麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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イベント完走しました。本垢もサブ垢も……。


344 二十四頁「王宮での休憩」

 クロコダイルの陰謀を阻止し、アラバスタに再び雨が降りだして三日が経った。

 運び込まれた麦わら一味も、船長のルフィ以外が元気になり、各々の行動を取っている。

 ある者はルフィの看病をし、ある者は王宮お抱え医師を驚かせながら薬を調合し、またある者は二人で買い出しに出掛け、ある者は今回の戦いで見出した力の鍛錬に励む。

 

 そしてある者は……

 

「えぇ!!ここの本、貰ってもいいの?」

「あぁ、構わん。私は読んだ物ばかりだ」

「やった~!スマラは………って物凄い勢いで読んでるし!」

 

 ここは王宮図書室。案内されたナミは「ここの本は幾らでも読んでいいし持っていても構わない」そう国王から言質を取って喜んだ。

 同じく図書室にいるスマラに目を向けると、スマラは速読の勢いで本を読んでいた。辺りには本が大量に積まれている。その数数百冊に及ぶだろう。

 

 

 戦いが終わった日、スマラは与えられた――と言ってもナミとビビと同じ部屋――で少しだけ休むと、国王にこの場所に案内してもらった。

 ビビからの報酬の話もあったのだろう。国王は先ほどナミに話した内容と同じ事を、スマラにも話した。

 

 すると、スマラはここにある本を全て読む勢いで読書に取り掛かったのだ。

 幾らでも持って行って構わないと言われても、スマラが持てる冊数には限りがある。なので、滞在している間出来るだけ読む。読んだことのない本を速読して、内容を頭の中に詰め込める。その中でも気にいった物を持って行く打算だ。

 

 となると、時間との勝負。麦わらの一味の話では、ルフィが目覚めたらアラバスタを出港するとのこと。

 ルフィが目覚めるまでどのくらいの時間があるか不明だが、数週間とはならないだろう。

 

 だから、夜も部屋に帰らずに、睡眠もとらずにひたすら本を読む。図書室という神聖な場所で飲食をするのは言語道断!と考える者もいるだろうが、スマラはその様な考えはないので、食事もここに持ってきてもらい読みながら食べる。

 そうして三日目。再び国王がナミを連れて来るまで続いていた。

 

 スマラの執着心に若干引き気味になるナミ。気にしても仕方ないと、スマラを無視して自分も本の選別に取り掛かった。

 

 

 

 

 夕方前。ナミが部屋に戻って行くがスマラはそれでも止めない。

 一応見張り役として居る護衛兵がスマラに声を掛けた。一冊分を読み切ったキリの良いタイミングでだ。

 初めて声を掛けた時は間が悪く、スマラに睨まれて怖かった経験を生かすのだ。

 

「スマラ様……今日もお食事はこちらで?」

「……そうな――いいえ。もう良いわ。面倒な奴も起きたとこだし、どうせ呼びに来るわ」

 

「はぁ」とスマラの言っている意味が分からない見張り役は返事を返す。要するに、今日の夕飯は持って来る必要がないということだ。

 スマラは最後の抵抗を見せるかのように速読を開始した。

 

 数分後、バタンと図書室の扉が開いた。と同時に静かな図書室に似つかわしくない声が響く。

 

「スマラ!!ご飯行くぞ!!」

「こらルフィ!病み上がりなんだから一応安静にしてくれよな!」

 

 飛び込んで来たのはルフィだった。後ろにはチョッパーもいる。

 三日間の眠りから目覚めたルフィがスマラを呼びに来たのだ。

 当然、見聞色でルフィの気配が起きた事を察知していたから、スマラは夕飯を食べに行くと返していた。

 

「早く!早く!!揃わないとメシを出さねぇってちくわのおばはんが言うんだよ!!」

「だからルフィ……安静にしてくれぇ~。あ、スマラもケガとかしてないか?してたら俺に言うんだぞ。船医だからな!」

 

「騒いでたら余計遅くなるわよ?」

 

 ラスト一冊を読んでいるスマラの横で、ルフィとチョッパーが騒ぎ立てる。

 これでは早く読もうにも集中できない。

 イライラしながらも何とか読み切ったスマラは席を立ち上がる。そして、ルフィに引っ張られるようにして、三日ぶりに図書室を出たのであった。

 

 

 

 

 場所は大食堂。普段は静かな場所であるはずだが、今だけは違った。

 普段の倍、いや四倍近い量のお皿と人数が席に座って食事をいる。国王、ビビ王女、カルー、チャカとイガラムは当然として、ゲストの麦わらの一味とスマラだ。

 ルフィは三日分の食事を取り返すかのようにして手を伸ばしては口に入れる。普段よりも大食いだ。

 ルフィにとられないようにと、ゾロ、ウソップ、チョッパーは競うようにして食べ物を口に入れる。そんな者たちを、ナミを筆頭にビビが眺める。呆れながらと笑顔で。

 唯一サンジだけは料理そのものに興味があるみたいで、調理法を料理人に尋ねていた。

 

 そんなバカ騒ぎの中で、スマラは物静かに食べていた。

 普段なら「行儀作法など知ったことではない」とばかりに本を片手に食事をしているのだが、今だけは礼儀正しく食べていた。

 三日も速読漬けで、流石に疲れたのか。それとも、クロコダイルとの戦闘で使った栄養をじっくりと体内に吸収するつもりか、珍しく食事に集中している。

 その姿は、正しく宮廷の大食堂で出されている食事を取っている令嬢。ナイフで肉や野菜を切り分けて口に運ぶ。一口ごとにナプキンで口元を拭い、全ての動作を適確なスピードで行う。

 

 その姿は見る者を圧倒させる。

 麦わら一味の無作法ぶりに、苦い顔をしていた護衛兵等の目線を釘漬けにし、本物の王族であるビビや国王コブラまでもが「ほぉ!」と吐息を零さずにはいられない。

 

「ビビ、彼女は一体…?」

「えっと私もこんなスマラさんは、初めて見たわ。いつもは読書をしながらだったから……」

 

 父親の言葉に、ビビも戸惑いを隠せなかった。

 席が遠いながらも二人の会話が聞こえていたナミが、騒いでいる麦わら一味を代表して答えた。

 ナミ以上にスマラについて話せる者は、スマラ自身をのぞいたらいないだろう。適切な人員だ。

 

「私たちも良く知らないの。分かっている事は自称旅人。偉大なる航路の後半出身で、クロコダイルに勝ったルフィよりも圧倒的に強い。それでいて尚底を見せない」

 

 ナミの説明に、この場にいる麦わら一味以外の全員が、あのクロコダイルを余裕の表情でいなした戦闘が蘇る。確かに、偉大なる航路後半出身は納得だ。

 ビビは船に乗った当初からの疑問をぶつけた。

 

「ウィスキーピークを出港した時から思っていたのだけど、スマラさんはどうしてこの船に?仲間って言葉に、普段の冷静さをみせない位に否定するけど……」

 

 本人が怖いのか、スマラをチラッと確認しながらビビは言う。

 大丈夫だ、他人の存在などいないかのように食事を取っている。

 

「あ~、本人曰く「天候が悪いのでお昼寝していたら、急に拾われた」」

「えっと、それはつまり、彼女が海で居た所を麦わら一味に拾われた。と言う事で宜しいでしょうか?」

「うん。その解釈でオッケー」

 

 気になったチャカが要約する。

 ふと気づけば、ルフィ以外の者が静かになっていた。話題が料理からスマラの話へシフトしたみたいだ。

 なお、ルフィだけがバクバクと料理に手を付けている。他の者は次々と出てくる料理に、無くなる心配が無くなったので、各自のペースで食べれば良いと安心したからだ。

 

「そういや、あれはビビったからな~。起き上がると同時にルフィをぶっ飛ばしたもんで。あの焦りようと言ったら」

「お前が一番ビビってたんだろ。いや~、食事をする姿も綺麗だなぁ」

「なぁ!俺にも聞かせてくれよ!」

 

 ウソップとサンジが横道に逸れる。今となっては懐かしい思い出だ。

 その時は仲間になってないチョッパーが、ウソップに当時の状況を詳しく聞く。

 

 

 横道は横道で楽しく花を咲かせるとして。

 本題の話はやっぱりナミが行う。

 

「目覚めたスマラを、いきなりルフィが仲間に誘うもんだから……。あの時のスマラが今でも一番怖かったわ」

「それは……災難でしたね………」

 

 今でも鮮明に思い出せるのか、ナミは身体をぶるっと震わせた。

 チャカも、自分が手も足も出せなかったクロコダイルを圧倒するスマラを思い出したのか、ナミに同情する。あれが味方では無かったらと思うと、震えが止まらない。

 

「それで、海賊の仲間になるわけにいかないと言い張るスマラと、スマラを仲間に引き入れたいルフィ。スマラが一歩引いて、仲間にはならないけど船に乗って航海を共にするのは良い、そう言う感じで落ちついたのよ」

「そうだったの……。てっきり諸国漫遊の為に乗っているのかと…」

「あながち間違っては無いわよ?船の上でも島の上でも、読書しかしないもの。本人の話も一切なし。強引に聞き出そうとは思わないけど、気になるのは当然よね」

 

 ナミとビビの視線がスマラに向けられる。

 スマラは一通り食べ終えたのか、優雅に飲み物が入ったグラスを傾けていた。

 

「ん?何か用かしら?」

「あんたの話題だったのよ。私たちとの出会いと、後、見た目に劣らない作法ぶり。それ、何処で覚えたの?」

 

 ナミが勇敢にも聞きだそうとする。

 普段は話題にすら上がらないことだ、今がチャンス!とばかりにスマラに聞いてみる。雰囲気も後押しして、喋ってくれれば良いだろうと考えて。

 そんな思いを知ってか、知らずか。スマラは答えてくれた。

 

「小さい時から自然と。周りがバカすか食べていたから……。対抗心でもあったのかもしれないわ」

「し、自然と……。自然と覚えた理由が対抗心って……」

 

 スマラの口から出た説明は、いささか期待とは違ったものだった。

 もっとこう、「家が王侯貴族だった」や「親の躾が厳しかった」などを思っていた。が、周りが今のルフィの様に無作法だったので作法を覚えたとは、思いもよらないだろう。

 益々、スマラの幼少期が気になってくる。

 が、これ以上話すつもりはなさそうで……

 

「ごちそうさま」

 

 そう言って席を立とうとするスマラ。

 また図書室に籠るのだろうか?ビビが行き先を尋ねる。

 

「スマラさん?何処に……?」

「少し外に出て来るわ。ほんの一二時間で戻ってくるつもりだから心配は無用よ。付添人もいらなわ」

 

 自分の言い分だけ述べると、スマラは大食堂を出ていく。

 スマラの個別行動は今更なので、誰も何も言わない。口ぶりからすれば、王宮の外に用事があるのだろう。

 ナミやサンジ、ウソップまでもが「本関係だな」とジト目を消えたドアに送った。

 

 

 

 

 

 大食堂を出たスマラは王宮内をサクサクと進む。途中で出会った衛兵達も皆、スマラを見ると足を止める。スマラの美しさと強者の存在感故にだ。

 王宮を出ると、反乱により壊れた街を復旧させている作業の名残が見える。当然夜なので働いている物は居ない。

 空いた窓から聞こえる喧騒が、国民の心強さを物語っている。反乱が終わったばかりなのに、皆元気にしている。

 

 そんな街中をスマラは進む。迷いない足取りだ。

 街を進んで郊外に出る。遺跡らしきものが度々見えた。

 その中でも一際目立っているのがあった。崩れていて、掘り返さないと進めないくらい崩壊している遺跡内部へ続く階段。

 

「はぁ、やっぱり難しそうね。………歴史の本文。読めなくても写しくらいはしたかったのだけれど………。これくらい崩れているとなると、時間も相当掛かるはずだわ」

 

 スマラは残念そうに呟いた。

 

 スマラがここまでやって来た理由は明白だ。クロコダイルが言っていた歴史の本文を写すため。

 スマラは数十年間で世界中を渡り歩いた。その過程で歴史の本文が存在する島を訪れるもの必然だろう。

 以前も述べたが、歴史の本文と言えど物語には違いない。物語なら読みたい。例えそれが読めない文字であっても、文字の形さえ覚えておけばいずれ読める様になった時に楽しめる。

 そう言った考えで、スマラは読めない歴史の本文を集めていた。

 

 今回も例にもれず最終日に立ち寄ってみたが………。

 ルフィとクロコダイルの戦いで遺跡が崩れてしまっているようだ。歴史の本文は決して壊れない石で出来ているので、壊れる事は無いが。掘り返すのは途轍もない苦労と時間がかかるであろう。

 如何にスマラの能力がバケモノじみていたとしても、掘り返す事は可能でも相性上一夜では不可能だった。クロコダイルやミス・メリークリスマスと言った能力なら可能かもしれないが。

 

 とりあえず今回の歴史の本文は諦める事にしたスマラ。

 目的が遂げられないならこの場に意味はない。さっさと来た道を戻り王宮に帰る。

 部屋に帰る前に図書に立ちよると、気に入った本をリュックサックの中に詰め込んでいく。国王自らの言質は取っているので、遠慮なく持ち去る。

 その数数十冊。遠慮ない?本に遠慮など必要ないのだよ。

 

 と、部屋に戻って与えられたベットで三日ぶりに休むスマラ。

 だが、そう簡単に休ませてくれないのがこの一味。

 

 寝ていたスマラは急にたたき起こされてしまった。

 




 時々でるお嬢様スマラ。
 ホントのお嬢様かどうか?そんなの秘密ですよ。

 お風呂回
 スマラは王宮の外に出ていた為なしです。ホントは入らせようかと思ったんですが、書いている内にこうなってしまった。お風呂に入らなくて匂いが気にならないのか?スマラの第一優先は本です。そのためなら気にしない。と言っても女の子なので多少は気にします。最低でも週に一回は入る。無論入れるときは入る。そんなこと気にしている時点で海になど出れない。

 次回
 終わる終わる詐欺でした。次回はホントに終わらせます。アラバスタ出港とロビン加入だと予定。

今後どんな風に進めていくべきかアンケート!!読者様の意見が聞きたいです。が、アンケート結果が絶対に反映するかは分かりません。結果を意識しながら書いて行けたらなぁ。と思ったアンケートです。

  • 出来るだけ簡潔に!!
  • もっとストーリーに関わって欲しい
  • そんなことよりも更新速度早よ!!
  • 知るか!勝手にやってろ!!

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