麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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身体が痛ったい!!特に首!!可笑しい体制で寝たかなぁ?


327 十一頁「診察紛い」

 スマラが船に戻り読書をしていたら、他のメンバーが帰って来た。声的には全員一緒みたいで、ジャングルの中にあった敵も倒したらしい。

 ナミとルフィがスマラに声をかけてくれ、適当にあしらうと舩は動き出した。

 

 動き出して直ぐ、外が騒がしくなる。と同時に船が大きく揺れた。また何か起こったようだ。

 スマラには関係がないので、のんびりと読書を続ける。が、急に暗くなってしまう。

 外の喧騒から察するに、巨大な生物に食べられたらしい。女性陣は焦っているが男性陣は焦っていない。

 何か打開策があるのかもしないが、念の為スマラは本を閉じて甲板に出る。

 

 そして、船が飛んだ。後方からの巨大なエネルギー刃に押し出されれるようにして。

 

 『覇国』……巨人の中でも気性の荒い者達の集落エルバフに伝わる最強の槍。あんなのが起こす技よりもエネルギー量が桁違い。コンディションが悪いことや二人で発動していることも考慮して考えると、恐ろしいとしか考えられないわ。

 私が防御に徹してもやり過ごせるか…………。三十年も昔のことだと考えると、あいつも、あんなのも、もう相手に出来ない。

 もしこの船が新世界であそこに行くのなら私は…………。

 

 

 

 スマラがそんなことを考えていると、周りは巨大生物の口の中から脱出したことと、エルバフの戦士の力を実際に目に出来た事にお祭り騒ぎ。特にルフィとウソップのはしゃぎようが物凄い。

 絡まれてはいけないと船内に戻ると、サンジがデザートを作っていた。出来上がったプチフールをおやつに読書を再開。

 外から慌ただしくルフィとウソップが入って来て、競争するかのように食べる。己の分をもう食べ終わったのかルフィがスマラのお皿を狙っているが、スマラのゴム無効化攻撃が嫌なのか見るだけ。代わりにウソップの分を食べる。

 

 日常と言ってもいいほどののんびりとした空気。しかし、そういった時に事件は発生する。

 ウソップとルフィが喧嘩していると、外からビビの慌てた声が船中に響いた。ナミがひどい熱で倒れたらしい。

 一同はゾロと(ゾロだけでは心配なので)スマラを進路の見張りに立てて、ナミを女部屋に運び込む。スマラがすれ違いざまに様子を見ると、サンジが一番慌てていた。

 

 緊急事態なので、スマラも指示に従って甲板に出て読書をしていると、ゾロが声をかけてくる。スマラの事を警戒している節があるゾロにしては珍しい。

 

「なぁ、聞きてぇ事があるんだが、いいか?」

 

「……どうぞ」

 

「偉大なる航路には、鉄を切れる剣士ってのはどれくらいいるんだ?」

 

 スマラが懸念していた内容ではなかった。ただ単純に偉大なる航路のレベルを知りたいという思いのみ。

 私が知ってるだけの情報なら、と前置きを入れてスマラはゾロの望む情報を提供していく。こればかりは世界中を見て回らなければ難しいと判断したからだ。

 

「まず、世界最強の剣士ジュラキュール・ミホークね。世界最強というだけであって、何でも切り裂くわ」

 

「……知ってる」

 

 ゾロが顔を歪めて胸に手を当てて答えた。ミホークとやり合った事があるのだろうとスマラは推測する。

 が、一つ正しておかなければならない事があった。

 

「知ってはないわね。多分、手加減どころの話じゃなかったはずよ。彼の剣術は豪と柔を即座に切り分けている。もっとも、それ以前の問題があるのだけどもね」

 

「それ以前?」

 

「それは自分で見つけないとダメよ。それで、鉄を切れる剣士だったわね。半分くらいまでなら早々居ないでしょうね。半分を過ぎたあたりからはそれがデフォルト。取りあえず、鉄を切れるように頑張りなさい」

 

 終了。これで話は終わりのはずだった。

 だが、ゾロがふと疑問に思った事を口にする。

 

「お前は、剣も使えるのか?」

 

「……素人よりはマシってところね。剣術の本を読んだことはあるもの」

 

「じゃあ、俺とお前が今戦ったらどっちが強ぇんだ」

 

「能力もありならまず私が圧勝ね。悪魔の実の力無しの勝負なら……多分私が勝つわ」

 

 剣士としてはかなりの部類にはいるゾロに、純粋な剣術勝負で勝てると言うスマラ。流石にゾロもカチンときた。

 

「あぁ!?どうしてだ?」

 

「剣術以前の問題だもの。こんな腕だけど、力は貴方と互角以上よ。それに……」

 

 武装色の覇気について語ってもいいのかどうか?一瞬躊躇するスマラに、ゾロが言葉を引き継いだ。

 

「ゴムを無効化出来る力か?」

 

「そうね。これについては情報提供しないわ。自分で見つけて……っと進路は大丈夫なのかしら?」

 

「大丈夫だ。真っ直ぐあの雲に向かって進んでいる」

 

「は?雲?」

 

 一瞬、ゾロが何を言っているのか理解不能だった。

 普通進路と言えば、羅針盤もしくは偉大なる航路なのだから記録指針、永久指針を見るはず。

 しかし、この男は何と言った?雲だと?

 

「ちょっと待って、それだと……」

 

「おーい!!スマラちょっとナミ視てくれ!!」

 

 ゾロに間違いを指摘しようとすると、ルフィが邪魔しに来た。ルフィはスマラの知識を借りて、ナミを一刻も早く診てもらおうと手を引っ張って船内に連れていく。

 ルフィはなんの悪くもない。なので強くも出れない。

 船の進行方向が間違った方向に進んでいる事をゾロに伝えれないまま、スマラはナミが寝かされている女部屋に連れていかれてしまった。

 

「ねぇ今この船は……」

 

「連れて来たぞ!!」

 

「スバラざん!!!ダビさん死ぬのかな!!!」

 

 ゾロに伝えられなくても、そのほかのメンバーに伝えられたらいいや。と、もう一度伝えようとすると同時に部屋にたどり着いて、サンジに泣きつかれてしまう。

 その結果、もういいわ!!と投げ遣り状態になってしまうスマラさん。この船が進路からズレても知っちゃこっちゃねぇ!!と進路がズレている事をそっと胸の奥にしまい込んだ。

 

 取りあえずスマラは、泣きついて来るサンジを引きはがし、男どもに部屋を出ていくように言った。

 

「何で?」

 

「診察をするからよ。服を脱がすから出ていきなさい」

 

 パッと見ただけで病名が分かるならとんでもない名医だ。普通の医者でもキチンと診察して……と手順を飲む。この馬鹿どもはスマラに何を期待していたのだろうか?スマラが出来るのは飽くまでも診察紛いのことだ。ある程度の予測は可能だが、実際に医者に診てもらわなければ確実な判断ができるはずもない。

 スマラはナミの体を起こして、ビビに手伝ってもらって服を脱がせていく。診察に必要な道具などはあるはずもないので、能力で補える部分は補って、それでも無理なことは省いて診察を進めていく。

 

「熱は?」

 

「40度を超えているはず…です」

 

「高熱…息遣いも荒い……倒れるくらいだから身体も怠いはず。皮膚に異常は……」

 

 ビビは驚いていた。

 初めてコンタクトした時は、高圧的な感じの女性だと思っていた。船内の一角に座り込んで航海の仕事もせずに読書に呆ける人。ナミさんやルフィさんにどんな人か聞いたら、ルフィさんが船に連れ込んだ旅人。悪い人じゃない。ビビには正直に言ってただの怠け者にしか見えなった。

 そんな評価を改めなければならなくなったのは、ウイスキーピーク出港間際。バロックワークスの副社長が船に現れて船は緊迫した状態。謎の悪魔の実の力で、みんなの武器が手元から落とされビビは絶体絶命だと思っていた。しかし、そこに現れたのが彼女だ。スマラは颯爽と副社長を怯えさせて彼女には手出しをしないという言質を取って帰っていく。

 副社長が怯えるほどの実力者。バロックワークス全体で見ても敵わないと思わせ、ボスである王下七武海クロコダイルに注意するべきだと伝えさせる程の実力を持っている事を理解できた。

 そして彼女の力がただの強さだけでない事を今理解出来た。本を沢山読んでいる為か博識で、本職でないと言いながらもナミさんの診察をきちんとして……。

 

「痣?……この斑点模様はケスチア!?」

 

 誰も分からなかった病名を当てた。医学の知識は無くとも、普通の病名なら知っているビビでも聞いたことのない病名。表情があまり変わらないスマラが少し焦っている様に見えたビビは、自身も焦ってスマラにどんな病気か尋ねる。

 

「聞いたことの無い病気……どんな病気なんですか?」

 

「…外で待機している人も呼んできなさい。纏まって説明するわ」

 

 そう言われてビビは部屋の前に待機していたルフィ、サンジ、ウソップを呼んで来る。目の前で待機していたのか、ビビがドアを開けるなりなだれ込むように入って来た。

 一番にルフィとサンジがスマラに引っ付いて来る。それを華麗に避けながらスマラは静かにするように言い放つ。静かになるとスマラは出来るだけ噛み砕いて説明を開始した。

 

「まず、このままでは彼女は死ぬわ。病名はケスチア、古代に流行ったと言われている死の病気。5日病とも言われ、発病して5日後に死ぬの。もっとも私の知る限りの知識から判断したから、もしかしたら間違っている可能性もあるわ。医者に見せることは絶対よ」

 

 スマラの診断を聞いて、一拍遅れて反応する。熱が高いとは分かっていたものの、死に至る物とは考えておらずサンジとルフィは勿論、ウソップとビビも取り乱す。

 

「そ、そんな!!」

 

「ナミが死ぬのか!!?早く医者に見せるぞ!!」

 

「ダビザン!!!」

 

「ヤベぇ!!ナミが死んじまう!!」

 

 煩い。健康なスマラですらうるさいと感じるほどの騒ぎよう。伝えられた内容を考えると仕方のないことだが、ここには死にかけの病人が寝ている。

 

「病人の身体に響くわよ。黙りなさい」

 

 この一言で一同は黙り込む。焦っているのは確かだが、ナミの身体に響くと言われると騒げなかった。

 急いで船を進めるのは確かだが、どうにかナミの病気を和らげないかと考えていると、ウソップが名案を思いついた。

 

「スマラならなんとか出来るんじゃ無いのか?ほら、能力でズバーっと」

 

 ウソップの言葉に一同は希望に満ちた表情をスマラに向ける。そんな彼らにスマラは死刑宣告を下す。

 

「無理よ。自分の身体ならまだしも、他人の身体は難しいわ。失敗して身体がはじけ飛んでも知らないわよ」

 

「「「「…………………………………………」」」」

 

 病気を治すつもりでやったのに、治すどころか身体がはじけ飛ぶ可能性がある。そう言われて、こんな希望には縋れない。そう思った一同を見ると、スマラは部屋から出ていった。

 あ、船が間違っている方向に進んでいる事を知らせるのを忘れてた。スマラはため息をつくと、ここまでくれば自分の落ち度、能力で進路を正しい方角へ直そうと考える。

 そして、甲板に出ると、

 

「進路……異常なし」

 

「異常ありありよ」

 

 ダンベルを片手に持って筋トレをしていたゾロの呟きに、スマラは呆れ声で言い返した。そして、傍に置いてあった永久指針をゾロの目の間に持って来て、丁寧に説明をする。

 

「いいかしら?偉大なる航路はこの指針だけが頼りなの。これ以外は信用したらダメ。雲なんて論外よ」

 

「あぁ?でも船はあの雲を目指して……」

 

「あんた何見てたのよ!!」

 

 いつの間にかナミがスマラの側に立っていた。顔は赤く息も荒い、立っているだけでも精一杯なのか、フラフラとしている。今にも倒れそうだ。

 病人に無理はさせられない。スマラはナミを支えて寝ていろと言う。

 

「私の診察を聞いていなかったのかしら?死にたくなければ寝ていて安静にしていた方が身のためよ」

 

「…はぁ……はぁ」

 

 さっきまでゾロと言い争いをしていたのに、もう体力がなくなったのかスマラに返答へのない。このまま部屋の連れて行こうかしら?と考え始めて足を動かした時、ナミが待ったをかけた。

 

「……空気が変わった」

 

「空気?……特に何も感じないのだけれど?」

 

 急にナミが何かを感じ取った。ナミに言われてスマラは見聞色の覇気を使って辺りを調べる。が、何も見つからない。スマラはナミが何を感じ取ったのかわからなかった。

 

「正面から大きな風がやって来るの。みんなを呼んできて」

 

「……分かったわ。呼んできてあげる」

 

 スマラはとりあえずナミの言うことを信じた。予測不可能な偉大なる航路なのだ、こうも予測をしているのは初めて見たが、指示に従って損はない。何もなければそれでいいし、何かあれば事前に回避出来てラッキー程度だ。

 ゾロが船内にいた連中を呼び出し、ナミから聞いた指示を伝えていく。スマラはナミに肩を貸して支えているので仕方なくそのままの状態で他のメンバーが船を動かしているのを眺める。

 何も無いのに進路変更(本当は進路がズレているから進路変更は必然なのだが)に疑問を抱きながらもそれぞれの役割を果たしていく。

 

 何も起こらないまま進路変更が完了し、中に残っていたビビが出てきた。その顔は覚悟が決まっている顔だ。早く船内に戻りたいなぁっと思いながらビビの覚悟を耳に入れる。

 一国の王女様の覚悟だ。相当なものなのだろう。

 そう聞いていたのだが、ビビは一刻も早く国に帰らなくてはならない状況で、この船の最高速度を取った。つまり、ナミを医者に見せた後でアラバスタ王国に帰るとういう進路だ。

 

 自身の国の国民よりも目の前の人を助けるのが先って訳ね。正解か不正解、どちらに向かっているのかはまだ分からない。私好みの物語みたいな展開になってきたじゃない。終わりが喜劇か、それとも悲劇か。何処に向かっているのかしっかりと見届けさせてもらうわ。まぁ、どちらでも構わないのだけれどもね。

 

 そろそろ船内に戻りたいなぁとスマラが考えていると、ルフィの叫び声で後方の異常事態に気が付いた。同時にナミがスマラに全体重を傾ける。

 

「ごめん。私やっぱりヤバいみたい」

 

「………えぇ、当然よ。今みたいなことは起こらせない」

 

 スマラはそう言ってナミを安心させた。この船に情が湧いた、訳では無く単に自分の載っている船が壊れたら自分も死ぬからだ。

 スマラが後方を振り向くと、スマラでは手に負えないレベルのサイクロンが発生していたのだ。元々この船が進んでいた方角でもあった。

 

 偉大なる航路の予測不可能な災害を予測した。偶然にしては指示が的確だった事を考えると……。この先の航海でも様子を見た方がいいわね。こんな人見たことも聞いたこともない。

 

 船は南に進む。

 




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