麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

15 / 81
遅くなって申し訳ありません。そして、アラバスタ王国に到着出来なくて済まない。


333 十五頁「ビビのお願い」

 ドラム王国を出航した麦わら一味の船の上。今、ここでは新しい仲間を祝う歓迎会が開かれていた。皆ジョッキを持ち、楽しそうにしている。

 ただ一人を除いて。

 

「おいスマラ!!外に来いよ!!楽しくやろうぜ!!」

 

 何時ものように船内で読書を楽しんでいたスマラに、ルフィからの誘いがかかる。スマラはチラッと横目でルフィに視線を向けると、そのまま興味を失い読書に戻った。

 

「おい!」

 

「それは、この船の船長としての命令?」

 

「命令なんかじゃねぇ」

 

「だったら好きにさせてもらうわ。私、パーティーとかにいい思い出がないから」

 

「………そうか、だったら仕方ねぇな」

 

 言葉では諦めたかのように見えるが、ルフィの目はまったく諦めていなかった。ルフィは今日のところは引き上げだと言わんばかりに、諦めていない目線をスマラに向けながら船内を出た。再びバカ騒ぎを起こす為に。

 

 

 

 船内一人残ったスマラは、ルフィの言葉に思い出したくない記憶を思い出していた。

 

「………パーティー」

 

 嫌な思い出しかない。無理矢理参加させられ、見たくもない奴らに合わさせられる。当然、本も読めない。

 当時はまだ力も無かったから従うしか方法はなかった。産まれた意味は政略結婚の道具として………。いや、私はまだいい方なのかもしれない。私ら辺は道具は道具だけれども、結婚と言うよりも部下や武器としての意味が大きかったはず。

 たまに新聞で知るあいつら。私など忘れているも同然のレベルだ。だけど、思ってしまう。『このまま新世界に戻っても良いのか?』と。

 

 嫌な考えが頭の中を支配する。スマラは頭を奮ってリセットした。こういう時は読書をして活字の世界に飛び込むのが一番の鎮静剤だ。

 余計な考えを頭の中から追い出すと、スマラは本の世界に飛び込んで行った。

 

 だから、普段なら敏感な見聞色の覇気が乱れていたのだろう。一人、入り口で船内に入るタイミングを失ってスマラの様子を覗き見していた人物がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サンディ島————通称アラバスタ王国。あるオアシスの中心部で男はミス・オールサンデーに聞き返していた。

 

「それは、噓偽りはないのか」

 

「えぇ、もちろんですとも。ビビ王女の乗っていた船に可憐なる賞金稼ぎが居た。仲間ではないみたいだけど、手は出さない方が賢明と判断して戻ってきたわ」

 

 『可憐なる賞金稼ぎ』数十年前に話題となった賞金稼ぎの別名だ。本名はスマラ。

 本を買うための資金を調達する為に適当な海賊を討伐していたのだが、主に街に居た時に討伐することが多かったので世間的には「市民を守ってくれる賞金稼ぎ」「彼女が街に居たら安心だ」とかいう噂話が広まったこともあった。

 数十年前の話なので、知っている人は知っている知らない人は知らないレベルの話だ。余程覚えている人か、実力が有り危険視していた海賊しか覚えていないだろう。そして、この場にいる二人は後者だった。

 

「そうか、ご苦労………」

 

「あら?こちらに引き入れる考えでもしているの?」

 

「リスクを考えると、触らない方が賢明かと思うわよ。引き入れた時のリターンも大きいけれどもね」

 

「交渉材料が大切か。まぁいいさ。本人は深く関わるつもりがねぇなら問題ねぇさ。そもそもの話、奴らはMr.3にやられちまっている。奴は生きているだろうが、足がないならこの国に来る必要性がない。今回の件はそれでお終いだ」

 

「………えぇ、そうね。それと、今王国で海賊が暴れているらしいわよ」

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は戻って航海中の麦わら一味の船の上。彼は只今全滅の危機に陥っていた。

 

「おめぇじゃねぇかよ!!!」

 

「ふべっ!!」

 

 サンジの蹴りがヒットしてルフィに刺さった。事情を知らないなら仲間割れだと思うだろうが、ちゃんとした理由のある制裁なのだ。本人はゴム人間なのでダメージはないのだがそこは形だけでもという心理からだろう。

 さらに、釣りをしていたウソップとチョッパー、カルーまでもがナミの拳骨を喰らった。理由は勿論、ルフィと共犯だったからだ。

 

 今回の事件の概要は簡単である。サンジがアラバスタ王国に着くまでちゃんと持つ様に配分していた食糧が一晩の内に消え去ったのだ。そこで一味一の食いしん坊であるルフィを問い詰めた所、あっけなく犯行がばれる。丁度つまみ食いしていた物を証拠隠滅と飲み込んでいた他の三人もナミに気づかれて撃沈。

 そう、今この船は食糧難の危機に陥っていた。

 

 普通の海なら近くの島に立ち寄って食料を補給すれば問題ないと考えるだろうが、あいにくとここは偉大なる航路。島の位置すら不明な海なのだ。頼れるのはアラバスタ王国の永久指針のみ。しかし、方角は分かっても距離が不明なのが怖い所。

 つまり、何時たどり着くか分からない状況なのだ。

 

 といったん話は置いておいて、外でビビがバロックワークスの概要を皆に話している時、スマラは何時もの様に読書をしていた。

 それなら特にここで述べる意味が無いのだが、実際には述べる意味がある。何故なら、スマラは読書をしながら果物を齧っていたからだ。

 まさかのつまみ食い?いいや、元々スマラは旅人だったのだ、容量を増やしているリュックサックの中に非常食くらい用意している。

 

 なので、食糧難の今でも優雅に栄養を取ることが可能なスマラは、夜中に冷蔵庫の中の食料が全て消えても全く問題なかった。だから、外の制裁には気にしない。

 朝食が無かったので、誰もいないこの時間をついて一日一日の最低限の栄養を取っていたスマラ。誰も見ていないのなら全く問題にならなかった。

 だが、こういう時ほど、うまくいかないのが最近の事情。

 

「す、スマラさん?ちょっと話した事があるのだけれど、今いい……かしら?」

 

「シャリシャリ。少し待ちなさい」

 

 突然部屋の中に入ってきたビビに見られてしまう。が、スマラは気にしないで残りの果物を口に入れていく。

 見られると面倒だが、まだ一人だ。ビビ相手ならどうとでもなるはず。そう思って気にしないでいたが、微かな匂いに気が付いたのだろう。ルフィがドスドスとやって来る。果物を少し食べているだけなのに、匂いが強いわけでもないのに気付くとはバケモノである。

 

「クンクン。あぁ!!スマラが飯食ってるぞ!!」

 

「何ぃ!!本当か!!」

 

「クェ~!!」

 

 ルフィの声に、共犯者どもが反応した。特にウソップなんかは、真面目なスマラが自分達と同じ事をしていたので大喜びだ。サンジやナミもまさか!?と言う表情で駆け寄って来た。ゾロ?寝てる。

 

 スマラが果物を食べているのがそんなにも珍しいのだろうか?余り物を食べないイメージがあるスマラだが、一応人間である。それならば栄養を取らないと死んでしまう。別に食事が珍しいというわけでもない。サンジから出される三食に、デザートやおやつまできっちりと食べているではないか。

 この船が食糧難の危機に陥っているという特殊な状況でなければの話だが。

 

 ルフィやウソップが騒ぎ立て始めたので、スマラはさっさと果物を口の中に放り込んだ。本をしまい、ビビの話を聞く体制に入る。ルフィが「何か俺にもくれよぅ!」と言っているのは無視だ。

 スマラに相談があったビビは、自分の相談を先に聞く事が出来ない。先に果物を食べていた事を問いたださなければ。少しだけ怖いが、ビビは勇気を振り絞って口にする。

 

「あの、スマラさん。今のはどういう事なの?」

 

「今の?………あぁ、朝食が無かったので自分で用意していた非常食を齧っていただけよ。自分のだから別に可笑しくはなくて?」

 

「そ、そう」

 

 自分で用意していた分なら誰も文句を口に出す事は出来ない。

 

「スマラ!!メシくれ!!!!」

 

 あ、ルフィは何も思わなかったみたいです。というか、夜中に食料を数人で分けたと言え、全部食べたのに凄い食い意地だ。

 スマラが断るまでもなくサンジとナミに殴られてしまう。ゴンッっといい音を当て床に沈むルフィ。同じくスマラに頼ろうと考えていたウソップと、煽られたといえ共犯になってしまったチョッパーとカルーが三人で抱き合い震える。

 しかし、考えていた事は皆同じだった。

 

「ねぇスマラ?その食糧ってどの位入っているの?」

 

「…それを聞いてどうするのかしら?と言っても何となく答えは見えているわ。そうね、全員で食べても問題ないくらいは入っているかしら?」

 

「お願い!!それ、貸してくれない?後でお礼はするからさ」

 

 本当は自業自得と言って切り捨てるつもりだったけど、お礼ねぇ…………。ビビ王女の話も気になるわ。

 場合によっては大きな貸しになるはず。本ならともかく、食料なんて私には余り必要性が無いもの。別に分けて上げても問題ないわね。

 

「えぇ、いいわよ。お礼は期待してもいいのかしら?」

 

「もちろんよ!!」

 

「スマラさんありがとうございます♡」

 

 スマラの答えに、ナミとサンジがお礼を述べる。ビビもあからさまにホッとした表情に変えた。

 勿論、食糧難の原因を作った者たちも嬉しそうに喜ぶ。

 

「流石スマラ!!」

 

「俺は信じてたぞ!!スマラが実はいい奴だということを」

 

 ルフィは何時も通り。ウソップは普段の態度とは裏腹にスマラを奉る。チョッパーとカルーは動物の勘か、素直に喜べないでいた。

 そして、四人に死刑宣告が走る。

 

「あんた達は無しよ!!!」

 

「「えええぇぇぇ~~!!!!??」」

 

「やっぱり……。ドクター、俺飢死するかも」

 

「クエー」

 

 

 

 冷蔵庫に入れて置くと、お腹を空かせたルフィに襲撃されるかもしれない。ということで食料はその都度スマラのリュックサックから出してもらうことにして、一旦話は終わりだ。閑話休題とでも言えばいいのか。

 食料の問題が解決(つまみ食い犯人は別として)したのに顔がまだ暗いビビ。重要な話なのだろう。スマラはそれで?とビビを促した。

 

「あの………。えっと、どう言えばいいのかしら?」

 

「………大方予想はつくけど、早くして頂戴」

 

「はいっ!!こんな事言ってルフィさんたちには悪いと思っています。でも、確実性を上げるにはこれしかないの」

 

 ビビは確実性を取りたいと言ってルフィやナミに申し訳なさそうな顔を向ける。ルフィはともかく、ナミやサンジはビビの言いたいことが分かり、尚且つその意味をきちんと把握しているので、何も言わない。

 ビビは一呼吸入れた後、スマラに勢い良く頭を下げた。

 

「力を貸して下さい!!お願いします!」

 

「…………力ね……」

 

 少しだけスマラの反応が遅れる。力を貸して欲しいと言われる事は何となく感づいていたが、ここまで真剣にお願いされるとは思ってもみなかったからだ。

 スマラはビビを見返す。頭を上げたビビはしっかりとした目でスマラを見返していた。

 

「私に何を求めているのかしら?クロコダイルを倒せと言われても、私は頷かないわよ」

 

「クロコダイルは俺がぶっ飛ばすから、スマラは邪魔すんなよ」

 

「ルフィ………ビビはそこまで言っていないでしょ。それに、スマラ自身が承諾しないわ」

 

 スマラがビビに貸し与える力の内容がクロコダイルの討伐ではないのか?と疑うと、ルフィがスマラに「俺が倒す」とくぎを打った。ナミはルフィに「話を聞きなさい」と言ってルフィの軌道修正を行う。

 ビビは自分がスマラをクロコダイルにぶつけるなんて思っていないことをアピールする。スマラなら王下七武海であるクロコダイルをも倒せるのではないか?と希望を一瞬抱くが、払える報酬が存在しない。長年続く反乱で国政は滞り、国庫の資金は減ってきている。それに、ナミと十億の契約を結んでいるのだ。スマラに払える金額が出せるはずがなかった。

 

「そのことじゃないの。もっと簡単なことよ。アラバスタについたら私を護衛してほしいの」

 

「護衛任務の依頼ね。………別に私に頼まなくてもいいと思うけど?」

 

「勿論、ルフィさんやサンジさんが護衛してくれる事には感謝しているわ。感謝しきれないくらいに。でも、相手はクロコダイル。私が生きていると知ったら何が何でも狙ってくるはず。それに加えオフィサエージェントも動くはず」

 

 一気に来られたらイーストブルー最高額の海賊船でもとてもさばききれない。ビビはそう締めくくった。

 最重要はビビが生きて国王や反乱軍のリーダーに会うこと。だが、その過程で敵に遭遇したらその対処は麦わらの一味に任せるしかない。敵はビビを狙うはず。守りながら戦うのは、戦いにおいて一番難しい事だ。ビビは戦闘の足枷にはなりたくなかった。

 一人になってでも行動をするべきだ。だけど、幾ら戦えると言っても本職には程遠い。そこで専門の護衛を雇うのだ。バロックワークスと言う犯罪組織ですら避けようとしている者、スマラを。

 

 説明を終えたビビは今一度スマラに力添えを願う。先ずは、交渉の場に立たせる。それが一番の難関だ。

 

 スマラは悩んでいた。今の現状から一番の厄介事はクロコダイルの討伐だ。勿論、相手の情報も幾らか持っているし、戦っても九割が倒せる自信はある。ただ、仮にも王下七武海なのだ。ただの賞金稼ぎが政府公認の海賊を倒すのはいささか面倒ごとが多すぎる。

 クロコダイルが国の反乱の黒幕だと明るみになっても話は変わらない。国を救った英雄と国民や新聞で注目を集めることだろう。しかしそれはスマラの望んでいる生活とはかけ離れている。新聞に載ったことで、忘れかけているあいつらの気を引くかも知れない理由もある。

 しかし、蓋を開けてみればただの護衛任務。護衛者の重要性からすれば襲撃は確実であるが守ればいいだけの事。関わらないと副社長に伝えていた所を護衛ではあるが関わってくると、向こうがどう対応するのか分からないが。

 ただの護衛任務なので、一緒に行動すればいいだけの事。襲ってくる敵を倒さなければならないが、大した問題にはならない。クロコダイルなら逃げればいいだけの話。それだけの実力はあるつもりだ。

 

 そして、スマラは交渉の場に着いた。あくまでもただ働きはしない。報酬が気に食わなければ受け付けない。

 

「それで、反乱中の国に報酬は払えるのかしら?」

 

「お金……が欲しいわけでもないのよね?」

 

「そうね、お金は必要ないわ。まぁ簡単な話ね。王女である貴女なら私の望むものを手に入れる事も容易なはず」

 

 報酬にお金は要らないとスマラは言う。

 お金ならこれまでの海賊討伐で湯水の様に得ているからだ。特にでかい買い物をしているわけでもなく、ただ生活に必要な分と書籍代のみの経費。億単位で稼ぐことが可能なスマラはリュックサックや銀行にたんまりとお金が眠っていた。

 スマラはお金では無いものをビビに要求する。王女なら簡単なものだともの言う。国が反乱中だったにもかかわらず簡単に用意できるものと言えば………。

 

「全てが終わったら王宮の図書室の本を一部譲ります。滞在中も好きに観覧してくれても結構よ」

 

「………交渉成立ね。アラバスタ王国に着いたらよろしく頼むわ」

 

 王宮の図書室はあくまでも一般人であるスマラにとって、そうそう入れる場所ではない。実際には侵入は可能なのだが、持ち主への敬意はするのがスマラだ。

 しかし、ビビが許可すれば簡単に観覧可能だ。スマラはこれを待っていた。アラバスタ王国と言えば建国が数百年以上もある歴史ある国だ。その王宮ともなればさぞかし多くの本が貯蔵されているだろう。貴重な本もあるかもしれない。

 

 スマラは依頼を受けたばかりにも拘わらず、もう任務達成した気分でいた。早くアラバスタ王国に着かないかしら?と。




これから少しだけ投降頻度が落ちますが、エタらないので気長に待っていて下さい。応援コメント会ったら頑張りますよ?

今後どんな風に進めていくべきかアンケート!!読者様の意見が聞きたいです。が、アンケート結果が絶対に反映するかは分かりません。結果を意識しながら書いて行けたらなぁ。と思ったアンケートです。

  • 出来るだけ簡潔に!!
  • もっとストーリーに関わって欲しい
  • そんなことよりも更新速度早よ!!
  • 知るか!勝手にやってろ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。