麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
店員さんからいい情報を得たスマラは早速集落を後にする。サクサク、サクサク、と積もった雪の上を歩く足取りは軽い。それだけウキウキ気分なのだ。
しかし、それだけならばただの町娘のお散歩に見えるだろう。それだけならば……。
「グオオォォォ!!!」
「ガルルルル!!!」
ドゴォン!!!ズドーン!!キラーン、ザッシュ!!
効果音を入れるならそう表現できるだろう。スマラの周りには、無数のウサギ?が居た。雪の上を飛び回り、素早い動きでスマラに攻撃を仕掛けてくるその動物は、多分店員さんがチラッと言っていたラパーンなのだ。
襲ってきている理由は恐らく縄張りに侵入されたから。スマラとしてはただの通り道なのだが、動物相手にそんな言い訳は通用しない。
「ガァァ!!」
無数のラパーンが襲ってくる襲ってくる襲ってくる襲ってくる。ただの一般人なら一匹見ただけでも周り右する様な野生動物が、一斉にスマラ目掛けて腕や顎でスマラを殺そうとしてくる。
その戦闘力は鍛え抜かれた兵士にも引け取らないはず。加えてここは、移動の困難な雪の上。強者でも逃げるのが正しい選択なのだが………。
ひょいひょいひょいひょいひょいひょいひょいひょいひょいひょい。
回避回避回避回避回避回避回避。ラパーンが攻撃してくる場所を見聞色の覇気で先読みして回避。
相手が悪かった。ラパーンが相手をしているのは、世界でも上位から数えた方が近い強者のスマラなのだから。本の為とあらば海軍の軍隊、海賊の艦隊でもあっても止めることの出来ない、頭の可笑しい娘なのだから!!
数こそが最大の問題であるラパーンの群れ。一体一体倒すとキリがない。
そんな中をスマラはただ歩く。足取りはまだ軽い。
攻撃を察知して回避。一秒後にはラパーンの鋭い爪がスマラを引き裂こうと通り過ぎる。また回避。ラパーンの突進をジャンプで回避。
空中なら逃げ場のない。ラパーンは知性が少なからずあるのか、スマラにアタック!!空気を蹴って横に回避。地面に着地。と同時にターンして別のラパーンの攻撃を回避。
もし傍からこの攻防を見ている者が居たのなら、社交界でステップを踏む美しい女性と見違える程の可憐さ。実際はただの読書厨なんですよ、と注意してあげたいが、現実には見物人はただの一人もいない。
全く攻撃を喰らわないスマラに、ラパーンは一旦攻撃を辞める。スマラの周りを囲いながら様子をみていた。そして、一斉に飛びかかる。今度は先ほどの比ではない。
数十匹ものラパーンが四方八方からスマラに遅い掛かってくる。全く隙間のない攻撃。避ける空間も与えない。今度こそ殺った。ラパーンに人格があったならそう思っただろう。
しかし、相手はスマラだ。今まで能力使用の負担が嫌だったので回避しかして行わなかったが、今度は回避よりも能力使用の方が負担が少ないらしく、動かしていた足を止めた。
「野生動物の分際で……」
ラパーンがスマラに殺到。攻撃がスマラに触れて…………一斉に反射した。スマラにダメージは全くなし。逆にラパーンは殆どが遠くまで吹き飛ばされ、戦闘不能な状態まで持っていかれる。
攻撃に参加していなかった残りも、
「いい加減、力関係の力量くらい見極めたら如何?」
覇王色の覇気発動。移動中全く本が読めず、回避に専念しなければならないことで、鬱憤が溜まっていらしゃったらしく、遂プッツンしてしまったらしい。
一応抑えているものの、世界上位の覇気を浴びたラパーン達はその場で卒倒するか回れ右して去っていく。辺りには倒れて動かないラパーンだけで、動くものはない。
そう、スマラも覇王色の覇気発動の反動で倒れていた。雪の上にバッタリとだ。雪が降り積もって段々と埋まっている。
このまま埋もれて死んでしまうのか?傍から見ればそう思うだろう。実際にスマラは数時間起きなかった。
雪が動いた。下からの振動を受けたからだ。
次の瞬間、雪の中から手が生えてくる。細い手だ。青白くなっており、凍傷で死にかけているようにも見える。
その手はバサバサと周りの雪をかき分けて自身を掘り起こす。そして、数時間雪の中で眠っていたせいでガチガチに凍え切っているスマラが出て来た。
「やっぱり、覇王色の覇気はやすやすと使うものではないわね……くっしゅん!!」
鼻水が出ている。体の体温も物凄く低いはずだ。このままでは凍死するのは見ての通り。雪に埋もれている間は自動反射が発動していなかったらしい。
やはり覇王色の覇気は使うべきではなかった、と冷静に反省するスマラ。とは言え、このままでは死んでしまう。スマラ的にはまだまだ読んだことのない本が山ほどあるので、ここで死ぬわけにはいかない。
負担はこの際気にしない。緊急事態だと割り切って能力を惜しみなく使用する。
先ずは体内温度を上げる。その後、体内に生成される抗体量を一時的に増やして、体の回復を促進させる。凍傷した部分は回復量をあげているのでじきに治るはず。
念の為三十分ほど木陰で回復に務めた。本を取り出して安静にしておくのだ。
もういいだろう。ある程度体のダルさが消えかかった頃、スマラは本を読みながら立ち上がった。読書をしながら雪山を進むらしい。
サクサク、サクサク、と安定の足取りで雪山を登って行く。ラパーン達が木の影からスマラを見ているが、あれがあった後だけに仕掛けてはこない。今度こそ殺されると分かっているからだ。実際に読書の邪魔をして来た存在は全て無残な末路を辿っている。
「さて、これからどうしようかしら?」
再び登山を始めてから時間が少し経った。雪で上手く歩けなくても、そんなこと関係の無いスマラは短時間でドラムロックの麓にたどり着いたのだ。
そして、本格的な登山を始める前に足を止めていた。
スマラの目の前に広がっているのは壁だ。正しく言うのなら直角に聳え立つ山。
この山を誰が登れると言うのだろうか?これが少しでも斜面で合ったならばまだ登りようがあったはず。頂上にお城が建っているらしいので、何処かに足場のようなものがないか?と探して見ても無し。ならばどのようにしてこの山を登るのか?
一般人が思い付く方法は一つだけだ。この絶壁をよじ登る。しかしそんなバカな方法を試す者はいないだろう。頂上は遥か雲の上だ。そこまで体力が持つはずがない。
……例外はいくらでもいる。この世界には頭の可笑しいくらい強靭な体を持った者がいるのだ。例外は今、病人を背負い意識を失ったけが人を咥えて山をよじ登っていた。
知らないところでバカが山をよじ登っているその時、スマラは空を跳んでいた。人の苦労も知らずにトントンと。
直角に聳え立つ山を前にスマラが取った行動は、空を飛んで行く事だった。これは空中を一瞬で十回以上蹴ると空まで跳べる体術『月歩』世界政府が主に扱うことの出来る人間を超えた六つの体術の一つである。
習得には人間を辞めなければならない程の身体能力が必要で、素の身体能力がゾロやルフィよりも高いスマラが出来て当然の技。もっとも、スマラの場合は能力で身体能力量を上げているので、そこまでの負担は掛かっていないのだが、超人なのは間違いない。
そういうわけで、トントンと空を駆け上げるスマラ。吹雪が降っているのでふとした人に目撃されることはないが、美しい容姿もあって天界に昇っていく天使のようだ。誰も見ていないが。
よじ登ると恐ろしく時間のかかる登山を、経った数分で終わらせる。雲を突き破って頂上にたどり着くと、そこには幻想的な風景がスマラを待っていた。
が、美しさに見惚れる事も無くスタスタと城に向かう。これぞスマラさんだ!!
幸いと言うべきか何故か城の玄関門は開いていた。お陰で場内は寒くなっている。
スマラは、家主に一言入れるべきだと考えて人の反応のある方に歩き始める。スマラとて常識知らずではない。敬意を払う相手には払うのだ。ただ、常に自分の方が上だと考えている節があるため、敬意を払う必要がないだけである。
と、場内を歩いていると、後ろから声がかかった。
「おいお前!!!ここで何している!!!というか、どうやってここまで来たんだ!!?」
「……人じゃないわね」
スマラが振り向くとそこには毛皮に覆われた大男が立っていた。反応があったので人がいることは知っていたが、それがまさかの人外だったので内心で驚いた。それでも偉大なる航路には似たような生物くらい普通に存在しているのでそこまで反応反応は無い。
「お前、俺を見て驚かねぇのか?人間じゃないんだぞ?」
「そうね、驚かないわ。だって話は通じるでしょ?それに、偉大なる航路では見慣れた光景よ」
「そ、そうなのか……?」
大男はスマラの落ち着き様に、逆にやりにくさを感じていた。スマラの様に細かいことを気にしない人に合った事が少ないのだろうか?
スマラはピンク色の帽子を被った大男を観察する。体は殆ど毛皮に覆われていて、ズボンは履いているが、それ以外は何も着ていない。背中には人間が背負われていいた。
動物系悪魔の実の能力者だろう。とスマラは結論をだすと、大男に話を切り出す。
「とりあえず、その背負っているのは私の知人よ。運んでくれてありがと。あなたがこの城に住んでいる魔女なの?」
「いや、俺はチョッパーだ。ドクトリーヌがここに住んでいる医者だ、俺は弟子さ」
スマラはチョッパーと共に歩く。ドクトリーヌがいる部屋に案内してもらっているのだ。
チョッパーは自分を怖がらない人間が珍しいのか、途切れる事無くスマラに話しかける。
「こいつらと旅しているのか?」
「海賊だそうよ。私は同行しているだけだけれども」
「海賊なのか!!じゃあ色んな島を見てきたのか!!」
「まぁそうね。旅人やっているから、色んな海の色んな島を見て来たわ」
テンションは出会った頃のルフィと全く同じ。冒険好きなのだろう。
話して上げても良かったが、部屋にたどり着いたのでおしゃべりは終わりだ。
「ドクターいる?」
「何だいチョッパー?ん?その小娘は………一体」
「ちょっと待ってくれドクター。それよりもこっちを先に見てくれ!」
中にいたのは見た目80歳位の婆さんだった。魔女と言われるからには女性なのは分かっていたが、ここまで高齢とは思いもよらなかった。
服装も少し驚きだ。スマラですら長袖を着ているのに対して、ドクターはへそ丸出しの半袖シャツ一枚だ。いくら城内で暖炉に火がついていると言えど、感覚可笑しい。スマラは能力で体温を調整しているから感覚麻痺しているのだが。
ドクターはスマラに興味を持ったようだが、チョッパーが急患が居るからと遮った。
チョッパーは背負っていたナミたちを下ろすと、ドクターと一緒に診察し始める。スマラもここに来て初めて三人の様子を確認出来た。
ナミは今まで通り、熱がまた上がってきているのか顔を赤くしてぐったりと倒れている。サンジも血だらけで気を失っていた。上って来る途中に戦闘があったのかボロボロだ。多分、ラパーン達であろう。
唯一気を保っているのはルフィだ。何があったのか、極寒の吹雪の中をいつものタンクトップでガタガタと震えており、全身が凍傷を起こしかけているらしい。死にかけてまでこの山を登ったのはスマラですら称賛に値する。
自分が死にかけてまで仲間を助けるというの!?何て言う根性。
こんな奴が船長で、海賊王を目指している。麦わら帽子に処刑台の奇跡、革命軍総司令官が手助け、やはりこの男は何かがある。
私はそれを確かめなければならない………。
大方の診察が終わったのか、ナミを優先的に治療開始することになった。医者の目からしてもナミの病気はヤバいらしい。
スマラは治療の短縮化させてあげるために自分の診断結果を教える。このくらいの手助けくらいならやっても罰は当たらないはずだ。それに、本を読ませて貰えるかも知れない。
「脇の所に斑点があるわ。多分ケスチアよ。まぁ正確な診断は任せるわ」
「それは本当かい?チョッパーは如何やら本当に急いだ方が良さそうみたいだね。因みに、何日目だい?」
「………三日目よ。ところで医学書でもいいので本を読んでもよろしくて?勿論読み終えたら元の場所に戻すわ」
「ありがとうさん。読書は良いだろう。中身が分かればいいけどね」
ヒ———————ッヒッヒッヒ!!と笑い声を上げながらドクターとチョッパーは医務室にナミを運んだ。ルフィとサンジは放置されている。
仕方ないので、スマラは二人を適当なベッドに運ぶ。
その後にその辺の本棚にある医学書を取り出すと、ソファに腰掛けて読み始めた。やっと充実した時間がやってきた。
今回も誤字脱字あったらお手数ですがよろしくお願いします。