが見えた。よだれを垂らし、完全にスマラとサンジを捕食対象とみている。

 

「ガァルル!!」

 

 と、サーベルタイガーが飛びかかってきた。サンジがなんでもないようにスマラの前に出ると、サーベルタイガーに蹴りを一発。

 大きなサーベルタイガーは頭にコブを作り、サンジの足で一発ノックアウト。サーベルタイガーはサンジとスマラの足となった。

 

「おーい!返事してくれー!好きだ~!!」

 

 

 サンジがおかしな呼びかけをしながらジャングルの中を移動する。サーベルタイガーの上に乗って。

 流石現地生物、人間だと時間のかかる足場をいともたやすく駆け巡る。

 サンジを前に、スマラはサーベルタイガーに横乗りになり読書の続きをしていた。サンジとの約束は同行のみ。移動に専念しなくてもいい状況なのだから、何をしていても文句は言われない。揺れて酔わないのか?大丈夫だ、問題ない。

 

 ジャングルを無造作に駆け巡っていると、サンジが不自然な建築物を見つけた。サーベルタイガーから降り、逃げるように去っていくサーベルタイガーを尻目に建築物を観察する。スマラも本から目を離して見てみる。

 ジャングルの少し開けた場所にポツンと存在している白。目分量正方形の白い塊だ。塗装なのか所々流れ落ちているように見える。

 

「なんだこりゃ?」

 

「簡易的な家、明らかに可笑しい人工物ね」

 

「とにかく入ってみよう。もしかしたらこの中に居るかもしれねぇ」

 

 と、サンジはドアに近づいた。近づいてみると更に不気味さが上がってくる。壁の素材とドアやドアノブの素材が全く同じなのだ。何かの素材を削って作った入れない建造物と言われても不思議ではない。

 ドアノブをひねると、問題なく開く。罠類なども作動反しない。

 建物の中も外見と同じく、同じ素材で作られている。乏しく置いてある家具も壁から生えるように。その他はテーブルクロスとティーセット、天井からつりさげられている金具に光源のロウソク、バスケットと観葉植物。

 

 ここに住んでいる。ではなく短期滞在に用意された建物だと判断できる。

 では一体誰が?何のために?と続く疑問がくるが、スマラは硬いソファーに腰を下ろした。ここまで来るのにサーベルタイガーの上だったので、少しばかりか疲れているはず。サンジはちょっと休憩とばかりに置いてあるティーセットから紅茶を注ぎ始めた。

 

 

 

 ちょっと休憩のつもりが大分時間が経ってしまった。スマラとしてはここから動きたくなかったのだが、サンジが我に返ってしまう。

 こんな事をしている場合じゃない、とこのくつろぎスペースに愚痴を言いながら建物を出ていこうとした。とその時、「プルルルル」と何かが鳴っている音が聞こえてくる。

 ジャングルの外からではない、建物の中からである。くつろぎスペース使用料金の催促であろうか?

 部屋を見渡してみると、バケットの中から聞こえて来るではないか。サンジは何のためらいもなくバケットの中から中型の電伝虫を取り出してテーブルに置くと、受話器を取り上げた。

 

「へいまいど、こちらクソレストラン。ご予約で?」

 

 突っ込まさせて欲しいわ。レストランではないのにレストラン?しかも自ら罵倒した名前で………。

 癖が抜けていないのかしら?って、そもそも知らない人の電伝虫を出るものじゃないわ。

 

 サンジが、何のためらいも無く電伝虫の相手に対応し始めた事に驚きを表すスマラ。

 とは言え、こんなジャングルの中にあるくつろぎスペースだ。明らかに不自然な場所への連絡。相手の事が気になったスマラは耳を傾ける。

 サンジの挨拶に怒っている会話相手だが、サンジが誰だ?と尋ねると相手は名乗った。

 

「おれだ、Mr.0だ」

 

 その名を聞いた途端、スマラの頭はフル回転する。

 

 Mr.0……記憶に該当者なし。…類似者発見。

 ということは、あのウイスキーピークに居た人達と同じグループ。数字の関係性と態度からしてかなりの上位者。もしかしたらトップ?

 なら、この人に船は襲われていると判断できる。そして、ボスが連絡をして来たこの建物は敵の陣地。

 はぁ、面倒な場所に迷い込んだものね。

 

 と、そこまで考えた所で敵対反応が返ってくる。窓に二体。

 顔を向けるとメガネを掛けたラッコ?とハゲタカ?ホタテ型の刃物に機関銃をこちらに向けている。

 面倒だが敵対者には反応しなければならない。スマラは取りあえず自動反射で攻撃を……。

 

「クソトリ、てめぇ誰に銃を向けてんだよ!!!」

 

 女性に武器を向けたことに怒ったサンジがあっという間に片付けてくれました。流石ナイト。この先こいつの近くに居れば全て片付けてくれるのでは?とスマラは買い物の護衛者にと真剣に考えた。

 

「スマラさん無事ですか?」

 

「えぇ、助かったわ。この先頼む事があるかもしれないけど、引き受けてくれるかしら?」

 

「喜んで!!」

 

 バカだ。内容も確認しないでスマラの頼みを引き受けた。

 とサンジが何かを見つける。

 

「ん?なんだこりゃ?」

 

「永久指針ね。場所は……アラバスタ、良かったじゃない」

 

「へーこれが。それにしてもスマラさんも嬉しそうですね」

 

「嬉しいわ。だって、アラバスタ王国に行くのは初めてだもの」

 

 顔をほころばせるスマラ。理由は行ったことのない島だったから。アラバスタ王国は貿易も盛んな大国。世界会議にも出席出来る超大国だ。さぞ本が沢山あるのだろう。

 スマラが喜ぶ理由など、単純だった。

 

「じゃあ、私はこのくらいで船に戻るわ」

 

「え?土産もできたんだし、後はナミさんとビビちゃんを見つけるだけなのに」

 

「初めに言ったわよね。一時間だけだと。もう一時間と少し経っているわ」

 

 スマラはポケットの中に入れてある懐中時計を取り出して、サンジに見せる。実に凝った細工がされてある懐中時計だ。本以外の事に無関心なスマラが持っているとは思えないランク。

 サンジは約束なら……と引き下がる。ついでに船まで送ろうか?と親切心を見せるが、

 

「船の位置は覚えているの?………分からないのでしょう。私は迷わずに戻れるから心配ないわ」

 

「しかし……」

 

「ここが敵の拠点なのよ。敵が近くに居ないってことは彼らの近くに居るのでは?」

 

「はっ!!?ナミさ~ん、ビビちゃ~ん今助けに行くからねぇ~~~」

 

 スマラが意識誘導を行うと、サンジは目をハートマークにして飛び出していった。スマラの事はもう忘れている。

 実に簡単で単純。そのうち敵に惑わされなければいいのだけど?とスマラはサンジの心配を頭の片隅に思い浮かべながら、自分も船に戻る方向へ進み始める。

 本を片手に。ジャングルの中で足元が危険だろうがスマラには関係ない。

 木々や獣のざわめく音をBGMにスマラは船に戻っていく。

 

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